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彼の進む道  作者: けやき
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トルガイア魔法学園へ

トルガイア王国、トルガイア城。


といっても、今はトルガイア王国じゃなくてガイアアーク王国となった。

ドミニオンに、城へ突如侵攻され陥落した。


魔法世界にも存在していた、旧世界の組織ドミニオン。それは、魔法世界に存在する他のギルドと比べて余り目立つ物ではなかった。


理由は簡単。ドミニオンの本拠地は旧世界。魔法世界は目標地。兵力もそこまで置いてはいなかった。


そのため、魔法世界の認知度は低く、軽視されていた。


それは作戦。ドミニオンが魔法世界に侵攻するための布石。


誰もそんな弱小ギルドか国を落としにかかるとは思っていないだろう。


そして、その布石を実現するためにも工作は抜け目なかった。

旧世界での魔法使いに対する対処。ドミニオンの事を知ってしまった魔法世界の魔法使いには問答無用で殺害。旧世界の魔法使いは、交渉があるが決裂すれば殺害。成立すれば仲間として取り込む。


そうして、魔法世界にはドミニオンの情報が漏れることもなく、今回のように1つの国を落とす事に成功した。


「陛下、失った兵力も元の数値まで戻りました」


ガイアアーク城の謁見の間。

そこに敷かれた赤いカーペットの奥の玉座に座る、陛下に膝をつき進言する1人の男。

黒いローブを羽織り、腰に刀を差した緑色の髪の男。


「そうか。では、民の様子はどうだ?」


玉座に座り、圧倒的威圧感を放つドミニオンの幹部で、武闘派のイザーク。

真っ黒な鎧を纏い、白い肩まで伸びた髪。キリッと整った目付きに、シャープな顔筋。


「は。元より怪我人も殆ど出ていませんので、動揺が多少大きい程度で、沈静化しております」


「そうか、ならいい。次の準備はどうなっている?」


「滞りなく進んでおります。それに、例の物も見つかり、既に調整完了しております」


「…そうか。では、次の段階に進む。目標はハイライト王国だ」


「はっ。戦力が整い次第、報告いたします」


ペコッと一礼して謁見の間から出ていった。


「穏健派どもの動きはどうだ?」


玉座の手前に立つ女性に聞くイザーク。


「トルガイアを墜としたことは、既に知っているかと思われます。次の段階に進む事はまだ知られてないと思いますが、おそらく提言しに来るのではないかと思われます」


「ふん、ぬるいな。所詮奴の提言など、ざれ言にすぎん。話し合いで解決するのなら、誰も武力などもたん」


玉座から立ち上がり、奥へと向かうイザーク。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ハイライト魔法学園、学園長室。


ミトスと通信をし、急いで館まで戻り事情を神楽たちに説明した。そして、悠里が魔法学園へとねじれを開いてくれたおかげで、すぐに魔法学園へと移動することができた。


そこに集まった、俊貴、霊紗、カガリ。学園長ことミトスの4人がそこにいた。神楽たちも行くと言ったが、ドミニオンが来ないとも限らないし、魔物も最近多い。翠たちや母親たちを守るためにも残ってもらった。


「すまんな、急いできてもらって」


どことなく疲れた表情のミトス。


「いえ、いいんです。それより、疲れてますね」


俊貴が優しく微笑んだ。

それをみて、少しムッとするミトス。


「ふん。この程度、なんでもないわ。」


プイッとそっぽを向くミトス。

それは見た目相応で、とても可愛らしい。


「そうですか、流石ですね。師匠」


完全に見抜かれていた。

トルガイアが落ちてからドタバタとしていたために、ろくに休んでいなかった。それが、顔に出さないようにしていたつもりが、出ていたようだ。


「ぐぬぬ…」


思わずしかめっ面のミトス。


「ところで師匠。トルガイアはいつ堕ちたんですか?」


と、早速本題に入る。


「うむ。今日をいれて5日前だ。急に城内へと侵攻したドミニオンが一気に城を制圧。トルガイア王を捕縛し、殺害した。」


「理由はわかってるんですか?」


「いや、不明だ。目的もなにもわからん。何故、急にトルガイアを墜としたのかさっぱりわからん」


腕組をして考えるミトス。


「…それじゃあ、ハイライトとシェルアクアの動きはどうですか?」


「うむ、2国とも完全に様子見だ。ドミニオンに攻められないとも限らんからな」


「まぁ、そうですよね。目的もわからんのに、下手に兵を送り込んで戦闘を起こすのは却って危険ですし」


「ああ。だが、やつらは確実に攻めに来ると思うがな」


「…それと関係あるかわからないですが、オレから話があります」


「?」


首をかしげるミトス。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ふむ、なるほどな。ドミニオンは旧世界を牛耳る程の組織だったわけか」


俊貴から3ヶ月分の報告もかねて、ドミニオンの事を聞いた。


ミトスはそれを聞き、腕組みをする。


「とりあえず、今はドミニオンの動向を知ることが重要じゃないですか?」


彼らの目的はまだわからない。

だが、国1つ容易に落とす事ができるほどの力を持っているのは事実。

それほどの力を何に使うかわからない。それは、魔法世界の住人を脅えさせるのに充分すぎた。


「…オレはトルガイアに行こうと思います」


「なんだと?」


キッと睨み付けてきたミトス。

少女のそれだが、威圧感が半端なく俊貴に伝わる。


「オレはトルガイアにいきます。行って、奴等の動向を探ります」


「確かに、下手に人間を送り込んでも帰ってくる確率は低い。お前なら少しは確率は高いだろうが、それは許可できん」


「何故ですか!」


「我々魔法学園の人間は、魔法学園の生徒達を守る必要がある。学生のうちに、軍事的に利用されるのも、戦争によって命を落とすのも許されないんだ」


魔法学園に入学するにあたって、魔法学園の生徒は国の軍事力として利用しない。戦争に駆り出される事もできない。それは、若い芽を摘み取らせないためのものだった。

進路として、軍に入ったりするのは良い。


「このまま魔法学園に留まれ。」


「…」


ミトスが俊貴たちに背を向ける。


「なら、オレはトルガイアの魔法学園に行きます。戦力を得るために、あそこを狙わないとは限らないじゃないですか?」


「…魔法学園のために行くと、お前は言ってるのか?」


「はい。」


「はぁ、お前は私の気持ちがわからんようだな」


腕を組みため息をつくミトス。


「わかってます。わかってる上で言ってるんです。」


ミトスの目をジッと見つめる俊貴。

ミトスも俊貴の目を見返す。


「しょうがない弟子をもってしまったのぅ…」


やれやれ、と肩をすくめる。


「すいません」


「はぁ、いいか。1つ命令をだそう。トルガイア魔法学園に行って、魔法学園を守ってこい」


「はい!」


力強く答える俊貴。


「ただし、行くのは俊貴だけだ。お前達2人は足手まといだ」


「そ、そんなっ!」

「な、なぜじゃ!」


霊紗とカガリが声を荒げる。


「バカ弟子が出ていって、ここの守りが薄くなるというのに、これ以上少ない人数を減らしたらこの学園は簡単に落とされるぞ」


「そ、それは…」


「ホントは全員来てほしかったんじゃぞ」


「わかりました、ここで俊貴を待ちます」


状況がわかってない訳じゃない。でも、また俊貴1人で行かせたら帰ってこないかもしれない。

それが霊紗とカガリは怖かった。


「とりあえず、トルガイア魔法学園についたら様子を連絡しろ。街や村の様子を調べろ。ドミニオンが侵攻してきたなら、魔法学園を守れ。侵攻してこない様なら、お前の判断で戻ってくるなりしろ」


「わかりました」


頷き俊貴は部屋から出ていこうとした。


「おい、ちょっと待て」


「はい?」


呼び止められ振り返る。


ツカツカと俊貴の前まで歩いてくるミトス。


「抱き締めろ」


『えぇ!?』


3人同時に驚愕の声をあげる。


ただ、言った本人も若干恥ずかしそうに俊貴を見上げる。


「しょうがないですね」


やれやれ、と微笑みながらミトスを抱き締めようと両腕を伸ばす。

ミトスも両腕を伸ばしてきた。


ギュッとミトスを抱き締めた。

ミトスも抱き締めてきたために、柔らかい感触が全身を伝う。


「案外、心配症なんですね」


耳元で小さく囁く。


「なっ!?…ガブっ」


耳に噛みつくミトス。


「い、いてえ!?」


驚き両手を放す俊貴。


「う、うおぉ?」


ミトスは俊貴に抱きついたままぶら下がっている。首に腕を巻き付けぶらぶらぶら下がるミトス。


「い、痛い痛い痛い!」


首にミトスの体重がかかる。


「ふん!」


ミトスが下に体重をかけた。


「あー?」


俊貴が間抜けな声をあげる。


そのまま俊貴はミトスに巴投げで、空いてる窓の方に投げ飛ばされた。


「あー…」


ひゅーっと落ちていく俊貴。


ドシーン、と地面に衝突する音が聞こえた。


「私は重くない!」


腕組みをするミトス。


霊紗達は苦笑いしながら地面に倒れてる俊貴を見る。


「…いってきます」


むくりと起き上がり、霊紗達の方を見上げて手を振る。


「行ってこい」


2人の間からミトスがひょこっと顔をだし、3人で俊貴を見送った。


それを見て微笑み、白いローブを取り出して羽織り、その場から走り去った。

こんにちわ。

更新遅れてしまいました。

申し訳ないです。


ついに、第2章も終幕に近づいてきました。

戦闘が主体になると思うので、うまく表現できるかわかりませんが精一杯やっていきたいと思ってます。


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