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つよつよギャルの初バイト

翌朝、目覚ましが鳴って、午前9時に目覚めた。そこはピンク色を基調とした女の子の部屋だった。私はすぐにこれが北上リナの家であり、私の意識はまだ北上リナの中に入っていると分かった。これはこれでまずい。北上リナの日常をこなせるのだろうか?私はベットの上でスケジュールを確認した。今日は15:00からカフェバーのバイトが入っている。シフトは15:00〜22:00。大丈夫だろうか、こなせるだろうか。まずはメイクできるだろうか。いろんな不安が一気に押し寄せてきた。

 まずはメイクを始める。昨日ハルカに聞いたこととWhotubeを見て練習したことを思い出しながらやってみる。昨日は失敗だらけだったが、シャドウ以外は思いの外上手くいった。ハルカの技術には到底及ばないが何とかなるくらいのメイクになった。女の子は普段からこんなに自分の顔と向き合っているか、すごいな…

 次にバイト先のカフェバーのメニューと値段をネットで調べて覚える。ホールか、キッチンかわからないがとりあえずメニューと値段だけは頭に叩き込む。ダメだ全然覚えられない。そうこうしているうちに12:00を過ぎていた。バイト先は渋谷駅周辺で、14:00には家を出ないと間に合わない。リミットは2時間。

 緊張で私は全く食欲がなかった。こういう時に味方なのはオールインゼリー飲料である。私はメニュー表を見ながら最寄りコンビニでゼリーを買う。あと髪ゴム。バイト先でまとめろと言われるかもしれない。

 部屋に戻り、先に私は服を決めることにした。ネットをみると、オシャレなお店だったのでそれなりの服装をした方がいいだろう。ウォークインクローゼットをみると、パンツスタイルに合うカジュアルなニットがあったのでそれを着ていくことにした。そしてメモとボールペンを持って行く。

 時間はPM13:00だった。微妙に時間が余ってしまったので私は、ギターを手に取った。もしかすると明日もこの夢が終わらない可能性がある。明日はバンド練習に行かなければならない。自分のスマホに残っている曲を流してみた。オリジナル曲が1つと、あとはカバー曲が多い。オリジナル曲は歌詞は何一つ覚えてなくて初めて聞く曲のはずだが、カラダが覚えているのだろう、勝手にギターの手が動き出す。どれだけ練習すればこんなに勝手に手が動くほどになるのだろう。そして、その曲は失恋を歌った曲だが、ものすごく感情が溢れていていい曲だった。すごいな。ただし、意識と脳みそは山田猛であるため、歌詞は全く覚えていない。メモ帳にあった歌詞と動画を頼りになるべく覚える努力をする。そうしているうちにすぐ14:00になった。ここまでかと思って、カードキーとスニーカーを履いて家を出た。

 高田馬場駅から渋谷駅に向かう。日曜日なので電車の中も多くの人でにぎわっていた。しかし、街を歩くだけでやたら男性からの視線を感じる。やはり北上リナは歩くだけで目を引くくらいモデル級のかわいさなのだ。だがここまでジロジロみられると居心地は悪い。可愛すぎるのもかえって生きづらいのかもしれない。渋谷駅に着き、ハチ公前でチラシを配っているホストをかいくぐって、お店のあるセンター街へ向かう。気持ちとしては初バイトである。ものすごく緊張する。おそるおそる入口を開けた。

「いらっしゃいませ。ってあれ?リナちゃんじゃん。どした?なんで従業員口から入らないの?」

「あっ、そうだったねごめん。実は、2日前に頭打ってしまって直近の記憶が欠落しちゃったみたい。今日、バイト初日だと思って教えてくれませんか?」

「えっ、そうなん?大丈夫?本当に何も覚えてないの?えーとどうしよ、お客様もいるしとりあえずスタッフルーム案内するね。こっちこっち」

その女の子は同じバイトのようで、スタッフルームを案内してくれた。そして店長も連れてきてくれた。店長に今の状態のことを話しておいたほうが良いと思った。

「店長さん、北上リナと申します。2日前に頭を打ってしまって、直近の記憶がとんでしまって、今日は新人バイトとしてまた教えてほしいです。」

「リナちゃん大丈夫?いつも無口だけどこんなに丁寧しゃべれるんだ…頭打ったってめっちゃお酒飲んだんじゃないの?病院は診てもらったの?頭の怪我はあとあとくも膜下出血とか大変なことになるんだからね。病院でCTとか取ってもらったほうがいいよ。まあ、今日はそんなに混雑しないと思うし、青ちゃんにいろいろ聞いて、できることをやっていこうか。」

「ありがとうございます。そうさせてください。」

周りのバイトも怪訝そうな目で見ていたが、青ちゃんは心配そうにこちらを見ていた。

「青さん?更衣室案内してくれませんか?」

「青ちゃんでいいよ、なんかさん付け怖いから(笑)リナちゃんはもしかしてエプロン忘れてきた?」

「制服あるんですね。忘れてきました、ごめんなさい」

店長は言った。「いいよ、替えはいっぱいあるから。次に選択して返してくれたらいいよ。」

「ありがとうございます。いろいろとお手数おかけすると思います。ごめんなさい。」

「丁寧すぎてビビるんだけど。普段のリナちゃんの性格も忘れちゃったの?まあ、お店で働くならそんな感じで丁寧にしてくれたほうがいいけど、なんか調子狂うなあ」

私はエプロンを付けて、髪をまとめた。髪ゴムを持ってきてよかった。

「私たちは基本的にホールだからオーダーとって、料理を持っていくだけだよ」

「わかりました。オーダーはハンディですか?」

「いや、紙でとってるよ。座席の近くにバインダーがあるから紙に書くのと、柱にぶら下げておけばいいよ。」

私は新人バイトらしく、わからないことは青ちゃんに聞いて、青ちゃんの動きを真似しながら働いた。前世で飲食店のアルバイト経験はあったので、基本的な動きはこなすことができた。

お店はそこまで大きくなく、カウンター席が6席とテーブル席が4つだけだった。店長と青ちゃんと男性のバイト3人の合計6人だった。男性は基本的にキッチンで青ちゃんとリナがホールだった。メニューを覚えていなかったので、そこは焦りがあったが、なんとかこなしていく。お酒は、青ちゃんに場所を聞きながら割合を聞いて作った。

慣れてくると無我夢中で働いた。レジはできないので、青ちゃんにバトンタッチしながら少しずつ覚えていった。時間はあっという間に過ぎ、22:00になった。もう上がる時間である。

店長は言った。「リナちゃん、今日はなんだかキビキビ動いてくれてありがとう。愛想もいいし、お客さんからもすごく印象良かったと思うよ。普段からこれくらい一生懸命に働いてくれたら、店長うれしいよ。」

その言葉を聞いて普段はリナは無口だしあまり真面目に働いていないということが分かった。

「青ちゃん、いろいろ教えてくれてありがとうございます。」

「いえいえ、リナちゃんがこんなに素早く動けるなんて知らなかったよ。今日は一緒にまかない食べてくよね?」

「いいのでしょうか。お言葉に甘えて頂きます。」

「店長、今日はリナちゃんも食べてくって!2人分でお願いします!」

「おっけー超おいしいの作るからちょっと待っててね~」

待っている間に青ちゃんと少し話をした。

「リナちゃん、なんか雰囲気柔らかいし愛想よくなったね。前まで本当に無口だったのに。今日さ何人ものお客さんにあの子かわいいね、っていわれてたよ。」

「本当ですか、もったいなきお言葉ですね」

「いや時代劇の人の謙遜の仕方やwwえーリナちゃんってしゃべるとそんな感じなんだね。今までまともにコミュニケーション取ろうとしてくれなかったから。これからは今日みたいにしゃべってくれると嬉しいな。」

「あ、もちろんです。青ちゃんは色々教えてくれた命の恩人ですから。」

「大げさやね。」

店長がキッチンからお盆を2つ運んできた。「なんか楽しそうやね~店長も混ぜてほしいくらい。まだ閉め作業が終わってないけど(笑) こちら、本日余ったサーモンいくらローストビーフ丼になりまーす」

「えっ!!店長太っ腹ーありがとうございます!」

「青ちゃんもリナちゃんも頑張ってくれたから大サービスよ。ゆっくり食べてね」

こういう雰囲気、本当にありがたい。いいバイト先で働いているんだな。

「青ちゃんは、大学生なんですか?」

「そうだよー今年で22!大学4年生!もう内定もらったからよゆーなんだよね~リナちゃんは謎に包まれているけど、何しているの?ふつうにフリーターなの?」

「そうですね、フリーターみたいなものです。本当はバンドとダンスやってて、それで生活していきたいけどなかなかうまくいってないみたいです。」

「みたいです、って他人事みたいやね(笑) へーバンドやってるんだ。聞いてみたいよ。何か動画とかないの?」

「ありますよ、ほら。」昼間に見せた自分が歌っている動画をみせた。

「えっすごーい!!かっこよ。てかギターうまいね。イントロ弾いてるところとかエモ過ぎる」

「でも、2日前に頭打ったせいであんまり音楽活動のこともダンスのことも忘れていて。ちょっと活動やっていけるか自信なくしているんですよね。」

「いやいや、リナちゃんかわいいし、さっきの歌声すごかったよ。これは伸びるよ。絶対に売れる。今のうちにサインもらっておかなきゃ。」

「サインなんて決めてなかったです(笑) 今サイン書いたら普通に名前書くだけの署名になっちゃう。」

「それはそれでおもろいからアリじゃない?(笑)」

青ちゃんは若いが、仕事ができる子でちゃんとしていた。話がはずんだ。

「じゃあそろそろ行こうか、今日はありがと!またシフトよくかぶるだろうしよろしくね。あ、そだレイン交換しよ。今日仲良くなれてうれしい。この頭うったイベントはリナちゃんにとっては悲しい事件だけど、仲良くなれたきっかけにはなったね。(笑)」

「うん、交換しよ。また色々青ちゃんのお話聞きたい。」

「店長、ごちそうさまでした~お皿洗っておきました!お疲れ様です。」

「あいよ~リナちゃんもありがと!お疲れ様!」

「はい、今後もよろしくお願いします。」

「固いね~まるでリナちゃん会社員みたい。」

「あはは…」

ほんの2日前までしがないサラリーマンやってました。それも理系の。

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