33 翔の訃報と広がる絶望
涼音がその知らせを受け取ったのは、関東の山間部にある一時的な拠点だった。
彼女は冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んでいたが、通信機から響く陽の重々しい声が、風景を凍りつかせるようだった。四国にいる陽の言葉は硬く、そして辛そうに震えていた。
「涼音…翔が…九州でのダンジョン攻略中に…」
その言葉が耳に届いた瞬間、涼音は息が詰まるような衝撃を感じた。翔は数ある忍者の中でも特に世間への露出が多く、インフルエンサー的な存在として広く認知されていた。彼の軽快で親しみやすい語り口、戦場で見せる圧倒的な強さ、そして常に前向きで希望を感じさせる姿が、若者たちの憧れの象徴となっていた。涼音にとっても、翔は仲間であり、戦友であり、そして目標の一つだった。
「翔が…」
胸の奥からじわりと込み上げる喪失感に、涼音は思わず地面に膝をついた。彼女の脳裏に、翔の笑顔や励ましの言葉が次々と浮かんでくる。戦いに臨むときも、彼は常にみんなを鼓舞し、自ら率先して行動していた。だが、その翔が、もうこの世界にはいないという現実が、彼女の中にじわじわと染み渡っていった。
その知らせが世間に広まるのに時間はかからなかった。SNSやニュースでは、「忍者翔の死」という見出しが至る所に掲げられ、彼のファンたちが悲しみに暮れる様子が拡散され始めた。若者たちが画面越しに泣き崩れ、彼の冥福を祈る投稿が次々と流れ、まるで一つの時代が終わったかのような喪失感が広がっていくのが感じられた。
「翔、あなたはヒーローだったのに…どうしてこんなに早く…」
「忍者でさえダンジョンの攻略は厳しいのか。私たちはもう、何を信じればいいんだ?」
絶望的な言葉が次々と画面に並び、瞬く間に拡散されていった。忍者という存在が、特別な力を持ち、希望を託されるべき象徴であったがゆえに、彼らの仲間が倒れたことは、人々にとって信じがたい衝撃だった。その衝撃が、徐々に忍者たちの限界を問う声へと変わりつつあった。
「忍者でもダンジョン攻略は不可能なのか…」
「もう、ダンジョンはどうしようもないのかもしれない」
人々の間に、忍者でさえも全能ではなく、彼らが戦う相手の脅威がどれほど絶望的であるかを実感する悲しみと不安が広がっていった。翔のファンたちが失意の声を上げ、嘆き、忍者への希望が失われつつある現実が、静かに社会全体に広がっていた。




