04話 探索
ぽよんぽよん、てくてく、と洞窟を進むスライムと幼女。
ヴェルニカを封印してしばらく経ったが、俺達はまだ洞窟内にいた。
俺はルカのスキルを『解析』して水を使った攻撃手段を獲得したものの、何しろスライムという頼りなさ。俺の弟となったルカを守りながら進まねばならないので、慎重になるのも仕方がないことだ。
ヴェルニカの周りはマナが濃すぎて魔物がいなかったそうだが、地上へ向かうならばやはり魔物の生息域を通ることになるだろう。ルカも魔物と戦ったことはないと言うし、危ない橋は渡れない。
すぐに発見した地底湖の周りをこそこそと、魔物の気配がないか確認しながら進む。
周囲はマナの影響なのか光る苔や水晶で幻想的な光景を生み出している。
徐々に活動範囲を広げて地上への道を探しつつ、薬草や鉱石を発見次第『収納』していく。特に『接続者』にて得た知識を使い知見を活かして、回復薬の素材のストックを増やしておきたいからな。耐性の多くある俺と、ルカは見た目からしてもその小さな身体では傷はさせるわけにもいかない。
湖の淵、幅の狭い岩場を移動していると、後ろで声(念話)がした。
(あっ)
(ルカ?)
(レイの能力、僕しらないや)
(おっ!じゃあ移動しながら教えるか!)
(うん!)
周囲を注意しながらルカに経緯を伝える。
(あー、一応俺の前世は田村良太。38歳の冴えないおっさんだった。
仕事はドットピクセルアートってわかるか?まぁ昔のゲームとかでよくあった奴さ。)
(わかると思う!スマホでもそういうのあったし!)
(そうそう、まさにそういうの作ってた訳だが、休憩にコンビニ行こうとしたら、まじで漫画みたいに女の子が絡まれててなぁ・・・昔クラスメイトが虐められてて何も出来なかった事が急に頭の中に浮かんで、気がついたら激しめの言い合いになった。)
(・・・・ん。)
ルカは少しうつむきながら返事をする。
(そしたら、後ろエグイ音がして、振り向いたら血走った目のヤンキーと頭から血を流す学生が倒れていて・・・そっからは多分守られた事。女の子を助けなきゃで頭が沸騰して、むちゃくちゃしながら女の子をなんとか逃げせたけど、気がついたらナイフでさされたっぽいんだよ。)
(・・・・・・)
(だんだん冷たくなる身体と、暗くなる視界の中で、あー死ぬならなんでも作れる能力といつでもネット検索出来る能力もって異世界転生してぇーって思っていたら・・・)
(・・・いたら?)
(眼の前にでっけぇドラゴン)
(ふふっ)
(そんで得た能力だけど、『神創精錬』は素材の質によるけどまぁなんでも作れる。作りたいものに対して素材の質が足りないと作成は失敗する。『接続者』は頭ん中に検索画面があって調べると該当項目が出てくるって感じだ。スキルの取得とか手助けしてくれるし、多分こいつのおかげでルカのスキルを『解析』して『模倣』で『水操作』を覚えたって感じだな。)
(はぇー・・・なんていうか・・・チート?)
(まだ世界にどんなのがいるかわからんが、現状チートだな。あとは・・・この『収納』っと。)
洞窟に広がる地底湖の水が干上がった。全ての水が一滴残らず、消えるように無くなったのだ。岩肌には濡れた形跡すら残っていない。地底湖の水もマナが濃いらしく生物は皆無で、今まで湖底であっただろう地面には、何もない。
(こんな感じに、ようはアイテムボックスだ!)
(僕…弱すぎ…?)
(大丈夫!存在昇華?ってのとかルカはヴェルニカの妹なんだろ?そのうち強くなれるって!)
(う……うん?)
疑問形が返ってきた。
話を聞くと、ルカの持つヴァリアントスキルは2つとも水を扱うらしい。だがウォーターカッターをイメージしても、シャワーの出口を抑えて出るちょっと水圧の強いあれくらいが限度。でも守護イメージをするとその通りに水は答えてくれる、とルカは語った。なんとも他者を傷つけるのが苦手とは、我が妹はなんとも良い心の持ち主だ。守護らねばな。
話をしながら『解析』やら『接続者』で攻撃手段を模索する。
基本は『水操作』での窒息狙いと、相手の能力を『模倣』でパクっていこうと思う。我ながらひどい。だが自重はせん!
地底湖を離れ、新たに見付けた道の先には扉があった。
三人の武装した人間が入ってくるのと入れ違いに、ルカを連れて扉を潜る。
交渉してみようかとも思ったが、魔物扱いがわからないし、今回は諦めた。俺もまだ喋ることさえ出来ないスライムなのだし、人前に出るには早すぎる。
ルカが俺たちを周囲の岩肌と同じに見える水を展開して隠してくれて事なきを得た。
その後、バッタリ遭遇した初めての魔物、巨緑蛇を『解析』し、『接続者』のアドバイスに従って模倣すると、俺は新たなスキルを獲得した。『熱源感知』と『毒素生成』だ。
『水操作』が思いの外強力で、魔物を窒息させながらそれを駆使しながら進む。
(ルカ、後ろ!)
(えっ? ──うわ!?)
不意打ちを仕掛けてきたでかいダンゴムシ?の牙が、身を躱したルカのすぐ真横でガキンと噛み合い、ルカの体の周りを覆っていた水が弾ける。
コロコロと地面を転がるルカを追ったダンゴムシの進路を遮るように、『水操作』で壁を形成。いきなり出現した壁に戸惑うダンゴムシを水で覆い、水牢に閉じ込めて倒すことに成功した。
ダンゴムシの死体を『解析』し、獲得したスキルは『麻痺毒生成』。
あの牙麻痺かよ・・・
(平気か? ルカ)
(ごめんレイ、気付かなかった……)
ルカの身体に、怪我はないようだ。
しかし、俺には『熱源感知』もあるとは言え、前を歩いていた俺が背後からの敵襲に気付いて、ルカが気付かなかったのはどういうわけだ?
(お前も、『マナ感知』は出来るんだろ? 後ろから近付いてくるヤツがいると、見えるよな?)
(後ろも見ようと思って見てないと、見えないよ。ずっと集中してると疲れる)
え? そういうもんか?
俺は特に何も意識しなくとも、周りの情報が入ってくるんだけど……
一応『接続者』で調べとくか。
《『マナ感知』には膨大な情報処理が必要のため、『接続者』とリンクさせることで常時全方位の感知が可能となっています》
なるほど、俺には『接続者』の補助があるからオートで済むが、ルカはマニュアル操作が必要なわけか。反則技で楽をしている以上、俺に偉そうなことは言えないな。
……あ、そういえば、同じようにルカをリンクさせることで働いてくれるのでは?
《個体名:ルカ=エメラルドとの各スキルとのリンクは手動設定が必要です》
ふむふむ……
『接続者』の見立てをルカに伝え、『マナ感知』とのリンクを試してみるように言う。
(・・・どうやって?)
(出来るか調べる)
《個体名:ルカ=エメラルドとの接続手段がないため、不可能です》
(無理だってよ)
(無理かー……手動でリンクって、念じるだけで良いのかな……任せる感じ……?)
スキルをリンクさせてみろとか意味不明な無茶振りをされたら、俺だって困惑必至だ。
ブツブツ言いながら集中し始めたルカを見守っていると、ルカは突然うわっと慌てた声を上げ、わたわたしながら宙に浮いて、やがて落ち着いた。どうなったんだ?
(どうだ? 成功したのか?)
(なんか急に浮いた!)
(え、何だって?)
(繋がろうとしてみたら浮いたの!!)
(ぬ…………?)
(むぅ…………)
(難しいか……)
(楽は出来ないね……水を霧状にして感知出来ないかとか試してみるよ)
落ち込みながら周囲に水を撒き始めたルカを慰める。
俺の『接続者』がチートスキルだということが、ますますよく分かった。俺ばかりこんな有能なスキルを持っていて申し訳なくなってきたな、何か手助けしてやれないものか……待てよ?
(そうだルカ、何なら一度俺に『解析』されてみるか? 『接続者』がお前のスキルを解析できたら、使い方を教えてやれるかもしれないし)
(なるほど、その手が……)
その発想はなかったようだ。
ルカの了承を取り付けて、早速『接続者』を使う。
《ヴァリアントスキル『解析』にて、個体名:ルカ=エメラルドを解析します……存在格差により失敗しました》
(あっ? 今……存在格差により、無効化に成功しましたって言われた)
まさかの失敗。すまんルカ、楽をさせてやれなかった。
それにしても存在格差とは……スライムと小さいとはいえドラゴンだもんな……
しかしルカのスキルを解析してやるという案も、これでダメになってしまった。難しいだろうが、やはり自分で色々と試しながら確かめてもらうしかなさそうだな。
ステータス
名前:ルカ=エメラルド
種族:小水龍
称号:転生者(自覚により取得)
魔法:なし
ヴァリアントスキル:『護心竜水』 『水ノ心得』
エクストラスキル:『身体変化』『マナ感知』『水脈感知』
コモンスキル:『念話』『浮遊』
耐性:炎熱耐性、毒耐性
◇
名前:レイ=エメラルド
種族:スライム
称号:転生者
魔法:なし
ヴァリアントスキル:『神創精錬ライフメーク』 『接続者アーカイブ』
エクストラスキル:『マナ感知』『収納』『解析』『模倣』『水操作』
コモンスキル:『念話』『熱源感知』『毒素生成』『麻痺毒生成』
耐性:炎熱無効、毒無効、痛覚無効、出血無効