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巻き込まれ転生  作者: てろめあ
2/15

異世界転生編 01

(おーうい)


 


 頭に響く声がした。


 その一言に覚醒を促され、意識がぼんやりと浮上する。


 


(そこな子よ。いい加減に目覚めたらどうだ)


 


 ん……? 


 何だ? 誰だ? ここはどこだ? 


 


(こちらが黙っていればいつまでも良い感じに眠り続けおって。誰が連れてきたのか知らんが、それならそれで先客である我に相応の誠意を見せるが筋ではないのか)


 


 一体何を言ってるんだろう。真っ暗だけど、ここはどこだ。


 確か僕は学校の帰りに、なんか言い争う人と・・・クラスの子を・・・


 


(おい、聞いているのか? 早く起きろと言っているのだ)


 


 あれ? 変だぞ……何で、おしりの先に変な感覚が? 

あと、手が全然動かない……?


 顔をうまく上げられないし、それどころか、寝てるのか立ってるのか座ってるのか全くわからない、どういうこと? これは一体──


 


(……えっ?)


(おお、ようやく起きたか! 精神生命体ならば、『マナ感知』程度は備わっているな?)


 


 視界とはまた違う、形容し難い不思議な感覚だった。


 目の前に広がる光景にたった今気が付いたかのような唐突さで、僕はそれを認識する。


 四方を岩で囲まれた洞窟内に、とんでもないデカさを持って陣取った黒緑の竜。


 


(我は"緑真竜"ヴァルニカ。暇を持て余していたのだ、歓迎するぞ新たな兄弟よ)


(ヴァ……?)


 


 ヴァルニカ──!? 


 て……転生? 異世界? えっ何僕死んだの? ラノベみたいにここに来たの? 僕死んだの? 


 いきなりの出来事にパニックになる。


 その瞬間、頭の中にフラッシュバックしてきた記憶。


 


 帰り道。クラスメイトの女の子が、ガラの悪そうな奴らに絡まれていて、

 それを助けようとするサラリーマンが居て、

 後ろから金属バットを持ったやつがサラリーマンを・・・

 僕は気がついたらかばって・・・


 硬いアスファルト、身体が浮遊感に包まれて。今から自分の身に起こる、最後の現実に恐怖する暇もなかった。抵抗出来ずに道路に投げ出された僕を襲った衝撃は、十四年近く過ごしてきた日常からは余りにもかけ離れたものだった。


 


(僕……死んだのか……)


(ん? 何も我は、お前を滅ぼすつもりなどないぞ?

 姉上たちに限界ギリギリお仕置きをくらうのでな)


 


 そうか、僕は死んだんだ。


 助からなかったからこそ、こうしてこの世界に転生…………


 


(ただその、少しな、我の話し相手に)


(は!? 転生した!?)


(急に何だ! というかお前、我の話を聞いておらんな!?)


(僕はどうなったんだ? 何に生まれ変わったんだ!?)


(──ええい、聞けと言うに!)


(うわっ)


 


 ビリビリと震えるような一喝を受けて、ようやく僕は我に返った。


 あ……ああうん、眼の前にどうみてもラスボスか裏ボスのいかついドラゴン。"緑真竜"ヴァルニカだなんて超危険物体を目の前に置きながら、パニックを起こしている場合じゃなかった。


 


(まったく忙しのない……どうだ、落ち着いたか)


(はい、すみませんでした……)


 


 これは念話というやつだろう。


 だって口動いてないし、ていうかドラゴンだし。


 


(生まれ変わった、と言ったな?もしやお前は転生者か?)


(た……たぶん。前世? では、人間だった記憶があるので……)


(それは珍しいことだな。そしてこの世界で、我のマナから発生したというわけか)


(あのー……なんか身体が安定しなくて……ってもしかして浮いてる……?)


(む、マナに慣れておらんとは本当に生まれたてなのだな

 フハハハ!我が手取り足取り教授してやろうぞ!!)


(ありがとう・・・ございます・・・?)


 


 どうやら僕は、ふよふよと宙に漂う感覚がある。


 空中で自分の身体をどうにかこうにか、ゆっくりと地面へ向けて下ろしていって、そして、岩が剥き出しの地面へふよりと降り立った。


 


《エクストラスキル『水脈感知』を習得》


 


 !? 


 突然聞こえた無機質な声。 


 


(あの……えー、『水脈感知』? っていうのは、何のことですかね?)


(ほう?貴様が司るは水か。一番上の姉上がいたら狂喜乱舞で山が消し消えるであろうな…

 おそらく貴様が聞いたのは世界の声よ。新たに収めた技術、能力は世界より我らに伝わるのだ。)


(というか、僕ってどんな見た目なんです・・・?)


(なんと!自身を自覚できておらぬか!?ぬぅぅ、どういうことであるか?我ら龍種に連なるは必定。しからば・・・むぅ、わからん!わからんが貴様は竜だ!この世に今は4体、いや貴様を入れれば5体目の竜であるぞ!末妹よ)


 

 なんかすごい鼻息ぶつりにのけぞりながら、自覚する。

 短いちっこいおててにかわいいお爪。

 スリムなほそっこい、東洋の竜のような体。

 先っぽにふさふさがついてる尻尾ちゃん。


(どうみても竜じゃん!というか龍じゃん!!)


 まずは何かやってみようということで、短い四肢を地面で動かすも、爪とかが邪魔してとにかく動きづらい。洞窟の砂混じりの地面が爪の間に挟まって大変いやです。洗いたい!

 その途端、お腹から引き寄せられるような感覚に襲われた。


 さらり、と滑る水の感触。


 


《エクストラスキル『水生成』を習得》

《エクストラスキル『水操作』を習得》


 


 なんかぽんぽん言われたけど、とりあえず水を生み出して操れる?らしい。空中に水の玉が浮き上がっており、そこに手を入れて洗うイメージをすると、水が勝手に汚れを落としたくれた。スキルの発動方法なんて知らないが、またさっきの機械的な声が聞こえてきたし、『水操作』は成功したんだろう。もういらないと思うと、水は地面にばしゃりと落ちた。


 


(うまくいったようだな。こんな場所で生まれ出てくるとは面白いヤツだが、龍種の近くに生まれるは必然。我が兄として面倒を見よということか。)


(……あ、ありがとうございます?)


(それにしても、本当に可愛い奴よの。もう少し気合を入れて……龍種らしく体裁を整えられぬのか?先程のように浮いてみよ。浮きたいと願ってみよ。)


(ちょっと……ん……あ、浮いた。このほうが楽なんで慣れるまでこれでいきます)


 


 地面を這って進むなんて正直手足が汚れて嫌だし、身動きするにも練習が必要かもしれない。ふわり、ふわり、と一歩? ずつ? 動いた俺は改めてヴァルニカの前へ移動し、その巨体を見上げた。


 


(えーと、お騒がせしました)


(気にするな。我は話さえ出来れば良いのでな!)


(……)


 


 やっぱりヴァルニカ、怖くないよな……妙に安心感を感じるし、胸の奥からこの人?は大丈夫って感覚があるし、フレンドリーだし、親切だし。、これが世に恐れられている邪竜だとか言われても信じられないぞ……? 


 転生したと気付いた時にはパニックだったけど、生まれたのがここで良かったのかな?


 


 


 


 


 それから数日が経った、と思う。


 洞窟内なので昼夜の感覚が全くないし、この身体には呼吸も食事も、睡眠も不要のようだ。たっぷりある時間を使ってヴァルニカと話をして、他には身体を動かす練習、飽きたらまたヴァルニカの前にふわりと浮いてトークタイムというのんびりとした日々が続いていた。ヴァルニカともすっかり仲良くなっている。


 


(ヴァルニカ、辺を探検してくるよ)


(一人で大丈夫か? この周辺であれば魔物はおらぬだろうが、あまり遠くへは行かぬようにな? 我の目の届く所までにしておくのだぞ?本当にだぞ?ん?)


 


 仲良くなっているどころか、今やヴァルニカは完全に世話焼きのようだった。もういっそ過保護竜ヴァルニカに改名すればいいんじゃないかなと思う。僕の立ち位置は一体どうなってるんだ……


 そりゃヴァルニカにしてみれば、目の前で発生した生まれたての奴が、ようやく起きて歩けるようになってちまちまと動き回って……ってこれ近所の赤ちゃんの成長を見守るような心境だ! 微笑ましい感じのヤツだ! だから僕に甘々なんだな、よくわかった。


 


 ふわふわ浮きながら岩肌を移動。あまり速度は出ないけど、辺りに水を出す『水生成』で自分の身体の周りを浮かせる。


 さらりと振り返ると、『神聖封印』で動けないヴェルニカが岩の間からこっちを見ていた。僕に気付くとその頭が左右に揺れる。何だあの竜かわいい。



 今僕はペットボトルサイズの竜だけど、出来ればもっと身体を大きくしたい。せめて威厳がでるくらいの大きさにはなりたい……


 僕はとある計画を実行するため、地面に転がる小石の一つに体の周りに浮く水を叩きつける。


 と、そこで、僕のスキル? が久しぶりに新しいことを喋った。


 


《ヴァリアントスキル『護心竜水マモリリュウ』が使用可能です》


 


 え、ヴァリアントスキル? 


 


(あの、その『護心竜水マモリリュウ』って、どういうスキル?)


 


 …………


 …………


 無視だった。何度話し掛けても、こいつから返事が来たことはない。


 喋る時は唐突、僕に話し掛けているわけじゃないのでは? 本当にただただ状況を呟いてるだけで、それを僕が一方的に聞いているだけ……どうしてこうなった。なんか鑑定とかが異世界転生の定番ではないんけ? 


 


 とにかく状況を分析してみる。


 今、僕は小石に水を叩きつけ、小石をぶっ飛ばせるか試していた。 


 ファンタジー世界っぽいし、確実に戦闘はあると思うので、何かできないかとやってみる『護心竜水マモリリュウ』を使用するイメージ……水で攻撃ーーと念じていると、新たに生成された水がビュンと小石を叩き割った。更に自身を守れと念じると体の周りに薄い水の膜が出来上がった。


 


 なるほど! 水で色々出来る!でもそれって『水生成』と『水操作』でもできるのでは?

 ・・・まあいいか!! 


 


 それから思いつく限りにスキルを試す。何だか嬉しい。探り探りだけど、少しずつ自分のことがわかってきたぞ。


 早速戻ってヴェルニカに報告しようかな! 

ステータス

名前:

種族:小水龍

称号:なし

魔法:なし

ヴァリアントスキル:『護心竜水マモリリュウ

エクストラスキル:『水操作』『水生成』『マナ感知』『水脈感知』

コモンスキル:『念話』『浮遊』

耐性:炎熱耐性、毒耐性

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