63 博多ダンジョン最奥部への道と決意
博多ダンジョンの深奥へと進むにつれ、闇は重く深くなり、異界の力が肌に染み入るように忍者たちを圧迫していた。
空気が湿り、息を吸い込むだけで胸の奥が重く感じられる。
ここまでの戦いで失った仲間たちの姿が、胸中に痛みを残しながら忍者たちの足取りを支えていた。涼音が先頭を進み、彼女の後ろに続く仲間たちは、無言のまま互いの背を守り合い、異界の罠や魔物に立ち向かっていた。
忍者たちはこれまでに何度も罠に翻弄され、現れた魔物の襲撃に耐え抜いてきたが、その犠牲は小さくなかった。今ここにいる者たちだけでも、入った当初よりも15人が欠けている。
名を呼ぶことさえできず、ただその場に倒れた仲間たちの姿が次々と胸に蘇り、涼音は静かに唇を噛んだ。これ以上、無駄な死は出したくない――彼女の決意が胸の奥で燃えるように強まった。
「ここが最奥」
涼音のつぶやきが微かに響く。
魔力の濃度が急に高まり、空間全体が生き物のように脈打つかのごとく震えていた。彼女の中で神威が微かに反応し、その力が彼女の感覚を一層鋭敏にさせる。頭の中に重厚な声が響き渡った。
「ここがダンジョンの核ともいえる場所だ。我が感じる限り、この先にはただならぬ力が眠っている」
「…皆、ここからさらに慎重に進もう」
涼音の指示に全員が頷き、彼女の動きに合わせて身を低くし、前方を見据える。
戦いの中で彼らの息は徐々に乱れ、疲労が蓄積しているのは明らかだったが、全員がそれを表に出さず、互いの決意を黙って共有していた。ここにいる忍者たちは皆、互いの命を守り、決して一人を無駄にすることなく前へ進む覚悟を固めていたのだ。
再び一歩を踏み出すと、暗闇の奥で重い音が鳴り響き、壁の一部が軋むようにゆっくりと動いた。
全員が警戒の目を光らせ、いつでも戦闘に移れるよう身構える。涼音はその目を細め、壁際に漂う魔力のうねりを注意深く観察した。吸血鬼の血筋と神威の加護のおかげで、涼音には魔力の動きがはっきりと見えていた。
「慎重に進もう」
忍者たちは息をひそめ、無言のまま涼音の指示に従った。
その場に静寂が漂う中で、涼音の意識は神威の存在と一体化していく。神威が静かに語りかける声が、彼女の心を引き締めた。
「涼音、覚悟を持て」
涼音は頷き、神威の言葉を胸に刻んだ。自分が前へ進むことで、仲間たちを少しでも守り、失った者たちの死を無駄にしないと強く誓う。ここで引き返すわけにはいかない。涼音は目の奥に決意の光を宿し、背後の仲間たちにもその意志が伝わるようにじっと先を見据えた。
通路をさらに進むと、冷気が徐々に濃くなり、涼音の肌にじわりと突き刺さるような感覚が広がった。
全員がその異様な冷たさを感じ、思わず肩をすくめた。ここでは、魔力が空気そのものに染み込んでいるかのようで、ただ歩くだけで全身に重くのしかかってくる。その時、涼音の耳に微かに響く声が届いた。彼女は一瞬、立ち止まって耳を澄ます。
それは決して聞き慣れた声ではなかったが、不思議な安堵感が涼音の胸に広がった。それは神威の加護が強くなっている証でもあった。「涼音、恐れるな」神威の言葉が、涼音の決意をさらに固めた。
そして、一行はついに、最奥部への大きな扉の前に立ち尽くした。




