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彼の進む道  作者: けやき
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トシキvsロイド

大手会社の社長室。

そこは今、普段の落ち着きを失いパニックに陥っている。突如現れた侵入者により、五階まで突破された。

エレベーターを封鎖したおかげで、一気に上まで来られるのは防いだ。


「くそっ!一体誰だ!!」


アカツキの連中のお礼参りか?だが、侵入者は二人だと聞いた。

誰だ、誰なんだ!


パニックになっている会社の社長。だが、彼は最近社長となった。前任者は、彼によって降ろされ殺された。


この会社の社長となったのは、人身売買の消滅により激減した収入を得るため、‘表’で有名な会社を乗っとった。そのかいあって、前より減ってはいるが、かなりの収入を得ることに成功した。


「社長!」


急に通信が入る。侵入者の情報を、と下に送った秘書からだった。


「状況は?」


焦る社長。赤い短髪の青年の額に汗が流れる。


「現在十階まで突破されました!侵入者は二人とも健在。勢いは弱まりません!!」


走っているのか、息を切らしながら報告をする秘書。


「…そのまま様子を見ろ。対処はこちらでする。」


爪を噛むロイド。

機械兵に、十五階に集結するよう指令を出す。

いざとなったら、自分が逃げるための時間稼ぎ。


「霊紗、今すぐ社長室へ来い!」


「…わかった」


霊紗は二九階にいる。ロイドは三十階。すぐ来るだろう。

霊紗も共に連れてかねば、奴等を人質にとった意味がない。それに、奴等にとっても人質の意味がない。

我らに手を出せば、霊紗の命はない、と。


「一体何物なのだ…」


ロイドに侵入者の正体が思い付かない。トシキが霊紗を取り返しに来たとは微塵も思っていなかったから。

そう思っていると、霊紗が部屋に入ってきた。元気がなく、まるで人形の様だ。


「…何のよう?」


此処に来てからずっとこの調子。今起こってる事にすら気づいてないようだ。


「侵入者だ。機械兵に時間を稼がせた。今のうちに逃げる。」


まさか、此処が襲われるとは思っていなかったため、機械兵は少ない。まともに戦えるのは機械兵を除いてロイドだけだった。


「あっそ…」


霊紗はゆっくりとロイドの近くに行く。


「…」


その様子を見ながら、急いで戦闘準備をする。服を脱ぎ、ドミニオンで開発された戦闘用スーツを着込む。黒と金色ラインが入った体にピッタリフィットする素材で、スーツを着ているのか、と思わせるほど軽い。

そのスーツは、戦闘に特化しており、装着者の能力を限界まで引き出し、更に独自に開発したマナエネルギーを使いパワー、スピード等を向上させ、更には魔法を使う事までできる。

だが、魔法を使うことのできない者が魔法を使うため、使用者に異常を来す。精神崩壊等、使用者の内面を破壊することになるだろう。


「…よし、スーツを着込んだ。サーベルもアサルトライフルもある。」


装備を確認する。


「浮遊、障壁装置異常なし。マナエネルギーも満タン。魔力回路正常。」


スーツの状態を確認。異常なし。大気中に含まれるマナ(自然の魔力)を取り込み魔力へと変換。その魔力を使い魔法を使うための回路も異常なし。


「よし、準備はできた。ここから出るぞ」


ロイドが霊紗の方を向く。


「…何だ?」


霊紗の顔は唖然としている。


「き、貴様!何故ここに来た!!」


霊紗の視線の先には一人の青年。ドアにもたれてこちらを見る黒髪の青年。


「よぉ、ロイド君」


トシキが手をあげ挨拶する。


「侵入者が貴様だったとはね。どういうつもりだい?」


トシキを前にして、余裕を見せるロイド。


「売られた喧嘩を買いに来た。」


銃を取り出し、ロイドに向ける。


「何だと!」


「それはおまけだがな。」


ふっと、笑う。


「何!?」


トシキはいつのまにか霊紗の前に移動している。


「…1日も経ってないのに、何か疲れてるな」


トシキが微笑む。


「な、何で来たのよ!!」


後ずさる霊紗。

だが、その心は少し安らぐ。


「決まってんだろ?助けに来た。」


トシキがイタズラっぽく笑う。


「っ!」


此処に現れた時点でトシキの目的を理解していた。


「おいこら!カスが!!無視すんじゃねーぞ!!」


ロイドが声をあらげて、自分を無視する二人にイラつきを露にする。


「…先に片付けるか」


トシキがロイドの方を向く。

その目は冷たい。


「何故貴様は此処にいる!まだ十五階で」


「足止めされてるはず、か?残念、今回は気にくわないが仲間だと頼もしいヤツがいる。」


十五階でヴァニタスが一人で機械兵を相手にしている。トシキはエレベーターの天井を破壊し、最上階まで上がってきた。


「何だと…!」


十五階の映像を確認する。そこには、数で勝る機械兵を一方的に叩きのめすヴァニタスの姿。話では聞いていたが、ヴァニタスを見たことはないため、誰かわからない。


「話しは終わりだ。お前を潰す」


再び銃を向けるトシキ。


「貴様の様なゴミが、俺を潰せると思うとは!才能の前にひれ伏せ!!」



浮遊装置によりある程度軽くし、スーツの力で素早く移動。トシキの上に現れ、ビームサーベルを振り下ろす。


「うおらぁ!」


「…」


振り下ろされるサーベルの柄の部分を右手の銃で受け止める。

サーベルがトシキの頭の上で止まる。


そして、左手の銃をロイドに向けて、魔法弾を放つ。


「ぐっ!」


ロイドに直撃し爆発が起こる。

爆煙から、床を削り後ずさるロイド。


「…」


両手の銃で、爆煙から出てきたロイドに魔法弾を乱射する。


「ちっ…、うっとうしい!」


直撃する前にサーベルで叩き落とす。

サーベルに当たった弾は、爆発を起こす。

次第に爆煙が増す。


「思ったよりもやっかいな武器だな…」


ロイドが爆煙から更に距離をとる。

部屋の窓際に背中が着く。


「なっ!?」


前を向いた瞬間トシキが目の前で、刀を振り上げていた。


風を斬り、ロイドの顔の前スレスレを通りすぎる刀。

それに反応できなかった事が、ロイドを動揺させる。


そんなロイドに、トシキは攻撃の手を緩めない。

体勢を低くし、ロイドの足を蹴って払う。


「うおっ!」


綺麗に足払いされ、体が宙に浮く。

咄嗟に、浮遊装置を作動し体を浮かす。


「!…」


それに驚くが、冷静にロイドの腹に魔法弾を放つ。


「またそれか!…っ!?」


一発の魔法弾をサーベルで撃ち落とす。が、強風を巻き起こし窓を突き破って外へと吹き飛ぶ。


「ぐっ!」


浮遊装置があるため、宙に浮いたまま社長室を見下ろす。


「くそっ!俺が圧されるとは!!」


爪を噛むロイド。


「そうだ!まだ武装があるじゃないか!!」


口から爪を離し、一つの武器を思い出す。

ロイドに渡されたスーツは試作型ではあるが、武装が増やされている。その武装は、背中に付けられたパックに収まっている。


「これ以上、調子に乗るなよ!!」


八個の小さな円錐形の黒い物が、背中のパックから展開。社長室まで飛んでいき、斜めに位置どる。


「食らえ!」


一斉に円錐形の物からビームが放たれる。八本のビームが社長室の一部を貫き吹き飛ばす。


「あーはっはっは!」


その威力に高笑いする。


「何がそんなに面白いんだ?」


「…っ!」


目の前に浮いているトシキに驚く。あの距離をいつの間に?


「はああ!」


日本刀を振り下ろす。


「ぐぅっ!」


斜めにスーツを斬り裂かれる。そこから赤く血が流れる。


「っ…、貴様ぁ!」


傷を確認し、トシキを睨み付ける。それほど深くはない。間合いもバッチリで傷は深いはずだが、スーツにより浅くすんだ。


「…」


可笑しいな、致命傷になるはずなのに…。あのスーツの性能か?


「くぅぅそぉがぁぁ!」


取り乱し、ビットでトシキの周りを囲みビームを放つ。


「!」


全方位からの射撃を見切り、ビームをかわす。


この全方位からの射撃は厄介だな。どうする…


「うらあぁ!」


「!」


サーベルを振り下ろすロイド。

それを再び柄の部分に当たるように防ぐ。

少しだけ、ビームサーベルがぶれる。



「ふっ」


ロイドの腹を蹴り、距離をとる。


「…、何だ!何で攻撃が当たらない!」


焦り出すロイド。

昨日は一方的に叩きのめしたと思っていた。動揺していたために、トシキの動きが鈍かったのを知らずに。

今日はその時の逆で、ロイドが動揺している。来ると思ってなかったトシキが来てしまったから。それに加えトシキはロイドに対して静かな怒りを燃やしている。それは充分すぎるほどにトシキに力を与えている。


「うっ…」


トシキの体に痛みが走る。自分の体を見下ろすと、脇腹の包帯が赤く染まり出している。脇腹の傷が開いた。


「な、なんだ?」


急に動きの止まったトシキを見る。


「!傷が治ってなかったのか…」


それに気づき笑うロイド。勝機が出てきた。


「!」


不意にトシキの腕スレスレをビームが通りすぎる。


顔をあげ、ロイドの方を見ると笑みを浮かべ余裕を取り戻したようだ。


「怪我が治ってなかったのか?残念だったね、治ってれば勝てたかもしれないのに」


そう言って、一気に距離を詰めに来る。


「…っ!」


構えようとした瞬間に痛みが走る。


「ふはははは!」


高笑いし、トシキにサーベルを振り下ろす。


「くっ!」


障壁を展開し、サーベルが障壁にぶつかる。

小さな欠片のマナを散らしながら、障壁を削る。


「サーベルだけじゃないぞ?」


アサルトライフルからビームが放たれる。


そのビームは障壁に直撃し、勢いそのままにトシキをビルへと叩きつけた。


「くくく、あははははははは!!」


高笑いして、社長室に戻る。

トシキが吹き飛ばされた下の階を見下ろす霊紗に舌打ちする。


「…さあ、本部へ行こうか?」


霊紗へと手を差し伸べる。顔は笑っているが、本心はイラついている。


「…何で私なの?」


振り向かない霊紗。

それにまた腹がたつ。


「何で?君が好きだからさ!」


その言葉に、霊紗がロイドの方を見る。


「…そう」


うつむく霊紗。

本当に自分の事を好きなら、と考える。幼い頃の約束とは言え、一応は婚約者。無下にはできない。

でも、今はロイドよりもトシキのが気になる。と、言うよりも好きすぎてしょうがない。1日会ってないだけで、不安になる。怪我は大丈夫か、自分のせいで傷つけてしまった、謝りたい、でも嫌われたかも。怖い、でも会いたい。会ってちゃんと話したい。


本当は好き


ただ、それを伝えたい。


「…さぁ、共に行こう」


その場を動かない霊紗に苛立ちがドンドンつのる。


「私は…行かない」


ロイドの方に顔をあげる。その顔は、人形の様な表情とは違い、元の強気なそれに戻っていた。


「何故だい?俺は婚約者だよ?」


声は優しく言ってるが、苛つきを隠すのが一杯一杯になってきている。


自分の物にならない。

今まで、才能溢れる自分に、金に困らない自分に振り返らない女はいなかった。欲しいものは何でも手に入った。


だが、霊紗は自分に靡かない。このままでは、トシキを無力化できない。


ロイドの目的はトシキを無力化させ、手出しさせないこと。そして、トシキを利用して、駒とする。


だが、それを今の状態では達成できない。霊紗が自分に靡かない。それは、トシキを無力化出来ないことを意味する。それに焦り、苛つき始める。


「自分から来ないなら、無理矢理にでもつれていく!!」


霊紗の腕をつかみ、無理矢理引っ張る。


「いや!」


抵抗して体重を後ろにかける霊紗。


「吹き飛べ」


下の階から、竜巻が巻き起こりロイドを飲み込んだ。竜巻は天井を破壊し、空へと伸びていく。


「…」


トシキが竜巻で開けた穴から出てきて、天井の穴を見上げる。


ロイドが途中で竜巻を打ち消していた。


「大丈夫だった?」


しゃがんで、霊紗の目線に合わせるトシキ。霊紗の体を見回すが、怪我はしてないようだ。

ホッとするが、まだロイドを黙らせてはいないため気を抜けない。


「私よりあんたよ!」


脇の包帯が更に赤く染まっている。


「ありがとう、オレの心配はいいよ。すぐ塞がるから」


そう言って、霊紗に手を差し伸べる。


「でも!」


そう言って、ドンドン赤く広がる包帯を見る。


「大丈夫だから、オレを信じて」


微笑むトシキ。無理してるのは丸わかりなのだが、不安がらせない様にするトシキ。


「…わかった」


自分を傷つけてでも人を助けようとするトシキに、何を言っても無駄なのはわかってる。トシキの差し伸べてくれた手を握り、立ち上がる。


「…もうちょっと待ってて」


トシキが霊紗の頭に軽く手をのせる。


「うん」


その手は温かく、心地いい。


が、その温もりは頭から離れる。


「ふぅ…」


息をはき、深く息を吸う。


トシキの周りに闇の魔力。そのまま、トシキを飲み込む。


「……はぁ」


トシキの左目が金色に変わる。闇の力、マハカーラー。


ぐっと、足を曲げ空へと向かう。天井を破壊して空をかける。


「はあぁぁ!」


二丁の銃を、宙に浮くロイドに乱射する。


その魔法弾をサーベルで叩き落とす。


「!」


ビットがトシキを取り囲み、一斉にビームを放つ。


「くぅ!」


死角からのビームで、避けるので手一杯。


「ビットだけではない!」


アサルトライフルから、ビームが放たれる。


「つぅ!」


闇の魔力が手に集中し、黒い魔物の様な手に変わる。

その手で、ビームを弾く。


「な!?……く!」


驚くがすぐに動き、距離を詰める。


「はあぁ!」


トシキもロイドに向かい、刀を振る。


トシキとロイドの体を斜めに斬り裂く。


「くそっ!」「うっ!」


ヤバイな…

やっぱあのサーベルの威力、思いっきり食らったら一発アウトだ


ため息をつき、刀をしまう。二丁の銃を握る。


そろそろ決めないとキツいかな…


トシキがロイドへ魔法弾を再び乱射する。


「くっ!」


何とかサーベルを振り、魔法弾を撃ち落とす。その度に爆煙が上がる。


ふいに、爆煙の中から、日本刀を抜き放ち、ロイドを斬りつけるトシキ。



「くぅっ!」


スーツの腹を裂き、ロイドの腹から血が流れる。


「…っ!」


予め、展開されていたビットがトシキの右肩を貫く。


右手の感覚がない。手から刀が離れるが、左手で受けとる。トシキの右肩に闇の魔力が集中する。


「なんだと!?」


ロイドが驚く。

トシキの右肩の傷が塞がり、治癒していく。


「いい加減!」


呆然としているロイドに翔る。

周りにまとわりつくビットを銃で破壊しながら。


「!」


それに気づき我に返る。八機有ったのが、既に半分にまで落とされている。


「これ以上!」


トシキの背中を狙っていた二つのビットを、背中越しで二機破壊。


「やらせない!!」


ロイドの横に浮くビットを破壊。ロイドの腹に右手の拳を唸らせる。


「かっ」


呻くロイド。

その隙に刀をしまう。


「人の気持ちを利用する様なヤツは許さない!」


ロイドの顔を殴り付ける。


「人質なんて取らずに正々堂々と戦え!!」


背中のパック部分を殴り半壊させる。


「くっ!」


ロイドが苦し紛れに腕を振り抜く。人質の事がバレていた事に焦る。


「お前みたいなヤツに霊紗は渡さない!!」


当たる寸前でロイドの腕をつかみ、地面に向けて投げ落とす。


「暴風の雷閃光」


ロイドに向けた手から、雷を纏った竜巻が走る。それは、闇の魔力が加わり、黒い竜巻になっている。


「浮遊装置!…、壊れてる!?」


浮遊装置を使って勢いを殺そうとするが、作動しない。


作動しようとしている間にも、竜巻はロイドに向かってくる。


「く、くそがあぁぁぁ!!」


竜巻がロイドに直撃し、そのまま地面へと突き刺さる。

地面に穴を開け、土煙を上げる。

「…はぁ。」


左目が元の黒色に戻り、闇の魔力がおさまる。


土煙が次第に晴れていき、穴の中心で倒れたロイドが姿を現す。

動かないため、気絶しているようだ。スーツはボロボロに裂かれ、バチバチと漏電している。


立ち上がってこないのを確認して、社長室へと戻る。脇腹の傷は塞がり、血は止まっていた。


ゆっくりとトシキが社長室に戻ってきた。


「…」


それを見つめる霊紗。何を思っているのか、喜んでるのか悲しんでるのかよくわからない表情の霊紗。


「終わったよ」


と、微笑むトシキ。

さっき見た無理した表情とは違い、余裕を感じられる。


「うん…」


顔が見れず、うつむいて頷く。

トシキがここに来た理由。落ち着いたら、それが頭の中を占めだす。嫌いだ、と傷つけた。辛い、と嘘をつき叩いてしまった。

傷つけたのにも関わらず、助けに来たトシキ。

部屋で呟いた、助けて、という言葉。それをトシキが叶えてくれた。


それだけで霊紗の心は温かくなる。


「帰ろう」


微笑み手を差し伸ばす。


「…うん」


微笑み手を取る霊紗。


「…話は付いたか?追っ手がかかる前に帰るぞ」


壁に持たれたヴァニタスが二人に声をかけた。


「!」


二人して気づいておらず驚く。


「もう一人ってヴァニタスだったの!?」


と、トシキを睨み付ける。


ちっ、笑顔が鬼の形相になっちまった…


ヴァニタスをの方をチラッと睨み付けてから、霊紗を引っ張って歩く。


「後で説明するから、今は逃げよう。」


「むぅ…」


後で説明するなら良いか、と思う霊紗。


「警報は鳴ってるから、結界を解けば表の警備員が向かってくる。だが、回廊は開いた。そこから帰れ」


目の前の回廊を指差す。

そして、一つの疑問の答えに気付く。

会社に侵入(正面突破)してから、既に数時間は経っている。なのに、警察どころか警備員すら来ない。来たのは、ドミニオンの機械兵だけ。警備員の役割を機械兵が行っていた可能性は無くはないが。

それは、外部の干渉を遮断する結界が張ってあったからだった。


抜け目ないヤツ…


今回は利害が一致したから協力した。が、次会うときは敵。

味方だと心強いが、敵だと恐ろしく厄介な存在。


「…ありがとう、一つ借りができた」


一応礼を言う。


「勘違いするな。たまたま利害が一致したから提案しただけだ。お前のためじゃない。俺のためだ!」


笑うヴァニタス。


「…何だろうと、今回は助かった。ありがとう」


「はっ…!おめでたいやつだな!!さっさと帰れ。」


そう言って、手を払う。


「あぁ、じゃあな。」


霊紗に白いローブを被せ、頭にフードをつける。


「?何でローブ?」


フードから顔をのぞかせる霊紗。


「霊紗に闇の回廊はもたないかもしれないからね。だから、このローブでその干渉を和らげる。」


トシキの白いローブは、エルフ族に伝わる技術で作られたため、特殊な効果を持つ。

外部の魔力を弱め、内部の魔力を隠す。

隠密に適したローブで、単独行動の時にはかなり役に立つ。


「ありがとう。」


ローブをギュッと握る。トシキの匂いがする。優しい温かい匂い。


「じゃあな」


ヴァニタスに別れを告げ、回廊へと入っていく。


「ふん」


トシキ達を見送り、壊れた窓の方を見る。


「これで、ドミニオンの収入源の一つを断った。これで少しは、勢力が衰えるはず。」


地面に倒れたまま動かないロイドを見下ろす。


「アイツはやはり甘いな。好きなヤツを奪おうとしたのに、殺さずに生かす。アイツはどうやったら一線を越える…」


ため息をつき宙に浮き、ビルを越える。


「まぁ、いいさ。まだ‘来るべき戦い’は起こらん。その前に、邪魔な物を排除しないとな。」


そう言って、手をビルに向ける。

その瞬間、赤い雷を纏った黒い球を放つ。


ビルに直撃し、大きな音を立て半壊させる。


「あっはっはっは!」


高笑いし、回廊を開く。


ビルの崩壊に、野次馬が騒ぎ始めた。


「くっくっく、精々苦労するがいい!ドミニオンの人間ども!!」


笑いながら回廊へと消えていく。


こんばんわ。

新作にかまけすぎて更新遅れました(汗)

もうちょっと新作が落ち着くまで更新が遅くなりますのでご了承ください。

あ、良かったら新作の方も読んでいただけると嬉しいです。


では、これからもよろしくお願いします。


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