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夜の街へ

青ちゃんと一緒に従業員口からお店を出ると、日曜日だというのに渋谷は大賑わいだった。青ちゃんは私の方を見て言った。

「リナちゃん今日はありがと!私は井の頭線だからこっちね!バイバイ!!」

「はい!こちらこそありがとうございました。青ちゃんまたお願いします!」

手を振って別れた。なんとかバイトを乗り越えられたし、褒められてしまった。ラッキーである

私は山手線に向かう道中、スマホ連携の腕時計に通知が来ているのに気づいた。相手はハルカである。

[やっほー!リナは今からヒマ?新宿で飲んでるんだけど〜]

[ヒマだけど、今日はバイトで疲れた]

[おお!労働しているのだな、君。ハルカお姉ちゃんが労ってやろう!大丈夫!リナは座ってるだけで華があるから。]

やたらハルカのメッセージはご機嫌だったので、それなりにアルコールが入っているのだろう。

[わかりました、行きます。どこですか?]

[社会人みたーい!ここ!ゴールデン街の近く!]

みると、1番治安が悪そうなエリアだった。

私はため息をついて、新宿へと向かう。渋谷駅のハチ公前は人だらけで何人に声をかけられたかわからない。

何とかすり抜けて、山手線外回りにに乗る。

電車では、すごく視線を感じる。バイト終わりのカジュアルなニットとはいえど、抜群のボデェは隠しきれないようである。

 新宿駅で降り、ナンパを掻い潜りながらハルカが居るバーへと急いだ。ハルカの居るバーは地下一階ですごく雰囲気のあるお店だった。自分なんかが入店していいのだろうか?入り口の扉も木製で、中が見えない。15secくらい入るのを躊躇した後、決心して扉を開く。そうすると中はバーで、ダーツとルーレットが完備されていた。ハルカが店の奥で呼ぶのが聞こえた。

「おお〜いリナ、こっちこっち!」

そうするとハルカの近くに知らない男が2人そこに居た。私は一瞬で、ハルカはその男たちにお酒を奢ってもらって飲まされていることが分かった。テーブルにはすでにシャンパンが2本空いている。

「これ!うちのリナリナ!可愛いっしょ?私のだから笑」

私は言った。「すみません、うちの連れがご迷惑おかけしているようで。」

男2人は目をキラキラさせて言った。「ええ!超かわいいっすね!モデルとかやってるんすか?」

「いえ、ダンスはハルカとやってます」

「ああ!だからめっちゃいいカラダしてるんだ!」

そういうと、男2人は私達のカラダを舐め回すように見た。ダンスとカラダつきを関連させて言われるのは、あまり良い気がしない。

「今、ハルカちゃんいい感じだから飲もうよ〜」

「いいですよ、ただ私とハルカのお酒代は自分たちで出しますよ〜」

「いいって!俺たちめっちゃ頼むから、俺らのお酒飲んでいいよ」

「大丈夫ですか?ではお言葉に甘えて。」

「なんか、リナちゃんって社会人みたいだね」

金髪の方の男が個別で話しかけてきた。私は意識が男なので、本能的に避けた。

男「避けなくてもいいじゃーん」

私「いや〜触らないで下さい」

ハルカ「ちょっと〜??うちのリナに触んないで!?次触ったら殺すからね!?」

ハルカは普段よりも口調が強かった。どうやらこれだけ飲んでも、友達を守ることや、然るべき判断力は鈍っていないようだった。

「ハルカちゃんとリナちゃんは友達なの?」

「私達ダンス友〜」

「へ〜いいじゃん!!俺たちもダンスできるよ!」

「じゃあ俺、ライジングサン歌うわ〜」

そう言って金髪男はランニングマンを踊り出した。私は種族が違いすぎる会話で若干引いていた。その様子を察したのか、ハルカが気を利かせていってくれた。

「あーごめん、別の友達に呼ばれたから、リナとアタシは行くわ!お酒ありがと〜」

ハルカは、お店の店員に5000円だけ渡して足りる?とだけ確認して、店員はうなずいた。ハルカはそれを確認して出口に向かった。

私は慌てて、荷物をまとめてハルカを追いかけた。男たちは舌打ちしていて雰囲気はすごいことになっていた。

逃げるように店の外に行くとハルカが待っていた。

「ごめんね〜あいつらクソだったね、リナのカラダしか見てなかったよ笑」

「それより!!お店の代金大丈夫だったの?」

「アタシ常連だから、代金もだいたいなのよね。ほぼ男2人あいつら持ちのお酒だったし全然おっけ~♪」

「そ、そうなんだ、ハルカさん酔ってます?」

「ん~酔ってないといえば嘘になるけど、リナの雰囲気を掴めるくらいにはまともな思考してるよ。」

「あ、さっきはごめんね。なんか種族の違いを感じちゃって。もう全然ついていけなかったよ。」

「いいの。リナは男を気に入ったときと気に入らなかった時で反応が全然違うもんね。」

普段の北上リナはそんな感じなのか。だが今中身は山田猛(男)なので、男に対して全く興味がわかない。ハルカは言った。

「リナ、今日アタシが行きたいところ行ってもいい?」

「いいけど、リナは終電で帰りたいな」

「ん~終電か、全然時間ないかもしれんな。てかリナは高田馬場住んでるから歩いて帰れるじゃん。いつもそうしてるし」

そうか、高田馬場駅は歩いて帰れる距離だった。ハルカに言われて気づいた。

「じゃあ、適当なところで区切りつけて帰るね。明日は14時からバンド練習だから」

「了解。そんなに破天荒に遊ばないようにするね」

そう言ってハルカと私が歩いていると店の前で客引きしている店員に声をかけれられた。

「お姉さんたち、ダーツ興味ありませんか?」ハルカは答えた。

「え~どういう感じですか?中は盛り上がってますか?」

「ええ、そりゃもう。カッコイイ人めっちゃいますよ。例えば僕とかね。ああ、いやいや引かないでよ冗談ですって。お姉さんたちかわいいので無料でご案内できます。お酒飲み放題、ダーツ投げ放題!どうでしょ!」

「リナどうする行ってみよっか」

「うん、ハルカ決めて」

私は正直判断力が鈍っていた。バイトで疲れ切っているうえ、今日はいろんなことがありすぎてキャパオーバーである。

店員に行きますと伝えると店員は嬉しそうにエレベータの上ボタンを押した。

「ありがとうございます。エレベーターを8Fで降りてもらうと係員が入場手続きしますので」

そう言って私たちはエレベーターにのせられて道中なんかいも止まりながら8Fへたどり着いた。

入口には夥しい数の男たち。女性は2組だけ待っていた。

「お姉さんたちこんばんは!ロッカールームはこちらになります」

私たちはロッカーに荷物を置いた。

「あ、リナ待って。若干化粧よれてきてるからさっさと直しちゃうね。」

ハルカは自身の化粧ポーチで手早く私の顔のメイクを手直ししてくれた。もちろん、今日は私(山田猛)がメイクしたのだが、下手だとは言わずにメイクが時間が経ってヨレてきていると表現した。ハルカはこういうところに細やかな気遣いがある子だった。

「では入場のしるしにカードお渡ししますね。このカードを見せれば店内、飲み放題ダーツ投げ放題、スミッチやり放題になります。では楽しんできてください!いらっしゃいませ!」

店内に入ると一斉に男性の視線を感じた。どうやら男たちはハイエナのように入店した女性を見るようであるが、男性たちは驚いていた。ハルカ・リナの2人はルックスがモデル級だったので、が明らかに店内で異彩を放っていて、店内の男性ほとんどが二度見していた。

「まず、ドリンク取りにいこっか」

ハルカと私はドリンクの列に並んだ。ドリンクの列に並ぶ道中も数組の男性からジロジロ見られ、ドリンクに並んでいる最中も話しかけられた。

どれもつまらない会話内容で、あまりにしつこい相手はハルカが適当にあしらってくれた。しかし、私はもともとあちらの男性側の人間で軽くあしらわれている方の気持ちが痛いほどわかる。

すごく気の毒な気持ちにはなった。ドリンクを取ったあとすぐに店員に話しかけられた。

「お姉さんたちこれから男性のお客様2名ご案内してもよろしいでしょうか。」

「いいですよ。」

「ありがとうございます、こちらでかけて少しお待ちください」

そういうと店員は、冴えない黒髪の160cmくらいの男を2名つれてきた。井上と沢田と名乗っていた。前者は眼鏡をかけていて、jojoで4500円で売ってそうなセーターを着ていた。沢田は、黒いタートルネックにネックレスを付けていたが、どこか垢抜けきれていない雰囲気だった。

店員は仕切った。「はい、ではみなさんグラスをもって、かんぱーい!!」

「か、かんぱーい」4人はぎこちなく乾杯した。

井上と沢田は理系大学生で研究室も同じ友達同士だという。

男性側も名前を聞いてきた。ハルカとリナです。そう答えてどうも、となった。

男性2人ともに緊張した様子だった。井上は聞いた。

「今日はハルカさんとリナさんはどこかに遊びに行ってきたんですか?」

「いや、さっき会ったばかりでハルカが先に飲んでました。」

「いえーい、待ちきれなくってさ、先に飲んじゃってました」

私は単純に興味本位で聞いた。「2人はどんな研究しているの?」

ハルカは驚いた表情をしていた。なんだその質問は?と目玉を飛び出させていた。

男子大学生は意気揚々と語りだした。

井上「5G,ミリ波レーダー系のアンテナの研究をしています。」

沢田「いや、いってもわかんないでしょ。」

私は言った。「あれでしょ、高周波になると回折しにくくなるから実環境で実現しようとするとゲインを稼ぐのに苦労するやつでしょ?」

男子大学生達は驚きを隠しきれない様子だった。

「リナさんって理系大学生なんですか?」

「いえ、違います。昔に本で呼んだことがあるだけですよ」

ハルカも一番驚いた顔をしていた「アンタ、もしかして賢いキャラなの?ふだんアタシよりも馬鹿な言動しているくせに?」

私は苦笑いして、これ以上専門的な話をするのをやめた。変に勘繰られても行けない。私は話題をそらした。

「井上くんと沢田くんは2件目なの?今日は遊びたい気分だったの?」

「あ、いや実は彼女を探していまして。俺ら2人とも大学入っても全然モテなくて」

確かに2人とも新宿で戦うにはすこし貧弱な装備である気がする。新宿はもっとギラついている人が、一般的にはモテるとは思う。でも、そこも何か愛おしい気持ちになる。私は言った。

「あ~ごめんね、私たちは彼氏求めてきているわけじゃなくてただ遊びに来ただけだけどいい?」

「いや、もう全然うれしいです。むしろ話しかけられなくて店員さんに頼んじゃいました(汗)しかもリナさん、ハルカさん可愛くてびっくりしています」

そう、こういう性格の人。すごく親近感がわく。北上リナのカラダに入ってからというもののこういう人種に出会ってこなかったから、とても親しみやすかった。

「あ~ハルカかわいいし、勢い強いから普通は話しかけられないよね。私もそう。」

「誰が怖いって!?」ハルカはツッコミを入れた。

「誰も怖いとは言ってないよ(笑)」私は冗談交じりに言った。

沢田は言った。「よかったら、また4人でご飯とか行きませんか?ミンスタorレイン交換しませんか?」

「いいよ、またアニメの話も聞きたいし。」4人はQRコードで連絡先を交換した。ハルカはカメラでQRを読み取るふりをしてフォローせずに画面を閉じた。ハルカは言った。

「リナ、ちょっと一服しに行く?」

私はうなずいて喫煙所に向かった。喫煙所は割と狭く6人入るのが限界だった。ハルカは私に聞いきた

「リナ、なんか楽しそうじゃん。あの理系地味男と話が合うのはなんかウケる。そんな一面もあったんだね、男の趣味変わったの?あと連絡先はちゃんと交換してるじゃん。」

「いや、そういう訳じゃないけど。なんか同類って感じがするんだよね。」

「いいよ、アタシは趣味じゃないから頃合い見て離れるけど、話してきて大丈夫だよ。」

「あ、いやそこまでめっちゃ話したいわけじゃないから。ちなみにハルカは良いなって思う人いた?」

「いやー微妙。これからイケメンは来るかもしれへんな」

ハルカは適当にあいづちを打っていた。井上と沢田はこちらをチラチラ見ながら飲んでいた。おそらく、我々が離れたのかどうか気にしているのだろう。早く戻ってあげないと可哀そうかもしれない。そう頭の片隅で思っていた。そうしているうちに男2名が喫煙所に入ってきた。

「お姉さん、調子はどうですか?」

「まあまあ、ですかね。」

喫煙所でダルがらみが始まった。結構むかしもこういう形で話しかけることも頑張っていたが、その時のことを思い出していた。ただ、ハルカとリナが塩対応過ぎて、男は撃沈気味だった。どんまい。

タバコを吸い終わってドリンクを取り、席に着いた。その時、近くにいた女2名に話しかけられた。

「お姉さんたち、ビジュアル強いですね!」

「どうも。」みんなにビジュアル強いと言われるので悪い気はしない。私は中身が山田猛のため女の子と話すことができるとテンションがすごくあがった。女性客は続けた。

「さっき見てた時にすごくかっこいいなって思っていて、思わず話しかけちゃいました。人形さんみたい」

「お姉さんたちも可愛いですよ」

4人でしばらく話をした。1人はデパ地下でコスメショップ店員、もう1人は会社で事務をやっているとのこと。2人はとてもおしゃべりで色んなことを話ししてくれた。相席屋で出会ったやべー男の話、お互いの男癖の悪さ、下ネタやお金の話などなど…。ハルカが先導してくれたからなんとか場はもっていたけれど、私は女の子と話すのにすごく緊張していた。

「リナさん、ほんとびっくりするぐらい可愛いですね。コンカフェとかやっているんですか。」

「最近、ハルカと同じバイトを始めたんです。でも、人と話すのがすごく苦手ですっごい緊張しちゃうんです」

「確かに、めっちゃ目およいでますよ(笑)。なんか見た目すごいのにしゃべるときが挙動不審でかわいい。良かったら連絡先交換しませんか?お姉さんのインスタ見てみたい」

そういう流れで、イムスタを交換した。私は、驚いた。かつて山田猛という男として生きていた時は、緊張してうまく話せないと、相手も微妙な反応を示して、楽しめないやつだと判断してすぐに離れていったのに、容姿が良いだけでこんなに対応が違うものなのかと。リナは本当に人生イージーモードで過ごしてきたのだろう。

「ええ!リナさん音楽活動しているんですね。音楽聞いてみますね。」

「そうです、良かったら聞いてあげてください」

 私たちはタバコを吸い終わり、クラブに戻るとものすごい数の男たちが群がってきた。ハルカは適当な返事を繰り返していたが、改めて地獄絵図だなと思った。しばらくハルカの後ろについて適当な男と話しをしたが、結局私があまり楽しめていないことにハルカは気づいて、結局1時間も無いくらいで店を後にした。

「リナ、ごめんね~バイトで疲れているところ呼び出しちゃって。結構疲れてた?」

「いやいいのいいの。わちゃわちゃしてて混乱しただけだから。」

「リナ、倒れてから本当に正確変わったよね。さっきもあのモブみたいな真面目大学生の相手できるくらい話できてたよね。リナってもしかしたらめっちゃ頭良かったりする?」

「いやいやそんなんじゃないよ。たまたまリーチューブで見た動画と話しが一緒だっただけよ。」

「そう?まあ、今日は解散にしようか。リナはまだ本調子じゃないみたいだし。中身が別人とかわったんだよね?」

「それ、信じてくれるの?」

「半々かな。友達の言うことは信じるけど、一般常識で人間の中身が入れ替わるなんて信じてないかな。本当に大丈夫なの?疲れすぎかストレスが多すぎてない?」

ハルカは本当にいい友達だ。こんな大混乱な時も落ち着いて会話してくれるし敵意が全くないのが伝わってくる。我々は早めに解散して明日に備えることにした。私は高田馬場に戻ることにした。

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