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彼の進む道  作者: けやき
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緑の龍

トシキの家


桜が監視兼護衛で仲間に加わった翌日。トシキとアイギス、桜の3人は家の裏で軽く組手を行っていた。桜は剣技だけでなく色々な戦い方をすることができた。槍や棒、大剣、双剣、はたまた徒手空拳でも戦えた。

そのため、複数で戦う稽古を行っていた。


トシキの中国拳法、アイギスの我流拳法、桜の恐らく型のある拳法。その中でも、やはりトシキの中国拳法は受けにくく、入れにくかった。不規則な動きで、攻撃を受け流し、そのまま反撃に出る。攻撃も力技で来たと思ったら、次は柔らかい技で来る。予測がつけにくかった。



そして、30分後軽い組手を終えて休憩を始めた。


「なぁ、桜は何て武術を使ってるんだ?」


と、気になっていた事を聞くトシキ。


「私は、武器がなくても戦えるよう訓練されてますから、ほぼ我流です。剣技を基本にそこから派生させたのが私の武術です。浅倉流武術です。」


桜が日本刀を握り締めた。


「桜の一族に伝わる武術ってことか。」


と、トシキ。それに頷く桜。


「私はね〜、我流だよ!」


アイギスが手を上げて言う。


「知ってるよ…」


と、苦笑いするトシキ。


「にしても、軽くが全然軽くなかったな。」


と、感想を言うトシキ。


「そうですね、トシキさんの中国拳法が中々捌きにくくてつい力が…」


と、苦笑いする桜。


「確かにね〜。トシキの中国拳法は避けづらいし戦いにくいね」


と、頷くアイギス。

それは独特な動きに加え、アイギスとトシキの力の差でもあるのが理由だった。桜も普通にやる分には苦戦しないだろうが、アイギスも攻撃してくるため捌きづらかった。


「汗かいただろうし、帰ってシャワーあびてこよう。」


と、2人に言う。


「シャワー!」


と、アイギスが両手を上げて喜ぶ。


「浴びたら神楽達の所へ行こう。」


と、トシキの言葉に頷く桜とアイギス。

3人は家へと戻っていく。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

神楽の部屋


「と、いうわけで新しく仲間になった桜だ。皆仲良くしてやってくれ」


トシキが横に立つ桜を神楽達に紹介した。

桜が神楽達にお辞儀する。


余りに急な事に神楽達が呆然としている。霊紗は前にトシキと桜の話を途中から聞いていたため、それほど驚いてはいなかった。


「…何であんたはそう簡単に人を信用するかなぁ」


と、余り驚いていなかった霊紗が文句を言う。


「いやまぁ、どうせ一緒にいるなら仲間に、と思って」


と、頭をかくトシキ。


「そりゃそうかもだけど…」


と、神楽。


「桜は強いし心強いよ。」


と、アイギス。


「アイギス…」


トシキがアイギスに笑う。


「まぁいいんじゃない?トシキだってちゃんと考えて言ってるんだろうし。」


と、悠里も助け船をだす。


「はぁ…、しょうがないか」


と、呆れつつ諦めた霊紗。


「あの…私ってあまり歓迎されてないんですか?」


と、トシキの服の裾を掴んで、トシキにだけ聞こえる小さな声で聞く桜。


「…なんていうかオレが悪いからあまり気にしなくていいよ。基本的に良い子ばっかだから。」


と、苦笑いするトシキ。

トシキの言う通り、神楽達はトシキが誰でもすぐ信用するのを危惧していた。

ただ霊紗とカガリは桜を少し疑っていた。

2人はトシキがすぐ人を信用するのを危惧して、気を許さない様にと考えていた。


「無理に仲間にしてもらうつもりは無いので、皆さんが嫌ならすぐ去ります。」


と、神楽達に向かって言う桜。

それに思わず顔を見合わせた神楽達。


「そこまで言ってないわ。ただ、私はトシキ程甘くないから監視させてもらうわ。」


と、霊紗。


「…」


霊紗を何とも言えない表情で見るトシキ。


「はい、少しでも怪しい動きをしたら斬り捨ててもらって結構です。」


と、霊紗に引けを取らずに答える桜。


「…じゃあ、監視つきで仲間になるってことで文句ない?」


と、神楽達に聞くトシキ。神楽達が頷く。


桜が神楽達に改めてお辞儀した。


そして、監視する者が監視される奇妙な関係がここにできあがってしまった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

海岸付近


“世界を再生する者たち”が壊滅してから、ねじれが発生する数は激減した。

そもそも、ねじれは魔法世界と旧世界の狭間の“魔力の吹き溜まり”から漏れた魔力が原因で発生する。“魔力の吹き溜まり”に溜まった魔力は少しずつ両世界に流れ込んでいく。その流れ込んだ魔力により両世界で魔法を使うことができる。その魔力を体内に取り込んで、自分の力へと変えるのが魔法使いなのである。そして、その放出された魔力は“魔力の吹き溜まり”に流れ込み再び魔力として両世界に流れ込むのである。


稀に、ねじれを通って片方の世界の人や魔物が違う世界へと迷い込んでしまう。旧世界の場合、魔物の割合が高くその対処のため魔法使いが各地に配置される。魔法世界の場合は、大抵が人間のため、魔法に関する記憶だけ消されて旧世界へと帰される。


ねじれは、台風や地震のような物なのである。

ここ最近ねじれが減ったのは、“世界を再生する者たち”が乱用したねじれにより、魔力の吹き溜まりが減り2つの世界の魔力が少しずつ溜まっていくのが理由であった。漏れる魔力が殆んどないぐらい減っていたため、ねじれが余り発生しないのである。


今、余り発生しないねじれが海岸で発生した。そこから数体の魔物が出現した。


・・・・・・・・・・・・・・・

海岸



30分後、ねじれに気づいた悠里に教えられてトシキ達が海岸に走ってきた。


「ここら辺か!?」


トシキが砂浜を見渡すが、周りには人っ子一人いない。


「悠里さんは海岸だって言ってたよね?」


神楽が皆に尋ねる。


「うん、言ってた。」


と、アイギスが頷く。


「…」


霊紗は黙って砂浜を見渡す。


「最近ねじれが減ったから感覚を忘れちゃったんじゃないのか?」


と、カガリが腕組みして海を睨み付ける。


「まさか…」


トシキが苦笑いする。


「…ちょっと散開して、周りを探してみようか。」


トシキの提案に皆頷く。


・・・・・・・・・・・・・・・


「…何もいないなぁー」


アイギスが異変探しに飽きて、浜辺からカニや小魚を探し始めた。


「あ、アイギスサボり始めたー!」


散策し始めたアイギスに気づいた神楽が、アイギスに向かっていく。


「緊張感ないのう」


と、その様子を腕組みしながら見るカガリ。


「まったくね」


カガリの隣に来て、カガリの意見に頷く霊紗。


「…皆、散策止めちゃってる」


真面目に辺りを探していた桜がやっと気づいた。


「あれ?トシキさんがいない…」


遊び始めた皆の中に、トシキがいないことに気づく。

辺りを見回すが見つからない。


「ん?」


ふと、海の上に立つ人影に目が止まる。


「あれは…トシキさん?」


桜の言う通り、トシキは海の上に立っていた。水面に浮いていると言ってもいい。


「あんなとこで何して…!」


トシキを見ていると、トシキの周りから4つの水柱が上がった。


「な、何!?」


と、その音に気づいた神楽達。


「あそこじゃ!」


水柱が上がる場所を指差すカガリ。


水柱から魔物が飛び出してきた。

鮫に手と足が生えている不気味な見た目で、手には槍を持っている。


「そっか!海の中にいたんならわかんないよ!!」


と、神楽が杖を取り出す。


「私達の出る幕はないわ。トシキがいる。」


飛び上がった四体の魔物の中心にトシキが立っているのを指差す霊紗。


「こんなとこから来るなんて予想外だぞ、くそっ!」


トシキは、水面に立つ練習をしていたため、思わぬ場所からの奇襲に反応が遅れた。


魔物の一体が手に持つ槍をトシキに振りかざす。


「くっ!」


それに気づき、不安定な状態だが何とか防ぐ。


一体の攻撃に続き、残り三体の魔物もトシキに槍を振りかざす。


「っ!」


トシキが全方位に物理障壁を展開した。魔物の槍は障壁によってトシキにあたらない。

が、足場がしっかりしてなかったため三体分の衝撃に耐えきれずに、トシキは海中に入っていってしまった。


「トシキが海に沈んじゃったよ!」


と、アイギス。


「海面に立つのが上手くできてなかった様ね」


霊紗が魔符を取り出した。




(海中じゃ思うように動けない…!)


トシキが周りを囲む四体の魔物を見る。

水中では、魔物の方が有利で、地上に上がる方法を考え出す。


その間にも、魔物は攻撃の手を緩めない。

四方から槍を手に、トシキを突き殺そうとして襲ってくる。


(底がそんなに深くない…)


魔力で補った、地上とそれほど変わらない視力で海の底に気づく。まだそれほど深くない位置にいたようだが、底のが海面より近かった。


(一か八か!)


トシキは底へと、魔物の攻撃を何とかいなしながら降りていき、全身に魔力を集中させて迎撃体勢をとった。


トシキの右後ろから一体の魔物が突き殺そうと突進してきた。


それに気づき、突き出された槍を手で弾き、魔物の腹に膝蹴りを繰り出す。

魔物は口から空気を吐き出して、槍を手放し浮いていった。


(よし!地上より大分遅いけど何とか戦える!!)


トシキが残り三体の魔物を睨み付けた。


その瞬間に、トシキと魔物達の間に直径2m程のレーザー状の光が通った。

底に当たった直後に、当たった場所を中心に海が割れ、日が差し込んできた。


「何で…!そんなことより今しかない!!」


突然の出来事に驚いたが、地上に出るチャンスとして、空へと飛び上がるトシキ。


その後に、空に上がった海水が雨となり降り注ぎ、再び海に戻った。波が凄い勢いでぶつかり合い激流となり、水しぶきをあげる。


「アレに巻き込まれたら流石にヤバかったな…」


と、苦笑いする。


「トシキー!後ろー!」


と、砂浜の方から神楽の声が聞こえた。


「うし…!」


自分の後ろに巨大な気配を感じて、慌てて振り向いた。


「な、何だ!?」


トシキの後ろには、巨体から羽のはえたドラゴンの様な魔物が、トシキを睨み付けていた。


全身緑の鱗に覆われた、巨体なドラゴン。牙も爪も鋭く尖り、口から炎をちらつかせている。


「っ!」


トシキが思わずエレメンタルブレードを握る。


それを見てドラゴンは戦おうとするわけでもなく、背を向け飛び去っていった。


「…何なんだ、一体」


トシキは呆然としながら砂浜の方に向かって降りていった。


海面に四体の魔物が浮かび上がり、塵となって消えていった。



どうもお久しぶりです。

長期休みになり書く時間が増えてはいるんですが、今までに積んでいたゲームが貯まってきていて消化してるので、更新は不定期です。


では、これからもよろしくお願いします。

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