武道会
トシキの部屋
ベッドの中でトシキは眠っていた。
突如現れた謎の男と戦って、闇の魔力を使い辛くも勝利したトシキ。だが、男に受けた傷と闇の魔力の反動でトシキは気を失い倒れた。
男が倒れたことで結界が破れ、駆けつけた神楽達により治療され、部屋まで運ばれた。
「トシキさんはまだ眠ってますよ。」
トシキの頬をつつくアイギスに苦笑いしつつ言う桜。
「今日は朝の稽古やれないな〜」
アイギスが部屋に横になる。
「私と2人でやりませんか?」
と、桜。
「ん?桜と?」
桜をジッと見るアイギス。
「いいよ!桜は強いから楽しそうだ!!」
アイギスがドタドタと部屋から出ていく。
「…、ちょっと行ってきます。」
と、トシキに言って部屋から出ていった。
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神楽の部屋
神楽の部屋には、カガリと悠里、霊紗が集まり何やら相談をしている。
「…どう思う?」
と、神楽。
「どうもこうもないわ。出ないわよ。」
と、霊紗。
「何故じゃ?特別枠で参加できるんじゃぞ?」
と、カガリ。3人とも手に一枚の紙を持っている。
「ならあんただけ出ればいいじゃない。私は出ないわ。」
と、霊紗。
「…私も出ないかな。」
と、神楽。
「むぅ、なんじゃ。つまらんのぅ。」
と、つまらなそうな顔をするカガリ。
「第一怪しすぎるわ。差出人不明で武道会の出場催促なんて。」
と、紙をぴらぴら揺する。
「差出人不明なのは確かに気になるが、こんな面白そうな催しに出ないなんてもったいないわ。」
と、カガリ。
「でもねぇ、呪文詠唱禁止ってどうやって戦えっていうの。」
紙に書かれた所を読む霊紗。
「そうだね…武器類の銃火器、刃物禁止はともかく、魔法使いで詠唱禁止って普通の魔法使いじゃ戦いようがないよ」
と、神楽。
「でも、無詠唱呪文は重要よ。トシキも使ってるし、強い魔法使いにとって無詠唱呪文は欠かせない力なの。」
と、悠里。
「それはそうだろうけど…」
と、口ごもる霊紗。
「おはよー!」「おはようございます」
アイギスと桜が部屋に入ってきた。神楽達が挨拶を返す。
「ねぇ、あんた達もこの紙もらった?」
霊紗が、武道会の出場催促の手紙を2人に突き出す。
「武道会開催のお知らせ?何これ!?おもしろそう!!」
アイギスが霊紗から紙をひったくる。桜も紙を覗き込む。
「……。見てないですね。来てたかもしれないですけど」
と、紙を熱心に見るアイギスを尻目に桜が答える。
「そう…、来てたらどうする?」
2人の反応を伺う霊紗。
「そうですね…。良い腕試しにはなりそうですから、出ると思います。」
「私も出るー!」
冷静な桜と反対に興奮気味なアイギス。
「お?出るなら私も出るぞ!」
と、カガリも意気込む。
「あそ…、私達は出ないわよ。」
やれやれ、と呆れる霊紗。それに頷く神楽。
「えぇー!出ないの?」
アイギスが食い下がる。
「流石に無詠唱はちょっと…」
神楽が苦笑いする。
「ちぇ…。トシキはどうするのかなぁ?」
ふとアイギスがトシキを思い出す。
「アイツなら出なさそうね。戦う目的が無いもの。」
と、霊紗が即答する。それにムッとする神楽。
「目的?」
と、カガリ。
「そう。アイツは今も旧世界、魔法世界を、仲間を守るために戦ってる。でも、コレには守るための物がない。」
と、霊紗。確かに、と頷く皆。
「トシキが出ないんじゃ、面白くない!」
不機嫌そうな顔をするアイギス。
「…あくまで私の予想よ。本人の意志はわからないわ。」
と、霊紗。
「出るなら早めに決めないと。予選の組み合わせを決めるために、後3日しかないわ。」
と、悠里。紙には予選会を三日後に開催予定と記されている。
「そうよ!そもそも急すぎるわ!!何で三日前にこんな物送ってくるのよ!!」
プリプリ怒り出す霊紗。
「でも、コレが書かれたのは二週間前よ。此所まで送ってくるのに時間が掛かっちゃったんじゃない?」
と、悠里。
「それにしても遅すぎるわ!!」
文句を言い続ける霊紗。
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神楽の部屋
武道会開催の手紙が来てはや3日。トシキ達が神楽の部屋へと来ていた。トシキは1日前に目覚め、家に届いていた手紙を読み、良い腕試しになる、と出ることを決めた。霊紗の予想は外れた。
「よし。じゃあ出るのは、オレと桜、アイギス、カガリの4人だ。」
と、トシキ。桜達が頷く。
「じゃあ、悠里さんお願いします。」
トシキに頷き、悠里がねじれを作り出し、トシキ達が入っていった。
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武道会会場端
ねじれが会場端に現れトシキ達が中から出てきた。悠里がねじれを人目のつきにくい場所に開いてくれた。
そのおかげで誰にも見つかることなく会場に着くことができた。
「…ねじれに誰も気づかないのか?」
と、言葉を漏らすトシキ。会場内には、既に何人かの魔力を感じているが、トシキ達に向かってくる気配が全くなかった。
「まぁいいじゃない。何か言われるよりは面倒がなくていいわ。」
と、霊紗。
「…それもそうだな」
と、微妙に違和感を感じつつも頷き会場へと向かう。
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トシキ達、大会に出場するメンバーは受付を終えて、予選会場内にいた。
予選開始まで後5分ともあり、出場選手で会場内は溢れていた。
一般人が大半の様だが、魔法使いがチラホラ混ざっている。
やたらと体がでかいのや、強いですよオーラを醸し出すのが目立つ。
「呪文詠唱禁止の理由がわかるな。」
と、周りの人達を見回してトシキが言う。
「そうですね。これだけの普通の人がいればそうなります。」
桜が頷く。
魔法の使える魔法使いが一般人と混ざって試合をするためには、それぐらいのハンデが確かに必要である。
「入賞は私達がもらったような物じゃな!!」
と、既に勝った気で高笑いするカガリ。
周りの人達が訝しげにトシキ達を睨み付けた。
「…」
その睨み付ける人達をトシキがわざと気迫で威嚇する。
すると、竦み上がったのか慌てて顔を反らす。
「確かにそうかもね。」
と、トシキもいたずらっぽく笑う。
「お2人ともダメですよ!!」
桜が苦笑いしつつ2人を止める。
「ごめんごめん。ただ相手になるヤツがどれぐらいいるのかと思っただけだよ。」
と、トシキとカガリが笑うのをやめた。
「それより静かだね?アイギス」
と、さっきから黙っているアイギスにトシキが聞く。本来なら一緒になって騒ぎそうなのだが、何故だか静かである。
「あれってクロエだよね?」
と、溢れる人々の方を指差す。
その中にクロエの様な人物が確かに立っていた。
「確かに似てる。クロエだとしたらオレ達が入賞独占はちょっと難しいぞ。」
と、トシキ。
「でも、前はアイギスが勝ったじゃろ?」
と、カガリ。
「あれは変身ができたから…」
と、うつ向くアイギス。
「…諦めるのは早いんじゃないか?アイギスだってあれから鍛練をちゃんとやってたから、あの時よりも強くなってるし、それを確かめるために出たんじゃないのか?」
と、トシキ。
「そうだけど…」
と、アイギス。
「なら、いつも通りにしてればいいんだよ。アイギスなら大丈夫!」
と、アイギスに微笑むトシキ。
「…そうだね!私らしくなかったかも!!何か急にやる気出てきたぞぉ!!」
アイギスが意気込みし始めた。
「流石ですね。」
と、トシキに耳打ちする桜。
「いやいや。やる気をだす手伝いをしただけで、やる気をだせたのはアイギス自信の強さのおかげだよ。」
と、トシキ。
「ふふっ、そういうことにしときますね。」
と、微笑む桜。
「何だよ〜?」
と、トシキも微笑み返す。
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予選一回戦
司会者の長い話が終わり、やっと予選が始まろうとしていた。
予選会場は、本試合会場とは別の小さな会場で4つの舞台が用意されている。
その4つで予選を行い、1つのグループで3位までが本選へと進むことができる。
要するに、A〜Dの各グループの3位までが本戦へと進める。
だが、その舞台の中にトシキ達がいなかった。
トシキ達は、観客席で予選をみていた。
「特別枠って予選免除のことか〜」
と、トシキが悔しそうに予選会場を見る。手紙に有った通り、特別枠として予選免除がトシキ達に与えられ、各グループの3位達+トシキ達4人が加わる。
「予選やりたかったなぁ〜」
と、トシキの隣でアイギスも不満そうにしていた。
「確かに本戦も明日ですし、予選受けても良かったですよね。」
桜も物足りなさそうだった。
「試合が始まるぞ!」
と、カガリ。
3人が会場の方を見た。
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予選終了
半日経ち、夜となって予選が終わった。
各グループの3位までが決まり、本戦の組み合わせを実行委員会が選考している。
組み合わせは明日、本戦が始まる時に教えられる。
「まぁ上がりそうなヤツが上がってきたね。」
最後まで見ていたトシキが隣で見ていた桜に言う。
「えぇ、そうですね。」
と、頷く桜。
「ただ、魔法使いが一般人に負けてたな。あれは予想外だった。」
と、トシキ。
魔法使いが3人、一般人に負けていた。その一般人3人は、我流で鍛え上げてきて、魔法使いを超える強さを持っていた。
「あの3人は要チェックですね。一般人で魔法使いを圧倒するほどですから、気を引き締めないと。」
と、桜。
「そうだね。まだ他にも気を付けないといけないヤツが何人もいる。」
と、トシキ。
クロエはもちろん勝ち上がり、まだ力を隠しているヤツがいた。
「…気を抜かずに、しっかり行こう。」
と、トシキ。
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選手棟
予選が終わり、選手達は実行委員会の用意した選手棟に泊まり、明日の試合まで休む事になっている。
トシキ達も選手棟で休んでいた。
屋上で休むトシキに1人、霊紗が歩いてきた。
「あんたは屋上が好きね。」
と、トシキの隣に来た霊紗。
「ん、風が心地良いしね。」
と、トシキ。
「…そうね」
霊紗も屋上で吹く風を受けて頷く。
「それより、あんた。加藤明日菜の事、どうするの?」
「…どうするかな。魔法もきっとバレただろうし、はぐらかすのは無理だろうなぁ」
と、参ったような表情のトシキ。
「そのまんまにしたらあんた魔法世界で監禁決定よ?」
「だろうな。あれから話すこともできなかったし、ここに来ちゃったからどうするかなぁ…」
空を見上げるトシキ。
夜になり星が瞬いている。
「なら、今から話す?」
急に来た悠里。
「ほら連れてきてあげたわ」
悠里の後ろに隠れていた明日菜をトシキの方に出す。
「明日菜…」
霊紗と悠里が気を使って屋上から出ていった。
「あの…大丈夫?」
と、トシキの怪我を心配する明日菜。
「まぁ大丈夫。武道会に出るぐらいだからね。」
と、微笑むトシキ。
「そう…。」
「…」
2人はぎこちなく本題に入れない。
その沈黙を破りトシキが口を開く。
「もう気づいてるだろうけど、オレは魔法使いなんだ。今まで黙ってたと言うか、言うわけにはいかなくて、話さなかったんだ。」
「…うん。」
「話せば他の魔法使い達にも迷惑がかかる。だから、知らずにいて欲しかったんだけど無理だった。」
「…うん」
明日菜はトシキが話し始めてからずっとうつむいている。
「だけど、明日菜がウルフに襲われそうになった時から、隠すのは難しいかもって思ってた矢先に、明日菜を巻き込んでしまった。」
「違う!巻き込んだんじゃない!私が勝手に首を突っ込んだの!!」
と、うつむいていた明日菜が強い口調で言う。
「帰れって言われたのに、ただの好奇心で首を突っ込んでトシキに怪我させちゃった!!」
明日菜の目に涙が溜まり始めた。
「言われた通りに帰れば良かったのに、言うこと聞かずにトシキを死なせかけた!!」
溜まっていた涙が頬を伝う。
「私のせいで!私が悪いの!だからそんな顔しないで!!」
ぽろぽろと明日菜の目から涙が流れてくる。
「明日菜…」
トシキは明日菜の言葉に苦しそうな顔をしている。拳を強く握る。
「私が悪いの!だから私のせいだって言ってよ!!私がトシキの邪魔したって!!」
涙は止まることを知らないかの様に流れ続ける。
「私が居なければトシキは怪我しなかった!私なんかが」
「違う!!」
トシキが明日菜を遮って怒鳴る。明日菜は驚きトシキを見る。
トシキはまだ苦しそうな顔をしている。
「違うよ…、巻き込んだのはオレだ。アイツはオレを狙ってた。そこにたまたま明日菜がいたんだ。」
「…」
「それに、アイツはお前を盾にすることをせずに、オレと戦ってた。怪我したのはオレの力不足のせいだ。」
「だから自分のせいだなんて思うな。明日菜のせいじゃない。」
「でも…」
「それに明日菜。オレ達魔法使いは、お前みたいに魔物や魔法使いに襲われそうな人を助けるのが仕事なんだよ。だから気にするな。」
そう言ってやさしく微笑むトシキ。
「でも、私トシキが死んじゃったらって不安で!」
明日菜が座り込む。
「大丈夫。オレはピンピンしてる。だから、もう気にするな。自分を追い込むな。もう大丈夫だから。」
と、座り込んだ明日菜を優しく抱き締めた。怖い目に二度も会い、二度目には殺されかけた。そして、自分のせいでトシキを死なせかけ、恐怖と不安で押し潰されそうになっていた。そのせいで食事もろくに摂れなかったのか、暗くてよく見えないが、頬が少し痩せ顔色が悪く感じる。
「3日間苦しかったな。誰にも相談できずに不安で堪らなかっただろ?ゴメンな。」
トシキが泣きじゃくる明日菜の背中をポンポンと軽く叩く。
「もう大丈夫。」
優しく囁くトシキ。トシキの服を握りしめて泣く明日菜。
それを扉の影から霊紗と悠里が覗いていた。トシキがどうするか気になり、今まで影から見ていたのである。
「抱き締めていいなんて言ってないわよ〜…」
と、小さく唸る霊紗。
「まぁまぁ、今回はしょうがないわ。」
霊紗をなだめる悠里。
「……フン」
霊紗が顔を背けた。
「それで、明日菜に魔法の事がバレたろ?だから、オレはお前の魔法に関する記憶を消さなきゃいけない。」
体を離して明日菜の目を見た。まだ涙が流れている。
「記憶を消す?」
と、明日菜。
トシキが指で明日菜の涙を拭く。
「あぁ。記憶を消す。そうしなきゃ明日菜はここにいられないんだ。」
「…」
明日菜には今一理解ができなかった様で戸惑っている。
無理もない。記憶を消されるなんて不安だし、怖い。
「それが、一番良い方法だと思うんだ。元通りになるために。」
「…」
「…そりゃそうかもしれないけど、その子の意見は無視な訳?」
と、霊紗が扉の影から出てきた。
「霊紗…」
トシキは霊紗に気づいていたようで、驚いていなかった。
「私もアンタに賛成だけど、その子の意見も聞いとくべきじゃない?」
と、霊紗。
トシキが明日菜の方に向き直った。
「私は…、トシキの手伝いがしたかった。前から何か忙しそうだったから、何かできないかなって思ってた。」
明日菜がゆっくり口を開く。
「だから、この前も何か手伝えないかなって、言うこと聞かずに戻って迷惑かけちゃった。」
「私はもうトシキに迷惑かけたくない。私じゃトシキを助けられない。だから、記憶を消しても良いよ。」
そう言って、笑顔になるが目からは涙が流れる。
「明日菜…」
どう言葉をかけていいかわからず、名前を言う。
「ならパートナーになれば良いんじゃないかしら?」
と、今度は悠里が出てきた。
「い゛!?」
霊紗が変な声で驚く。
それを霊紗も考えていた。だが、今の時点でパートナーが3人。そこにまた1人加わるのは面白くない。そう思って黙っていたのに、悠里に言われてしまった。
「パートナーになれば、記憶を消さずに済むし、トシキの手伝いもできる。2人にデメリットは無いんじゃない?」
と、微笑む悠里。
「…それはオレも考えた。でも、明日菜は一般人だ。危険な目に遭わせたくない。」
と、トシキ。
「あら、あなたも元は一般人でしょ?それに、私達を危険から守るために、あなたは強くなるって言ったじゃない。」
と、悠里。
「ぅ…、確かに」
トシキが戸惑う。
「ならパートナーが1人増えても変わらないでしょ?」
と、悠里。
「くっ…」
観念したように明日菜を見た。
明日菜の目からもう涙は流れていなかった。
「最後のチャンスだ。今まで通り魔法の事を知らずに生きるか、パートナーになって危険と隣り合わせに生きるか。どっちだ?」
と、真剣に聞くトシキ。
「……。パートナーになる!!」
少し考えてから答える明日菜。その目に迷いはなかった。
「たくっ…、了解!」
トシキが、やれやれと肩をすくめて笑い、明日菜に一歩近づく。
トシキが近いことに照れ、うつ向く明日菜。夜じゃなかったら、耳まで赤くなっているのを気づかれただろう。
「パートナーの契約にはキスをしないといけないんだ。」
「…え?」
明日菜が一瞬止まる。
「…パートナーになるって言ったのはお前だからな!」
「ん!?」
心の準備ができてないのに、トシキがいきなり明日菜にキスをした。
(やわらかい…)
明日菜はキスをされつつ思う。
2人の周りが光って、少ししてからおさまる。
光がおさまってからゆっくり唇を離すトシキ。明日菜の方をチラッと見ると、明日菜はうつむいてた。
ふと、右手に何か違和感を感じた。
「あー、コレが契約の証のアーティファクトだよ」
と、右の掌に乗った指輪を明日菜に差し出す。
「指輪?」
指輪を持ってマジマジと見る。
指輪の裏にトシキと明日菜の名前が彫られている。
「パートナーの証だからな!」
と、言って屋上を出ていったトシキ。
「ちょっ!トシキ!?」
霊紗の声が空しく響く。
屋上に3人が空しく取り残された。
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本戦会場
翌日、本戦会場の観客席に明日菜も含めた霊紗と神楽、悠里の4人が席取りをしていた。
まだ早い時間だったため、そこまで人が居らず、1番前の席を取ることができた。
明日菜は昨晩一度家に帰り、また悠里にねじれで迎えに来てもらった。
「武道会か〜。」
明日菜が会場を見渡す。
予選会場と同じぐらいの広さだが、舞台が1つで大きさもでかい。その舞台と観客席の間に3m程の空間がある。
観客席は舞台を目の前で見れる最前列から、見下ろす席がある。
そこに人が少しずつ入って来はじめた。
4人は席取りが早すぎた、と悟った。
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数十分後
しばらく経ってから人が段々と席に入ってきて、数十分後にはほぼ満席に埋まっていた。
「お待たせいたしました!ただいまより武道会開会式を始めます!!」
舞台上に上がったマイクを持った男が叫ぶ。
観客も興奮して騒ぐ。
「今日この宴に集いし戦士達!その勇姿をその目に焼き付けろー!」
観客が沸く。
「それでは、前日の予選を勝ち抜いた、猛者達の登場だぁー!」
控え室のある方からトシキ達が舞台上に上がってきた。それに観客達から再び歓声が上がる。
選手達が舞台上に一列で並ぶ。
「さぁ、待ちに待った本戦の組み合わせを発表だぁー!!」
司会が言葉を発する度に観客が歓声を上げるのに、神楽達は苦笑いする。
「一回戦Aグループ第一試合、坂井俊貴vs日向亮!!」
歓声が沸く。
トシキが、いきなりか…と苦笑いする。
「第二試合、クロエvsドラン!第三試合、赤城州都vsミゼル・ドール!第四試合、エミリア・ハートvs幾月才人!!」
「Bグループ第一試合、カガリvsアイギス!」
カガリとアイギスが顔を見合わせて笑う。
「第二試合、ブルカノvs蒼井池!第三試合、ダブームvsダムド!第四試合、原縁vs浅倉桜!!」
と、第一回戦の組み合わせが発表された。
「では、早速Aグループ第一試合を始めたいと思います!選手以外は舞台袖で試合をご視聴ください!!」
トシキと日向亮と思われる男、司会者以外が舞台を降りる。
アイギス達がトシキの方を見る。
それに気づき、微笑んで親指を突き立てるトシキ。
アイギス達も微笑む。
武道会第一回戦が始まる。
こんにちわ。
お久しぶりです。
今回から武道会編です。
久しぶりに出てくるキャラもいましたね。個人的にもうちょっと早く出すつもりでしたが、余りキリが良くなかったので今回から出すことにしました。
長くなりましたが、読んでいただきありがとうございます。