43話 冒険者ギルドマスターも冒険者も魔法を解ってない。誰のせい?
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「おう、来たか。同盟〈光る原石〉の盟主はまだ子供だって聞いていたが、本当に子供だな。まだ10にもなっていないんじゃないか?」
「ギルドマスター、ここまで来ているのですから年齢は関係ないでしょう。伸びるものは伸びるという事だろうと思いますよ」
「いやそれは解っている。こいつは結果で示したわけだからな。冒険者は結果が全てだ。生き残ったやつが偉いんであって、死んだ奴には良い奴はいても、偉い奴はいない。今回のスタンピードを見事に生き残ったんだから、偉いに決まっているだろう」
「ですから、先に名乗りませんと。こちらの事を解っていない事も考えないといけないですよ? ギルドマスターが現役だったのはもう20年も前なんですから。知らない人の方が多いんです。名乗りは必要でしょう」
「そうだな。紹介が遅れた。俺はアーノルドだ。このメトイルの冒険者ギルドのギルドマスターをしている。現役からは退いていたが、今回は陣頭指揮を取るために前線で戦っていた。これでもまだまだ戦える方だぜ? 赤鬼もちゃんと倒しているしな」
「大戦斧を見てから、多分そうだろうとは思っていた。俺はエルンスト。同盟〈光る原石〉の盟主になる。今回のスタンピードについては、運が無かったと思うな。まさかこんな近くで起きるとは思ってもみなかった」
「そりゃあな。だが、生き残った。聞いてるぜ? 同盟〈光る原石〉は、誰一人として欠けなかったと。同盟は他にも幾つもあるが、大抵の同盟は統廃合をしないといけないくらいの被害を受けているんだ。お前らは自信を持っていい」
「正直な所、今回のランクの低い場所でのスタンピードで壊滅する様な打撃を受けるとは思っていなかったんだ。こちらとしては、楽勝であると思っていたからな」
「楽勝、か。まあ、成果だけを考えてもお前らは異常だ。知っているか? 青鬼ですら冒険者のパーティーが壊滅するってのを。ましてや赤鬼なんて早々お目にかかることは無い。俺にかかれば、1撃で葬ってやるが、俺が相手を出来なかった奴らに関しては町に通しちまっているしな」
「聞いてはいたが、青鬼程度でそこまでどうのこうのいう事態になっているとも思っていなかった。所詮は青鬼。出来る冒険者なら余裕で対処できると思っていた」
「あー、お前は知らないのかもしれないが、ここの貴族様の状況と言うか、事情は聞いたことが無いか?」
「貴族関係の話については、まったく知らない」
「だろうな。まあ、難しいことは無いんだがよ。簡単に言うとだな。ここはヒルストン伯爵領だ。メトイルは端っこも端っこ。東端だ。ここより先は別の家と接している。小鬼の森が境界になっているんだよ。報告に詳しいことは書いてなかっただろう? それは領地が違うからだ。冒険者ギルドとしては調査はしているが、貴族家からの情報は入ってこない。だから壊滅したまでしか解らないのが現状だ。もう少ししたら調べが付くんだろうが、それはもう少し待ってくれ」
「ギルドマスター、話が逸れていますよ?」
「おお? 済まねえな。でだ、ここのお貴族様は第4王子派閥な訳なんだが、これが非人間であろうとも、優秀な奴は使うべきだって言う派閥でな。非人間の受け入れもやっているんだ。そして、それが嫌いな奴らは人間が多い。強い奴ほど人間であるがゆえに強いって思いがちでな。ヒルストン伯爵領を出ていっているんだよ。人間も非人間もそこまで強さには変わりはない。それが解ってない奴らは、別の狩場に行っているんだ」
「なるほど。非人間を受け入れている貴族家だという事なんですね?」
「そういう事だな。だからと言って優遇もしていないがな。優遇すれば人間が寄り付かなくなるからな。絶対数が違う。人間の方が圧倒的に数が多いんだ。それを排除してまで非人間を使う理由は無いからな。だが、優秀なら使う。それの方が効率的だろう?」
「確かにそうだな。優秀かそうでないかは人間だからではないだろう。人間の方が絶対数は多いから、優秀な人も沢山出てくるだろうが、非人間にも優秀な奴は沢山居る」
「そうだ。だから、そう言った貴族家には非人間が集まりがちなんだよ。お前らの同盟なんてまさしくそんな感じだ。非人間が殆どを占めているな」
「まあ、偶然だけどな。必要な戦力を集めたら、偶々非人間が多くなっただけなんだ。それで非人間の同盟になった訳なんだが、別に人間を入れないって訳じゃない。非人間なんて関係ないって人間は同盟に入れるつもりだしな」
「偶然ねえ。まあ、お前も人間だしな。何かとあるのかもしれないが、まあ良いだろう。要はそういう事で、冒険者の質が低かったわけだ。死者が多いのもその所為ってのもあるんだが、今回のスタンピードは異常だった。俺も何度も経験はあるが、多くても10万程しか出てこなかったからな。今回のは推計で約30万だ。まだまだ増える可能性がある。3つの町が落ちているんだからな。まだ倒されてもいない魔物がゴロゴロ居るんだろうと思う」
「それで? 俺を呼んだってのは、その町の救援の為の依頼か?」
「いや、それは無い。冒険者ギルドは世界組織だが、冒険者ギルド同士が助け合うことは殆ど無い。それに貴族家が違うからな。基本的には貴族家が違うと、冒険者ギルドは関わらないという選択肢を取る。例え冒険者ギルドの職員が死のうとだ。まあ、冒険者ギルドの職員は無事だろう。スタンピードの魔物は、何故だか知らないが、領主館を襲う事が多い。今頃は他の住民を連れて避難しているだろう。俺たちが心配することじゃねえ」
「となると、何故呼ばれたんだ? てっきり俺たちの同盟に、周辺の3つの町を救援しに行けという依頼が出ると思っていたんだが」
「お前を呼んだのは領主館に居る代官が功労者を連れて来いって言ったからだな。お前らの同盟は領主館の救援に向かっただろう? 冒険者ギルドへの依頼が無かったのにだ。まあ、もう少しすれば、俺たちが突入して何とかしたんだけどよ。それを先にやって貰ったからな。功労者って言えば、お前らの同盟になる。だから俺からの依頼は、代官と会ってくれないか? って話だ」
「こちらとしては構わない。代官が呼んでいるのであれば向かう。それにここの代官は非人間を差別していない人なんだろう?」
「ああ、積極的に使っている訳では無いが、見過ごすこともしていない。スラムでちゃんと飯が食えていただろう? それも代官の指示が大きい。まあ、教会はもっと貪欲に信者を作りに行っているだけなんだけどな」
「教会勢力とは敵対するつもりはない。教会を使えないとこっちも問題が大きいからな。教会があってこその冒険者だ。そこは変わらず、だな」
「お? 教会勢力を認めるのか。これも珍しい話だな。知っているか? 冒険者の多くが、教会勢力を良く思っていないんだ。非人間も同列に扱うからな。冒険者ギルドでは積極的に教会へ寄付する様にと言っているが、寄付しない奴らも多い」
「単純に馬鹿なんでしょう。教会勢力というよりは、教会と喧嘩をすること自体間違っている。俺たちが戦えるのも、半分以上は教会のお陰だからな。教会というよりは、神といった方が正しいんだが、それを区別するつもりは無いし、神がきちんと示してくれるからな。魔法を使う以上、教会とは仲良くしなければならない。これは当然だ」
「魔法な。お前らの殆どが魔法を使うからな。戦っている様を見ていたが、殆どを魔法で片付けていたな。冒険者の中では、魔法を使えないものとして置いている奴らが多いのにだ。戦い方が異質なんだよ。何で魔法を主体に戦っている?」
「そんなものは決まっている。魔法が強いからだ。魔法を使えないと認識している連中は、魔法を何も解っていないだけだ。魔法は便利に使うべきだ。人には平等に魔力が与えられている。それを使わないのは勿体なさすぎる。魔法が使えないと言うのは、一体誰が広めたんだ?」




