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終末症候群  作者: 伊阪証
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花魁回覧

私は仕事が超能力者の確保とその採用又は殺害が仕事となっている。基本的に本国には留まらないで仕事をする。特にアジア圏、欧州圏で仕事は多い。頭数・経済規模が大きいアジアと欧州、特にスペインは何かと多い。話によるとRh-の血が理由らしい。

そろそろ返事が来る、念話で統率を採るあの女が口忙しく話してくるだろう。

「カウンターフェイツ、カウンターフェイツ、聞こえるか。」

『感度良好、そろそろあの子も実践登用出来る。』

「これからは身振り手振りでなくても良いのか。」

『コードネームはビブリオケーテ、絶対記憶、しかも外部から消せる便利な子。翻訳で外交問題を起こして逮捕されたけどね。』

私が苦手とする超能力はあまりない、戦いに持ち込まない事で即座に仕留める。

考え続ける事で擬似的な予知、ただしギャンブルは何度でも外れる。カードカウンティングを脳内で行ってくる奴は強敵だった。ポーカーよりもジョーカー、ジョーカーにもチャカだ。

感覚を研ぎ澄ませる事で透視が出来る。ただし一歩も動けないし、考えると行動にボロが出る。少なくとも即座に判断は出来ない。


未来予知に見せかけた厄介な超能力がある。

考えをそのまま未来に投影する、自分の考えを未来自身が叶える・・・というものだ。これを実行する一人と敵対した事があるが、探偵会社は消滅、文字通り書類上からも全て消えている。しかも国ごと禁忌になって数代の間で失われた。現実的に有り得ない現象が起きている。

他にもある、未来予知の逆、過去に干渉するものだ。未来を過去から操る・・・もう超能力どころか制御の出来ない存在・・・これに関しては観測が容易で、また、確保も容易だ。

私の目的は超能力者の保護、安定化である。その為極端な幸運と極端な不運があれば回収し、新たな超能力として研究し役立てる。それが偶然であっても保護を行う。

・・・全ては悪用されない為と、信念を継ぐ為だ。

「・・・俺もそろそろ四十か。」

母親はまだ生きているが、そろそろ死期が近い。任務の間に休みを設け、交代期間に会えるだろう。

自分は、超能力者を母親の近くに集め、彼女と同じ様な存在・立場の友人として交流させ、幸せに返してやれただろうか。

「・・・分かりかねる。」

「分かりかねる、か?」

船の下の方から声がした。見たくないが、釣竿でも持っておこう。

「アイビー、交通費の節約をすると痛い目を見るぞ。」

「仕方ないだろ、私だけ出てねぇんだから。」

コードネーム:アイビー、追跡は交代で行う事で欠点を補う・・・という方法があるが、コレだけは例外である。

第一に身体が磁石の性質を持っていて、金属が張り付く。

第二に相手の死角に入る・・・この技術に関してはかなり特殊で、相手が見えない範囲を理解しギリギリの間合いに立つ。正直再現出来ないが、緻密な計算があるらしい。

最初の出会いは軍人上がりで警官やってた時にコイツを逮捕した事だから信用していない。

逮捕された理由は露出狂がいるという話を聞いて探した所、男だろうが女だろうが被害に巻き込み汚したとの事で逮捕後に確認した所、十三歳である事が発覚し仕方なーく釈放された。反出生主義者で自らグッバイタマタマをする狂人だ。頭がおかしい事に変わりはないから落とした意味を感じない。

自分が買われたのもこの時だった。超能力を見破って確保した。死角だけを覚えてコートの下から撃った、単純だが有効だ。

「どうしたサンドラ・・・いや、通信が違和感あるな。」

『出来る様にした、模倣じゃ駄目だろ?』

「・・・普通出来ないんだがな。」

『ジニア兄の為に頑張ったのに、これだぜ?』

「万能だからな、存在する限りの超能力を全て掌握出来る・・・普通は出来ねぇよ。」

『・・・話し相手になる位しか出来ないけどな。』

「自分の叩き上げ程信用出来るものはいない、契約も業務提携、移籍はしていないからな。」

『で、今回行くのは日本って話だが、色々調べた所魔女狩りが無かったらしい。』

「魔女狩り・・・か。」

『魔女狩りでは超能力者の抹殺、超能力者の組織化、それと逃亡を起こし、欧州では超能力者がもういない。』

「だからアジアか?」

『中東は宗教と資源の関係で戦火に巻き込まれるが、ここなら問題は無い。しかも、後20年程度でロシアに戦争で勝つらしい。超能力者抜きでも再現性がある。特に時間を設定して戦うのは上手かった。』

「落ち着け、同期で動悸が加速する。」

『・・・悪い・・・。』

「悪いとは思ってないさ。」

『一応これを使って夜間の防御は出来る。夜這い対策は気にするな。』

「俺が心配する必要は無いだろ・・・。」

『いや、物盗まれるだろ。』

「・・・そうだったな、チビだと侮っていたバカが痛い目見てたな。」

『薩摩藩はテキサスと同じ、イカレ共だ。気を付けろ。』

「バックアップは任せた。」

『頑張れ。』

超能力は使えば溺れる、科学の限界に挑む以上危険極まりない。


超能力の中で最も開発が進んでいるものは知覚、未来予知を中心に研究されているが・・・軍事的にはそうではない。そう、ある人物が弾道計算機を開発し、未来予知の情勢が大きく変わった。IQ300の悪魔、未来予知で自らの子孫の行った事を確認し、彼にもっと大偉業をさせるべく開発を続ける人物・・・仮称パスカドール。

「・・・弾道計算に未来予知は不要になった。」

「元々そうだったろ。」

「未来予知者は後悔するぞとか言っているが・・・高給取りな分邪魔なのだ。」

が、実際には後悔する事になる。日露戦争は当時最大規模の戦争だったが、WW1で一気に引き上げられた。一年以上掛けて消費する砲弾が四日で使われる事もあった。・・・その企業と国家の一悶着はともかく、未来予知は分散した。組織化が進み、工業と組んだ。

その超能力とは、様々な防御である。身体の変質や硬質化、地形・物体変形、凝固等がある。

一番注目されているのは・・・バリア、これらの過程を必要とせず、遮断する障壁を展開する技術。方向や形状も調整可能で、電磁波説や空気説があるがどれもイマイチ特定されていない。

逆に解明されているのは身体の変質、石灰化が代表だ。母胎を守る為に胎児が死んでも石灰化し守った・・・という話があったが、残念ながら科学の知識がないせいでエイリアンの子供であると報道され、忌み嫌われた赤子の遺体の話もあった。これを体外で行おうとした結果が石灰化による防御である。

「で?そのバリアをどうするんだ?」

「バリアで互いを押し退けるだけで最速の移動手段になる。」

「・・・ああ、なんとなく分かった。」

「結婚したり再婚したりを繰り返す事で加速していくのさ。」

「未婚には関係ない話だ。」

「仕事上結婚しても浮気されるだろうしな。」

「で?どうすんだこの技術。」

「これを使えば超高速でヒトを射出して未来予知を出し抜く。」

「・・・観測型のスペックがそこそこないと足切り出来るのか。」

「対未来予知の人材は少ない、出来るだけ小隊単位で行動しろってさ。」

「温情だな。」

「移動手段あるから毎日働けってさ。」

「無情だな。」

という訳で365日働く事になった。

先ずは現地の通貨を手に入れ寝泊まり先を確保する。

そのつもりだった。

そのつもりだった。

「・・・凄いな、これが堺か。」

「天下の台所だぞ・・・うん。」

「どうやって使うんだあの扉。」

「隙間から通るんだろ。」

大きさのスケールが何もかも違う、船も人もおかしくない、だが、建物も土地も違う、最低数十倍のサイズになっている。

『超能力の研究をし過ぎておかしくなった、あると分かるなり仕事を捨てて遊び出した。』

「遊んだ結果がこれか?」

『念の為軽度のバリアを張っとく、体表に軽く。刃物や銃弾は問題無いけど馬に蹴飛ばされたりしたら心肺蘇生するからね。』

「今住める場所を探している。出来れば人間用のを。」

『巨人を製造した人はいるらしいけど滅多に見ないらしいよ。』

「いるのか。」

『・・・阻害が酷い、いつでも呼んでね、お兄。』

「ああ。」

・・・そろそろ三十代だし、あの子はまだ十三だ。出会ってから八年経ったが、敬意を払ってくれるのは嬉しい。頭が上がらないから尚更そうだ。


で、歩く事二時間。疲れた。バリアの二人組は派遣までまだ時間が掛かる、この手の潜入が得意な私が先に行き、調べてから派遣される。

「正直、粗方問題無い。上陸準備は整えて問題無いだろう。」

と、先程アイビーは遊郭に誘拐されSな花魁に色々されている。奴は住処を見つけたみたいだが、自分は同じ場所を避けたいのと、心臓に謎の負担が掛かったので別の場所を探す。

「・・・別の場所ねぇ。」

「現地民に紹介してもらえてありがたいよ。」

「英語は齧っただけだけど、置いてきぼりにはさせない。」

「そりゃありがてぇ。にしても矢鱈注目されるな。」

「おれはそこそこ知名度があるからな。」

「そうなのか。」

「アンタが異邦のお人だからなのもありそうだな。」








「俺は、超能力者どころか能力もない、五感も無い。」

「・・・?何故会話が成立する?」

「他人の力を借りているだけだ、俺の姉・・・実の姉、義理の姉とか、家族が助けてくれて、他人に心を晒して話している。」

「凄い、そして素晴らしいな。」

「凄いだろ?優しくて・・・甘いんだ。」

「サンドラ、実際どうだ?」

『ホントだね、全く見えないし聞こえない。』

「症候群か?」

『それはない、でも、強いて言うなら誰かが超能力を起こす為にした可能性はある。記憶や内臓には問題無いかな。五感が徹底的にやられてるだけっぽい。』

「ち〇こってこんな色してんの!?」

「何を刷り込んだサンドラ。」

『色覚が残ってるかどうか調べた、治療法を確立出来るかもしれない。』

「もう少し他の奴にしてやってくれ・・・。」

『・・・反応が分かり易いと疲れないんだ。』

「なんかごめんよ。」

『あと思考と記憶は本人のものだった、人気を集めているのは外見もあるけど超能力でなんとかしてあげなきゃの精神で皆心を寄せてるみたい。』

「出し抜いたらどうなる?」

『狙われるか殺される。』

「・・・有用になるかどうかは分からないが、戦闘方針が通用するかは確認したい。」

『政府機関が機能していないから幾らでも出来るよ。』

「安全第一で行く。」

『心肺蘇生・表層防御に絞る。通信が切れるけど呼び出したかったらいつでもいいよ。』

「分かった。」

転用法・・・それは場合によっては全てを失うが、意図せず起きる場合や、先天的なものもある。

彼女の思考はフラットでかなり安定しているし、花魁も出来る程度に人を動かせる。

超能力を開花させれば素晴らしい力になるだろうし、開花出来ずとも重要拠点に出来る求心力がある。

さて、自分の本領発揮と行こうか。

戦闘だけが仕事ではない、この超能力作り出した謎を解き始めよう。

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