ハルカ
私は慌てて、自分のスマホを見るフリをした。何も見る目的はないが。ハルカは言った
「あがったよーん、あれ、まだメイク落としてないの?いつも勝手にコットン使ってるくせに。さては好きピから連絡来たな!」
私はハルカに自分のことを打ち明けるかどうか迷ったが、半分本当で半分嘘をつくことにした。
「ハルカ、ごめんね。私、昨日倒れてからしばらくの事覚えてないの。なんか頭うったみたい。視力も若干落ちてるみたい。いろいろ私のやってた事、教えてくれる?」視力のことは嘘だが。
「ええ、ガチぃ?飲み過ぎじゃなくて、普通に頭うったん?大丈夫?今日は昼過ぎまでウチでゆっくりしたら?」
「ありがと。そうさせて。ちょっとシャワーかりるね。」
「ほいほい」
私は、ハルカ家の脱衣所に向かった。さすが女の子。化粧品とスキンケアグッズが並んでいた。そして、これからリナリナの裸体を見ることになる。いきなりビックイベントだ。私は着ていた服をなんとか壊さないように丁寧に脱ぎ進めていった。下着になったときに鏡を見たが、随分いいカラダをしている。細身だが、強調される部分はしっかり出ていて、足の出る服がとても似合いそうだった。お腹の何か所かにキスマが付いているのには目をつぶろう。胸はD~Eカップではないか?彼女いなかったからわからないけど。ブラを外そうとすると、ホックが2個あり、かなりきつくしまっていたので外すのに苦戦した。パンツはTバックでほぼ紐みたいな面積だった。全部脱ぐと、前身はきれいに脱毛され、残す部分はきれいに整えられていた。まるで人形のような造形物のような体をみて、私はちょっとこの世の物とは思えず、得体の知れない恐怖を感じた。なるべく傷つけないように壊さないようにしなければ。そして、お風呂に入る直前に癖でメガネを外そうとしたら、メガネが無かった。どうやら今はコンタクトも付いていない。裸眼で目が良いのだろう。私はすごくこのカラダが羨ましくなった。
お風呂では、ハルカが言った通りメイク落としを最初にするよう心がけた。髪を洗う時は、髪が長くて非常にやりづらかった。男はよく前かがみになるのだが、直立の状態でそうではなくて両手で髪をなでるように洗うとやりやすくなることに途中で気が付いた。興味本位で、乳首のあたりを石鹸で手を使って滑らせた。かなり気持ちがいい。敏感なカラダだなと思った。次に、下のほうも洗ったが、やはりあの部分はとても気持ちがいい。少し触っただけで感じるし、なんならちょっと痛い。他人の家でやることではないと思うし、ハルカに申し訳ないので、最低限に自分のカラダチェックだけにしておいた。血のようなものは見えなかったので、生理は来ていないらしい。
お風呂をあがって、体をふき、そのあたりに置いてあった化粧水と乳液を叩き込んだ。いくら夢とはいえ、このあたりのルーチンは男の体だったときからやっていたので、習慣的だった。ハルカからもらったジャージを着るのだが、パンツは、あのTバックをはくとして、ブラはどうしよう。つけるのが難しいし、部屋着の状態でブラをしっかりつけるのはおかしいのか?あと、相当苦しい。私は少し悩んでブラはつけないことにした。そして、ホワイトアッシュの髪を乾かした。髪は長いので、ちょっとドライヤーを使っただけで、乾かすのに相当時間がかかると判断できた。よってドライヤーはものの10秒ちょっとであきらめ、バスタオルを肩にかけてでることにした。
私がシャワーから出ると、ハルカは、スマホをいじっていた。
「お昼リューバーにする?リナはいっつもリューバー使いたいとか言い出すよね。リューバー高いのに。まあ、今日はリナあんまり調子よくなさそうだし、リューバーにするか。何が食べたい?昨日めっちゃ飲んだけどあんまり食べてなかったから超おなかすてるんだよね~ハンバーガーとかいこうかな」
リューバーとは、飲食店やコンビニメニューの宅配サービスのことである。宅配である分、通常料金よりもかなり上乗せされているが、それをリナはよく使うという時点で、リナはかなりお金を持っているんだなと思った。
「ハンバーガーいいね、これにしよ〜」
「えっ、いつも甘ったるいパンケーキとか食べるくせに。しかも超チーズ入ってるやつやん笑 倒れてから味覚も変わったの?」
「そう?頭打ってから生まれ変わったかもしれん」
「あーたは素行が良くなるといいですね〜ほなポチるよ」
リューバーを待っている間、ハルカに聞いてみた。
「ハルカ、昨日は私とバイトする以外は何してたの?」
「あ~普通に専門学校行って、ダンスちょっとやって夜はバイトって感じだったよ。」
「ハルカってなんの専門やってるんだっけ。」
「ああ、言ってなかったっけ。美容系の専門学校だよ。メイクとか学んで、将来は芸能活動やタレントさんのメイクをする仕事に就くの。本当は専門も中退するつもりだったけど、さすがにリナとユニット組んでもダンスだけでは飯は食っていけないよ。ほかにもダンススクールのバイトで先生やったりしてる。専門の学費払うの大変なんだから」
「ちなみに、私ってダンス以外にも音楽やってる?」
「リナは多才だからね~最初は私とダンスで上を目指したいねって話したけど、お互いにあきらめがついてきて、ダンスは趣味というかサブで活動やっている感じのスタンスにしたいんだよね?で、音楽活動に集中したいみたいな感じ?2カ月前そんな話したけど、どうなん?またやりたくなったの?」
「いや、そうだったね。私も音楽に集中したいんだった。ごめんね。」
「いいよ、全然!ゆるくダンスは続けていこう!やっぱり趣味みたいな距離感でダンスやったほうが楽しかったよね、うちらは。」
「私、結構忙しい女なの?ダンスも音楽もバイトもやっているの?」
「そうそう、なんでリナが自分のこと聞いてるのかわからないけど、そんな感じ。あんたミステリアスであんまり顔にでないけど、結構忙しいし、苦労しているよね?活動なんてお金かかるし。最近はお金稼ぐためにどんなことやっているか知らないけど、まちがいなく男たぶらかして金もらってるよね?だってそのバックだってアクセサリーだって高いやつじゃん。あんたの生活から見てそんなお金どこから出てくるんだよ、って思ってたけどそういうことなんでしょ?」
「あ~ま~そんな感じかも。」
「ほら、すぐそうやってはぐらかす。ほんと気を付けなよ。現代の東京は怖い所なんだから。
んで、昨日は何があったの?明らかに様子おかしいよね?」
やはり、ハルカをだますことはできないようだ。ここは本当のことをベースに嘘を混ぜて答えておこう。
「実は、昨日倒れたのが原因っぽくてしばらくの間の記憶がないんだよね。自分が何に一生懸命だったのかも、バンド活動やハルカとのダンスユニットのこともぼんやりとしか覚えてないの。ちょっと疲れちゃったみたい。ゆっくり思い出していってもいい?」
「リナ、そんなにストレス溜めてたの?そうなる前に早く言ってよ~いつもポーカーフェイスで何考えているか、わかんないんだから。なんでも相談して。バンド活動のことはアタシは全然わかんないけど(笑)。あと、迷惑だからなんて思わなくていいんだから。お互い地元一緒だし、助け合っていこうよ」
ハルカはとても優しいし、語気や勢いは強いが話す内容はとても安心感のあるものだった。ハルカは信用に足る人物だし、リナと同世代とは思えないほど達観した雰囲気を出していた。そうしているうちにまもなくリューバーが届いた。