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巻き込まれ転生  作者: てろめあ
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07話 狼族



 夜になり、レイが偵察を命じていた斥候が戻った。軽傷を負ってはいたが全員無事で、彼らが持ち帰ってきた情報によると、狼族は今夜中にも村を襲ってくる動きらしい。


 建屋を壊して出来た廃材で篝火を焚き、戦える者が武器を手にして集まる。村を囲む柵はレイが『神創精錬ライフワーク』で収納に入っていた鉱石で補強し、落とし穴のトラップもコボルト達と共に作り、仕掛け終わっている。僕は手伝わせてもらえなかったけど…………


 


 って、落ち込んでいる場合じゃない! 


 正面から来るだろう狼族達は、レイとコボルトの主立った戦力で相手をする。


 僕は他のコボルト達と一緒に、村の側面や背後の警戒に当たることになっていた。


 


「少しでも狼族の姿が見えたら、すぐに皆に知らせて。無理はしないで」


「はい、ルカ様!」


 


 弓を使えるコボルトは正面にしか配置出来なかった。


 こちらの警戒班はまだ子供(まんま子犬)だったり雌コボルトだったりと非力な者が多く、もし狼族に裏を掻かれると応戦は厳しいかもしれない。弱者を蹴散らしに来たつもりの狼族がそこまで策を練ってくるかは疑問だが、用心するに越したことはない。


 やがて村の入口付近が騒がしくなり、戦いが始まったことを知る。やはり集団で真っ向から仕掛けてきたようで、ここまでは想定通りだ。


 周りのコボルト達は不安そうに棍棒を握り、正面側から聞こえてくる騒ぎを気にしている。


 そんな中で、声が上がった。


 


「ルカ様! 狼族がこっちへ……!」


 


 僕の方でも、意識的に広げた『マナ感知』に引っ掛かる反応があった。


 "全にして個"とコボルト達から言われて居た狼族の群れを離れた二匹が、側面から回り込んできている。トラップや弓に正面突破を阻まれて、更には知らない強者まで。

ボスへの不信感が募り、統率が乱れたのだろうか。


 念のため村の背後も探るが、他に敵影はない。これならいけそうだ。


 


「落ち着いて、練習通りに。柵まで来たら僕が動きを止める」


「はい……!」


 


 二匹の狼は、村の側面にも柵が張り巡らされていることに気付き、警戒しながら近付いてくる。速度を付けて突っ込んでくるから堀の餌食になるのであって、慎重になれば潜り抜けるのはそう難しいことじゃない。ただし慎重になった分、その動きは鈍くなる。


 僕は止まった的目掛けて、水球を撃ち出した。命中。ギャンと鳴いた狼が飛び退き、僕を睨んで唸る。もう一撃。距離が遠すぎて深手にはならなかったようだ。


 


 手負いの狼が意を決したように駆け出した。コボルトの弓に多少身体を傷付けられようが、僕の撃ち出す水球を紙一重で躱しながら機敏に近付いてくる。そしてとうとう柵へ辿り着き、隙間に頭を捻じ込んで──僕の水に絡め取られた。もう前にも後ろにも動けない。


 そこへコボルト達が棍棒を振り下ろし、手筈通りに一匹を仕留める。


 


「や、やった……!」


「まだだ、下がって! 飛び越えてくる!」


 


 僕は叫んだ。『マナ感知』で捉えていたもう一匹が、同じように駆け出したと思ったら、柵に縛り付けられ絶命した仲間の身体を踏み台に、高く跳躍したのだ。


 


「ヒッ──うわあああっ!」


「きゃあああ!」


 


 敵の予想外の行動に、棍棒を取り落として叫ぶコボルト達。


 動き出していた僕は、足に力を込めて跳ねた。柵を越え上空から尻餅をついたコボルトに襲い掛かろうとしていた狼を、身体で受け止める。


 


「ルカ様……!」


 


 悲痛な声が上がるけど、僕は転生してからこれまで一度も痛みを感じたことがない。転んだりすると自動で水が生成されて守られるのだ。衝撃によって水が弾けるが、広がる水はそのまま空中で狼に纏わり付いて、僕が地面に着地する頃には窒息してその生命活動が終わっていた。


 身体に力の入らなくなった狼を地上に下ろす。

密着したからかすごく獣臭い。体全身を洗うイメージで水を展開して汚れと匂いを落とす。

僕の周りにコボルト達が集まってきた。

 


「大丈夫?」


「はっ、はい! ルカ様は、お怪我は……?」


「平気だよ。あ、怪我した? レイに治してもらわないと」


「い、いえ! 転んだだけです……かすり傷なので……!」


 


 そうか、良かった。


 もう少しだから気を抜かないようにとコボルト達を励まして、改めて警戒に当たらせる。


 僕も『マナ感知』で索敵を続けたけど、それ以上こっちに近付いてくる気配はなかった。正面の方ももうあまり動きがないようだし、そろそろ決着が付いたかな……? 


 


「ルカ」


「あ、レイ」


 


 やがてレイがポヨポヨと、正面に展開していたコボルト達を連れて村の外れにやってきた。


 戦いは終わっていた。ボスを倒して、生き残った狼族はレイに従うと平伏したらしい。今は村の周辺に待機させ、コボルト達に見張らせているそうだ。


 


「……さっき、悲鳴が聞こえたんだが?」


「こっちにも狼族が来たんだ。でも大丈夫、誰もやられてない!」



 正面はレイに任せておけば問題ないので、僕は非常に神経を使う手動の『マナ感知』も出し惜しみせず、任された担当を全力で守った。これは僕、かなりの働きをしたはず! 


 だけど僕のアピールを無視して、ずいとレイが詰め寄ってくる。


 


「……お前は警戒班だったはずだが?」


「あ、でも二匹だけだったし……」


「……こっちに敵が来たら、すぐ俺に知らせろって言ったよな?」


「レイ怖い……」


 


 ぐいぐい来る威圧感がすごい。


 ぽよぽよとにじりよってくるだけだけど・・・


 流石はもうボスを『解析』済みなだけのことはある……と考えて現実逃避する。


 今回もまた、僕はレイに認めてもらえなかったみたいだ。


 


 


   ◇


 


 


 まったく、ルカは……ホウレンソウという会社の基本を知らんのか。


 ああ中学生だったな、馴染みは薄いか……


 


『熱源感知』のお陰で、戦いの途中で狼二匹がそっちへ行ったことは知っていた。


 だがボスの相手をしなきゃならない俺はあの場を離れられず、結局のところはルカに任せることになっただろう。『接続者アーカイブ』で確認したし、洞窟で鍛えられたルカの方がコボルト達よりも確実に強いし、実際にルカは難なく狼族を倒していたわけで……


 だけどそれとこれは別だ。ルカにはきちんと警戒班という役割を守って欲しかった。報告を怠ったことで、想定外の事態に適切な対応が出来なくなる可能性だってある。コボルト村の守護を引き受けると約束はしたが、そのためにルカを危険な目に遭わせる気はないのだ。


 ……ううむ、俺が心配性なだけなのか?


 


 


 翌朝、村の広場に全員を集めた。


 コボルト達と、俺に従うと言い出した狼達に、二人一組のペアを組ませる。


 こいつらに名前がないことを不便に思った俺は、村の再建に取り掛かる前に、全員に名前を付けることにした。何故だか大喜びする連中はコボルトだけで百名ほど、狼も入れると更に増える。


 まあ、ルカと半分ずつ手分けをすれば…………


 


「僕はやんないよ」


「!?」


「だって、苦手だし、名付けには「おっけー」・・・むぅ!」


 ルカに拒否られた。何故だ。何か言おうとしていた気もするが・・・


 昨日怒ってしまったから拗ねてるのか? 確かにルカは頑張ってくれたんだよな……少しくらい褒めてやれば良かったかな? いやでも、調子に乗ってまた無茶をされても困る……


 くっ、反抗期の扱い方がわからん……! 


 


「言っとくけど、反抗期とかじゃないからね」


「違うのか? じゃあ手伝ってくれても……」


「なんか派閥とかできたらやだから」


「そ、そうか・・・」


 よくわからんが魔物には名付け親に従うという文化でもあって、手分けをすると俺派とルカ派が出来てしまうということか? 対立するつもりなど毛頭ないが、集団ではそうもいかなくなるのかもしれない。そんな面倒は起こしたくないし、じゃあここはひとつ、俺が代表ということで名付けを任されてやるか。


 


 列を作らせ、順番に名を与えていく。


 村長は"コグルド"。その息子は"コグル"。


 "コグタ"、"コグチ"、"コググ"……と些か適当なネーミングセンスだが皆喜んでいるようだ。


 ルカは俺の横でじっと名付けを見守っていたが、名付けに関わらないという意志は固いようで、宣言通り俺を手伝ってくれることはなかった。


 


 コボルト全員に名を付け終わり、次は狼族。


 新たなリーダーとなった狼、尻尾をぶんぶん振りまくるでかいワンコに"ギンガ"と名付けた瞬間……身体から一気に力が抜けるような感覚があり、意識が遠のく。


 な、何だこれ……身体が動かな…………眠? 


 いや、ルカさん? 君は、もしかしなくても知ってたんだな? 俺がこうなる前に教えておいてくれても良かったんじゃないかな? 『接続者アーカイブ』は俺が調べなかったらわからなかったのだろうし不問にするとして、目が覚めたらルカには一言文句を言ってやる……! 


 


 そう思っていたのだが……


 三日後、俺は村のボロい建物の中にいて、ルカの膝の上で目覚めた。


 


「あ、起きた? おはようレイ」


「ルカ? ……何でここに?」


「コボルト達は恐れ多いーっていうから、僕が世話してた。ほぼ何もしてないけど。」


 


 ルカは笑い、子供の小さな手で俺を撫でる。


『マナ感知』が切れ、何も見えず何も聞こえなかったのでわかっていなかったが、そういえば、このすべすべした感触がよく俺を撫でていた気がする。あれはルカだったんだな。


 どうやらずっと俺についていてくれたらしいことを思えば、文句を言う気もなくなってしまった。


 


 まあいいか、こうして俺は回復したのだし。


 じゃあ、村がどうなっているか様子を見に行かないとな。

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