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彼の進む道  作者: けやき
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ドミニオンの情報

ヴァニタスと協力して、ドミニオンのロイドから霊紗を取り戻した俊貴。

だが、霊紗は助けただけで何も言ってこない俊貴に腹をたてる。

そんななか、俊貴に怒ってるのは霊紗だけではなかった。

神楽の部屋


「…」


「……」


神楽の部屋のリビングで正座する俊貴。


俊貴の前には、腕を組み仁王立ちする神楽、カガリ、アイギス。


ソファに関係ないわ、見たいな顔した霊紗。

壁にもたれて成り行きを見守るクロエ。


俊貴がチラッと三人の方を見上げる。


「……」


三人は俊貴を睨み付けている。


「えっと、その…」


俊貴が堪えきれず口を開いた。


「何で一人で行ったの?」


神楽が俊貴の言葉を遮るように言った。


「えっと、迷惑かけたくなくて…」


「連れてくって言ったよね?」


と、アイギス。


「…はい」


「汝はホントに勝手じゃな!」


と、カガリ。


「……はい」



「……まぁ、いいんじゃないか?二人とも帰ってきたし」


クロエが助け船を出す。


一斉にクロエの方に視線が集まる。


「これでもし一人で帰ってきてたら、私もそっち側だったけど、二人で帰ってきたんだ。この辺でいいだろ」


「…確かにそうだけど、やっぱさ、私達仲間じゃん?ちょっとは役に立ちたいんだよ」


腕組みをとき表情を和らげる神楽。


「それは私もそうだが、今回は役に立てなかった。拠点の場所も何もわかってなかったんだ。チャンスがなかった」


「…そうじゃな、無事帰ってきたのじゃ。良しとしとこう」


「まぁ、あたしはそれほど怒ってなかったんだけどねー」


アイギスがニコニコ笑う。


「俊貴だししょうがないか」


小さくため息をついて肩をすくめる神楽。


「…ごめん、皆」


俊貴が頭を下げる。


「いいよ、怪我が心配だったけど無事だったし」


俊貴が顔をあげる。


今度は笑顔で見下ろしてくれる神楽達。


「…ありがとう」


俊貴がまた頭を下げた。


「…ところで桜はどうしたの?」


我関せずを貫くかのように黙ってた霊紗がやっと口を開いた。


「…帰ったよ。魔法世界に」


俊貴が正座のまま霊紗に振り返り言った。


「…何でよ?」


「それは…」


・・・・・・・・・・・


「巻き込まれたくないから帰った、か。自分の任務放棄したってわけ?」


霊紗を助けにいくまでの経緯を話して、霊紗がムッとする。


「…お咎めはないと思うよ。監視対象が旧世界を支配してる組織に楯突こうとした。それに加担してるなんて知られたら、魔法世界側にもあまり良くないんじゃないのか?」


と、俊貴。


「まあ、そうよね。旧世界と戦う事にはなりたくないだろうし」


霊紗がため息をつく。


「…しょうがないよ。桜にも色々あるんだしオレ達のしたことに巻き込みたくはない。オレ達はオレ達の道を進む」


そういって、俊貴が立ち上がる。


「で、これから旧世界を牛耳るドミニオンの情報を集める」


「情報?」


アイギスが首をかしげる。


「うん。ドミニオンの情報が全然足りない。組織の目的、規模、資金、等色々とね」


「…でも、どうやってそれを調べるの?」


見当もつかないと言いたげな顔の神楽。


「一応旧世界のギルドとかで情報を集めるつもり」


テレビやラジオからの情報ではドミニオンの情報など集まらない。アカツキや他のギルドなら、ドミニオンの事も知ることができるだろう。


そこへ、テレビからひとつの報道が耳に入った。


『昨日起きました、某大手会社が一夜にして倒壊した事件の続報です』


「!」


その報道に俊貴達が一斉にテレビの方に向く。


テレビには原形をなくして崩れ去った会社の映像が映っている。


『先日、元取締役代表が自殺し、新たな代表が就任したばかりの……』


元取締役代表は自殺ではなく、ロイドが殺してその地位を奪い取ったのが事実だが、やはり情報操作されている。


「…おかしい。なんで倒壊してるんだ」


俊貴と霊紗が家に戻る時には、倒壊などしていなかった。


「アイツか…」


思い付くのは一人。

俊貴と共に行った、ヴァニタス。


「でしょうね」


霊紗も頷く。


ヴァニタスならやりかねない。


『先ほど入ってきた情報によりますと、現取締役代表のロイド氏が行方不明となっているようです』


「行方不明!?」


驚く俊貴。


殺しはしてないが、動くことはできない程のダメージを受けていたはず。なのに、ロイドはいなくなっていた。


ヴァニタスかとも思ったが、ヴァニタスは魔力を持たない者を取り込む事はしないだろう。そんなことしても自分の魔力は増えない。


「…ドミニオンが助けて回収したのか」


その可能性が一番高いだろう。


『ビル倒壊の原因と取締役代表の捜索を警察が行っているとのことです』


そういって、そのニュースは終わった。


「…どうする?」


俊貴の方を向いて神楽が聞く。


「アカツキに行こう」


「そうね、まずは大きい所で情報収拾が妥当ね」


霊紗も頷く。


「皆もいい?」


神楽達の方に向く。


「いいよ」


皆賛成みたいだ。


「じゃあ、アカツキに行くから準備して」


そういって、俊貴が部屋から出ていった。


・・・・・・・・・・・


「おう、よく来たな」


相変わらず机に足をのせてタバコを吸うアカツキのボス。


俊貴を見てニッと笑う。


その横には、サイトとサラが立っている。


「お久しぶりです」


俊貴がボスのもとに近づく。


「今日はどうした?」


座ったまま俊貴を見上げるボス。


「ドミニオンの事で知ってることを教えてほしいんです」


「!」


俊貴の言葉にサイトとサラが驚き体を揺らす。


「…どうするつもりだ?ドミニオンと徹底抗戦でもしようってか?」


ボスが机に肘をつき俊貴を見る。その目は鋭く考えを見透かしそうな気がしてくる。


「…それはドミニオンの事をある程度調べてから決めます。っても、向こうはどうかわかりませんが」


あはは、と苦笑いする俊貴。


「…内容次第で戦う道を選ぶのか?」


「はい」


「なら、お前の道は戦いだ」


「!…そう、ですか」


ボスの宣言にうつむく俊貴。


こっちは戦う気がなくても向こうはどうかわからないし、どのみち戦いは避けれないだろうとは思っていた。


「まず、お前とサイトに出した任務のある国の魔物を倒してこいって任務覚えてるか?」


「…人身売買の件ですか?」


「そうだ。あそこで行われていた売買の金はドミニオンに流れている。あの国自体がドミニオンの支配国だったわけだ」


タバコの灰を灰皿に落とす。


「だから警告として攻撃してきた、と?」


「俺はそう考えてる」


「…でも、そうだとしたら他にも組織を維持するための資金を得ている所が有るってことですよね?」


「!…確かに、そうなるな」


かの国で行われてた人身売買を潰して、そこから流れてきていた資金が消えた。その資金は少なくないはずなのだが、仕返しとして警告だけしてきた。


それは、まだ他にも資金を調達する術がある。そう思わせられる。


「お前の考えてる通り、奴等はまだ資金を充分得る手段がある。俺はそう考えてる。だから、警告程度で済ました。俺らアカツキを潰してしまったら、魔法世界に対抗するのが益々難しくなるからな」


「魔法世界に対抗するためにドミニオンが有るんですか?」


「それはわからん。だが、奴等は魔法世界の人間を殺すことに躊躇いはない。」


「魔法使いを殺す。まるで魔女狩りだ…」


「だがな、旧世界の人間の魔法使いだと交渉して仲間になれ、と言ってくるらしい」


「!やっぱり、ドミニオンは魔法世界の魔法使いを問答無用で殺してたのか。旧世界の魔法使いの行方がわからなくなった理由がわかった」


俊貴が指を擦る。

行方不明の旧世界の魔法使いはドミニオンの構成員となったのだ。


「ほぉ、そこまで個人で調べてたのか。抜け目ねぇやつだな。お前は」


ボスが笑う。


「個人っても、魔法学園の協力があったんですがね」


苦笑いする俊貴。


「…そうか」


「…で、ドミニオンの話はしてくれるんですか?」


「ん?…まぁ、そうだな。いいだろう。知ってる限りのことは話してやる」


タバコを灰皿に捨て新しいタバコを取り出す。


「ありがとうございます!」


それに笑みを浮かべるトシキ。


「っても、知ってることもそうないんだがな」


ボスも悪びれず笑う。


「え…?」


トシキが呆然とする。


「とりあえず、奴等の拠点はわからん。お前が昨日行ったあの会社も拠点じゃない。だから、キナ臭い所を潰していっても埒があかない。やるだけ無駄だ」


「そうですか」


それは何となくわかっていた。


「まぁ色々噂されてるが、人員も拠点も不明。規模は旧世界全土だと思われる。」


「旧世界全土…」


そのスケールのでかさにしっくりこないが、確かに旧世界でドミニオンの拠点だとおぼしき場所を一つ一つ当たっていたら埒があかない。


「それと、信憑性が割りと高いのが、かつて魔法世界と戦争を起こしたと言われてる組織の残党が立ち上げたって聞くぞ。魔法世界の人間を目の敵にしてるようだから、信憑性は高いと思う」


「言われてみれば、たしかにそうですね。その可能性を考えてなかった…」


「まぁ、うちでわかってることはドミニオンは巨大な組織だってことぐらいだ。」


タバコを灰皿に擦り付けるボス。


「…そうですか」


結局わかったことは余りなかった。


逆に、俊貴の予想が濃くなる。


ドミニオンがホントに存在するのかどうか。

名前だけが1人でに動き回ってるだけじゃないのか。

そのせいで、本来存在しない組織が勝手に恐れられてるんじゃないか、という予想が。


「…ところで、お前、広くて大きい家を探してるって言ってたな?」


「え?…ああ、はい」


人身売買で売り飛ばされそうになってたのを助けて保護した、翠達の家を探していた。手当たり次第に聞いたため、アカツキにも情報が回っていたようだ。


「俺の別荘をお前に譲ってやるよ」


そういって、机の中から一枚の紙を取り出した。

その土地の権利書のようだ。


「…ただ、のわけないですよね?」


ボスの性格からして、ただで譲るわけがない。


「まぁな」


クックック、と笑うボス。


なんて悪役みたいな笑い方なんだ…


「じゃあ、条件はなんですか?」


それにやれやれ、と呆れながらも条件を聞く俊貴。


「俺に従え」


ニッと笑うボス。

隣に立つ才人とサラも呆れている。



「…またアカツキで働けって事ですか?」


「そうだ。お前が抜けた穴が思ったより大きくてなぁ。人員の士気も下がっちまって迷惑してんだよ」


両隣のふたりをみるボス。


二人とも微妙な表情をしている。


「……でも、オレはちょくちょく来て仕事を受けれるかわかりませんよ?」


「だろうな。お前達は完全にどこにも属さない組織だが、強いて言うなら魔法世界の学園側の人間だ。そっちでやらないとダメなことも多いだろ」


「はい。っても、基本的に旧世界にいるんですがね」


「お前ってか、サキの影響がうちの男どもの士気をかなり動かしてな。たまにでもいいからサキとして姿をみせてくれねえか?」


サキがアカツキにいた頃の3ヶ月はやたら仕事の周りが良かった。

サキに会うために仕事を早く片付け、本部に戻る。それの繰り返しで仕事をドンドンこなしていく男達が多かった。


「……まぁいいか。わかりました。サキとしてまたここで働きます。仕事がこなせる時はやっていきます」


もしかしたらドミニオンの情報が手に入るかもしれないし。


「…いいのか?トシキ」


才人が不安げに聞く。


「いいよ。力をつける事にもなるし、お金も入る。ここで働ける時は働く」


微笑んで答えるトシキ。


「よぉし!交渉成立だ。ほれ」


土地の権利書を俊貴に差し出す。


「ありがとうございます」


それを受けとる俊貴。


「とりあえず、殆ど使ってないから掃除しないといけねえぞ。必要な物は一通り揃ってるはずだから安心しろ」


「はい」


「後、お前ら家族をそこに避難させとけ。ドミニオンから報復されないとも限らんからな。ドミニオンに知られてないそこなら安全だ。」


「…わかりました、ありがとうございます」


頭を下げる俊貴。


権利書と一緒に渡された紙に見取り図が書いてあった。

どうやら3階建てで1つの階に部屋が10個以上あるようだ。


こんな広い物件を、アカツキで働く事と交換条件で出してきた。

比率が合ってないと言えば合ってない。

豪邸をたまに顔だすだけでもらう様なものだ。


おそらく、ボスはトシキ達の家族を危険から守るために、わざわざ知られてない場所の別荘を譲ったのだろう。


「一回見てきたらどうだ?」


「そうですね、掃除がてら行ってきます」


「おう、行ってこい。サラ、付いてってやれ」


「何で私が…」


「いいから行け」


「…はい」


しょうがない、と腹をくくりサラも俊貴達と一緒に部屋を出た。


そのサラの胸中は正直喜んでいた。が、顔には現してない。


「…いいのか?あんなタダ同然で」


と、才人が聞く。


「使ってない場所を使いたい奴に譲ったんだ。使われないよりはいいだろ」


「まぁ、そうだけど…」


「気にするな。これでアイツは俺達の敵になることはない」


「…確かにそうだが」


「大きいぞ?アイツが敵かどうかは」


「それはよくわかるよ。一度戦ってるし」


「だろ?なら、とりあえずは黙って従ってろ。あいつの存在は両世界を揺るがすものといずれならだろうからな」


そういって、新しいタバコを取り出して吸い始める。


「…」


ボスの言ってることが今一わからないため怪訝そうな顔をする才人。

こんにちわ。


かなりのお久しぶりとなりました。


ちょっと他の作品を書いてたら少し設定を忘れてしまってたので読み直すのに時間がかかってしまいました。

申し訳ないです。


ただ、これからはちょくちょく更新していく予定ですのでよろしくお願いします。

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