13話 殺してしまっても構わないんだろう?
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「皆、静かに聞いてくれ。どうやら後を付けられているらしい。数は20人だ。そして魔法で確認をしたところ、こちらに敵意を持っているらしい」
「え? 何で? 敵意ってどういう事?」
「解りやすいことではあるでしょう。推測も簡単に成り立ちますわね。こちらを襲う気満々という事ですわ。それ以外に敵意があるなんてことは無いでしょうから」
「せやろなあ。まあ冒険者ギルドに毎回預けているとはいえ、結構な金額になって来たからなあ。エルンストが拠点を買うって言うてたからな。それが広まったのもあるんやろな。同盟を作るってなると金が必要なんは誰もが知ってることやからな」
「え? どうしてなのだ? 襲っても得なんて無いのだ。お金は冒険者ギルドに預けてあるのだ。持ってない物をどうするつもりなのだ?」
「簡単な事である。冒険者ギルドに嘘の報告をすればいいのである。わしらはお金を預けてあるとはいうが、冒険者ギルドからしてみたらエルンストが預けているだけである。もしわしらが全滅したとして、お金の所在は何処になるのかという事になる。そして、それは1か月ギルドを利用しなかった場合、死亡扱いになるのである。同盟名義であれば別なのだが、個人名義であればそういう判断をするのである。そして、死亡したという報告をして死亡者のギルド証を持っていった場合、1か月後に死亡者の預け金が報告者の物となるのである」
「え!? そんな制度になってるの!? 冒険者ギルドって酷くない!?」
「酷くはないでしょうね。そういう事もありうるのですから。特に私たちの様に、同盟を作ろうとしている場合は、ですね。同盟には拠点が必要です。その拠点費用を稼ぐために無理をすることもありますから」
「せやなあ。ましてや拠点に大金を突っ込もうとしてるんやからな。今どんだけ貯まったんかは知らんけど、結構持っとるんやろ?」
「まあな。拠点が出来て同盟を作ったら各々の持ち分なんかを計算するんだけど、拠点を買わないといけないからまだその辺は曖昧というか、規則を決めてないからな。ちなみに大体6万トマス貯まっている。後半分で拠点の改修費用まで賄えるだけの金額が貯まるな。もうちょっとだ」
「6万トマスも貯まっているのだ!? 暫くは遊んで暮らせるのだ! 拠点ってそんなに高いものなのだ?」
「安い拠点は安いな。わしも聞いてみたが、2000トマスもしない拠点もあるそうだ。ただ、立地は殆どスラムであり、3人なら暮らせるだろうという拠点でしかないがな。基本的に拠点が大きくなればなるほどに値段が必要である」
「で、俺が買おうとしている拠点は30人用な訳だ。その位は集めるつもりでいるし、スラムから引き抜いてきたら簡単に集まるだろう? いい人材が沢山眠っているからさ。拠点はなるべく大きい方が良いって訳なんだ。30人用の拠点だったら、皆で使えば100人くらいは入るだろう?」
「贅沢に1人部屋なんていらんわなあ。雑魚寝上等の生活から出てきたばっかで1人部屋は逆に怖いわ。というよりも、エルンストが買わんとしてる拠点が大きすぎるやろ。何処まで同盟を大きくするつもりや?」
「100人かあ。でも知り合いもいないし、本当にその位集まるの?」
「集まるではなく集めるが正しいのではないかしら? 同盟とは集めるものです。そして人材を育てて次代へと繋いでいく。それこそが同盟の本命ですわね。冒険者という不安定な職業だからこそ集めるのです。自分たちに利益のある人たちを」
「そう言う事だな。同盟は100人じゃすまないとは思っているけど。どのくらい集めるのかは皆とも相談になると思うし。それで、お客さんの話だけど、ドルウォートル! ……いい感じの距離まで来たかな。潜伏するからこっちに集まってくれるか?」
「良いのだ。それで、どうするのだ? 相手は20人も居るのだ」
「うーん、普通の人が20人しかいないんだよね? 普通の冒険者って魔法を使わないんだよね? あたしたちがおかしいだけで」
「その通りである。火力のあるジスレアと結界の使えるわしが居れば、何とでもなる相手ではないか? エルンストもそう思っているのだろう?」
「まあな。それで今回の相手なんだけど、全員殺そうと思っている。それでいいかの確認だな」
「え? こっちを殺す気なんでしょ? ならやっちゃえばいいよね?」
「そうですわね。敵対者に慈悲はありません。やるのであれば徹底的にが良いでしょう」
「死ぬのはよくあることなのだ。誰が死んでも仕方が無いのだ」
「敵対した時点で已むを得まい。敵が増えるとも限らん。ここで始末しておくべきだ」
「ま、そういうこっちゃな。生かしておいても得にはならへんからな」
「了解した。じゃあ隠れるからな。ここの茂みな。じゃあ隠れるぞ、アードクラウン!」
中級隠蔽魔法だ。隠れるのであればこれだな。まあ、中級魔法が必要なのかという疑問はあると思うんだけど、加減はしないぞ? やるのであれば徹底的にだ。
人を殺すことに抵抗は無いのかと言われたら、俺には無い。ゲームでも対人戦はさんざんやって来たし、そもそも病院暮らしの俺に人の死をどう思うのかって所から言わないといけないだろうな。人の死なんてよくあることだ。相部屋って色々とあるんだぞ? 基本的にはおかしい奴らしかいないというのがな。
個室に入らないといけない病気ってのもあるんだが、そもそもの話、個室は料金が高い。そういう病院に入院していた訳なんだ。治験のアルバイトの金額が相部屋料金に全部吸われていってしまっていた俺が言うんだから間違いない。国からの補助も出ていたけど、そっちは治療費で消えていった。無意味な治療も沢山やったし、何度体を開いたのか解らないくらいには酷いことをしてたんだよ。治らないのに。でも、被検体をやることによって病気の解明や次の患者の為にと色々とやったんだよ。
で、相部屋な。定期的に人が死ぬんだ。ある時は家族が殺し、ある時は患者が患者を殺し、ある時は自殺者が出る。そんな病棟で暮らしていた。治らないからと自棄になる人が多かったんだよ。俺か? 俺には『マジックエンブレム』があったからな。その為に2桁を超える手術も耐えたし、3桁に及ぶ投薬にも耐えた。術後は痛みで死にたいと思ったこともあったけど、生きてここに……ああ、死んでここに居たんだった。
人の死は理不尽なものなんだ。自分で選ぶことが出来た俺は幸運だったんだよ。家族には心労をかけたかもしれないが、俺の臓器のお陰で弟と妹の大学までの資金を捻出できたんだから良いだろう? 俺の臓器は俺が売った。全部で2億円を超えたらしいが、些細な事だ。
そんな生活だったからな。人を殺すこともに抵抗があまりない。殺そうとしてくるんだろう? じゃあ死ぬ覚悟もあるんだろうなと思う訳だ。人を殺すのに覚悟は必要だぞ? ゲームでもそうだが、優しさと甘さをはき違えている奴が多いと思うんだよ。
ウォークエストなんてもろにそうだからな。血飛沫なんかは出ないが、人は死んでたし。俺も何度も参加したぞ。タイマンと違ってセオリーが無いから難しいんだけど。基本的にはNPCを蹴散らして、PCをどのくらい狩れるのかってのが競われていたんだよ。第2紋章や第3紋章持ちが沢山居たぞ。俺は第1紋章2つ持ちだったけど。乱戦になれば強いんだよな。
そんなウォークエストにも参加できないお優しい人たちも居たんだよ。実際NPCもちゃんと生活をしていたし、感情移入するような作品になっていたけど、普通の生活なんて知らないからな。病院暮らししかしたことが無いんだし。
それで、今回やってきている人たちも、同情できる人たちじゃないんだよな。覚悟を持って殺しに来ているんだろうと思う。それがいけない事なのかは解らない。けど、別に殺してしまっても構わないんだろう?




