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巻き込まれ転生  作者: てろめあ
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05話 地上へ

異世界に転生した僕は、"ルカ=エメラルド"と名付けられた。


 スライムのレイとヴェルニカと同じ名を貰い、僕を含めた三体が同格の存在になったらしい。


 何だか、とんでもないことになっている気がする……大丈夫かな? 


 


(水の刃!)


 


 レイの発射した水の刃が、大きな黒いトカゲを両断する。


 見た目はスライムなのに強すぎて、もう洞窟のボスの風格だ。


 いや僕だって、レイに『水の刃』を教えてもらって真似してみた。今も小さめのトカゲを倒したのは僕だし?傷をつけれなくて結局窒息させたけど・・・ でかい方は躊躇なくレイに任せましたが、何か? 


 


 レイのスライムボディがぷるぷるしながら、トカゲを『解析』する。


 トカゲからは『鱗装甲』がゲット出来たらしい。毎度のようにレイの『解析』を見守っていると、唐突にレイが僕を振り返った。


 


(ルカ、またせたな。)


(え、ああ。うん。大丈夫。)


(マナは吸収できてるか?。『接続者アーカイブ』が、倒したマナや魂は近くにいる仲間内で共有されるらしい。)


 


 何ですと!? やだ接続者先生イケメン、僕にも助言くれるのか。


 そういえば魔物が死んだ後、お腹らへんがポカポカするのはそのせいかな。


 身体の内側に意識を向けていると、そのポカポカを動かせる事に気がついた。


《エクストラスキル『マナ操作』を獲得しました》


 


(うわあああ、スキルゲット出来た!)


(おっ、良かったな。『接続者アーカイブ』によれば、それで更にスキルの規模や操作が楽になるらしい)


接続者アーカイブ先生大好きありがとー!)


(俺は……?)


 


 その後も、僕達は遠慮無く魔物狩りを実行した。


 洞窟の魔物はこれまで倒した奴ばかりで、新たに出てきた蜘蛛からは『糸生成』が得られたらしい。そして蝙蝠からは…………


 


「うーあーーーー」


「がんばえー」


 


『音波』を参考にして、レイが発声機能の獲得をした。


 地道な練習の末、とうとう言葉を話せるようになったのだ! 


 やった! と、テンション上がりまくりなレイはハイタッチを……というのは無理なので、ぽよんふよんと軽い体当たりをしてきた。もちもちしてた。


 


「ところで、『接続者アーカイブ』の検索面倒……」


「え、さらなるチートがほしいの?」


「いやぁ、どうせならAI的なのあったらもっと便利じゃね?」


「そのうちなりそうで怖いんだけど・・・」


 


 発声練習がてら、探索しながら際限なく喋りまくる。


 その所為というか、僕の『マナ感知』の効果範囲が狭すぎる所為というか、何度か魔物の接近に気付くのが遅れて奇襲されそうになってしまい、油断するなとレイに怒られた。ごめん。

霧は出せるようになったけど、感知とかは出来なくて、「おっマイナスイオンと神聖な空気を感じる」ってレイに言われただけだったし・・・


 それにしてもレイは自動的に周囲360度を見渡せるらしいのに、僕は意識を向けた方向しか探れないんだよな。まあ、『接続者アーカイブ』のサポートがない僕はこんなもんか……


 


 


   ◇


 


 


 ルカを連れて洞窟内部をうろつき、魔物達からスキルは充分確保した。


 念願の発声も出来るようになったことだし、そろそろ地上へ出ても良いだろう。


 その前に確認しておきたいことがある。


 


「ルカ、知らない人と話すのは得意か?」


「話す?なんで?」


「洞窟から出たら、人間と会うかもしれないだろ。話せるようにはなったけど俺はスライムだし、交渉するとしたらお前に任せることになると思う。」


「あー、うん。がんばってみる……」


「まぁ中学生には難しいか?・・・いざとなったら念話で話す内容は伝えるからさ。」


 


 自分が14歳の時とかは社交的な会話とか全然だったな。

帰ってゲームばっかやってたし、なんとなくルカも同じ人種なのを感じる。


 ルカの容姿は前世から見てもずば抜けて整っている。それにともなう面倒事は俺が処理してやればいい。


 


「俺が人間形態になるまでまっててくれな」


「うん!楽しみにしとくね!」


 ぐお!屈託ない笑顔!眩しい!守護らねば!!


 綺麗な楕円体のスライムボディを、ぐにょんと伸ばす。

なんとも不思議な感覚ではあるが、前世より快適だ。転生特典なのだろうか?

スライムで生まれたのだから違和感とかは感じないのか。深く考えてもわからんだろう。


「なあ、なんでその顔なんだ? 誰かをモデルにしたのか?」


「なんか魂の形?とかヴェルニカが言ってた。お姉さんも綺麗なんだって。」


「何言ってんだあのおっさん」


「大きくなったら結婚してくれるってさ」


「は?」


 何やってんだあのおっさん。


 つい連続の突っ込みをしてしまう。ルカを溺愛しすぎだろう……生まれた時から面倒を見ていて実の子のように思ってるなら、それも仕方ないのか? 


 というかこのまま大きくした姉?ドラゴンもいんの?どんだけ綺麗なのか楽しみ過ぎるな。

子供だというのにルカの青い瞳や白いまつ毛は吸い込む魔性の何かが・・・

いや、可愛過ぎるだけか。手遅れレベルにシスコンになってるな、俺。だが悔いはない。

というかローブしかルカは着てないが・・・


 


「ルカ! 靴、靴! あと肌着は!?」


「あっ!?」


 


 上擦った声がして、ルカが身体を水で覆い隠す。

 しばらく試行錯誤しているのか、パシャパシャと動いているのを眺めていると、ばしゃりと水が地面に落ちると、民族的な衣装に身を包んだルカが現れた。


 


「忘れてた……他に人いないし。」


「服とか作れるのか?」


「うん。何となくできた。」


「水を固めてるだけ……ってわけじゃなさそうだな?」


「よくはわかんない……」


 


 そうなると、最早水ではなくなるということか? 用途の幅が広そうな便利スキルだな。


 十分可愛いが、俺の前職的に納得がいかん!美少女には綺麗な服が必要なのだ!たとえデスマーチがあろうとも!!!

原住民の文化レベルがわからん現状、このまま人間の町へ行くのは少し難しいかもしれない。衣服の調達を検討した方がいいかな、と今後の課題として心に留めておく。

 


 そして俺達はとうとう洞窟の出口に辿り着き、外へ出た。


 この世界で初めて浴びる太陽光。スライムではあるが、『マナ感知』その他諸々のスキルのお陰で、光の眩しさや木々の葉音がはっきりと感じられる。感動的だ。


 


「おお……やった、とうとう外に出た!」


「しかし、洞窟だと思っていたが、巨大樹の虚だったのか」


「でっかいねー」


 ルカが、日差しの中で跳ねている。


 無邪気なヤツだ。まあ十代なんてまだまだ子供だしな、はしゃいでしまうのもわかる。


 ルカを呼び寄せ、あまり俺から離れないことと、周囲の様子には気を配ることを伝えておく。口うるさく言うつもりはないんだが、保護者としてはどうしてもな……


 ルカも俺に反発するでもなくわかったと頷いてくれて、うん、ウザがられないで良かった。結構懐かれているようで一安心だ。こうしてみると、妹ってのも可愛いもんだな。


 


 周囲に広がる森の中は平和そのものだった。


 気侭に散策しながら、スキル練習も行う。身体から出した『糸生成』で出した糸を枝に巻き付けぶら下がり、これはもしもの時の移動手段に使えるかな……と考えていると、地上から声。


 


「レイ、レイ……! 大変だ!」


 


 ふわふわとルカが駆け? 跳ね? 浮いて寄ってきた。その後ろに、唸り声を上げる数匹の狼を連れて。


 ルカは涙目でこっちに向かってくる……浮かんで木の上にいれば、狼くらいやり過ごせただろうに。まったく、だから俺から離れるなと言ったんだ。


 


「ルカ、あいつらに何かされたか?」


「え、何も?」


 


 無事ならば良い。だがルカは随分焦った様子だったし、デカイ狼に追い回されて怖い思いをしたんだろう。その仇を取るべく、俺は狼達を睨み付ける。獲物として目を付けられたなら逃げても追われるだけだ、ここは潔く応戦する構えと可愛い妹を追いかけた畜生へ殺意を…………


 


「キャイーン!」


 


 …………あれ? 


 狼達は子犬のような悲鳴を上げて、一目散に逃げて行った。


 


「おおー、やっぱり! レイが強いのはわかるんだな」


「ま、まあな! 俺ならこのくらい、軽いもんだ」


 


 スライムの分際で何を見栄張っているんだと自分で思わなくもないが、安心した雰囲気で見上げてくる妹の前でちょっとカッコ付けるくらい、許されてもいいはずだ。


 しかしスライムにビビるなんて、情けない狼共だったな。

名前:ルカ=エメラルド


種族:小水龍

加護:黒緑竜の加護

称号:転生者(自覚により取得)


魔法:なし


ヴァリアントスキル:『護心竜水』 『水ノ心得』


エクストラスキル:『身体変化』『マナ感知』『水脈感知』


コモンスキル:『念話』『浮遊』


耐性:炎熱耐性、毒耐性


※レイも黒緑竜の加護を獲得しています。

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