明日を迎えるために
ドミニオンとハイライト王国との戦争が終わった長い1日が過ぎた。ハイライト王国の被害は、死亡300人、負傷者800人となった。ドミニオンは千の機械兵軍団が壊滅。幹部であるイザーク、シュウ、ロイド、イザベラは戦争を起こしたとして他二国から極刑を求められたが、俊貴と三賢者の内のミトスとモーゼスから刑の軽減を求められ、今までの三人の実積からそれが通りトルガイア改めガイアアークとして2年以内に国を建て直す事が条件で解放された。
それに不服だったのがシュウとロイド。2人はそのまま牢獄に留まった。死刑は避けられたが、人生の半分を牢屋で過ごす事となった。
そして、今は戦争が終わってから3日後。
オレはハイライト魔法学園の医務室にいた。
イザークから受けた傷が思ったよりも酷く、1週間は絶対安静と告げられた。全身の火傷に加えて、右肩から左腰にかけての傷が一番酷かった。斬られた傷を火傷で塞がれていた。それを治療するのに時間がかかる。
「あー、師匠ー、もう治りましたー。動いてもいいでしょ?」
ハイライト魔法学園に戻って治療を受けてから2日。ずっとこの医務室で横になっているばかりだった。おかげで体がなまってしまっていた。
「ほう。お前はその状態で、休んだ2日分の訓練をすると言っているのか?」
ニッと笑うミトス。
「…ごめんなさい、大人しくしてます」
布団をしっかり被りなおす。
ふん、と鼻を鳴らすミトス。
『俊貴、少しいいですか?』
んー?何?
『あなたも含めて、今旧世界で起こっている事を皆さんに教える必要があります。』
あ、そうか。これからどう動けばいいかが分かるし、何が起こってるのかもわかる。
「師匠、霊紗、カガリ。ちょっといい?」
三人が同時に首をかしげた。
あ、でもどうやって話すの?イザークの時みたいにやったら皆意味わからんみたいな感じになるよ。
『それなんですが、魔力を使わせてもらっていいですか?』
いいけど、どうして?
『見てればわかります』
そう言った瞬間に、魔力が減る感じがした。
そして、オレの真上に薄く人影が現れた。
「…」
ポカーン、とそれを見上げるオレ達。
『なぜあなたまでそんな顔をしているんです?』
「あ、いやまさか実体化すると思わなくて」
『まったくしょうがないですね』
やれやれ、と呆れた顔をする破壊神。見た目綺麗な女性で、肌が少し青白い。
「…あんた知り合いなの?」
霊紗が顔を引きつらせている。
そりゃそうだよな、いきなり半透明で出てきて驚かないわけがない。
「あっと、知り合いと言うか…」
何て説明していいのかわからず、頭をひねる。
『私は神族が最上神、破壊神シヴァ。訳あって俊貴の中に匿ってもらっていました』
あれ?匿う?オレ知らない…
「匿うって何?どういうこと?」
霊紗が訝しげにオレを見てくる。
「なるほど。破壊神、あんたはあの後コイツを器として力を回復させていた訳か。」
急にミトスが納得する。
『ええ、その通りです。久しいですね、漆黒の翼。』
どうやらお互い知り合いのようだ。
『とりあえず、話してもいいですか?』
「おう、いいぞ」
『では、話を戻して。今、旧世界で起こっている魔物の大量発生の事です』
「あれの原因を知ってるのか!?」
と、カガリ。
『ええ、知ってます。その原因は、旧世界に施された封印が解けかかっているからなのです。』
「旧世界の封印?」
ミトスが首をかしげる。どうやら師匠でも知らないことだったらしい。
『ええ、かつての封魔戦争で施された封印です。その封印で、旧世界の魔物は封じられ今まで地上に出てくることは無かったのです』
「え?封魔戦争って、魔物を消滅させる戦争だったんじゃ…」
『いえ、それは違う情報が広まったものです。本当は魔物を封じる戦争です』
「…じゃあ、その封印は何で解かれてきてるの?だれかが解いてるの?」
『おそらく、邪神達がその封印を解いていってるんでしょう。だんだんと、旧世界の結界がゆるんできてるのを感じてます』
「邪神って何じゃ?」
『邪神というのは、私達と同じ神族の者達です。…そうですね、ヴァニタスがその一人です』
「なっ!?」
何となくそうだろうとは思ってたけど、やっぱ霊紗達は驚くか。
『彼らが、封印を解いてるんでしょう。守護者達を殺すかしているのだと思います』
「守護者?」
カガリが首をかしげる。どこかで聞いたような…
「もしかして、オレ達はそれに会ってる?」
『ええ、会ってますね。臥龍とあなたがたは遭遇しています。』
「あの緑の龍はやっぱり守護者だったんだ…」
霊紗がうで組をする。
…守護者が封印と関係してるのか?
各地に配置された守護者。魔物の封印。守護者が殺されて緩む封印。
ああ、そうか。そういうことか。
『ええ、あなたの予想通り魔物を封じるため、各地を守護していた守護者を要として魔法陣を展開し、守護者ごと魔物を封じました』
「守護者ごと封印!?」
「ああ、だから旧世界から守護者まで消えたんだ。でも、その封印はどうやって解くんだ?守護者はそこにいないのに殺せないだろ?」
『ええ、守護者ごと封じてるため旧世界に魔物は出てこない。守護者も同じ。でも、封印の緩みは施した者の力にも影響するんです』
「ああ、そういうことか。じゃあその封印を施したのはあんたか。」
「え?」
「まぁ、そうなるな」
キョトンとするカガリと、納得するミトスと霊紗。
「旧世界に魔物が頻繁に出現するようになったのは20年前あたりからだ。その頃、破壊神は邪神との戦いで傷つき姿をくらました」
『その時、たまたま産まれたばかりの俊貴を器として選び、力の回復するまで匿わせてもらっていたのです』
「師匠は邪神と破壊神の戦いを見ていたんですか?」
「いや、見ていたと言うよりも戦っていたのが正解だな。三賢者全員がその戦いに出ていた。」
『おかげで、邪神の数を大幅に減らせたのですが、それでも邪神は数が多く一時撤退を余儀なくされたのです』
「で、私達が撤退する時間を稼ぐために破壊神がしんがりを勤めて、私達は逃げ切れたけど」
『私はさすがにもたなくて俊貴の中に入った、という感じです』
…オレが産まれた瞬間から破壊神が中にいた?
じゃあ、オレが一度死んだ時破壊神も一度死んだって事か?
『ええ、あなたが一度死んだ時私も一緒に死にました。あの時は俊貴に話しかけるほど魔力も回復してなかったですし』
「でも20年俊貴に入ってて、なんでここ最近になって俊貴とコンタクトとれるようになったの?もっと早くコンタクトとれてたんじゃないの?」
『それはですね、俊貴が1年前まで魔力を全く持ってなかったからです。』
「1年前?神楽と会った時ぐらいのこと?」
『はい。あなたが魔法使いとして動くようになってからです。魔法使いとして目覚めなかったら、私はおそらくあなたの中にずっといて、あなたの死ぬ間際に体から抜け出す事になってました』
「え…」
『あなたが魔法使いとして目覚めたおかげで、魔力の供給を私も受けることができて、1年でこうやってコンタクトとれるようになったんです。』
「俊貴の魔力が無かったのはなぜ?」
『おそらくですが、ロックがかかったような感じだと思います。元々、私は闇の素質のある人間を選んで器としてましたから、その素質、闇との相性が良すぎたせいで、自分を制御するためにロックがかかった。と考えています』
「そのロックはオレ自身が?」
『ええ、そうでしょうね。自己防衛と言っていいかもしれませんね。闇は色々と問題がありますから、それから身を守るために自分で魔力を封じていた』
「で、1年前に神楽と会って魔法に触れ、オレの中のロックが解かれて今に至る、と言うわけですか?」
『あくまでおそらくの話ですがね』
『話が少しずれましたね。戻しましょう。』
『力を回復させている20年の間、邪神は私の力が弱まってるのに気づき、各地に少しずつ現れだした守護者を殺して更に封印をといていっています。おそらく今封印されてる守護者は半分をきってるでしょう』
「それで魔物がいっぱいでてきてるのか…」
『更に最悪なことに、一度死んだ事によって私の力の供給を受けてた封印の魔法陣とリンクが途切れてしまったのが決めてとなりました。』
「……」
『気にする必要はありません。あなたは悪くないですから。』
「…ああ」
『それで、今の魔法陣は弱まった私の魔力を元に生成されていていつ消滅してもおかしくないのです』
「…それを防ぐ方法は?」
『欠けた魔法陣を修復するか、魔物の発生源である異界の門を破壊か新たに封印する。または邪神を倒してこれ以上守護者を殺させないようにして封印をどうにかする、という選択肢ですね』
「…どちらにせよ一筋縄ではいかないわけか。」
ヴァニタス達を倒すにしても根本的な解決にはならないを。でも、ヴァニタス達を野放しにしとくわけにもいかない。
「よし、各地の魔法陣を修復しよう。それで魔物の増加を少しでも鈍らせる。」
「ヴァニタス達は?」
「たぶん向こうから接触してくるよ。増加が鈍ってる事に気づいて、邪魔してくると思う。」
「じゃあ、その時にヴァニタスを倒すって感じ?」
「ああ、そう考えてる。シヴァ、話はまだある?」
『いえ、以上です。封印の場所は私がお教えしますので心配はいりません。』
「うん」
「旧世界は何かと危険にさらされるな」
ミトスが軽く笑う。
「そうですね、ホントに」
オレも思わず笑う。
「私達ががんばって守るから問題ないじゃない」
霊紗は肩をすくめて微笑む。
「そうじゃのう。」
カガリも自慢気に腕組みをして笑う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
更に二週間後。
オレは無事に完治して、旧世界の封印を修復するために各地を駆け回っていた。
現在、修復した封印は12個のうち5個。
そのなかで、ヴァニタス達と遭遇したことはまだない。
おそらく来るならそろそろだろう。
「俊貴、ここでいいの?」
オレの横を歩いていた神楽が聞く。
「ああ、ここでいいみたいだ。やるよ」
今オレ達は、崩れかけの遺跡に来ていた。
そこが封印の地で守護者はいない。すでに殺された後のようだ。
「…やっぱり来たか。ここで待ってれば来ると思ったぜ」
不意に上の方から声が聞こえてきた。
「ヴァニタス…」
上を見上げると、遺跡の建物に腰を下ろして見下ろしているヴァニタスがいた。
相変わらず不気味な笑顔を浮かべている。
「封印が最近戻り始めてるからもしかしてと思ったが、やっぱり破壊神は回復してきたようだな。」
『ええ、あなた方を倒すために俊貴を器として正解でした』
オレの後ろに半透明の姿を表す破壊神シヴァ。
「だが、ここまでだ。オレがその器ごとぶっ潰す」
ヴァニタスが黒いエレメンタルブレードを取り出した。
「やらせない!」
オレは紫色のエレメンタルブレードを取り出す。
「オレに勝てるのか?」
「勝つさ。今度こそ!」
「おもしろい、じゃあやろうぜ!オレとお前のどちからがつええかハッキリさせようぜ!!」
そういって、ヴァニタスがオレの方へと突っ込んできた。
オレもそれを迎え撃つためにエレメンタルブレードを構えた。
オレはこれからもこうやって戦い続けるんだと思う。
旧世界、魔法世界、両方がいがみ合う事のない世界にするために。
何かに脅かされる人々を守るために。
自分の力が闇だろうと、オレはオレの決めた道を進む。
平和な明日が来るように。
こんにちわ。
彼の進む道、これで終結です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。今までずっと読んでくれた皆さんのおかげで連載を続けていけました。
最終話まで、かなり時間がかかってしまって申し訳なかったのですが、無事完結させれてよかったと思ってます。
初めて書いた小説ということで、誤字脱字や文章力の無さが目立つと、改めて思いました。次から載せる小説には、せめて誤字脱字がないようにしたいと思ってます。
新作をいつ載せるかはまだ決めてませんが、活動報告にてお知らせするので良かったらちょくちょくのぞいてもらえると嬉しいです。
長くなりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
これからも可能なかぎり小説を載せていくので、読んでもらえると嬉しいです。