破れる真紅の剣
暗雲が空を覆っているなか、俊貴と桜はトルガイア魔法学園に到達した。既に夕方になっているが、曇っていて夜のような感覚におちいる。
「な、なんだこれ…」
目の前の光景を見て唖然とする俊貴。
地盤がめちゃくちゃで、魔法学園も斜めに傾いているが、学園自体は無事のようだ。
学園より、その周りが悲惨な状態になっていた。あちこちに斬撃の跡が地面や木に残っている。
「何て状態…」
桜もそれを見て呆然としている。
「モーゼスさん!」
そこにいるはずの学園長モーゼスの名前を叫ぶ。
だが、返事は返ってこない。
「…とりあえず、学園に行こう」
もしかしたら中にいるかもしれないし。
「はい」
2人で学園へと歩く。
学園の扉を開ける。
中は傾いているが、エントランスには人がたくさんしゃがみこんでいた。どうやら怪我人がいるみたいで、ドタバタと慌ただしく人々が動いている。
「何が起きたんですか?」
近くにしゃがみこんでいたこの学園の生徒に聞く。
「ど、ドミニオンが襲撃を…」
ガタガタと震えだす生徒。よく見ると、膝を怪我しているようだ。
俊貴がその生徒の膝に治癒魔法をかける。
「他に怪我は?」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます…」
ニッと笑って、治癒を続ける。
「ところで、学園長はどこに?」
「学園長、ですか?外に出たまま戻ってませんが」
「そう。ありがとう。はい、治療終わったよ」
そういって、立ち上がり周りを見渡す。
ありがとうございます。と生徒がお礼を言って立ち上がり治療の手伝いを始める。
「オレ外に行って学園長探してくる」
「わかりました。私は学園内を」
「よろしく」
2人は手分けしてモーゼスを探し始めた。
「モーゼスさん!」
学園から少し離れた場所でモーゼスが倒れていた。全身に切り傷がつけられ、腹に大きな傷を受けていた。
そこから赤い血が流れてきていた。
「おう…、無事だったか」
駆け寄ってきた俊貴に気づき、モーゼスが笑いかける。ただ、その笑顔は弱々しい。
「しゃべらないでください!今治療します!!」
モーゼスのお腹に手をかざし、治療魔法をかける。
「…わりいな。俺だけじゃ止められんかった。」
済まなそうに言うモーゼス。
「いえ、気にしないでください。それよりしゃべらないで。傷口が塞がらない」
「はは、すまねぇ」
苦笑いするモーゼス。
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応急処置を終え、学園にモーゼスを運んで学園の先生にモーゼスの治療を頼んだ。応急処置があと少しでも遅れていたら危ない状態だったらしい。
それにホッとする俊貴。
「いやー、助かったぞ。坊主」
包帯を全身に巻かれたモーゼスが豪快に笑う。
「…いいえ」
思わず苦笑いする。
もう平気だな。この笑い方ならほっといても大丈夫そうだ。
「にしても、捕まったって聞いたが、よく抜け出せたな」
「はい。色々ありまして」
「よくわからんが、まあいいわ。時間がない。手短に話す。ドミニオンの主力は4人。その4人の中でトップ、イザークは別格だ。他の3人もAクラス越え。やつらの引き連れてる兵士達も武装が特殊だ。弱い魔法だとバリアでかき消される」
「たぶん、その兵士はオレもよく知ってると思います」
そうか、と頷くモーゼス。
「で、お前は早くハイライト魔法学園に戻れ。ここで時間をくってる場合じゃないぞ」
「それはそうですけど」
「気にすんな。お前は守るべきものを守りに行け。手遅れになる前に」
「…」
「ほら、早く行け」
「はい」
後ろを振り返って、扉の方へと走っていく俊貴。
「浅倉、悪いな。あいつを手伝ってやってくれ」
「はい」
頷き、桜も学園から出ていった。
「…あーぁ、もう歳かね」
壁に身を預けて治療を受けるモーゼス。年齢は四十代。三賢人の中で1番若い。
「いえいえ、まだまだお若いですよ」
「ハッハッハ、そうかそうか」
嬉しそうに笑うモーゼス。
「まぁ、今回は若いのに任せるかね」
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山を湖をこえて、地をかける。
急ぎ、ハイライト魔法学園へ向かう俊貴と桜は、ミッドガルド平原に到達した。既に、ハイライト王国軍とドミニオンが戦闘を始めていた。各地で爆発やら雄叫びが聞こえてくる。
向かう途中から、雨が降り始めてきた。
今は本降りとなってしまっていた。
「どうします?」
桜が戦場を見渡しながら聞く。
遠くの方で見えるハイライト魔法学園。そこにも戦火が及んでいるように見える。
「ハイライト魔法学園は後回し。オレはドミニオンを止める」
イザークは前線に出ているはず。
後ろからの奇襲でイザークを狙えない。
でも、戦場を混乱させるには充分すぎる。
少しでも動きを鈍らせる事ができればそれでいい。
あとは、ドミニオンの兵士達を潰していけばいい。
「お供します」
ペコッと頭を下げる。
「頼もしいよ」
ニッと笑う。
そして、戦場を見る。
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「うおおおっ!」
黒い機械兵士をなぎ倒しながら戦場を駆け抜ける。既に30機は倒してる。
奇襲をかけたおかげで、戦場は混乱。
それに合わせたようにハイライト王国軍が、ドミニオンを押し始めた。
「このまま一気に行きましょう!」
横を一緒に駆ける桜。刀を振り、機械兵士を切り捨てていく。
「ああ!」
前に立ちふさがる機械兵士を蹴り飛ばし、後ろの機械兵士にぶつけ、雷をまとめて落とし破壊する。
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「何が起こっている!」
前線に立つイザークが、状況確認のため声をあげる。
「後方から攻撃を受けています!陣形が崩され、ハイライト軍に押され始めました。」
シュウが向かってくる兵士を切り捨てながら言う。
「もしかして奴等か?」
後方を振り返る。
「可能性はあります」
「ロイド!イザベラ!!さがって迎撃しろ!シュウ!お前は押され始めた部隊のフォローだ」
「し、しかし陛下!陛下の守護が」
「お前は私が負けると思っているのか?」
「い、いえそんなこと…」
「なら、行け」
「はっ」
3人が散り散りに自分の任に就く。
「オレは王国を落としにいくか」
刀を払い、ハイライト軍の立ちふさがる前の奥に見える城を見る。
こんにちわ。
新作を作成中で更新遅れてます。
第3章まで考えてたんですが、2章にだいたいを詰め込んで終了させるかもしれません。
まだわかりませんが、どうするかはちゃんと考えてから報告させていただきます。