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終末症候群  作者: 伊阪証
3/5

未来決定

マキシムは機関銃の小型化を未来予知の設計図から推測する。

「対鎧なら弾丸の形を変えたいが・・・サイズ次第では圧力で内部がイカれるぞ?」

例えば、6.8mm弾丸は内部の圧力が戦車の主砲に匹敵する・・・もっと言うならM1エイブラムスの主砲の1インチ辺りの圧力と同じになる。・・・銃も大砲も長さで結構威力は変わる。倍率が同じ・・・程度に思ってくれれば良い。

「・・・これまた面白い発見だ、ブローニングにも渡そう。」

「ライバルじゃねーの?」

「ライバルだからこそだ。軍事で対抗なんかしていたら世界の平和を担った時に悪名を刻むぞ。」

「へぇー。」

「新武器の秘匿生産ライセンス、何百万出せる?」

「情報提供の値引きは?」

「おっと、父親が亡くなったから出来るのは忌引だけだ。」

「ブローニングだろ、お前は違う。」

「・・・良く見えていらっしゃる。」

・・・史実では、サプレッサーはもう少し後に出来るのだが、鼓膜が修復不能な不能な程に損傷する事を伝え、父の鼓膜は助かった。

恩はある、情報も助かる。・・・自分の人生にはそれだけ価値があったのだろう。

「超能力者の中で、一個一個の動きを正確に模倣出来る人間が欲しい。それさえいたら二億円分は免除する。」

・・・厚かましく、要求してみせた。

図々しく、そして、野望的に。



サンドラは資料室の中心に立つ、目録書を透視、分厚い本に無駄な力を使わず直接漁り、一度に五十冊を同時比較、そして仮定した。

「・・・確かに存在しない。」

それはきっと、あってはならない力だ。

『・・・どうだった?』

「ジニア兄・・・それなんだけどさ、未来予知の亜種だ、前言ってた未来の決定能力・・・それを封じた結果ああなったんじゃないか、っていうのが私の見解。」

『・・・もし、それだったら長官命令で射殺されるだろうな。』

「嫌でしょ?」

『仕方ないさ、超能力に倫理を求めて世界を破滅させるよりは。』

「・・・駄目だよ、集団を基盤にした社会じゃなくて、超能力を基盤にした個人の世。そこで倫理を捨てたら皆真似してそれこそ社会が壊滅する。」

『・・・そうだったな、俺とお前は実力も能力も全然違う。』

「だから、足りない所は全部補うし、足りない所には入れてもらうから。・・・自分の一番やりたい事をしてね。」

『ああ。じゃあ今から遊郭に・・・。』

「それはダメ。」

『・・・ういっす。』

「千里眼、読心術系の対策として『気になる相手を発情させる力があって割と判定が緩い』って誤魔化される様にしておくね。」

『(あれこれ俺自身に対しても誤魔化そうと・・・。)』

「えい。」

『・・・なんだっけか。』

「お仕事。」

・・・と、結局彼は赴くのだが、超能力の除去に事例がない。大体殺して処分か処刑という点では魔女狩りが一番研究されている領域だ。

・・・それで調べたのだが、魔女には一部組織化した団体がある。で、それが流れて来ている以上魔女の組織に抵触する可能性が高い。

「・・・とまぁ、提供出来るのはこれだけだ。」

「ありがと。」

「疲れないのか?サンちゃん・・・。」

「物質の強制変換で処理してる。走っても疲れないし乳酸も蓄積しない。」

「そ、そうか。」

「おじさん、自己管理も出来ないのに超能力が優れる訳ないよ。」

「(ジニアと同じ年齢なんだけどな俺・・・。)」

・・・出来るだけ遠ざける。連邦捜査局は所詮国側の機関、場合によっては分断される。超能力の未来次第で即座に射殺命令へ切り替わる。未来予知も正確かどうかは分からないし、種類も精度も多種多様だ。

「・・・確実に言えるのは、今回と同じ方法で人間の思考を連結してコンピューターなるものの様に出来る可能性が高い。」

・・・そして、どうやらそれが既存の機械式・量子式を凌駕しうるものであるとも。

「・・・ああ、嫌だ。」

自分は未来予知だけが出来ない。他の超能力・・・今まで存在しないであろうものまで見つけ出したが・・・未来予知だけは実現しなかった。出来るは出来るが、山勘程度・・・悪寒とか、不安とか、それを超能力とは言えないし、精度も高くない。

他の能力の優秀さの方が余程信用出来る。

「・・・秘匿要項として隠蔽する準備をする。」

『秘匿要項?書類仕事は苦手なんだ。』

「毎回手直ししてるこっちの気持ちにもなってよね。」

『それは悪いとは思っているがお前がいるならなんとかなるって安心しちまうんだ。』

サンドラからは親と同じ臭いがする。安心感が絶対的で、気分が良い。

『今回の問題は組織的なものだろう。簡単に片付くものじゃない。顧客リスト、家系図から恐らく私に接触してくる者がいる筈だ。』

「・・・その後は?」

『姉の方に聞き出し、もし姉が敵なら最初に一人、その後殺しを追加で依頼するだろう。逆に姉が敵じゃないなら向こうから接触される。』

「いつもと同じ手で大丈夫?」

『・・・いつもだったら諜報や絵の出力があるがそれも無いからな。手探りで調べないとだ。』

逆に証拠も残しにくく、仮に心理を晒した所で明かせた箇所は少なく仕掛けてくる可能性は高い。

『サンドラにはまだ見せてなかったな、昔の・・・あの時やった助け方。』

葉巻を川に投げ、銃の弾薬を込める。識字率は高いが知識が足りない。だから人の前で見せても驚かない。

『基本は先手だ、戦略を決定させる前に動く。』

「・・・ふんふん。」

『新たな企業が勃興しながら職業が次々変わる影響で特定は難しい・・・が、業種に関してはなんとなく絞れた。』

「凄い!天才!」

『・・・で、洗い出す為に金払って理由を適当に解雇させた。アイツを呼べるのは結構金がないと厳しいとよ。』

「財布が合法的に擦られる所だったね。」

値段はほぼ非正規だが。

『他にも色々やったが・・・取り敢えず誘いに関しては万全だ。・・・向こうの組織化が完成次第殴り込む。』

「それどの程度掛かるの?」

『最低一ヶ月は待つ。』

「・・・ジニア兄・・・。」

『慌てるな、ゆっくりだ。急いては事を仕損じる。確実に打てる手を出来るだけ早く、それが一番だ。』

「・・・。」

『どうしたサンドラ?』

「なんでもないよ。」

『・・・おっと、せっかちが早速殺し屋を嗾けてきた、多分下請けの下請けだから探れないかもな。』

「一回分析挟むから一人仕留めて。」

『分かった。』

・・・取り敢えず、尖兵を折って彼女の治療だ。それはサンドラ側に一任している。封印みたいに直接手が入れられていなければ大した問題ではない。


・・・自分の力は超能力に達していない。サンドラの外付け超能力はあるが、一か月前までは何も無かった。

・・・出来るだけ鍛え、出来るだけ学び、出来るだけ考える。その上で、相手を出し抜けるか。

人間は基本ステータス勝負だが、武器を持ち込むと一変し、武器はどれにせよオーバースペックで、人体を相手取った場合大抵あっさり死ぬ。人の体力を十とすれば、攻撃力が大抵は十を上回る。・・・その為、攻撃のタイミングをどう挟むかでその差を容易に覆せる。

今回の下っ端速攻戦で戦い、それ以降の相手の正体が明かされるまで・・・つまり雇い主が出てくるまでは速攻戦を繰り返し長期戦にする。

・・・橋に立てば、囲い込んで逃がさない様にするだろう。先ずは後方、下っ端が超能力を有しているか・・・それを見ておく必要がある。橋なら壊されるだろうし、一度登るのもアリだ。

燃やす、壊す、封じる、滑る、落ちる・・・人工物程それが成功し易い。

普段であれば人の命が掛かっているのでやらない手だが、一度楽をしてみたかった。

「橋は不明、だが、敵は分かった。」

スケールは不明だが銃弾は撃ち込める。出来るだけ早く言語化し、読心術を半強制的に無効化する。物質構成を読み取っても無意識の箇所が多い分、意識的な箇所は言語にしかない。その為言語が分からなければ混乱を狙える。

仮に強敵が出るとすれば、情報収集で観測されている。手札は出来るだけ切らない方針で行く。

この国には飛脚というものがいる、走るスタミナで勝負するのは駄目だ。建物のスケールが大きい・・・パルクールも切れない。橋のサイズのせいで相当登らなければ先の作戦は仕掛けれない。

割と不味い・・・それも事実だ。

出来るだけ勢力均衡に見せ掛ける、必要な必要な事だ。

その手元の銃は、凡ゆる状況を一変させる箇所に持ち込んでこそだ。

日本語に切り替えて伝える。

「・・・想定外というものを教えてやろう。」

一度戻る、近くに彼女は置いてある。

「サンドラ、準備は出来たか?」

『・・・うん、出来るよ。』

敵の誰も狙わず、彼女を撃ちに行く。

そうすれば問答無用で敵を炙り出せる。

流石に高威力を直には撃てない、壁越しに撃つ。

「壁越しにでも分かってしまう・・・だから問答無用で来るしかない。それも正面から、大規模な破壊は出来ず。」

彼女は人質だ。巻き込む作戦しか出来ない。

そこからは来たヤツを銃で撃つだけ、楽な作業だった。

「・・・人質救出の経験豊富なこっちに仕掛けるのが間違ってんだよ、先ず。」

人質を負傷させていい・・・となったらこれが一番だ。

「サンドラ、治療はどうだった?」

『金属の溶解による治療、問題なし。』

「多少火傷痕があるが問題は無いか?」

『悪影響ありそうだから交換しとく。』

「・・・取り除けたか、治癒と交換は終了、やっぱり問題は神経の損傷だったか。」

『物質変換で損傷は完全に直せた。』

・・・しかし、同時に神経に阻害機能を仕組み、ある程度超能力を軽減しておいた。流石にこの超能力を手放しにする訳にはいかなかったからだ。


「未来予知・・・正確には未来決定、電磁波による人間の掌握か。」

・・・なまじシンプルなので再現性が高い、封じる手段は作っておきたいし、隠蔽能力も高いので暴き方も確認したい。

「・・・外界出力方式による実質的未来予知。」

それである事も問題だった。既存の未来予知を超える、観測や追跡に並ぶスタンダードどころかメインにすらなり得る。

外界出力の基本は熱と電気、四肢の操作である。それを発展させたのがこの未来決定、他に人心掌握や人心解読もある。

・・・それは同時に、感覚系が頂点という時代が崩れ去るという証明でもある。



旧江戸幕府の中に名を挙げた二人、鞍井友希はどうやら超能力者を探し続けていた。

「『懲罰棒』と『座敷狼』か。」

未来決定の能力はアクが強い。だが、特化していく事でそれはもう、手が付けられない力になる。

「彼等は超能力で罪人を合法的に殺す幕府の『大目付』って役職にいるんだけど・・・今は逆に立場が弱くなっているから頻繁に狙われるのよね。」

・・・しかし、未来決定の為に本人達の視力や聴力は封じられている。ジニアが確認した女と同じらしい。

連邦捜査局超能力課において、超能力者の判断基準は幾つかある。

だが、一つ対のものがあり、判断基準にある『出来るだけ長く続いた古い血統』と切捨基準に『王朝交代により交雑した血統』が存在する。

時代の経過と共に血縁の交雑は超能力を薄れさせる。その中で文明の少ない時代を勝ち抜いた血縁に信頼はあるが、逆に文明の時代を勝ち抜いた、その時代の弱い超能力を淘汰出来る純粋な実力者も多い。

その結果、残ったのは超能力から程遠い純血・・・その結果、官僚制という外から血を取り入れる方法を採った。嘗ての王族から離れ、嘗ての王族の様になる・・・そのサイクルが背景にある。

「・・・遺伝する突然変異が超能力になくてはならない。」

これにおいて最も参考になるのは競馬である。馬産と比較し、人体でそれを実行する必要がある。

・・・超能力者の量産化、そしてそれを可能とする国の確認。・・・貴族と、没落する前に成金と婚約したほぼ貴族はその血を取り入れるだろう。純粋な強さが今迄は求められたが、未来予知が解明された以上、神官以外のアプローチが必要になる。神官以外ならば、神を冒涜する事はない。

現地協力者鞍井は、連邦捜査局を利用して幕府を消すつもりらしい。

出来るだけサンドラに目を付けられない様に・・・確実に進める。

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