表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼の進む道  作者: けやき
35/63

休息Ⅴ

武道会会場外


武道会が終了し、トシキ達は会場の外にいた。

優勝は桜、準優勝はトシキとなった。その該当者二人と大会で活躍したアイギス達は、自分達の人気に気づいていなかった。そのため、トシキ達を見て観客が騒いでいる事の原因がわかっていなかった。


「何か、うるさいな…」


と、流石に自分達を見て騒いでいる事に気づくトシキ。チラッとトシキが見ると手を振ってきた。


何なんだ、一体…


苦笑いしつつ手を振り返す。


「いちいち返事しなくても良いでしょ」


霊紗がイライラしながらトシキの腹をどつく。


「った…!何だよ!?」


いきなりどつかれて霊紗の方に向き、その表情に気づく。


な、なんだ、この表情は…!?


怒りと悲しみが混ざった様な表情を浮かべる霊紗に後ずさる。


「おう!お前ら久し振りだな!」


そう言って、トシキ達に声をかけてきた大柄な男。


「あ…、ガイ将軍!」


助かった、とトシキがガイの元に駆け寄る。


「ん?それがお前の元の姿か。優男だなぁ」


サキとしてではなく、トシキを始めて見たガイ。


「そんなことより何の様なの?」


邪魔された霊紗が、小さく舌打ちし、普段の表情に戻った。


あ、アイツ…恐ろしいヤツだ


トシキが苦い顔をして、ガイの方に振り代える。


「おっと、用件を忘れる所だった。お前達二人に話がある。」


トシキと桜を指差すガイ。


「私もですか?」


トシキだけならともかく、自分にまで話があると思ってなかった桜が戸惑う。

そもそも、ガイは桜の上官で、トシキの護衛と監視を命じたのもガイだった。その事を黙っていた桜が、いきなり現れた上官に戸惑うのも無理はない。


「…」


その様子を黙って横目でトシキが見た。


「私達は外した方が?」


と、気を使って神楽が尋ねる。


「いや、いても構わない。聞きたければいれば良いし、聞きたくなければ離れてていい。」


神楽達がお互いを見たあとその場に留まった。


良かろう。と頷き二人に向き直る。


「お前達二人には、旧世界代表として、魔法世界で行われる魔道大会に出てもらいたい。」


「は?」「ちょっと待ってください!」


聞き返すトシキと対称的に桜がガイに詰め寄る。


「トシキさんはともかく私もですか!?」


…どういう事だ?オレと一緒が嫌なのか?だったら何で家で一緒に…。あ、任務だから…


と、1人でどんどん落ち込んでいくトシキ。その様子を不思議に見る桜達。そこで、トシキが1つの違和感を感じる。


「別に問題ないだろ?」



「お前は元々旧世界の人間だから問題ないだろ?」


「え?」


神楽達は桜を魔法世界の人だと思っていたため、驚く。


「ちょっ!?」


桜も驚いていた。


やっぱ、二人は知り合いか…、でもどんな繋がりが…


と、その違和感に気づきトシキは立ち直っていた。


「流石は桜だ、任務は忠実にこなしていたようだな。」


「任務?」


相変わらず神楽達は呆然としている。


そうか、そう言うことか


トシキは違和感の原因が解った。


「なるほどね、あんたの部下だったのか。桜は」


と、トシキ。


「ほぉ?何故そう思う?」


神楽達の事を気にせず、トシキを見るガイ。


「桜が護衛の任務だって言ってたから。任務ってことは、何かの組織に入っている。そして、自分よりも上の立場の者に、それを与えられた。」


「で、何より桜をあの戦争の後で、帰る時に見た。それを最近思い出した。」


と、トシキ。


「な!?」


桜が驚く。


「その通りだ。桜はオレの部隊の隊長だ、上からの命令でお前を護衛していた。」


ガイが頷く。


「で、桜があんたの部下なのは良いとして、魔道大会って何よ?」


霊紗がトシキのとなりに来る。


「魔道大会ってのは、武道大会とそう変わらん魔法世界で開かれる大会だ。」


「魔法世界で開かれる為、詠唱有りの全国中継される大規模な大会だ。全国中継のおかげで、人気もすごいぞ。」


ガイが腕を組む。


「その大会に旧世界代表として桜と出ろ、と?」


「おぉ。やっと魔法使いがこの大会で優勝、準優勝したからな。旧世界の人間を魔法世界に連れてくわけにはいかんからな。」


「オレ逹が始めてかよ…」


旧世界の魔法使いのレベルに落胆するトシキ。


そんなに弱いのか…、旧世界大丈夫なのか…


「賞金もこっちの単位で五百万円だ。」


「五百!?そんなに出るの!?」


慌てる神楽。


「…オレは出ませんよ。」


賞金を聞いても乗り気にならないトシキ。


「…何故だ?」


ガイもその返事を予想していたのか、余り動じていない。神楽達のが、驚いていた。


「今回は闇の魔力無しでどこまでやれるかためしに来ただけで、次出ることはありません。」


なにより、めんどくさいしな


その表情を悟られないようにするトシキ。


「なら、今度は闇の魔力有りでどこまでやれるか試してみれば良いだろう?」


…やっぱそうきたか


予想通りの返事をガイがする。


「闇の魔力を使うヤツは魔法世界にうじゃうじゃいるぞ。

魔族も入れたらかなりの数になる。」


そういうわけじゃないんだけど…


トシキが頭をかく。


「確かにそうですが、お金も必要ないですし、魔法世界に行くつもりもないので、すいませんが見送らせてもらいます。」


トシキが頭を下げた。


「…まったく、お前はしょうがないヤツだな。」


笑いながら頭をかくガイ。


「わかった、無理に誘うのは止めよう。」


「では、オレは帰る。またな」


トシキ達に手を上げて会釈し、背を向けて歩いていった。


「…もったいないなー」


神楽が惜しいなー、みたいな表情をしてトシキを見る。


出ろと言ってるのか、お前は…


トシキが苦笑いする。


「まぁ、良いじゃない。トシキの言うとおり魔法世界にも今の所用はないし」


と、霊紗。


「そうじゃのう。今は旧世界をヴァニタス達から守るのが先決じや。」


カガリも頷く。


「…ヴァニタスはまだお前達を狙ってるのか?」


何だかんだでトシキ達の輪に入ったクロエ。

表情が申し訳なさそうだ。


「あぁ、未だに戦いを挑まれるよ。アイツの目的がさっぱりわからない。」


腕くみするトシキ。


「そうか…」


俯くクロエ。


「あのさ、俺達と一緒に行動しないか?」


トシキの提案にクロエと神楽達が驚く。


「クロエが仲間になってくれたら、心強いんだよ。」


トシキがクロエに手を差し出す。

その手を見て、またトシキを見る。


「裏切るかもしれないぞ?」


トシキの目をジッと見る。


「仲間の事を大切にするヤツがそんなことするかよ。」


アイギスの方をチラッと見たトシキ。


「……ふふっ。わかった。」


クロエがトシキの手を取り握手した。


「トもがっ…!」


神楽が何か言おうとしたが、霊紗に口を塞がれた。


「言うだけ無駄よ。」


と、頭を横に振り手を離す。


その様子をトシキとクロエが見て笑っていた。

お互いに強く手を握りしめていた。



そうして、新たにクロエがゆかいな仲間達の1人として加わった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日、どのテレビ局のニュースにも昨日の武道大会のことを伝える番組はなかった。

本当に大会の情報は何処に漏れていないようだ。


あれだけ人が来てたのに、何も伝わってないって事は、やっぱり何か裏にあるな…


そう思いながら新聞を畳む。


「おはようございます、

トシキさん。」「おはよー」


桜がトシキに微笑んで挨拶する。アイギスは寝癖のついた髪を弄りながら挨拶する。


アイギスは寝癖を直してから起きてくる気は無いのか…


注意すべきかどうか寝起きの頭で考える。


「…どうかしましたか?」


トシキが上の方をボンヤリと見上げているのを不思議に思う桜。


トシキを心配させているアイギスは、のほほんと出されたホットミルクを飲み始めた。

桜が寝起きのトシキは機嫌が余りよくないのを思いだし、気になりつつも自分の席に座る。すぐに、トシキの母からホットミルクが出され、お礼を言う。

ふと、トシキの手に握られた新聞に気づく。




「そういえば、新聞には何か載ってましたか?」


ん、とトシキが新聞を桜に差し出す。

お礼を言って新聞を受け取り、開く。


「何も載ってない。まるで、そんな大会開かれてなかったかの様にね。」


「…そうみたいですね。」


地元の記事が載るページにも、大会の事は触れられていなかった。

そもそも、トシキも20年生きていて大会のことを初めて知った。知ってる人もいるだろうが、知らない人のが多いだろう。

それに、情報が全く漏れていない。


「確実に何か大きなもんが後ろにあるよ。」


トシキがごちそうさま、と言って立ち上がる。



「今日はどうしますか?」


「霊紗達のとこにとりあえず行こうかな。急いでないし、ゆっくり食べて。」


トシキは手を上げて会釈し、洗面所へと向かっていった。


(トシキさんの読みは当たってる…、でも一体何が…。)


そう思いながら、心当たりを探す桜。


(!まさか…)


思い当たる巨大な組織を見つけた。嫌な予感が桜の心を曇らせた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トシキ達は朝食を終え、暫くしてから神楽達の部屋に来た。


トシキ達が朝の挨拶をして、部屋に上がる。

神楽達も既に朝食を終え、リビングでくつろいでいた。その中に、ソファに座ってテレビを見ているクロエもいた。昨日は、トシキ達に付いてきて、寝るとこがないことに気づき、しょうがないから泊めたげる、と神楽達の部屋に泊めた。


「通信機使える?」


トシキが通信機を指差した。


「使えるよ。キャロルさんに?」


「うん、よろしく。」


トシキが微笑む。神楽がパネルを操作する。


「あら、おはよう」


と、不意にキャロルのホログラムが通信機に写し出された。

トシキ達も挨拶する。


「どうかした?」


キャロルがメモ帳を開く。


「はい、実は…」


・・・・・・・・・・・


「ふむ、魔道大会…」


キャロルがトシキから聞いた話をメモ帳に整理し始めた。


「恐らく、メルトキオで開かれる5年に一回の大会の事だと思うわ。」


「えぇ!?あのメルトキオで開かれる有名な!?」


神楽が驚く。その声にトシキ達も驚く。


「そうだと思うわ。魔法世界で一番大きな大会で、観客も参加者もすごい数よ。」


メモ帳をパラパラ捲るキャロル。


「それにしても、そっちでも魔法使いの出れる大会がひらかれていたなんて初耳だわ」


キャロルも興味を示していた。


「知らなかったんですか?」


知っている物だと思っていたトシキ達が驚く。


どういう事だ?魔法世界のひとですら、昨日の大会を知らない?


「私も初めて知ったぞ。」


ちゃっかり話を聞いていた学園長も通信機に現れた。

相変わらず子供の様な見た目と、正反対のしゃべり方をする金髪の少女。


「学園長も知らないとなると、やっぱ裏に何かある…」


トシキの親指と人差し指を擦る癖が出ていた。

桜と霊紗がその癖に気づく。


「魔法使いも今まで出てたはずなのに、魔法世界に情報が言ってない…」


ブツブツ呟く癖まで出てきて、神楽達もトシキに気づく。


「…坊や!」


見かねた学園長が声を荒げ、少女の様な声でも迫力は半端なかった。


「…っ!?」


トシキが我にかえる。


「よいか?下手に動くでない。これはぜったいに何かある。我々が何か掴むまでは大人しくしておれ。」


学園長がトシキに人差し指を突き付ける。


「でも…」


トシキが不満そうにする。


「わかったの!?」


再びすごい剣幕でトシキを睨み付ける。


トシキが苦汁を飲んだような顔をした。


「…また坊やを、信頼できる者を失いたくないのじゃ。わかってくれ」


学園長が俯く。


「…、わかりましたよ。大人しくしてます。」


頭をかきながら頷くトシキ。


この見た目は反則だよな…、強くでれないし、言ってる事もよくわかる


「約束じゃからな。」


再び人差し指を突き付ける学園長。

じゃあの、と手を振り出ていく学園長。



「私からもお願いするわ。」


キャロルも頭を下げた。


「ちょっ!?頭をあげてください。オレは約束は必ず守りますから!」


トシキが焦る。


「そう、じゃあ信じるわ。」


クスリと笑うキャロル。


「あ、調べもののついでに、こっちの世界で去年から5年の間の今月の、行方不明か死亡した数を調べてもらって良いですか?」


「構わないけど、何故?」


メモ帳に追加依頼を書くキャロルが目だけトシキの方を見る。


「確信がないので、混乱させるだけかもしれませんから、まだ伏せさせてもらいます。」


「そう…。まぁ、あなたの事だから何か予想がついてるのね。」


優しく微笑むキャロル。

トシキも微笑む。


「それじゃあね。クロエさんの事も任せて。部屋もこっちで用意するし、組織の事も何とか動いてみるわ」


クロエに微笑む。それに気づき、クロエが軽く一礼する。


「ありがとうございます。」


トシキも頭を下げた。


じゃあね、と手を振って通信が切れた。


「…とりあえず、クロエは部屋が決まるまで此処で生活って事でいい?」


クロエとこの部屋の住人の方を見る。


「私はいいよ。」


「ま、私も構わないわ。寝首をかこうとするなら容赦しないから。」


笑顔で答えた神楽と反対に、霊紗はまだクロエを疑っていた。


「あんたが普通の反応よ。このアホの反応はおかしいわ。」


と、クロエ。トシキに対して呆れている。


「えぇぇ…」


クロエの言葉にトシキが落ち込む。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


白い壁に囲まれた会議室のような部屋。

その部屋の中央に位置する、丸い机を囲んで座る六人。四、五十ぐらいの年齢の六人。


「あの大会の内容はご覧いただけたかな?」


丸い机の真ん中に置かれた機械を、指でとんと押す。

その機械から、ホログラムとして大会の映像が再生される。

トシキと才人の試合のようだ。


「ふん、今回は前よりも幾らかマシだな。」


態度のでかい男が舌打ちする。


「何人か忌むべき者が混じっていたが、我らの同胞のが多かったな。」


メガネを光らせる男、


「同胞には勧誘を、忌むべき者には粛清を」


一番年長らしい男が言う。


「刃向かう同胞は?」


女のメンバー。


「痛め付けろ。それでもダメなら殺せ」


年長者が立ち上がる。


「では、我が世界のために。」


年長者がいった言葉を残りのメンバーも復唱する。


また新たな組織が現れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ