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彼の進む道  作者: けやき
31/63

武道会Ⅱ

武道会予選が終わり、本戦出場者が決まった。


武道会会場


予選を勝ち抜いた12人+トシキ達4人。その16人の試合の組み合わせが先程発表され、一回戦のAグループ1試合が始まろうとしていた。


歓声が沸く会場の真ん中に位置する舞台。そこにトシキと対戦相手、司会者が立っていた。


「さぁ!お待たせいたしました!!Aグループ第一回戦、最初の試合!!」


司会者がマイクで叫ぶ。観客も歓声を上げる。


「その前に試合のルールを確認したいと思います。」


「まず、舞台上で気絶や倒れたまま動かずに10秒過ぎた時点で負けとなります。場外は気絶の有無に関わらず、5秒で敗退となります。」


「武器は刃物、銃火器の使用は禁止です。使用した場合即敗退です。詠唱も禁止です!」


その言葉にトシキは戸惑うが、観客達は気にしてないのか歓声をあげ続ける。どうやら毎回魔法のことはバレずに上手くやり過ごせているようだ。


「試合時間は20分。それまでに勝敗がつかなかった場合は、実行委員会が検討し、有効打の多かった選手の勝ちとなります。」


「長くなりましたが、記念すべき1試合目を飾るのは、前回の大会を圧倒的強さで勝ち抜いたチャンピオン日向亮!!」


観客が一気に盛り上がる。それに合わせて、日向亮が手を上げた。ツンツンの金髪に黒いタンクトップに、白いブカブカなズボン。割りと筋肉質で見た感じは強そうである。


「対するは、今大会初出場!しかーし予選免除を受けた期待の新星!!坂井俊貴!!」


歓声は余り上がらないが、無表情なトシキ。ジッと日向亮を見る。


「では、早速始めましょう!」


司会者が舞台から降りる。

日向亮が拳を構える。

が、トシキは構えず日向亮を見たままだった。


それを怪訝に思ったが、顎で開始の合図を送る。

司会者も訝しげに思ったが、トシキをチラッと見て頷いた。


「それでは、試合…開ー始!!!」


司会者が手を上に掲げた。


「オーラァァァ!!」


日向亮が一気にトシキとの間合いを詰める。


「ッシャアァァ!!」


日向亮がトシキに拳をぶつける。

拳はトシキの手で簡単に受け止められた。


「!?」


日向亮が驚く。


「何だ、この程度か。期待して損した。」


「はぁ!?」


トシキの言葉にプライドを傷つけられた日向亮が、手を振りほどこうとする。

だが、振りほどけずに焦りが生じる。


その様子を鼻で笑い、急にトシキが手を離す。


「な!?」


亮は振りほどこうと重心を後ろにかけていて、不意に手を離されたため後ろにバランスを崩す。


そこに、一歩踏み込みトシキが蹴りを入れた。


「ぐおっ!?」


腹に思いきり受け、舞台端へと転がっていく。


「あ、手加減しすぎた…」


トシキの計算では今ので場外を狙ったのだが、端で止まってしまった。そこに1つの違和感を感じた。


「おぉっと!チャンピオンギリギリ場外を免れたー!」


司会者が叫ぶ。先程まででかく上がっていた歓声が少し小さくなりざわつきが混じる。


「あの新人やばくない?」「いやいやチャンピオンが勝つって!」


等と様々な声が飛ぶ。


「や、やるじゃねーか!」


亮が腹を押さえて立ち上がる。


「本気でいくぜ!!」


と、亮。

その言葉通り、亮の様子が変わる。


「…微妙」


小さくトシキが呟く。


「オラオラいくぜー!!」


さっきからうるさい亮と、静かなトシキ。トシキがそのテンションにイラつき始めた。


「うるせぇな…」


小さく呟き亮を睨み付けた。


「!?」


その睨みだけで亮は気圧され動けなくなる。足が震え、背中に冷たい汗が流れる。


「急にチャンピオンが静かになったぞ!?」


ピクリとも亮が動かない。

それに観客がざわつき始めた。


「……は!オレは一体?」


チャンピオンが頭を振る。

完全にトシキの気迫に呑まれていた。


「来いよ。一発では決めない。あんたのプライドのためにね」


と、笑い挑発するトシキ。


「ぐ…、貴様〜」


苦い顔をする亮。


「来ないならオレが行くぞ」


「!?」


縮地で亮の目の前に現れるトシキに驚く亮。亮からすればいきなりトシキが目の前に現れたのだ、驚くのも無理はない。


「う…!」


トシキが亮を軽く空に打ち上げる。


「く、くそっ!!」


と、体勢を何とか立て直し、着地体勢をとる。


しかし、亮はトシキが着地地点の後ろに位置取りしたのに気づかない。


「ぐお!?」


着地した瞬間に亮は背中を蹴られ、舞台で一度バウンドして再び舞台端に止まる。


「ぐぅ…何だってんだ、い゛っ!?」


立ち上がる亮の前に拳を振り上げたトシキが映る。


「ヒイィ!?」


トシキの拳が亮の目前を通り、足元に鈍い音と土煙をあげて穴を開けた。それに腰を抜かして座り込む亮。


「…」


なにも言わずにトシキが亮を押して場外に落とす。


「チャンピオン腰を抜かして場外から立ち上がれなーい!」


と、今まで呆然と見ていた司会者が、場外に出た亮を見て我に帰りカウントを始める。


「1、2、3、4、5!」


「そこまでー!」


5カウント過ぎて、司会者が試合終了を告げる。


「何と!チャンピオンが圧勝するかと思われた1試合目!!いきなりの番狂わせとなりましたー!」


「チャンピオンを圧倒的に降し、新人、坂井俊貴が勝利!二回戦進出です!!」


歓声が前よりもでかく沸く。


トシキが左右と真ん中に一回ずつ、手を合わせて軽くお辞儀した。


場外から動けない亮を係員達が運ぶ。それに目もくれずにトシキは舞台を降りた。



「やっぱりこういう舞台には慣れてるわね。」


と、明日菜。


「慣れてるってレベルじゃないわよ。完全に観客無視よ、あれは。」


チャンピオンは観客を意識しまくっていたせいで、冷静に戦うことができていなかった。それに引き換え、トシキは落ち着きすぎていた。

2人が対照的すぎてそう感じた、というのもあった。


「さぁ、気を取り直してAグループ2試合目を始めたいと思います!クロエ選手vsドラン選手どうぞ!!」


・・・・・・・・・・・・・・・


クロエとドランが舞台に入ってきた。

クロエがトシキ達の方をチラッと見て、すぐ顔をドランに向けた。

クロエは剣を使って戦っていたが、剣を持つどころか武器すら持っていなかった。


対するドランは、長い木製の棒を持っていた。


「これまた新人のクロエ選手!しかーし!女性だからと侮るなかれ!!予選では他の選手を圧倒した実力者!!」


「対するは!前大会に出場し準決勝まで勝ち進んだ猛者!!木の槍を使い、何人貫いたか!?ドラン選手!!」


歓声が上がる。

ドランが木の棒を振り回して見せる。

が、クロエは完全に無視。


「それでは、2試合目開ー始!」


2人が同時に戦闘体勢をとる。


「はっ!」


ドランが棒を構えてクロエに突進する。


「…」


軌道を見極め、軽くかわすクロエ。


「てゅえぃ!」


クロエの横を通りすぎた後、すぐ棒を横に振り回すドラン。


「!」


それを腕で防ぐクロエ。

感触が鉄にぶつけた様で驚くドラン。



「勝負あったな。」


と、トシキ。


「そうですね」


桜も頷く。



「うおおぉぉぉ!」


ドランが焦って闇雲に棒を振り回し始めた。


「おぉっと!ドラン選手、怒濤の連続攻撃!!」


ただ闇雲に棒を振っているだけなのを連続攻撃だと勘違いする司会者。


だが、その連続攻撃はクロエに掠りもしない。


「はっ!」


攻撃の繰り出される瞬間を突いて、クロエが一発拳をドランの腹にぶちこんだ。


「っー!!」


ドランは声にならない叫びを上げて、場外へと落ちていった。


「おぉっと!ドラン選手、場外に落下した!!」


「1、2、3、4、5!」


「そーこまで!!」


5カウント過ぎ、試合終了。


「これまた新人、クロエ選手の勝利ー!」


歓声が沸き上がる。


「新人が経験者を突き落とす!今回の大会はレベルが高いぞー!」


クロエがスタスタと控え室に戻っていく。救護班に運ばれる前大会の猛者。


「さぁ、気を取り直して次の試合です!」


・・・・・・・・・・・・・・・・

一時間後


Aグループの第3試合はミゼル・ドールが、第4試合は幾月才人が勝利した。これで、Aグループは2回戦の組み合わせが決定した。


「Aグループの1回戦が終了しましたので、Bグループの1回戦を開始したいと思います!」


「それでは、Bグループ第1試合の選手の入場です!!」


カガリとアイギスが、横に並んで舞台に上がってきた。


「Bグループ第1試合も新人選手の戦いです!見た目は子供だがその実力は未知数のアイギス選手!」


司会者にムッとするアイギス。


「対するは、こちらも新人!アイギス選手とは対照的なボディ!そのボディの何人を魅了するのか!?カガリ選手!!」


カガリが、フフンと胸を張る。


「さぁ始めましょう!」


と、司会者が舞台を降りる。

カガリとアイギスが身構える。


「試合、開ー始!」


歓声が上がる。


「決勝でトシキと戦うのは私じゃ!」


と、カガリ。


「何を〜!それは私だー!」


アイギスがいきなりアイギスに向かって走り出した。


「おっと!」


直進してくるアイギスを、横に移動してかわす。


「直線的すぎるんじゃ。アイギスは。」


と、腕組みするカガリ。


「むぅ…、じゃあ、これはどうだー!」


再びアイギスはカガリに突撃する。


「何度やっても…!」


横にかわしたカガリは腕組みしようとした瞬間に後ろからタックルされた。

前のめりになり、舞台に押し倒されるカガリ。


「えへへー!」


カガリの上に乗っかったアイギスが笑う。


「ぐぬぬ…!降りんか!!」


カガリが勢いよく立ち上がりアイギスを振り落とす。


「うわ!?」


尻餅をつくアイギス。


「むぅ…」


アイギスが汚れを払いながら立ち上がる。


「まぁいいや!私のが有利なのは変わんないし!」


と、余裕のあるアイギス。


「なんじゃと?」


ムッとするカガリ。


「だって、接近戦は私の得意中の得意だよ?カガリはどっちかというと遠距離じゃん。」


と、アイギス。


「!そう言われればそうじゃ!!私は遠距離のが得意…」


と、今ごろ気づき舞台に手をつくカガリ。


「はっはっはー!」


既に勝ち誇っているアイギス。


「…!じゃが、私には無詠唱があるのじゃ!!」


と、思い出して立ち上がるカガリ。


「なぬ!?」


驚くアイギス。アイギスも無詠唱の事を忘れていた。今までの試合で誰も無詠唱を使わなかったせいでもある。


「これなら五分五分じゃ!」


と、完全に立ち直るカガリ。


「いくぞ!」


カガリが早速無詠唱で炎の球をアイギスに放つ。

観客にどよめきが広がる。


「おぉっと!?何もないとこから火の玉が出現したー!」


司会者が叫ぶ。


「ほっ!」


アイギスはギリギリまで引き付けてから横にかわす。

火の球はアイギスを少し追尾して舞台に当たり、破裂した。


追尾性能をアイギスは見切っていた。


「ではこれでどうじゃ!!」


今度は火の球が6個アイギスに向かう。


「おぉ!?」


とっさに上に跳ぶアイギス。

その跳躍力に観客が驚く。


火の球はアイギスを追っていく。


「ぐぬぬ…!」


腕を顔の前で交差し魔力を集中する。


次々とアイギスに当たり破裂する。

爆煙から舞台にアイギスが落ちてきた。


「流石にあの程度では落ちんか。」


と、感心するカガリ。

ケホケホ、と席をしてすすを払う。服が少し燃えて破れていた。


「次は私の番だー!」


「!」


突撃してくるアイギスに火の球で牽制するが、難なくかわされる。


「おりゃー!」


「くっ!近すぎる…!」


近すぎて火の球を使えず、腹にアイギスの拳を受ける。


舞台に膝をつくカガリ。


「モロに入ったから動けないよ。」


と、カガリから離れたアイギス。


「ぴぎゃ!?」


いきなり後ろから爆発が起こり、アイギスがカガリの後ろに吹き飛び舞台端で倒れる。


「ぐぅ…動けん…」


カガリが舞台に倒れる。


「あちち…」


アイギスが背中を擦りながら立ち上がる。


「カガリ選手ダウン!」


「1、2、3、4、5!」


「そこまで!アイギス選手の勝利!!」


歓声が上がる。


「謎の火の玉を浴びつつもアイギス選手が奮闘いたしました!!」


歓声がさらに上がる。


アイギスが動けないカガリを起こして、救護室へと運んでいった。


「さぁ次に参りましょう!!」


・・・・・・・・・・・・・・・

一時間後


Bグループ第2試合は蒼井池、第3試合はダムドの勝利となった。

カガリが無詠唱を使ったことで、魔法使いの参加者ダムドが圧倒的な強さで勝利を得た。


観客達は魔法を見てざわつき、CGなんじゃね?、等の意見が飛び交い始めた。


「さぁ盛り上がって参りました!いよいよ第1回戦最後の試合となります!」


歓声がとめどなく上がる。観客達は完全に好奇心と興味本意で大会を観戦している。


「選手入場です!!」


桜と原緑が舞台に上がる。

桜は手に竹刀を持っているのに対し、原緑は2本の短い棒を持っている。


「こちらも新人2人の戦いです!」


「竹刀を手に剣の道を突き進む女剣士!浅倉桜選手!!」


司会者の紹介に苦笑いしながらお辞儀する。


「対して、二刀流で道を切り開く女剣士!原緑選手!!」


緑もお辞儀する。


「それでは、試合開ー始!」


桜と緑が同時に構えた。


桜は中段の構え。緑は左手の棒を横にして前に、右手の棒を上に構える。


お互いが動くのを待ち、沈黙がながれる。


「…」


桜が先に動く。


「うっ!」


桜が緑の右腹目掛けて竹刀を振り抜く。

緑が2本の棒で防ぐが、予想以上の重さに唸る。


桜が左足で緑の足を払う。


「うわっ!?」


足払いされた緑が舞台に背中を着ける。


倒れた緑に竹刀を振り、顔の横でピタリと止める。


「…参りました。」


力の差を感じとり緑がギブアップした。


「何と!緑選手ギブアップ!!桜選手の勝利となります!!」


歓声が上がる。


「第1回戦これにて終了となります!」


「第2回戦の組み合わせをお知らせします。」


「Aグループ第1試合、坂井俊貴選手vsクロエ選手。第2試合、ミゼル・ドール選手vs幾月才人選手!!」


「Bグループ第1試合、アイギス選手vs蒼井池選手。第2試合、ダムド選手vs浅倉桜選手!!」


「それでは、Aグループ第1試合を始めたいと思います!!」



こんにちは

最近突然雨が降りだしてきて、気温も下がり気味ですね。体調に気をつけてください。


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