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彼の進む道  作者: けやき
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力を求めて

謎の機械兵に襲われた翌日。


再び魔法世界へと、連絡をいれていた。サキとクロエを襲った、全身黒い鎧を纏ったロボットの事を報告した。


情報が少なすぎる


トシキが他にも同じ報告があったんじゃないか、とキャロルに聞く。


「それが、これと言って無いのよ」


頬に手をついて申し訳なさそうな顔のキャロル。


クロエだけを狙った?オレ達が初めて襲われたのか?


「でも、旧世界人があなた達の言ってた、黒い鎧らしき者に襲われた、という報告が数件あるわ」


メモを見るキャロル。


「時期的にも同じロボット、とみて間違いないんじゃない?」


と、霊紗。


「確かに、そう考えられるけど、なぜ旧世界人を襲う…」


トシキは旧世界の兵器だと思っているため、旧世界人を襲う理由の見当がつかない。

実際、旧世界の巨大組織ドミニオンの機械兵で、トシキの予想は当たっている。

だが、その事をトシキはまだ知らない。


「そうね。旧世界の兵器なら旧世界人を襲う意味がわからないわ。守る対象を傷つけるなんて…」


呆れるキャロル。


「それにしても、あなた達は厄介ごとによく巻き込まれるわね」


苦笑いするキャロル。


「そうですね。世界を再生するもの達がおわっても、ヴァニタス達と謎の機械兵。」


トシキも苦笑いする。

「一旦こちらに来ますか?はなしをゆっくり聞きたいですし、学園長も待ってますよ?」


ウフフ、と笑うキャロルの頭に、コツンと子供用の可愛らしいスリッパが当たる。


「何を言っとるか!」


学園長がトテトテ、と写り込む。


あら?違いました?、と笑うキャロル。


「…ふん。まぁ来るなら何時でも来るといい。坊やに稽古をつけてやろう。」


「!」


学園長がトシキに笑う。トシキは自己鍛練では限界がある、と思っていた。それを悟っていたかのように、学園長からの提案。


「…」


トシキの指を擦る癖がでる。


それを見て、霊紗が小さくため息をつく。


「学園長、トシキを連れてそっち行きますんで、よろしくお願いします」


迷っているトシキを無視して霊紗が決める。


「うむ、わかった。待ってるぞ」


笑って手を振り、ホログラムから学園長が消える。


…あれ?

勝手に決められた?


「じゃあ、いらっしゃい。寝泊まりするところはちゃんと手配しとくから。」


メモ帳に何やら書きながら微笑む。


「え、ちょっ!」


トシキが何か言おうとするが、じゃあね、と手を振り通信を切るキャロル。


「…」


トシキがその場で止まる。


「別に問題ないでしょ。ヴァニタス達と戦うなら、周りを気にしないですむし、クロエを狙う変なロボットも魔法世界には来れない。」


確かに、魔法世界なら魔法を気兼ねなく使えるし、ゲートもまだ直ってないため、クロエを狙うロボットも追って来れない。


「だけど、他の旧世界の人が!」


自分達が魔法世界に行ってしまったら、この地域の守りがいなくなる。

それをトシキは気にしていた。


「それなら、私が手配しときます。」


と、桜。


「桜もああ言ってるし、ここも大丈夫よ。」


と、霊紗。


「私も残りますし、」


「は?何言ってんの?これの護衛の任務はどうすんのよ。」


と、トシキを指差す霊紗。


これって…


トシキが落ち込む。


「ですが…」


煮え切らない桜。


「行こう。今のオレ達じゃ、ヴァニタス達も謎のロボットにも苦戦する。だから、向こうで少しでも鍛えてもらおう」


と、トシキ。実際、トシキは‘マハーカーラ(大いなる暗黒)’、という新しい力も得たが、ヴァニタスにはまだ及ばない事を感じていた。


「トシキさんがそう言うなら」


桜が頷く。


「じゃあ、キツいと思うけど、魔法世界に行くときは頼むね。悠里さん。」


ねじれで遠くに行くときの魔力消費が半端ない事をよく知っているトシキが悠里を気にかける。


「ええ、任せて。」


悠里が微笑む。トシキに助けられた事の恩を返す事もそうだが、戦闘に参加できないため、こういう時でないと役に立てない。そう悠里は思っていた。


トシキは充分悠里が役に立ってくれていると思っている事をしらずに。


「ねぇ、いつ行くの?魔法世界」


明日菜が嬉しそうに聞く。魔法世界に行ったことがないため、わくわくしている。


「準備もあるだろうし…」


と、時計を見る。トシキ以外は皆女性。支度に時間がかかるだろうと踏んで時間をかんがえる。


「後、一時間後にここな集合でいいわ。」


そんなトシキを知ってか知らずか、霊紗が勝手に決める。


しかも、皆あっさり頷き部屋から出ていく。


あれ…?


呆然とするトシキ。


「あんたも仕度しに早く戻んなさいよ」


邪魔と言わんばかりにトシキを部屋から追い出す霊紗。


「…支度しましょうか」


桜が呆然とするトシキに声をかける。


「うん…」


我に帰ったトシキが頷き、家路につく。目頭が熱くなった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


魔法世界



「おぉ、久しぶりに来たけど、なんも変わってないな」


トシキが目の前にそびえ立つ魔法学院を見上げる。


およそ十三階程の建物と同じ位の高さ。一つの部屋がでかかったりしているため、中は十三階もない。

一番てっぺんに位置する尖り屋根の部屋は学園長室。


「うわー、いかにも魔法学園って感じ!」


初めて見た明日菜が嬉しそうな顔をしている。


「学園長に挨拶しに行こう」


トシキが魔法学園へと向かって歩き出す。神楽達も付いて歩き出す。


・・・・・・・・・・・


「失礼しまーす」


学園長室のドアを二回ノックして、部屋に入る。


「お?来たか」


学園長が部屋に入ってきたトシキ達を見て笑う。となりにたっていたキャロルも笑う。


「お久しぶりです。」


トシキが軽くお辞儀する。


「うむ。」


「よく来てくれたわ。」


二人とも嬉しそうに出迎えてくれる。


「で、わざわざ旧世界の守りを薄くまでしてきて、何のようじゃ?」


理由はわかっているのに、学園長が聞く。


「オレ達に稽古をつけてください!」


トシキ達が頭を下げる。

霊紗が、わかってんのにわざわざ言わせるなんて…、と頭を下げながら呟く。


「うむ、いいぞ。」


学園長が満足したのか頷く。


「ただし、稽古を受けるといった以上、最低でも、2ヶ月は稽古漬けじゃ。それが嫌なら今のうちに旧世界に帰るがいい。」


学園長がトシキ達の前にくる。

アイギスと同じ位の身長がふんぞり返る。


だが、この二人は見た目が年齢と合っていない。アイギスはおよそ百六十歳、学園長は六一歳、と子供とはかけ離れた年齢。(アイギスは百歳で人間の十代程のため、実際は十六歳程)


「…オレはそれ以上でも大丈夫です。」


トシキの勘が学園長は、確実に強いと言うのを悟っていた。神楽達はそんなにやるの?みたいな顔。


「ふむ、まぁ、付いてこられるのは、坊やとそこの二人だけじゃろうな。」


桜とクロエを指差す。


「細かい話は後にして、先に宿に行かせてもらっていいですか?悠里さんを休ませたいんで。」


ソファにもたれる悠里。トシキ達を魔法世界に連れてきて、魔力が殆ど残っていない状態だった。


「うむ、そうじゃの。キャロル案内してやれ。」


はい、と返事して付いてきてください。と、ドアを開ける。


神楽達がその後に付いていき、トシキが悠里をおんぶして付いていく。


「…闇の力を物にはしても、まだ完全に扱えてはいないようじゃな」


トシキの力を見抜く。


「闇と相性が良すぎる様じゃな」


どうしたもんか、と考える学園長。


・・・・・・・・・・・


キャロルは、魔法学園の学園寮をトシキ達に案内した。宿だと思っていたトシキ達は驚くが、お金もかからないし、長期滞在するため宿より迷惑がかからない、と喜んだ。学園側に迷惑かける事にかわりはないが。


流石に、いつまでも寮を借りるのは悪いかな…、何処か探すか、何とかしよう


借してもらったのは、神楽と霊紗、明日菜、桜で、アイギス、クロエ、悠里、カガリの四人部屋二つと、トシキの二人部屋の、三つの部屋だった。

トシキの二人部屋は、ベットと机、クローゼットが二つずつで、割りと広い部屋。

神楽達は、ものが二つではなく四人分で、部屋が狭くなっていた。


ただで、寝泊まりさせてもらうため、文句は言えないし、言う気もないようだ。


トシキ達は部屋に荷物を置き、学園長に言われたとおり、学園の裏庭に集まってきた。


「うむ、そろったな。」


前に立って、こっちを見るトシキ達を見る。


「やってもらうことは人によって違う。」


学園長がキャロルを見る。


「神楽さんは、召喚をメインに、霊紗さん、カガリさんは戦闘魔法を、アイギスさんは体術を、明日菜さんは基礎を、桜さん、クロエさんは戦闘魔法、体術を両方です。」


笑って内容を告げるキャロル。

桜とクロエが不満そうにする。


「あなた達は両方とも鍛えた方が伸びるとすごいんですよ」


キャロルの説明に納得していないが、取り敢えず頷く二人。


…オレは?


「坊やは私とマンツーマンで闘い続けてもらう。」


トシキが聞こうとした瞬間に、学園長が言う。


「へ?」


「安心しろ。ずっとではない。私も仕事があるからな。仕事の時は、他の稽古に混ざってもらう」


ああー…、やっぱ一番きついのきたかー


何となく予想していたため、大人しく頷く。

御愁傷様、と霊紗が声をかける。


「アハハ…」


苦笑いするトシキ。


・・・・・・・・・・・


学園の庭を素早く走り抜け、激突する閃光が二つ。トシキと学園長が早速、力量を計ると戦い始めた。


裏庭で戦っていたのが、正門の方まで移っていた。

おかげで、学園の生徒達が何事か、と見に来ていた。


「学園長とサカイトシキが模擬戦してるんだって!」


裏庭にいたトシキ達を見ていた、一部の生徒がはなしを広めていた。


「サカイトシキって、前に私達を助けてくれた?」


女生徒が嬉しそうに聞く。トシキは、世界を再生するもの達に利用され、学園を狙っていた数百の兵士達を、たった一人で退けた英雄扱いされている。

そのため、学園にトシキのファンは少なくない。


「そう!それにしても、学園長ってあんな動けるんだな!知らなかったぜ」


目に見えない速さで戦う二人を必死に追う生徒達。普段座ってるだけの子供みたいな学園長しか見たことないため、生徒達が驚く。


「まだこんなもんじゃないだろ!」


学園長が煽る。


「っく…」


トシキが段々押されてきた。


「トシキが押されてる…」


何とか見る事のできた霊紗。


「学園長さんは何者ですか?あんな動きができるなんて、ただ者じゃない…」


桜が顎に手を添える。


「皆さん知らないでしょうが、学園長は‘漆黒の翼’と呼ばれた王国屈指の魔法使いなんですよ」


と、キャロル。


「えぇ!?あの‘漆黒の翼’!?」


神楽が驚く。他のメンバーも驚いている。


漆黒の翼

ハイライト王国の三賢人の一人で、かつて起こった封魔戦争の功労者のひとりであり、魔法世界全土に名を知れ渡していた。

名前の由来は、小さな背中に腕よりも長い漆黒の魔力で作った翼で空を駆ける事より付けられた。


今はまだ、使っていないが、それでも充分な速さだった。


「マハーカーラ!」


トシキの左目が金色になる。


「!」


学園長が雰囲気の変わったトシキから距離をとる。


一瞬でトシキが距離を詰める。


「!」


学園長がそれに反応する。


「がっ!?」


トシキは学園長に頭を地面に叩きつけられ押さえ込まれた。


何…!?


トシキが訳もわからず学園長の方を見た。


「まぁこんなもんだろう。力の使い方がまだ甘い。」


トシキが起き上がろうとしているが、頭を押さえられたまま動くことができない。


「…く」


「ふふ、気にするな。これから確実にお前は強くなれる。私に付いてこれればじゃがな。」


苦い顔をするトシキを

放してやる学園長。


まさか、これ程強いとは…


トシキはこの人に修行してもらったなら、もっと強くなれる。そう確信した。


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