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彼の進む道  作者: けやき
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休息

旧世界 神楽の部屋


ミゲル達と戦った翌日。

トシキと神楽、霊紗は部屋に集まっていた。キャロルに報告するために集まった3人だが、その場の空気は重かった。

その原因はトシキ。

人を殺そうとした。殺そうと覚悟し、逆刃をといた。

結果的にミゲルを殺したのはヴァニタスだったが、殺そうとしてしまった事に恐怖と後悔を抱いていた。

朝、部屋に入ってきた時から俯いた状態で、神楽達が話しかけても上の空で、なぁなぁ返事だった。

次第に、神楽達も話しかけるのをやめ、バラバラに部屋の中に座っていた。


「こんにちわ。皆さん。」


重い雰囲気を破って、キャロルから連絡が来た。神楽が慌ててキャロルのホロビジョンを作り出している通信機に近づいた。


「…何か雰囲気悪いわね。」


部屋をざっと見回して神楽に聞いた。


「実は…」


神楽が昨日の事を話し始めた。


・・・・・


「なるほど。そんなことがあったの…」


心配そうに部屋にバラバラに座っているトシキ達を見た。


「ともあれ、謎の組織のメンバーが2人減ったのはお手柄よ。よく頑張ってくれました。」


「…ありがとうございます。」


「…」


トシキと霊紗は何も答えなかったが、神楽が小さくお礼を言った。


「…思ったよりトシキ君は重症みたいね。」


神楽にしか聞こえないぐらい小さな声で言った。


「はい、人を殺そうと逆刃をといちゃったのが結構キテるみたいなんです…」


神楽の考えはだいたい合っていた。


「それはそうね。人を殺そうとしたんだもの。私達だって、軍の人ですら怖いわ。」


心配そうにトシキを見ながら言った。

う〜ん…。とキャロルは何かを考え始めた。神楽が不思議そうにその様子を見て、霊紗も横目で見た。


「トシキ君、ちょっと来なさい。」


突然キャロルがトシキを呼んだ。トシキはゆっくり通信機に近づいた。キャロルは神楽にちょっと離れてて、と手で合図した。

神楽は頷いて、霊紗の方に行った。


「人を殺す事は怖いですね。あなたは、殺そうとして恐怖をかんじたんでしょう?」


キャロルが神楽の言った部分だけを聞いた。


「…」


その問いに、トシキは何も答えなかった。


「あなたは…そうね、恐怖もだけど後悔と情けない、と思ってるんじゃないですか?恐怖以上に。」


キャロルの問いにトシキは思わず顔をあげた。思いきり図星だったため驚いていた。


「あなたは“殺す事”より“殺そうとした事”に対して怒りも感じてるんじゃないかしら?」


「…はい。」


キャロルには自分の今の感情を完全に読まれている。そう思いうなずいた。


「殺さずに済んだのは結果論。ヴァニタスが来なかったら確実にオレが殺していた…」


そう言って、トシキはまた俯いた。


「なら、あなたはこれから殺そうとしなければいい。殺さないために逆刃を絶対にとかなければいい。」


「…」


その考えはさっきから自分に言い聞かせるように心の中で思っていた。


「どうやら、そこまでは考えてるようですね。なら、後はあなた次第です。」


「オレ次第?」


トシキは顔をあげ、キャロルを見た。キャロルはトシキの顔を見てクスッと微笑んだ。


「そう。あなたは、人を殺そうとした自分に後悔や怒りを感じてる。人を殺そうとしたり、殺したのに後悔等を感じない人はどちらの世界にもいます。」


一度言葉をキャロルはきった。


「確かに結果的に人殺しはしなかった。しなかったけど、殺そうとした事に怒りや後悔を感じてる。…私が言いたい事が、あなたなら解りますね?」


トシキに問いかけ微笑んだ。


「…はい。今日中に何とかしてみせます!」


そう言って、立ち上がった。

急に立ち上がった事に、神楽達が驚いた。

トシキの顔はさっきよりも明るさを取り戻していた。

その様子を見て、キャロルは微笑んでいた。

・・・・・・・

旧世界 空き地


空き地のはしっこにある岩の上にトシキは座っていた。

ミゲルと闘い、殺そうとした。殺そうとしたが殺せず、ヴァニタスが殺した。


「…オレは間違うのが怖い。でも、間違わないようにするのはできる。」


空を見上げた。


「オレは一度間違いをしかけた。間違わずに済んだのはただの運だ。でも、その運のおかげで道をハズレずに済みそうだ。」


雲をつかむ様な感じで手を伸ばした。


「…あんた何してるの?」


岩の上に座って空に手を伸ばしているトシキを訝しげに霊紗が見た。


「何って、心の整理だよ。」


手をおろして霊紗に微笑んだ。トシキの表情は、何処かスッキリしたような顔をしていた。


「あらそう。よかったわね。」


霊紗が、腰に手をあてて、やれやれ、という感じで言った。


「オレは戦うって事を軽く考えてたんだな。」


「…」


「だからオレは決めた。人を殺さない闘いをする。逆刃を絶対にとかない。」


「そう、なら大丈夫ね。」


トシキの意志を聞き霊紗は後ろを向いた。


「…何で此所に来たんだ?此所に用があったんじゃないの?」


空き地から出ていこうとした霊紗にトシキが聞いた。


「…別に、気晴らしに来ただけよ。そしたら先客がいたからやめただけ。」


「もしかしてオレを慰めようとしてた?」


トシキがイタズラっぽく笑って言った。霊紗はピタッと止まった。


「…何言ってんの?バカなんじゃない?」


霊紗は振り向かずにそう答えたが、トシキは励まそうとして来た事に気づいていた。


「ありがとな。」


そう霊紗に言って、霊紗より前を歩いていった。


「…ばか。」


トシキに聞こえないように呟いた。

2人は微笑みながら少し距離を開けて歩いた。


・・・・・・・・・・・トシキの家の帰り道


霊紗とトシキの間に距離はあるが帰路についている途中。


「トシキ!!」


急に名前を呼ばれて声のした方を見た。霊紗も驚いて声のした方を見た。


「…明日菜?」


そこによく見た顔があった。最近会ってなかったせいか、何処か懐かしいような感覚をうけた。


「…私の知らないうちにまた知らない子を連れて…」


ぶつぶつと呟いた声を、トシキは聞いていなかったが、霊紗は何とか聞き取った。


「誰?」


明日菜の呟きを聞いて霊紗がトシキに近づいて聞いた。声が何処か冷たかった。トシキに近づいた霊紗を明日菜が睨み付けたが、霊紗は軽く流した。何と言うか火花バチバチ状態である。


「そか、そういえば紹介してなかったな。」


そんな2人に気づかずトシキが明日菜の横に立った。


「えーと…幼馴染みの明日菜と、ん〜………、友達の霊紗。」


明日菜を霊紗に簡単に紹介してから、霊紗のそばまで行き、また簡単に紹介した。


明日菜は霊紗を紹介する時の間を不審に思った。それを察したのか霊紗は


「…友達の霊紗です。よろしく。」


明日菜に右手を出した。

本人がそう言ってるのなら、と明日菜は少し不満そうだが握手に応じた。


霊紗の後ろに立っていたトシキを、霊紗は左手でちみきった。


「あたっ!?」


トシキがつねられた手を押さえながら泣きそうな顔で霊紗を見た。

そんなトシキを冷たい目で見てから霊紗はスタスタと歩いて行ってしまった。


「なんなんだよ…つねられ損かよ…」



文句を言いながら手を擦っていた。


「最近家にいないけどどうかしたの?」


霊紗の後ろ姿を見てからトシキに振り返った。その目が少し怒っているような感じなのに気づいた。


「あー…何かと忙しくなったって言うか、うーん…」


魔法や魔物、ねじれの事を言うわけにもいかず言葉を濁した。


「…神楽って子や、さっきの子も関係あるの?」


明日菜は鋭い事を言った。思わずドキッとしたが、顔にでないようにした。


「…あ〜、まぁあるかな。詳しくは言えないけど。」


平静を装い、下手な事を言わないように言葉を選びながらいう。


「3人で自警団みたいな事をしてる。たまに危ないけど、そんなに活動をしてる訳じゃないよ。」


自警団はまずかったかと思った。


「…小さい頃から変わんないね。野犬が出るから退治しに行こうって、棒をもって山までいって野犬を出てこないようにさせたり。」


懐かしむ様に明日菜は言った。どこか寂しげな表情をしていた。


「…まぁいいわ、いずれ話してくれれば。トシキを困らせたくはないし。」


肩をすくめて明日菜は言った。やはりどこか寂しげな表情をしている。


「…明日菜」


明日菜の表情を見て、どう対応していいかわからず、トシキは名前を言って固まってしまった。


「…絶対に教えなさいよ!約束だからね!!」


そう言った明日菜の顔は、さっきまでと違い笑っていた。


「…うん、必ず!!」


明日菜が無理して笑顔を作っているのに気付き、でも、気付いていない様にトシキも笑顔で答えた。


「よし!」


明日菜は振り返って走っていった。


「…必ず教えるよ」


その場でトシキは言った。


「必ず」


明日菜の後ろ姿を見送った。



こんにちわ

はじめましてのかたは初めまして。

すでに前の話をよんでくださった方はお久しぶりです。


今回は短めです。

久しぶりに明日菜登場。

別に忘れてた訳じゃないですよ?ホントだよ?

タイトルは思い浮かばなかったんで、まぁ、戦ってないし休息でいいか。みたいなノリでつけました。これからちょくちょく休息ってタイトルが出るかもしれません。

手抜きじゃないよ?ホントだよ?

では、これからもよろしくお願いします。

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