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彼の進む道  作者: けやき
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不穏なドミニオン

旧世界の森の中に隠れる様に建てられた館。

そこは、森の中に建てられているせいで、人目につかず、避暑地としてももってこいだった。


そこに、最近住み始めた俊貴達。ドミニオンによる家族への攻撃を事前に防ぐため、この館に移動させた。

神楽や霊紗の家族も旧世界にいるが、魔法使いとして働いてることもあり、アカツキの護衛が少しつくだけとなった。

ただ、明日菜の家族は完全に旧世界人であるため、魔法の事を伏せて館に引っ越しさせた。

魔法の事をバラそうとも思ったが、明日菜が自分で話すと言っていたため明日菜に任せた。


今、この館に住んでいるのは、俊貴達と俊貴の両親、明日菜の両親。そして、緑達。

中々の大家族となっていた。


そんな大家族の共同生活は1週間を過ぎた。


8日目の朝。


3階の左隅の部屋。

その部屋は俊貴の部屋となっていた。


その部屋の窓際に位置するベッドで眠る俊貴。


だが、ぐっすりと眠る俊貴を無視してドタドタと騒がしい足音がして、部屋の前で止まる。


「おにーちゃん!朝だよ!!」


ドンドンと、扉を叩き俊貴を呼ぶ。


「うー…」


寝返りをうち、起きる気配のない俊貴。


「…おにーちゃん?」


そっと静かに扉を開ける。


部屋に入ってきたのは、翠。何故かメイド服を着ている。


音を立てないように静かに歩いて俊貴の元にくる。


「おにーちゃん?」


そっと俊貴を除きこむ翠。


俊貴は翠の方に体を向けて眠っていた。


「起きて!朝だよ!!」


寝てると判断した翠が俊貴を起こしにかかる。


ユサユサと俊貴の体を揺らす。


「…うーん……、後、5分…」


そういって、寝返りをうち仰向けになる俊貴。


「ダメだよ!早く起きて!朝御飯できてるよ!!」


翠が更に俊貴を揺らす。


「…あと、…1時間…」


「増えてる!?っていうか、増えすぎ!!」


翠が中々起きない俊貴にしびれをきらす。


「とおっ!」


素早く俊貴の上に乗る翠。


「うっ…」


俊貴が短く呻いた。


「おにーちゃん!起きないとどうなっても知らないよ?」


そういって、俊貴の上に乗っかって揺する。


「…あと、2時間…」


「…お仕置きデース!」


キラーン、と怪しく翠の目が光る。


そして、翠は俊貴の布団の中に入り込んだ。


「ふっふっふー」


布団の中でもぞもぞと動く翠。


俊貴の横に顔を出して、俊貴の手を自分の体を抱くように動かす。


「ふっふー。完璧デス!」


翠は、俊貴の顎の下に頭を動かして抱きつくような形となる。


そこへ、まったく降りてこない2人の様子を見に来たのか、俊貴の部屋の前で足音が止まる。


コンコン、と部屋をノックする。


が、返事は返ってこない。


「…?俊貴?」


ドアを開けて、部屋の中を覗く神楽。


「あれ?翠がいない…」


起こしに向かったはずの翠が何故か部屋のなかにいない。


不思議に思いながらも、部屋の中に入り、ベッドへと向かう。


「俊……貴!?」


ベッドを覗きこんだ神楽は、ベッドの中の光景を見て唖然とする。


翠と俊貴が抱き合って眠っていた。


「え?ちょっ…、待って……、え?」


俊貴にはロリの気が?

え?私は年上が好みだと思って…

ってか、翠は何で寝てるの?起こしにいったんじゃ…


神楽の頭に?マークがたくさん浮かぶ。


「れれれ、冷静になろう…」


落ち着くために深呼吸。


すーはー。

よし落ち着いた。


翠は俊貴を起こしに来た。でも、朝に弱い俊貴は中々起きない。しびれを切らした翠は、俊貴の布団に潜り込んで…

待った!潜り込む意味がわからない!!

じゃあ、何!?

俊貴が自ら翠を布団の中へ?だから、抱き合ってるの!?


そう思った瞬間、神楽は背後に炎を纏う。


「俊貴!!」


「うおわぁ!?な、何!!」


いきなり怒鳴られ、驚き飛び起きる俊貴。


何故か、翠を抱いたまま起き上がった。


翠が俊貴にしがみついていたから、俊貴が手を離しても、翠は体にくっついたままだった。


「…ん?」


何か体がいつもより重いと感じ、体を見下ろす俊貴。


「……翠?」


知らない間にしがみついている翠に気づき、声をかける俊貴。


「えへへ、おはよう。おにーちゃん」


ニッと笑って俊貴を見上げる翠。心なしか顔が赤い気がする。


「おはよう?」


何故か疑問形。


「ねえ、俊貴…」


「ん?」


「何で、翠と寝てるの?」


神楽は笑みを浮かべている。それはそれは、恐ろしい形相で。


「えっと…、何で…かな?」


覚えがないため当然ではあるのだが。


「ん…、おにーちゃん、あんまり動かないで…」


「は?」


何故か色っぽい声をあげる翠。


それの意味がわからない俊貴。


だが、起きたために次第に感覚がだんだん伝わってくる。


「ねぇ、俊貴。何、してるのかな?」


額に血管が浮かび上がっている神楽。


「いや、オレは何も…」


笑顔をひきつらせる俊貴。


「…」


無言で俊貴の頬に張り手をかます神楽。


パァン、と良い音をたててベッドにノックダウンする俊貴。


「ふん!」


神楽ははたいた後、すたすたと部屋から出ていった。


「…」


ヒリヒリする頬を撫でる翠。


「冷たい…」


頬に感じる翠の手の冷たさが気持ち良い。


「…ごめんね、やりすぎちゃった」


翠が申し訳なさそうに見上げてくる。


怒鳴られるだけで済むかと思ってたのが、はたかれてしまっていた。


さすがにやりすぎたと思い、不安げにしている翠。


「…いいよ、気にするな。起こしに来てくれてありがとう」


やはり、年下に甘い俊貴。微笑んで頭を撫でる。


「うん」


えへへ、と笑い俊貴から離れて部屋から出ていった。


「…オレも下に行くか」


ベッドから降りて伸びをする俊貴。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

場所は変わり、アカツキ本部。


朝食を終えた俊貴は、サキになってからアカツキに来ていた。


わざわざ、ボスに言われた通りサキの姿でアカツキに来る律儀さ。


「あー!サキさん!!久しぶりですー!」


アカツキの受け付け嬢が、久しぶりに見たサキに嬉しそうに話しかける。


「…ども」


ぎこちなく微笑んで会釈して、さっさと中に入っていくサキ。


「んー!相変わらず、クール!!」


実は、サキに憧れてた受け付け嬢は満足気に両頬を手で覆う。


・・・・・・・・・・・


「おう!よく来たな」


アカツキの1番奥の部屋。机と椅子、ちょっとした棚があるだけの質素な部屋で、机に足をのせ、煙草をくわえた男がサキに向けて手をあげる。


「…こんにちわ」


俊貴も頭を下げてあいさつした。


「で、俺の別荘はどうだった?良かったろ?」


「はい。結構な人数が暮らしてるのに、部屋がまだ空いてるし、設備も整ってる。あれほどの物件を簡単に渡しちゃって良かったんですか?」


「ああ、良い。あんな場所にあったんじゃ、誰も買いやしない。そのまま放置されるより、使ってもらった方が良いだろ」


実は、あの別荘のある場所は旧世界の中でもかなり深い森の中に建っている。迷いの森とも呼ばれている森の中に建つ館など、買い手はなかった。


ただ、これほど隠れるのに適した場所はない。


「ただ、買い物とか両親の仕事とかが、どうにも…」


場所が場所のため、買い物するにも、仕事先へと行くにも森を抜けないといけない。


慣れれば良いのだろうが、慣れないうちは迷ってしまう。それに、時間もかかる。


隠れるのには適しても、一般人からすると移動手段が最悪。


その問題点をどうするか、俊貴は悩んでいた。


「おっと、説明し忘れたな。玄関の扉に変な物が着いてなかったか?」


言い忘れてた何かがあったようで、あたまをかくボス。


「変なもの…、ドアノブの上の方に着いた四角い物体の事ですか?」


鍵穴とは別で、ドアノブの上に四角い物がドアに着いていた。掃除してる時に気づき、ただの飾りかと思って気にしてなかった。


「それはなぁ、近くの街に出れるようにするための機械だ」


「…は?」


ボスの言った意味不明な言葉に呆然とする俊貴。


なんだそれ?

まるで、どこでも○アじゃないか!


「理屈はしらん。だが、それを使えば近くの町までは移動できる。」


「…それはどうやって使うんですか?」


「四角の物体に取っ手がある。それを回せばパネルが切り替わり、近くの町に行くことができるはずだ」


「取っ手を回す、か。じゃあ、帰ってから試してみます」


「あぁ、そうしな」


ボスが笑う。


「で、それだけじゃないだろ?どうした」


短くなったタバコを灰皿に押し付けて火を消し、新たなタバコを取り出す。


「ここ最近のドミニオンの動きはどうですか?」


最近館の方にずっといたため、新たな情報がない。


「悪いが情報はないな。お前の予想が外れたな。お前の仲間の家族は襲われていない。それどころか、ドミニオンに襲われた、という情報すら入らなくなった」


「なっ…、どういうことなんだ…」


右手の親指と人差し指をこすりあわせる。


戦力増強?今は攻める時じゃないってこと?アカツキには警告をすぐに行ったのに、オレ達にはないのか?…アカツキも、結果的にはオレも収入源を潰した。おなじなのに何が…


と、その場で考え始めた。


「考えるのもいいが、仕事もしてけよ。約束通り」


ニッと笑い、タバコの煙を吐き出すボス。


「…そうします」


わからないものはわからない。

なら、今やれることをやろう。


そう判断し、ペコッとお辞儀して部屋から出ていった。


「…にしても、妙だな。何故今大人しくする必要がある?拠点が2つ落とされた。体勢を整えようとしてるのか?」


ペンを手に取り、机にトントン、と音をたてて軽く叩く。


「まぁ、いいさ。今俺はアイツを手に入れた。俊貴がいればうちの士気も上がるし、力も強くなる」


「…とりあえず、今はドミニオンの動きを掴まないとな」


ふぅ、と机に肘をのせる。


・・・・・・・・・・・


「あら、サキじゃない。よく来たわね」


「ん?」


掲示板に貼られた依頼を見ていたサキは、後ろから声をかけられた。


振り返ると、そこにはサラが立っていた。


「サラか、どした?」


「どした?じゃないわ。ってか、私の台詞よ。今日は何の用?」


「館のお礼のついでに、仕事を受けてこうかな、と思ってたんだけど」


「ふーん。…何行くか決めたの?」


ツカツカとサキの隣に来て依頼を見る。


「…これ、かな」


依頼の書かれた紙を取りサラに見せる。


「えっと、魔物討伐ね。場所は…南の大陸の湖で、目標はロッククラブって、岩を纏った蟹の魔物のことね。しかも水場だから相手の得意地形。」


「商人の被害が多いから、速めに行って対処しないと」


サラから依頼書をうけとり、カウンターにもっていくサキ。


「ふーん…」


「これ、お願いします」


カウンターに出すサキ。


「あ、はい。かしこまりました」


ポン、と受領印を押して解決待ちのボックスに入れる。


「2人で良かったですか?」


「いいわ」


「え?」


驚き横を向くとサラが隣に立っていた。


「はい。では、お気をつけて」


「ええ」


「あ、うん…」


すたすたと先に出ていったサラ。


「…行くなら行くって言えば良いのに」


苦笑いしながらも、サラの後について出ていった。



おはようございます。


うーん、バトルがない…

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