67 精神攻撃
忍者たちは一斉にユラに攻撃を仕掛けた。
黒炎の霊刃が闇を裂き、涼音の力強い一撃がユラの体に深々と突き刺さったかに見えた。
陽の忍び刀も、鋼の忍び刀も、玲美の鋭い一閃も、雷斗の鎖鎌も、すべてが的確にユラを捕らえ、次々と彼女にダメージを与えているかに思えた。
ユラはかすかな呻きを漏らし、その姿が揺らぎ、彼女の血がゆっくりと流れ出るかのように見えた。
その瞬間、彼らの視界が不自然に歪み始め、空間全体がまるで蜃気楼のように揺らめき出した。
ユラの体から流れるはずの血が、次第に霧となって消えていき、彼女の姿は再び冷たい微笑みを浮かべて立っていた。
涼音は黒炎の霊刃を握りしめながらも、足が重く感じられた。
陽や鋼、玲美、雷斗もそれぞれ自分の武器を手に、気が付けば地面に膝をついていた。彼らの周囲が闇で包まれ、ユラの冷たい視線が、彼らを突き刺すかのように見つめている。忍者たちはその圧力に抗うことができず、意識の奥底へと引きずり込まれていく。
涼音の目の前に、幼少期の情景が浮かび上がった。
家族と過ごした短い時間、そして突然訪れた孤独の日々。周囲の者から吸血鬼の血筋を恐れられ、自分でも抑えられない力を持て余していた頃の自分が現れる。孤独と疎外感に苛まれ、道を見失っていたあの時期。目の前で、幼い自分が助けを求めるようにこちらを見上げていた。
「なぜ…こんなに辛い思いをするのだろう…」
その囁きが涼音の耳に刺さる。過去の記憶がまるで現実のように迫り、心が徐々に押しつぶされていく感覚に陥った。霊刃を握る手が震え、自分の存在が無力に思える。
一方、陽の目の前には、かつて共に戦場に立っていた仲間たちの姿が浮かび上がっていた。無数の戦闘の中で失ってきた仲間たち、護れなかった者たちの顔が次々と現れる。彼らは口を開くことなく、ただ哀しげに陽を見つめている。陽は手の中の忍び刀を握りしめ、過去の過ちを噛み締めるように顔をゆがめた。
「…俺のせいで、皆が…」
その言葉が心の奥から湧き上がる。護るべき者を護れなかった無力感が全身を蝕み、今にも戦う意思が霧散してしまいそうだった。
鋼もまた、自分の内面にある痛みと向き合っていた。目の前に現れたのは、かつて守ることができなかった友人たち、家族。彼が戦場に出たことで巻き込まれた者たちの顔が、次々と浮かび上がる。鋼は自分の手元の忍び刀を見つめ、その刀が象徴する自身の過去の決断が重くのしかかってきた。
「…もっと強ければ…」
彼は静かに呟きながら、刀の重みに圧倒される。彼の心には、守れなかった者たちへの悔いが広がり、何もかもが無意味に思えてくる。
玲美と雷斗もまた、過去の幻影に囚われていた。玲美の目の前に現れたのは、幼少期に失った家族の姿だった。忍者としての道を歩むことで、多くのものを犠牲にしてきた自分自身。その代償として失った家族との絆が、今ここに幻影として甦る。玲美は涙をこらえ、忍び刀を握りしめるが、心の奥底にある喪失感が彼女の戦意を削いでいく。
雷斗は自分の中にある恐怖や不安を目の当たりにしていた。過去に追い求めていた理想、そしてそれが崩れ去った時の虚無感が、今ここで彼に圧し掛かってきた。鎖鎌を握りしめる手が震え、視界がぼやけていく中で、自分の存在意義を失ってしまいそうな恐怖が忍び寄る。
ユラの幻影により、それぞれが抱える過去の傷や懐かしい記憶が彼らの意識を飲み込み、忍者たちは次々に戦意を喪失していった。
全員が心の奥に眠る後悔や苦しみに囚われ、現実との境界を見失っていく。その中で、ユラは冷たい視線を送り、彼らが徐々に戦う気力を失っていく様子を楽しんでいるかのようだった。




