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14 解放の提案 / 現代技術と伝統が交錯

薄暗いトレーニング室から出た涼音は、心の中に不安と期待が交錯していた。

彼女の目的はただ一つ、吸血鬼の血から解放され、普通の人間としての人生を手に入れることだ。しかし、その願いは今や手の届かない遠い夢のように感じられた。


部屋の隅に立つ影に気づくと、涼音の心は一瞬緊張した。影は、忍者社会の権力者、黒崎だった。彼の存在は重く、周囲の空気が一瞬で変わる。いつも冷静沈着で神秘的な雰囲気を持つ彼が、今、涼音の前に立っている。


「涼音、君に伝えたいことがある。」黒崎が静かに声をかける。涼音はその言葉に振り返り、彼の視線に緊張感を覚える。


「吸血鬼遺伝子の件ですね。」涼音は冷静に返答した。彼女は以前から黒崎に相談してきたが、彼からの提案は期待と共に重くのしかかっていた。


「その通りだ。君が残り3フロアのボスを討伐すれば国に恩を売れるからな、吸血鬼化の進行を止める術を施してやる。」黒崎の声には確信があった。


涼音はその言葉を受け止め、心の中で葛藤が広がる。吸血鬼の血から解放されるチャンスが目の前に広がっているのだ。彼女は、この機会を逃すわけにはいかないと強く感じていた。



「何かを得るためには、必ず代償が必要だ。君がその力を手に入れ、呪縛から解放されることで、未来が開かれる。」黒崎の言葉は涼音の心に突き刺さった。


「私がダンジョンを攻略できれば……本当に解放してもらえるのですね?」涼音は自分の気持ちをはっきりと問うた。

黒崎は頷き、「君が持つ未来の選択肢だ。君の意志次第で道は開かれる。無条件で術を施してやりたいところだが最低でも半年は私の寿命が縮む…」と続ける。


吸血鬼の遺伝子をオフにするという明確な目標が目の前にある。

彼女は強い意志を持ってこの運命に立ち向かう覚悟を決めた。「私は一人でも行きます。フロアボスを討伐し、解放を手に入れる。」


黒崎は微笑み、彼女の決意を認めるように頷いた。「それこそが、忍者のあるべき姿だ。君の選択を期待している。」


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夜の闇に溶け込むように立つ忍者たちは、現代の最新技術を駆使した装備を身につけていた。

従来の忍者道具と一見変わらぬ姿ながら、隠密に、そして確実に敵を討つための最新技術が、彼らの装備にふんだんに組み込まれている。

月明かりすらも吸い込む黒い装束の袖口には、薄型のディスプレイが装着されており、指先ひとつで周囲の状況や仲間の位置情報が表示される。軽く振動が伝わるだけでメッセージを瞬時に共有でき、声を発さずとも仲間との連携が可能になっていた。


彼らが手にした苦無や手裏剣は、今やただの鋼鉄ではなく、特殊メタルで強化されAIが搭載されている。周囲の温度や音を反射させ、敵の警戒をすり抜けるように飛び出すと、その軌跡すらも消え去る。内部に仕込まれた小型センサーは風速や距離を計算し、手元のディスプレイに最適な投擲角度を瞬時に示す。ひとつの動作に過ぎない投擲が、計算された一撃に進化している様子は、まさに現代技術が忍者の技に新たな力を加えていることを実感させる。


暗闇に身を潜めた忍者は、光学迷彩によって姿を消し、まるで空気の一部に溶け込むかのようだ。

迷彩布はメタマテリアルの技術を応用して作られ、光を周囲に回り込ませることで、影すらも消え去る。この布がひとたび羽織られると、忍者の姿は闇そのものとなり、敵は足音も姿も感じ取ることができなくなる。布地は防水・防炎加工が施され、どのような苛烈な環境下でも無事に役目を果たすことができる。忍者が影の中を滑るように移動するたび、空気がわずかに揺れ、彼の存在がまるで幻のように消え去っていくのだ。


その背には、小型のドローンが仕込まれたケースが固定されている。

ボタンひとつで静かに飛び立つこのドローンは、音もなく敵の上空に舞い上がり、赤外線センサーによってその位置を特定することができる。

忍者はその情報を手元のディスプレイで確認し、進むべき道や、避けるべき危険箇所を一瞬で把握している。見えざる目として働くこのドローンは、現代の技術によって忍者がまるで鷹のごとく戦場を俯瞰できる力を与えている。


手にはグリップが調整された特殊な刃が握られている。

カーボンナノチューブを使用したこの刃は、軽量でありながらも硬度と切れ味を兼ね備え、忍者がどのような体勢からも自在に使いこなせるように設計されている。忍者がこの刃を閃かせるたび、風すらも斬り裂くような鋭い音が辺りに響き、その一撃が空間を切り裂く。刃に仕込まれたセンサーが握る者の動きを即座に読み取り、より鋭い切れ味と安定した一撃を可能にしているのだ。

昔ながらの忍び刀を持つ者もいる。


耳元には骨伝導通信システムが埋め込まれており、外の音を遮らずに仲間からの指示を聞くことができる。これにより、敵に気づかれずとも正確な情報共有が行われ、影のように協力しながら忍び寄ることができる。

かつて単独での活動が主だった忍者が、今や無音の中で連携を取り、まるで一つの意思を持つかのように行動している様子は、最新技術が伝統に革新をもたらした証だ。


こうして現代の技術を余すところなく融合した忍者の装備は、もはや単なる道具を超えた存在となっている。

影の中でその力を解き放つ彼らは、現代技術と伝統が交錯する新たな戦士の姿そのものであり、忍びの世界に新たな時代を刻むべく闇の中を駆け抜けていくのだった。





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