第一章 第1話 -才能付与転生プログラム-
2日に1話投稿になりそうです
プロローグは全部で10話ぐらいになりそうかな?
変更履歴
2023年9月25日 改行を減らしました。
2023年9月26日 次話と辻褄を合わせるため、少し加筆修正しました。
2001年8月9日
今日、私こと熱海玲は、中学生のころからの親友、オタサーの姫のような容姿をした佐藤千春、オタクで少し陰気な音又黒子と一緒に、大学のサークル活動として、夏コミに車で向かっている。
「楽しみだね!夏コミ!」
「た、楽しみです!」
「夏コミは知ってても来たことはなかったから私もワクワクしてるね」
私たちは、今回の夏コミにサークルで作ったドットの2DRPGを出すことになった。
私たち1年生が入学前から作ったこのゲームには、1年ほど時間を費やしているので、結構な自信作だ。
「いやあ、でも当たってよかったね」
「ほんと夏コミに当選しなかったらどうしようかと思いましたよ……」
夏コミというのは、応募したからといって、落選する場合ももちろんある。
落選した場合は来年に作品を持ち越すか、今回の作品を捨てて、また違う何かを作らなければならないから面倒くさい。
「確か当選確率は70%前後ぐらいだったっけ?」
「てことは30%ぐらいの人が毎回落ちてるんですよね…」
来年は私たちもどうなるかわからないし、今のうちから祈っておいたほうがいい気がしてきた。
「もうすでに先輩たちに作品を運んでもらってるんだよね?」
「そうそう、今回のは結構な数あるからね」
私たちが入ったのは結構有名なサークルで、知名度がそれなりにあるらしい。
その影響で、私たちが作った作品も結構な数の在庫が必要なようだ。
「先輩たちには感謝しないとね」
「今回こんだけの数を用意できたのも先輩たちのおかげだしね!」
「私が作ったゲーム内bgmに違和感とかないですかね……」
まあ不安になるのも無理はないだろう。
今回の作品は売るということもあって、相当なプレッシャーがかかっても仕方がない。
「まあそこらへんは気にしないほうがいいんじゃない?」
「そうそう!というかもう直せないし!」
「まあそうなんですけどね……」
そもそも黒子の性格的に、メンタルはあまり強くないだろう。
そういう時はそこから目を背けるのが一番の対処法だ。
「でもやっぱりプロとかと比べちゃうとなかなか……」
「そういう人とは比べないほうが良いんじゃないかなぁ」
『プロ』と呼ばれる人たちは、努力をするだけでなく才能も少しはあるだろうから、
比べてしまうともっと落ち込むことになりそうだ。
「まあ頑張ったんだし後は買った人からの感想が付くのを待とうよ!」
「そうですね……」
話に区切りがつき暇だったので右を向くと、様々なポスターが貼ってあり、その中に『Motako社』から出た神ゲーと噂の「ファンタジークエスト2」の宣伝ポスターがあった。
「あのゲームってRPGでしたっけ?」
「そうだよ~!千春あのゲームやったことあるけどめっちゃ面白かった!」
ファンタジークエストはコマンドバトル型RPGで、ドット絵ながらもきれいな演出と、満足度の高いストーリーがいいらしい。
「確か『Motako社』の社長の笹峰誠って最近結婚したんだよね」
「社長のお父さんが用意したお見合い相手との結婚だった気がします」
「今頃お見合いなんてあるんだ!?」
『Motako社』の社長とお見合い相手の相性がとてもよく、めでたくゴールインしたらしい。
社長自身が、以前SNS上に写真と一緒にこの文言を投稿していた。
「相手が確かとても有名な女優で…花林さんでしたっけ?とても美人でしたし、妊娠してましたよね」
「社長自身もめっちゃショタって感じだったなあ」
「それ社長さんのSNSめっちゃ荒れてそう……」
お見合い相手というのは、自分の親と相手の親の結びつきが強ければ強いほど結婚まで行きやすい。
だが世の中には政略結婚という言葉があるように、利益を求めて結婚させる親もいるため、相手があまりよくなくても断れなかったりするのだ。
「私はいやだなぁ~お見合い結婚」
「やっぱり自分で選べないですもんね」
「まあでも結婚したい人はいいんじゃないかな?」
「確かにね~……
ってあれ、なんか周り騒がしくない?」
「ほんとだ、何があっt
バンッッッ!!!!!!!!!!!!!
あ ぇ ? … …
ハァッ!? なにが起きて……」
ここ……どこ?……
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先ほど何か大きな衝撃があったが、目を開けたら謎の白い部屋にいた。
ここはどこなんだろう、誘拐されたのかな?
右を向くと千春と黒子が横たわっていた。
「ねえ、起きて!」
「んぇ…どうしたn……」
「ぅん…?どうしたんですk……」
「「ここどこ!?」」
この二人もここがどこなのかわからないらしい。
「黒子達は何者かに連れ去られてしまったんでしょうか……」
「でも意識が落ちる前車にぶつかるような何か大きな音がしなかった?」
「たしかに、何かの衝撃で飛ばされた?」
「てことは黒子達は死んだんですかね?」
「うん、そうだね」
「「「!?!?!?」」」」
私たちしかいないはずのこの部屋に、私たちの考えを肯定した誰か声が聞こえた。
その方向に目を向けると、神々しいオーラを発している、ボーイッシュな女の子が宙を浮いていた。
「おっと、びっくりさせてすまないね」
「……あなたは誰ですか?」
「ああ、私は下界で『神様』という風に呼ばれているものだ」
「かみ…さま…?」
「てことは…千春達は死んだんだ…」
「そうだね」
それから聞いた神様の話によると、私たちは暴走していたトラックに横からすごいスピードで衝突され死んだらしい。即死だったそうだ。
疑問を持った千春が指摘する。
「いや、でもあなたが神様という証拠はどこにもなくない?」
「確かにそうだね……じゃあ死んだということを証明しようか」
そうつぶやくと、どこからともなく刃物を出し、千春に飛ばした。
「何してるの!?」
「いやでもほら、傷ないじゃん」
刺されたと思った刃物は千春をすり抜け後ろに飛んでいき、千春は傷一つなかった。
「ほんとだ…すり抜けてる…」
「これどうなってるんでしょう……」
「魂だけだからね、幽霊のようなものだよ」
魂というのは死んでも消えないが、実体はないようだ。
幽霊というのも輪廻転生ができなかった意志の強い魂が現世に残ることが原因らしい。
「君たちも輪廻転生する予定だったんだが、そこの枠から君たちだけ取らせてもらった」
「え…なんでそんなことをしたんですか?」
「ああ、そんな怖がらなくていいよ。取って食うようなことはしないから」
「じゃあなぜこんなことを?」
「それはね、記念すべき100グループ目の才能付与転生をさせるためさ」
「さいのうふよてんせい?」
神様の話によると、才能付与転生とは輪廻の中にある魂を一グループ取り出し、好きな才能を与え転生させることらしい。
私たちはその才能付与転生プログラムの100グループ目に選ばれたようだ。
「そういうのは…完全にランダムなんですか?」
「まあ基本的には、話す時間もなく即死した人の中からランダムに選んでる感じだね」
トラックに撥ねられて即死した人や、脳梗塞などで即死した人に多いらしい。
「確かにそういう転生系の小説結構ありますもんね……」
「あっ、それ私も見たことある!」
「結構有名だからね転生系」
「その転生系と呼ばれるジャンルの小説の最初は、私の天使に書かせたものなんだ」
「「「そうなんですか!?」」」
なんでも才能付与転生プログラムの最初のほうは、自分が死んだことに耐えられなくて精神が崩壊することが多々あったらしい。
その防止のために『転生』というものをいろいろな人に知ってもらう必要があったそうだ。
「ちなみにその100グループ目記念というのは何かあったりするんですか?」
「もちろんあるよ、10、20、30、というキリがいい数字の人たちには記憶を保持して転生させているんだ」
「え、そんなに記憶持ったまま転生させても大丈夫?…」
「もちろん大丈夫さ、そういう人たちは100年ごとに転生させてるからね」
転生させた人の中には、その才能を使って悪事を働いた人もいたそうだが、そういう人たちにはほかの人より何回も多く悪い人生を送らせることにしているらしい。
記憶がなくても何回も嫌な人生を送るってつらそう……
「ちなみにそれは何かルールとかは……」
「まあ基本的なところだね、このプログラムがあるということを公言しない。与えられた才能を悪用しないということぐらいかな」
「役目的なのもあるの?」
「役目を遂行するのは黒子には難しいかもしれないですけど……」
「ああ、そんなに深く考えなくていいよ、基本的には技術や文明を進展させるってぐらいだから」
そもそもこのプログラムは、技術や文明の進みが遅く、土地の取り合いばかりしていた下界の人々に嫌気がさし、いっそのことこちら側から時代を進展させてしまおうという考えのもと作られたらしい。
確かに縄文時代は約一万年もの間続いていたし、世界大戦とかで取り合いばっかりしていたからね。
「ああでも選べる才能は3つだけだよ、あと他にも特典として美貌を与えているからそれ以外でね」
「なんで美貌なんですか?」
「まあ下界の人々は良くも悪くも容姿で判断することが多いからね、そこの補助だよ」
確かに才能はあっても容姿がそうでもないと、評価が低くなったりするからね。
それに前世と同じ顔だと、前世のころに知り合った人と会ったとき、何か言われたりするかもしれないし。
「夏コミのほうに行ってた、先輩たちは大丈夫ですか?」
「うん、見た感じ君たちが来てないことに気づいてるっぽいけど、何とか人員をやりくりして売ることはできてそうだよ。まあ君たちが死んだことに気づくのは少し後だろうけどね」
もうすでに自分たちが作ったゲームも運んであるから、大丈夫だろう。
「じゃあ僕はここで待ってるから3つの才能を決めてね、何か質問があればご自由に」
「あ、はい、わかりました」
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