表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/70

36 妖魔王リヴォールの配下:吸血鬼リオウ、出現する 

45年前。


夜の闇が深まる中、静寂を破るように一つの影が山奥に佇んでいた。

リオウ──彼は、異世界ルナリアから地球へと突然迷い込んだ吸血鬼。


妖魔王リヴォールの配下として従っていた。

しかし気づけば、見知らぬ土地に降り立っていた。


その気配に気づいたのは、瑠衣という名のくノ一だった。

瑠衣は冷徹な目で彼を見据え、油断なく身構えていた。彼女の瞳には鋭い光が宿り、リオウの装いと異様な雰囲気を一瞬で察知していた。

「異国の者、それとも新たなスパイか…」心の中でそう呟きながら、彼女はリオウに向けて躊躇なく攻撃を仕掛けた。


彼女の動きは素早く、風を切るようにリオウへと駆け寄り、鋭い刃が彼の体へと迫る。

しかし、彼女の刃はリオウの皮膚に触れた瞬間、霧のように散ってしまうかのように効果を失い、彼の体にダメージを与えることはなかった。リオウは微笑を浮かべながら、冷静にその場に立ち続けていた。


胸元のダイヤモンドが怪しく光る。


「待て…」

彼はその場で目を閉じ、静かに念話で語りかけた。

「誤解だ、私は迷い込んだだけだ。まずは帰還方法を探したい、よってこの世界について知りたい。教えてくれないか?」


その思念が瑠衣に伝わると、彼女は驚き、攻撃の手を止めた。

言葉を発さずして頭の中に響くこの声、まるで魂が直接触れ合っているかのような響きがあった。彼女は一瞬の戸惑いを隠せなかったが、やがてその鋭い眼差しが和らいでいった。目の前の男がただならぬ存在であることを感じ取りつつ、彼女はゆっくりと刃を下ろした。


「…迷い込んだと言ったわね。あなたは、一体何者なの?」


瑠衣は相手をまだ疑いの目で見つめていたが、リオウはそれに動じず、ただ穏やかな眼差しを返していた。その瞳には、異世界からやってきた孤独な存在の深い悲しみと、どこか憂いが漂っていた。言葉少なに自分の事情を語るリオウに、瑠衣は次第に興味を抱き、彼の話に耳を傾けていった。


幾夜も重ねて会話を交わす中で、二人の間には言葉を超えた理解が芽生え始めていた。リオウは異世界での孤独な生活を語り、瑠衣は忍びとしての厳しい運命について語った。それぞれが異なる世界で生きてきたはずなのに、二人の間には不思議な共感が生まれ、次第にお互いの存在が心の支えとなっていった。


リオウが瑠衣の手を取り、静かに見つめ合ったある夜、彼は初めて人間としての温もりを感じた。異世界の吸血鬼である彼にとって、それは想像もしなかった感覚だった。そして、瑠衣もまた、この異様な存在に惹かれ始めている自分に気づき、胸の奥で鼓動が高鳴るのを感じていた。


ふたりはやがて深い愛情で結ばれ、忍者と吸血鬼という異なる運命を持つ者同士でありながら、共に歩む決意を固めた。そしてその愛は涼音の母、美紀という新たな命を授かることに繋がった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ