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21 第3層の影、偵察の先に

涼音は、上層部からの3層偵察の指令に従い、慎重にダンジョンの奥へと足を踏み入れた。

冷たい空気と不気味な静寂が支配する薄暗い通路を進む中、忍者仲間の4名がここで命を落とした事実が胸をよぎる。

何が彼らを倒したのか、その答えを突き止めることが今日の任務だった。


彼女が奥へと進むほど、目の前に広がる異様な気配は次第に強くなり、周囲の影も一層濃く感じられた。気を引き締め、気配を探りながら静かに歩みを進めると、やがて視界の先に漆黒のローブに包まれた人型の魔物がぼんやりと浮かび上がる。

魔物は鋭い目で周囲を見渡し、その視線がまるで彼女の存在を見透かしているかのようだった。


「…あれが、仲間を倒した原因か」

心の中で呟いたその瞬間、魔物の手がゆっくりと空中に上がり、涼音を狙うようにかざされた。

次の瞬間、視界を覆うような強烈な閃光が彼女を襲い、耳をつんざくような音が周囲に響き渡る。


涼音の近くで浮遊していた配信カメラが破壊された。

「魔法か…!」

咄嗟に身を翻してかわしたものの、熱の波が頬をかすめ、激しい痛みが伝わる。魔物が精密で強力な魔法を自在に操っていることに気づいた瞬間、涼音は理解した。この魔物が、仲間の忍者たちの命を奪った原因に違いないと。


「ここで戦うべきじゃない」

情報を持ち帰るべきと判断した涼音は、電波が入る位置を探しながら移動を開始した。冷静を保ちつつも、足元には冷や汗がにじむ。やがてかすかに電波の入る位置を見つけると、素早くスマートフォンを取り出し、上層部への報告を試みた。


「こちら涼音。3層で人型の魔人を確認、魔法を扱う高位の魔物が──」


しかし、言葉が途切れると同時に、周囲の空間が突然歪み始めた。

重力が狂うような感覚が一気に襲いかかり、足元の大地が揺れ動く。目の前にあった風景が急速に遠のいてゆき、意識が飛ばされるような錯覚に陥る。

「油断するな、涼音」神威の冷静な声が鋭く響き、彼女の思考を引き戻す。


「…これは、転移?」

涼音が混乱する中で周囲の景色が固まり始めると、そこは先ほどまでとは全く異なる部屋だった。

冷たい石壁に覆われ、不気味な模様が刻まれている薄暗い空間。空気は重く、まるでその場自体が怨念に満ちているかのような圧力が涼音を包み込んだ。


その静寂の中、奥から聞こえてきた低く冷たい笑い声が彼女の耳に届く。涼音はその方向に視線を向けると、漆黒のマントをまとった異様な魔人がゆっくりと現れた。涼音を嘲笑うような目つきで見下ろし、暗い部屋の中で支配的な存在感を放っている。目の前に立つのは、3層のフロアボス──魔人ディルだった。


「…よくぞここまで来たな。貴様の運命、我が手で弄んでやろう」


ディルの冷酷な声が低く響き渡り、言葉とは裏腹に、まるで涼音を一瞬で破壊するのを楽しみにしているかのようだった。その眼差しには底知れない残虐さと愉悦が宿り、彼女を圧倒しているのが明白だった。しかし、涼音の心の中には、冷たい決意が燃えていた。


その時、彼女の意識の奥底から、低く重い声が聴こえてきた。


「涼音、我に頼るつもりでいるのか?」

突然の声に驚きつつも、涼音は冷静に心の中で応じた。神威の存在が、今まさに刀を通じて彼女に呼びかけていることを理解したのだ。神威が初めて彼女に語りかけてきたその声には、底知れぬ力が感じられた。


「力を貸して欲しい」

涼音の思いに応じるように、神威が再び冷ややかに答えた。


「ふむ…お前が我の力を望むなら、貸してやらぬこともない。

しかし、我は今、長き眠りから覚めたばかりで本調子ではない。亜神としての力も全てを発揮できるわけではないのだ」


その言葉に、一瞬、失望と不安がよぎったが、涼音は自分を奮い立たせるように強く意識を集中させた。神威の言葉には、頼りなさが含まれていたが、その奥には確かに力が眠っているのを感じた。


「それで十分」

冷静にそう返すと、涼音は神威のわずかな力を体の奥底で受け止め、今の自分の力に加えた。

神威が持つ冷たい力が刀身から伝わり、涼音の体の奥深くで活力を呼び起こす。

神威は涼音の決意を受け止めるように、再び低く告げた。

「覚悟があるなら見せてみよ」


涼音の目が鋭く光り、彼女はディルに向かって刀を構えた。

その手元に宿る冷たい力が静かに震え、彼女の内から湧き上がる覚悟が明確な形となって現れた。




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