66 魔女ユラ
フロアに残されたのは、涼音、陽、鋼、玲美、雷斗のわずか5名だけだった。
戻された忍者たちが感じた不条理な現実に怒りと悔しさを抱く一方、残された5人は、ユラの力の恐ろしさを肌で感じ取り、次の一手を探るように静かに彼女を見据えていた。
ユラは、相変わらず冷ややかな微笑みを浮かべながら、ゆっくりと涼音たちに歩み寄ってきた。
しかしその目が涼音をとらえた瞬間、ふとした違和感が心に浮かぶ。
涼音の気配には、かつて共に時を過ごした吸血鬼、リオウの面影がどこか漂っているように感じたのだ。
「リオウの…」
ユラは声に出して呟いたが、その言葉には、冷徹な戦いを前にした緊張感よりも、何か懐かしさを伴う響きがあった。
長い時を越えて、リオウと過ごした日々が、頭の片隅に一瞬よみがえってくる。
彼が持っていた孤独と哀しみの深さ、そして彼の持つ独特の気配。
その気配が、今、目の前の少女から微かに感じられるような気がして、ユラは不思議な感覚にとらわれていた。
しかし、そんなユラの視線に気づくことなく、涼音はただ目の前の敵に対峙する姿勢を崩さない。
彼女にとって、この闇の魔女ユラは危険な敵であり、決して気を抜くことのできない相手であった。ユラの言葉も、その視線に込められた意味も涼音には届いていない。
ユラは再び冷たい微笑みを浮かべ、涼音を見つめながらも、わずかに目を伏せて呟く。「まあ…それはどうでもいいわね、リヴォール様に吉報を届けなくては…」彼女は次の瞬間、闇の力を込めた手をかざし、涼音たちに対して魔力を送り出した。
暗い空間に不気味な魔法の波動が広がり、冷たい風が吹き荒れる。
ユラの魔法が漆黒の霧となって忍者たちの視界を覆い、闇の中で彼女が姿を隠すようにして、さらに一歩後退する。
5人の忍者たちは、ユラの圧倒的な力に気圧されながらも、再び気を引き締めて闇の中で身構えた。
「気を抜くな。どこから攻撃が来るかわからないぞ」
陽が低く声をかけ、全員が互いに目配せしながらも、完全に視界が塞がれた中で、ユラの気配を探る。ユラの魔法は、ただの幻影や攻撃だけでなく、精神的に忍者たちを追い詰める効果があった。
冷たい霧の中、全員が錯覚に陥りそうになりながらも、それぞれの意思の力でかろうじて自我を保っている。
ユラは闇の中でゆっくりと忍者たちを見つめ、冷ややかに微笑んだ。
心のどこかに感じるリオウの面影を懐かしみつつも、目の前に立つ忍者たちの意志の強さに少しずつ興味を抱いていた。




