お掃除大作戦!?
とある大きな建物。
それは、周りが森に囲まれて、まるで人の干渉を避けるように建っていた。その建物は、ギルド‘アカツキ’のボスの別荘。俊貴達が譲り受けた物だった。
周りが森のせいで、人目につかないため潜伏するのには充分な場所で、俊貴達は今その別荘の目の前にいた。
サラに案内してもらって来た。
「うおー!でけぇ!これが別荘!?」
その別荘の大きさに驚く俊貴。
3階建ての白い別荘。
ボスの言ってた通り、あまり使われている感じはしないが、そこまで放置されてた訳でもないようで外見は割りと綺麗である。所々に汚れや草が絡み付いてる。
玄関の真上にベランダがあるようで、2階から行けるようになっている。
「…こんな所に住むの?」
霊紗が珍しく嬉しそうな顔をしている。
霊紗の家も割りと大きいのだが、これ程ではないため驚きつつも楽しみになっていた。
「とりあえず、中に入ろうか」
俊貴がその場にいるメンバーに振り返って言う。
ちなみにメンバーは、霊紗、神楽、明日菜、悠里、カガリ、アイギス、クロエ、サラ、そして、俊貴の助けた少女達8人である。
その全員が返事をして、別荘へと入っていく。
「うおー!中も広いっ!!」
2メートルはある大きな両開きのドアを開けて中に入ると、そこには広いエントランス。左右へと通路が伸びていて、2階、3階へと行けるように階段もエントランスに設置されている。3階まで吹き抜けになっていて、天井から巨大なシャンデリアが吊られている。
灯りは点いてないが、窓から差し込む光で充分見える。埃っぽさまで光でみえる。
「うわぁ!すごっ!」
翠が目を輝かせてエントランス中を走り回る。それに続いて紫達も駆け回る。
それのおかけで、埃が更に舞う。
「こら。埃が舞うから、はしゃぐのは後にしろ」
俊貴が走り回る翠と桃の首根っこを掴んで止める。
「うあー」
「はーい…」
ぶらぶらと吊られて返事をする2人。他の子達も大人しくなる。
「よし、じゃあ班分けをするよ。1階は神楽をリーダーにアイギス、クロエ、翠、紫。2階は明日菜をリーダーに霊紗、カガリ、海、藍。3階は悠里さんをリーダーに凜、美琴、桃、光」
俊貴が班分けを言う。
「あれ?お兄ちゃんは??」
翠が俊貴の名前がなかった事に首をかしげる。
「オレは外。伸びすぎた草やら壁の汚れやらを片付ける。一番泥臭いとこはオレがやるよ」
陽射しも強いしな
「ふーん、そっかぁ」
よくわかってない翠は頷いて俊貴の周りを回る。
「じゃあ、はりきって行きましょー!」
俊貴がパァン、と手を叩く。
『おおー!』
皆が手を上げて応える。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とりあえず神楽の指示で通路、部屋の窓をすべて開けて換気。
高い位置は翠達が届かないため、神楽とクロエで汚れを落とす。
その間に、翠達は邪魔になりそうな物や不要そうな物をどかしたり、拭き掃除の準備をする。
「うーん、思ったより部屋が多いねー…」
神楽が高い位置の掃除を終えて、一緒に掃除をする紫に言う。
「…うん。」
高い位置の掃除が終わったため部屋の掃き掃除を始める紫。
神楽も箒に持ち変えて掃き掃除に移る。
(…この子、無口過ぎる)
会話が続かない状況に苦笑いする神楽。
紫はあまり知らない人といると無口になる。極度な人見知りのため、神楽にまだ慣れてなかった。慣れてれば美琴達と接するように、気の強い感じとなるだろう。
・・・・・・・・・・・
「おねーちゃん!床掃き終わったよ!」
「クロエー!机とか拭き終わったよー!」
「…」
窓を拭くクロエに、床を掃き終わった翠と、机や椅子等の家具を拭き終えたアイギスが声をかける。
「おねーちゃん!!」
「クロエー!!」
「…なら、二人で床を雑巾がけしてくれ」
「「はーい」」
2人がバケツから雑巾を取りだし、絞ってから対角線上に部屋の隅に移動する。
「「うおりゃー!」」
2人同時に部屋の隅から床を拭き始めた。
「子供か…」
呆れつつも窓を拭くクロエ。
「あ…、子供か」
苦笑いするクロエ。
・・・・・・・・・・・
場所は2階に移り、一番端にある部屋を掃除する霊紗と明日菜。
既に高い位置は終わり、掃き掃除と家具の拭き掃除を始めていた。
「ねぇ」
「ん?」
机を拭く霊紗に床を掃く明日菜が声をかける。
「いきなりだけど、変なこと聞いていい?」
「…何?」
どこか明日菜はもじもじしてる気がする。
「あの、さ…。俊貴に助けられた時、俊貴にこくはくされた?」
「んなっ!?」
霊紗が驚き、顔を赤くして固まる。
「…されたの?」
そんな霊紗に真剣な表情で聞く明日菜。
「…いいえ。助けには来たけど、結局何も言わなかったわ」
その表情を見て、明日菜の気持ちを読み真面目に答える。
「…ホントに?」
「ホントよ。ったく、ちょっと期待はしてたけど、ヘタレよね。あいつ」
クスッと笑う霊紗。
「…そうだね。あいつはヘタレで鈍いから」
明日菜もクスッと笑う。
「でも、私まだ負けないよ!」
「…私もよ」
2人の視線がぶつかり火花が散る。
・・・・・・・・・・・
霊紗達が左端の部屋から掃除するなか、右端の部屋を掃除するカガリと海と藍。
海と藍に家具を拭かせて、カガリは箒で部屋を掃いていた。
「カガリおねー!タンスに届かないよ!!」
海がタンスの高い所を拭こうとピョンピョン跳んでいる。
「待っておれ。今、だっこしてやるからの」
箒を壁に立て掛けて、海をだっこしてタンスを拭かせる。
「届く、届くー♪」
鼻唄混じりでタンスを拭く海。
「…いいなぁ」
それを羨ましそうに見る藍。
「もう高い位置の家具は無いぞ」
と、カガリ。
今までの部屋には、ベッドと小さな机と椅子、タンスがあるぐらいだった。そのため、高い位置にあるのはタンスぐらいなのである。
「…いいもん、後で俊貴にいちゃんにだっこしてもらうから」
そういって、椅子を拭き始める藍。
「な、何じゃと!?」
「えぇ!?ズルい!!」
カガリと、その腕にだっこされたまま海がムッとする。
「ふんふーん♪」
そんなこと気にせず、俊貴にだっこされるために掃除を終わらせようとはりきる藍。
「「…」」
2人は顔を見合わせたあと、すぐに掃除を続けた。
・・・・・・・・・・・
3階の通路を掃除する美琴と桃。2人とも箒で通路を掃いている。
「お姉ちゃん。この家広いね」
「うん。これからここに住めるんだよ」
「スゴいね!こんな大きな家に住めるなんて、お兄ちゃんスゴいね!」
「私達が一緒に住めるように探してくれたんだって」
「わざわざ探してくれるなんて、お兄ちゃんは優しくて頼りになるね!」
「そうだね」
ニコニコな桃の話を聞きながら、通路を掃いていく美琴。
「わたしお兄ちゃんと結婚しよっと!」
「うん。……え?」
予想外の言葉に思わず固まる美琴。
そんなこと気にせず掃除を続ける桃。
「…むぅ」
言い返すチャンスを逃し、モヤモヤが残る美琴。
・・・・・・・・・・・
3階の部屋を掃除する悠里、凜、光。
悠里がてきぱき2人に指示を出し、掃除をこなす。
凜と光は、それに従いつつも何処か新鮮な気持ちを抱く。
「…おかあさんみたい」
「…だね」
ぼそっと言った光の言葉にうなずく凜。
お母さんってこんな感じなのかな、と2人は思う。凜はともかく、光は母親の温かさを知らない。
「…聞こえてるわよ」
にっこり笑っているが影に般若を背負う悠里が振り向く。
「な、何でもないよ!」
「う、うん!何でもない!」
あはは、と苦笑いする2人。
そそくさと掃除を続ける。
「全く…」
呆れつつもクスッと笑う悠里。
・・・・・・・・・・・
「…で、いつまでそこで見てる気?」
別荘の外を、宙に浮かびながら草や汚れを落とす俊貴。
それを、俊貴が掃除をはじめてからずっと屋上から見ているサラ。
見られてると掃除しづらいぞ…
「私が何してようと勝手でしょ?」
「暇なら手伝ってよ」
「いや。わたしは仕事を終えて休憩してるの」
「…仕事って、案内しただけじゃん」
「何?」
「なんも…」
ジト目で見られたため、これ以上何か言うと何されるかわからないため掃除の続きを始める。
「よっ…と」
草を掴み、壁から引っこ抜く。思ったより長くて、すべてを引っこ抜きづらい。
「…」
「もうちょい…」
ぐっと引っ張り、草が抜ける。5メートルはあるだろうか。俊貴の手元からプラプラと垂れ下がっている。
それを地面へと落とす。
「草は以上かな。後は、汚れか…。水圧で落ちるかな?」
手にマナを集める。
流石に、自分の魔力でこの汚れを落とすとなると、可能ではあるが中の掃除が手伝えなくなりそうなため、自然の魔力であるマナを集めて、魔力の代わりとする。
幸いにも、別荘の裏側に湖があるため水のマナが集めやすい。
「とりあえず、あれから」
割りと大きい染みに向けて、細く勢いの強い水を当てる。
壁に当たり、水が四散する。
「…中々落ちるね」
水をぶつけた箇所の汚れが落ちて、綺麗になっていく。
「…」
その様子を屋根から見下ろすサラ。
「…んー、流石に時間かかるな」
勢いを強くしてみよっかな?
でも、風と水の魔法を同時に使ってるからちょっとしんどいな…
そう思いながら、水の勢いを更に強くする。
壁に穴が空かないギリギリの勢いで汚れを落とす。
「…ん?」
ふと、反対側の壁にも水が当たってる事に気づく。
水を使って汚れを落としてるのは、サラだった。
「…結局手伝ってるじゃん」
苦笑いしつつもちゃんと汚れを落とす。
「うるさい。暇だからちょっとやってみただけよ。あなたのためではないわ」
ふん、と鼻をならし水をかけていくサラ。
「はいはい」
苦笑いする俊貴。
無言で水をかける。
「…ありがとな」
「ふん…」
俊貴の言った言葉にまた、鼻をならすサラ。
・・・・・・・・・・・
午後、昼御飯と休憩挟んでから、一通り終わった部屋と外観の掃除。
今は、厨房やお風呂等の部屋の掃除に移っている。
厨房は、料理道具等あるため料理をする人中心の班に、残った人でお風呂、応接室、大広間等を掃除する。
厨房で掃除をするのは神楽、悠里、美琴、桃の4人。
埃を被った鍋やらフライパンを洗っていく。
「こんだけ広いと逆に落ち着かないね」
神楽が洗い終わった調理道具を布巾で拭きながら、厨房の広さに苦笑いする。
調理台が3つ、3つ付いたコンロが2つ、水道も2つ、大きな冷蔵庫が1つ。オーブン、レンジが2つずつ。
設備も揃っていて、料理する分には困らなそう。
「確かに、広くて落ち着かないね。でも、料理するの楽しみだなぁ!」
美琴も布巾で拭くのに移る。
「おにぃに食べて欲しいね!」
桃が調理台を拭く。
「そうね」
クスッと笑う悠里。
ここは和やかに掃除が進んでいるようだ。
・・・・・・・・・・・
「えへへ、ふかふかー♪」
応接室にあるソファに座って跳ねる藍。
応接室だけあって、他の部屋よりも家具が豪華。
綺麗な食器棚や、花瓶、ソファにテーブルが置いてある。
「こら!遊んでないで掃除する!!」
明日菜が藍を叱る。
「はーい」
物足りなそうな顔をしてるが、掃除をし始める藍。
「なぁ明日菜ー!この部屋割りと綺麗であんま掃除必要ないぞー!」
アイギスが窓を拭き終わって言う。
力が有り余ってるようだ。
「確かに、ここは割りと綺麗だよね。じゃあ、ある程度終わったら、厨房とか手伝いに行こうか」
「行こー!」
その提案に、藍とアイギスが頷き、掃除に追い打ちをかける。
・・・・・・・・・・・
2部屋分の広さで、部屋のど真ん中に設置された長方形の大きな机。白いテーブルクロスが被せられ、規則的な感覚を開けて燭台が3つ置いてある。それを囲んで焦げ茶のお洒落な椅子が並んでいる。
そのテーブルクロスを拭くクロエ。
椅子を拭く、光と紫。全体を掃いているカガリ。
カガリはムスッとしながら掃除をしている。
「…結局、俊貴と一緒の班にならんかったのじゃ…」
ぶつぶつと呟くカガリ。
そんなカガリを3人が苦笑いしながらも掃除をしていく。
ここも、空気はともかく掃除は順調そう。
・・・・・・・・・・・
1階にあるお風呂場。湯船は1つのみなのだが、広さが半端ない。おそらく、湯船だけで25メートルプール程はあるだろう。
体を洗う場所も、10個ある。シャワーも5個設置されている。
「…」
そんな風呂場で呆然と立っている俊貴。
全身ずぶ濡れで、髪や指から水が滴り落ちる。
「あはははー!広ーい!!」
翠が水の出ているホースを持って走り回っている。俊貴をびしょ濡れにさせたのはもちろん翠。
「こらぁ!翠!!」
凜が翠の後を怒りながら追いかけている。
凜も水をかけられた。
というか、風呂場掃除に当たった人全員が濡れている。
「…あーぁ、どーすんのよ、これ」
びしょ濡れになった服を見ながらため息をつく霊紗。
透けてはないが、やはり気になる。
が、俊貴は全くこっちを見る気配がない。
(…少しぐらい見なさいよ)
ムッとしながらも、掃除を始める霊紗。
当の本人はうつむいたらまま完全停止している。
「ねぇー、掃除しようよー」
海がびしょ濡れを気にせずに浴槽を擦る。走り回る2人に声をかける。
「…はぁ、何で手伝ってるんだろう、私」
サラもびしょ濡れで浴槽を擦りながらため息をつく。
白いブラウスが濡れて、下に着けてる黒い下着が透けてしまっている。
「…ん?」
ふと、そーっと風呂場から出ていこうとする俊貴に気づくサラ。
素早く立ち上がり、俊貴を追いかける。
「ちょっと、どこいくの?」
脱衣所に入った瞬間に声をかけるサラ。
ビクッと体を震わせた後、ぎこちなく振り返る俊貴。
「いや、その、目に悪いと言うか、良いと言うか…」
苦笑いする俊貴。
「…っ!」
サラの姿を見て慌てて前を向く俊貴。
あわわ、やっぱり透けちゃってる!
だから、こっそり抜け出そうとしたのに…
「……ふーん、透けてるのが気になるの?」
「…さ、さあ?ナンノコトヤラ」
振り向かずに腕を広げる俊貴。
「気にならないなら、振り向けるわよね?」
「くっ!」
わかっててやってるな、サラのやつ…
これだからドSは…
「ふん、さっさと掃除終わらせるよ」
チラッとも見ずにお風呂場へと戻る俊貴。
「うふふ、どれだけ持つかしら?びしょ濡れの女の子ばっかの状況で」
クスクス笑いながらその後に付いていくサラ。
「おにーちゃん!」
「ぐふっ!?」
お風呂場に戻った瞬間にいきなり翠にタックルされた俊貴。
タイルに倒れる2人。
「翠っ!」
凜が翠の首根っこを掴み、俊貴から引き剥がす。
「あたたっ、凜、ありがと……っ!」
凜の格好を見て驚く俊貴。
凜も服が透けてしまって、ピンクのブラが見えてしまっている。美琴程ではないが小さくもない胸の谷間につい目がいってしまう。
「ん?………見る?」
俊貴の視線に気づいた凜が笑いながら、服に手をかける。
「ちょっ!ストップ!!見ない!見ないから!!」
慌てて止める俊貴。
「あら?じゃあこっち見る??」
第2ボタンまで外したサラが、俊貴の顔を手で抑えて自分の方に向ける。
「うっ!?いや、ちょっ、待って!」
ジタバタするが、顔が固定されてるため意味がない。
「あー、おにーちゃん顔が真っ赤だよ」
タイルに降ろされた翠がムスッとする。
「た、助け…」
俊貴の言葉を遮るようにサラが谷間に俊貴の顔をうずもらせる。
「…あんたらいい加減にしなさいよ」
「「「え?」」」
「ふぉ?」
「キャッ!」
霊紗が怒気を放ちながら、4人に詰め寄る。
サラの胸に埋もれる俊貴が声を出したら、サラが変な声をあげた。
「…あんた、なにしてんのよ」
俊貴の胸元を掴み、無理矢理立ち上がらせる。
「何って、オレは何も…」
「は?」
「ごめんなさい」
霊紗の剣幕に圧されて謝る俊貴。
「…わたしは見なかったくせに」
ボソッと呟き手を離す霊紗。
「え?」
「何にもない!」
俊貴に背を向ける霊紗。
「…掃除、しようよ…」
海がその輪に入りたいけど、タイミングを逃したため掃除するしかない状況で呟く。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
別荘の掃除が終わり、綺麗になったお風呂に入る神楽達。掃除で汚れたため、汗を流すのもかねて今女性陣が入っている。
16人がお風呂場にいるが、狭さを感じるどころかまだまだ空いたスペースが多い。
お風呂場に白い湯気が漂っている。
そんな中を楽しげにお風呂に入る翠達。
美琴と凜、悠里とクロエ、アイギスは頭や体を洗っている。
「ふぅ…、中々悪くないわね」
霊紗がお風呂に浸かりながら綺麗になった天井を見上げる。
「そうだね。これからこんなお風呂に入れると思ったら嬉しいな」
神楽も霊紗と同じように天井を見上げる。
「…このまま平和なら良いんだけどね…」
霊紗がボソッと呟く。
そもそも、ここに隠れるように住む必要が出てきたのは、ドミニオンから隠れるためで、いつドミニオンに気づかれるかわからない。だから、いつまで安全かなんてわからないし、下手したらずっと安全かもしれない。
「?」
神楽が難しい顔をする霊紗を見て首をかしげる。
「…ん?何もないわ。ちょっと考え事してただけ」
見られてることに気づき、霊紗が答える。
「ふーん…」
少し気になりつつも、何でもないと言われたため深く聞かない。
お湯に視線を移す神楽。
「…にしても」
「へ?」
霊紗が神楽の胸を見ながら近づいてくる。
「あんたのそれは、むかつくくらい大きくなったわね!」
そういって、神楽の胸を鷲掴む霊紗。
「な!?す、好きで大きくなった訳じゃないもん!」
霊紗の手を振りほどこうとする神楽。
「あー…、柔らかい。何食ったらこうなるのよ!」
「知らないよ!」
何とか霊紗の手を振りほどく神楽。
「…でかいと言えばあんたもでかいわね」
2人のやりとりを見てたカガリの方を霊紗が見る。
「な、何じゃ…!?」
ビクッと体を震わせたカガリ。
「…むかつくわねー、周りがでっかいのばっかで腹立つわ」
霊紗がカガリに向かい、正面に立って、いきなり胸を揉み始めた。
「は、離すのじゃ!」
「嫌よ」
カガリの言葉を拒否して霊紗が胸を揉む。
「う…、うう…、い、いい加減にせんか!」
霊紗の顔にお湯を思いきりかけるカガリ。
「…」
「はぁ…、はぁ…」
お湯をかけられて動きを止める霊紗。胸を腕で守りながら霊紗を見上げるカガリ。
「…はあ」
ため息をつきその場に座る霊紗。
地味にへこんでいるようだ。
「胸が小さいの、気にしてたようじゃの」
隣にきた神楽に耳打ちするカガリ。
「…そうみたい」
苦笑いする神楽。
よくよく思ったら、桜とアイギスと霊紗以外、巨乳。桜がいなくなった事と、アイギスは見た目のせいで霊紗のコンプレックスは強くなった。
更に、美琴と凜。普通に霊紗よりも大きい。ここ最近、成長したことを喜んでいたのに、周りが大きくて素直に喜べない。
きわめつけは俊貴。
胸が大きい方が好き、と言う事を知った霊紗はコンプレックスが一層強くなった。
「…平和ね」
そんな光景を1人ハナレタ場所から見ていたサラが呟く。
・・・・・・・・・・・
「はぁー、やっぱ風呂はいいなぁ!」
全身を洗って掃除の汚れを落とした後に、お風呂に入る俊貴。
主に重いものを運んでいたため、暖かいお湯が心地いい。
「…んー」
足を伸ばしてくつろぐ。
家だと伸ばせるほど広くないため、足を伸ばせてリラックスできるのが地味に嬉しい。
「ふぅ…、1人で入るには広すぎるな」
お風呂場を見渡しながらその広さを改めて実感する。
「ま、落ち着けるから良いんだけど」
ふふーん、と鼻歌を歌い上機嫌な俊貴。
「あら、ご機嫌ね」
「!?」
いきなり入ってきたサラに驚く俊貴。
「ちょっ!待て!何で入ってきてんだ!?」
慌てて前を隠す俊貴。
「入っちゃいけないなんて言われてないけど?」
目の前まできたサラ。一応タオルを巻いていたが、そのスタイルは逆に妖艶さを醸し出している。
それが俊貴をドキドキさせる。
「言ってない。言ってないけど、さっき入ったろ!!」
「私が何回お風呂に入ろうが勝手でしょ?」
クスッと笑って、俊貴を見下ろすサラ。
「それはそうだけど、今はオレが…」
「1人じゃ寂しいでしょ?」
俊貴の前に座り、四つん這いで近づいてくる。
「ちょ!来んな!!」
四つん這いのせいで見える谷間に焦る俊貴。
後ずさるにも後ろは既に壁。
「さて、逃げ場はないわ」
艶かしい笑みを浮かべて、俊貴の頬に両手を添える。
「…っ」
「うふふ、そうよ。大人しくしてなさい」
「ま、待て…」
赤くなりながらも、一応抵抗。
「待たない」
俊貴の上に跨がり、顔を近づけるサラ。
「…ん」
「!?」
股がってきた後、唇を重ねる。
「お前は、また!」
すぐ離してきたため俊貴が焦りつつもサラを見る。
そして、異変に気づく。
「な…!?」
体が痺れ始めた。
指を動かすのがやっとな程の痺れが、体を巡る。
「うふふ、どう痺れ薬の効果は」
痺れて動けない俊貴を見て満足気に笑うサラ。
「唇に塗ったの。ちなみに私には麻痺や毒は効かないわ。慣れてるもの」
な、なんと言う忍者…
声に出せない俊貴。
「さて、また楽しませてもらうわ」
そういって、俊貴の体に触れていくサラ。
なぞるように上から下へと手を這わす。
「感覚が痺れてるから、よくわかんないんじゃない?」
笑みを浮かべて、俊貴の下腹部へと手を動かしていく。
「あら?」
クスッと笑うサラ。
感覚はないためわからないが、普通だったら冷や汗が流れているだろう。
だが、そこへ扉を勢いよく開けて誰かが入ってきた。
「姿が見えないから、もしかしてと思ったら、やっぱりここにいた…」
そこにいたのは霊紗だった。
応接室に集まってたはずが、いつの間にかサラだけいなくなっていた。
それに気づいた霊紗は、俊貴が入浴中だった事を思いだし急いでお風呂場に来た。
「…あんたら、何してんのよ」
湯気でよく見えなかったが、扉を開けた事により湯気が薄まる。
そして、お風呂の中でくっついてる2人の姿が見えた。
「あらら?お邪魔虫が来たわ」
霊紗を見てサラがため息をつく。
「それとも、参加しに来たのかしら?」
クスッと笑みを浮かべるサラ。
「なっ!?そ、そんなわけないでしょ!!あんた何言ってんのよ!!!」
真っ赤になりながらも怒鳴り付ける霊紗。
「うふふ。そう。じゃあ、私は退散させてもらうわ」
スッと立ち上がり、タオルの位置を直して出ていった。
「…」
「…」
風呂場に残された2人。
俊貴は痺れてて喋れないせいもあり、2人とも無言。
「…あんた何も言わないの?」
霊紗がこっちを見ない事と、何も言おうとしないことに違和感を感じた。
だが、その問に答えが返ってこなかった。
「…俊貴?」
さすがにおかしいと思い、俊貴の正面へと移動する霊紗。
「…し…」
「…し?」
俊貴が絞り出すように声を出した。
「…び……れ……」
「しびれ…痺れ?あんた痺れて動けないの?」
こくっとかろうじて頷く俊貴。
「…助けたいけど、私にはちょっと…」
裸の俊貴に恥ずかしくて近づけない霊紗。
俊貴はしびれが切れ始めてきたのか、首をゆっくりだが横に振った。
「…い……い。気に……しな…で」
「……でも、溺れられても困るし、私も入るわ」
赤くなりながら、脱衣所に向かう霊紗。
「……」
呆然とそれを何とか見る俊貴。
少ししてすぐに霊紗がタオルを巻いて来た。
「…こっち見んな」
タオルを巻いてるのに、腕で体を隠す霊紗。
見たくても見れない…
「こっち見たら殺す」
そういって、少し離れた場所に座る霊紗。
…見たい。見たいけど見れない。くそ…
そんなことを思いながら、痺れが引いてきた指を動かしてみる。
割とうごかせるようになった。
「…動かないでよ」
そっと近づいてきて隣に座る霊紗。
うごけねぇーつの
心のなかでため息をつきボーッと前を見る俊貴。
ふと、霊紗の手が俊貴の手の上に重なる。
「…」
「ちょっとだけ、このままで…」
少し俊貴の方にもたれてきた霊紗。
…ぎ、逆に意識しちゃうぞ、これ
焦りつつも、右肩に感覚が無いことを悔やむ。
「…変な事考えてんじゃないわよ」
…あい
心のなかで返事をして、痺れが引くのを待つ。
それまで、ずっと霊紗は俊貴にもたれたままだった。
こんにちわ。
今回は平和な掃除回でした。
ってか、まだ戦闘はないです。
後、2話ぐらいで戦闘が入る予定です。