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彼の進む道  作者: けやき
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始まる時Ⅱ

魔法使いの神楽と出会い、日常が非日常に変わってしまった大学生、俊貴。急に現れた神楽に対して対抗意識を燃やす幼馴染み、明日菜。

そんななかまた、時空のねじれから魔物が現れる。

「何なの!あの娘!突然現れて俊貴にベッタリくっついちゃって!まだ、私だってあんな近くで一緒に居たことないのに…。」


髪を後ろでまとめながら、ぶつぶつと言った。


「俊貴も何で拒否しないのよ!友達であれは可笑しいでしょうが!何なのよ…。」


鏡を見ていつも通りのポニーテールになっているのを確かめた。


「…。あいつは鈍いからそこまで手を出さなくてもいいかと思ってたけど、やっぱ積極的にいかなきゃダメかも…。」


顔がいつもより落ち込んでいる。みっともない顔をしてる。


「はぁ…。あたしのが鈍かったのかも…。あたしももっと積極的になろう!」


そういって、顔に両手でビンタをいれ、気合いをいれた。


「よし、頑張ろう!」


明日菜は強く叩きすぎてヒリヒリする頬をなでた。


その頃



「何でお前は外で待機してんの?」


俊貴が訝しげに、原付きの後ろに座る少女を見て言った。


「えぇ?それをまだ聞いちゃうの?早く慣れてよ〜。」


少女は笑顔で答えた。


「はぁ…、全くお前が一緒だと明日菜が何故か不機嫌になるんだよなぁ…。」


俊貴がボソッとつぶやいた。


「なーにぃ?早く行かないと電車間に合わないよ〜。」

少女がせかすように原付きを揺らし始めた。その少女の大きな2つの物もそれに合わせて揺れた。


「はいはい、行きますか〜。」


俊貴はヘルメットを2つとり、神楽にかぶせ、自分もかぶってから原付きに乗り駅に向かっていった。


…朝から良いもん見れたなw背中に当たってるし。


そう思っていたら、


「俊貴のエッチ〜(笑)」


神楽がそう言い、俊貴は焦って表情を隠した。




駅に着きいつも通りベンチに座った。


「ねぇ、俊貴?」


神楽が顔を覗き込むように言った。

「ん、何?」


俊貴は前をボーッと見ながら聞いた。


「そろそろ、魔法の練習する?私もアーティファクトで魔法使ってみたいし。」


神楽がウキウキしながら聞いてきた。確かに、始めに魔物に襲われてから異変という異変が起きていないせいで、2人とも魔法をろくに使っていなかった。俊貴はなりたてで呪文を知らないというのもあるが。


「確かに、練習はしたほうが良いかもね。前は使わずに倒せたけど、これからはわからんし、覚えといて損はないよね?」


俊貴が何か考えながら言った。

「…、オレは何が向いてるんだろう。神楽はどんな魔法が得意なんだ?」


「私は、光と水が得意なの。水は何かと応用が効いて便利だよ。連携もとりやすいしね。」


神楽は少し考えてから言った。

「俊貴は風と雷だと思うよ。グローブを装着した時に、周りに風と電気が発生してたから、そうだと思う。」


「風と雷かぁ…。嫌いじゃないっていうか、むしろ好きな方かな、それだと。」


俊貴が嬉しそうに答えた。神楽はそれを見てつられて笑顔になった。はたから見ればカップルの様な雰囲気であるが、話してる内容はオカルトな感じだった。


「私も基本的な魔法なら教えてあげれるから練習しよ?」


神楽が首を傾げて聞いた。


「そうだね、じゃあ、練習しようか。ん〜…場所は…、なるべく人のいないとこにしようか。」


何かいい場所があったかなぁ、と思いながら首を傾げた。すると、横から


「…、人のいないとこで何を練習するの?2人で。」


明日菜が割って入ってきた。俊貴は、しまった、うかつすぎた…。と思って、


「次にある大学の行事の練習だよ。人に見られたくないし。」


かなり苦しい言い訳をした。顔に嘘が出てないか不安になったが、


「…ふーん。まぁどうでもいいけど。ほら、電車来たわよ。」


そう言って俊貴の手をとりスタスタ駅に向かっていった。


「お、おぅ。引っ張らなくてもちゃんと行くよ!」


俊貴がそう言っていながらも明日菜は引っ張っていった。


「……!?待ってよ〜!」


神楽が一瞬反応し遅れたが、すぐ2人の後をおっていった。



前に魔物が出現した山のふもと。そこに、1つ空間がねじれた。ねじれて、大人の男の人ぐらいの大きさで止まった。

その中から1体の魔物が現れた。前の熊型の魔物とは違い、蜥蜴の様な魔物が二足歩行で出てきた。手には剣と盾を持っている。

その魔物は辺りを見回し、森の奥を見つめ、森の中に入っていった。




「うー…、やっと終わった〜。」


俊貴が駅から出てきて伸びをした。


「あれぐらいの講義ならまだ短い方だよ。もっと長い講義だってあるんだよ。」


神楽が笑いながらそう答えた。俊貴がその言葉に、うげぇーって顔をしたが、すぐに真顔に戻った。


「…?どうかしたの?」


神楽が急に真顔になったことにドキドキしながらも、不思議に思って聞いた。


「何かいる。また前と同じ方向から違和感を感じる。」


俊貴が足早に原付きまで歩き始めた。神楽がその後を追った。


「前って、昨日の場所?」


「うん、昨日の場所。前よりも大きな違和感を感じる。」


神楽が頭を傾げて昨日の戦った場所の方向を眺めた。確かに、昨日より大きな魔力を感じる。


「ねぇ、俊貴。それって違和感じゃなくて、魔力だと思うよ。」


ヘルメットを被りながら神楽が言った。


「魔力?なるほどね、それなら納得できるかも。魔力だったのか。」


俊貴は違和感にしては、何か違う感じがするなぁとは思っていた。近づくにつれて感じる。違和感ではないけど、他に言葉が思い付かずにそう言っていただけである。


原付きで昨日の場所の前まで来た。ここからまた歩く。昨日と同じで薄暗く不気味な場所である。昼だと、木の木漏れ日である程度明るいが、夕方、しかも冬で、かなり薄暗い。


「アデアット!」


神楽が杖と鍵を出した。


「俊貴も武器出しといた方がいいよ。すぐ戦闘体勢に入れるし。」


「そうだね、そうするよ。」


神楽に言われて、鞄から丸い透明な石を取り出した。


「何それ?水晶玉?」


神楽が食い入るように見た。


「違うよ、魔法媒体だよ。昨日、グローブから元に戻したらこうなっちゃった。」


そう答えて、俊貴は自分の武器をイメージした。

石は光り、刀に姿を変えた。


「へー、昨日と違う武器にもなるのかぁ…。」


ちょっと考えながら言った。


「そうだよ。武器ならイメージしたやつがたいてい出るようになってるの。」


神楽がそう答えた。


「なるほど。なかなか便利だな、これ。」


使えるな、これ。と思いながらふと後ろを見た。

神楽の後ろに、自分と同じぐらいの背丈の影が見えた。


「あ?」


俊貴が呟いた。人がこんなところに?いや、こんなところに、こんな時間に人は来ない。となると、人じゃない。魔物!


「いつの間に!」


俊貴が焦った。


「え?何?」


神楽が驚いて後ろを見た。魔物は手に持っていた剣を振り下ろした。


「さぁせるかあぁ!」


ガキイィン


俊貴が神楽を自分の後ろに引いて剣を受け止めた。


「刀で良かったかも。大丈夫?怪我してない?」


後ろを向かずに神楽に聞いた。


「あ、うん、大丈夫。ちょっと驚いただけ…。」


神楽は少し放心してしまった。


「…。」


神楽は戦えそうにないかな。できれば魔法で援護してもらいたいけど、仕方ないか。でも、格闘技と違って刀を実際に使うのは初めてだし、剣道を軸にしたオリジナルの剣技でいこうか。


魔物とつばぜり合いをしながら俊貴は考えていた。右手に剣と、左手に盾を持ってる。上半身の胸の所に小さな鎧。後は普通に鱗か。

魔物が急に左手の盾で打撃をしてきた。


バン


「ちっ…、やってくれるじゃん。」


つばぜり合いがとけた。舌打ちしながら、盾でダメージをうけた右手から、左手にもちかえた。甲が赤くなってきた。


…、右手は今回使えないかも。左手だけじゃ流石にちょっとやばいか。


「神楽!」


魔物を睨み付けながら神楽を呼んだ。


「へ?あ、ごめん!ボーッとしてた!」


神楽が俊貴の左側に来た。杖を構えて横目で俊貴を見た。


「おし!行けるね?援護頼むよ!」


「うん、任しといて!」


俊貴と神楽は魔物を見ながら手の甲を、コツンと軽くぶつけた。

俊貴が魔物に向かって走り出した。魔物が俊貴を迎え撃つ体勢になった。が、魔物の目の前で、というか、顔で爆発が起きた。

神楽が空からファイアーボールを放っていた。

その爆発により魔物は体勢を崩した。

体勢が崩れた隙を俊貴は見過ごさなかった。


「もらったあぁぁ!」


俊貴は魔物のお腹に一線を引くように切り裂いた。が、踏み込みが甘く致命傷にはならなかった。

魔物は痛みで地面に倒れた。


「踏み込みが甘かったか!立ち上がる前に止めをさしとかないと、後々面倒か。」


止めをさすために魔物に慎重に近づいた。

魔物の横について刀を構えた。

が、魔物が急に起き上がり俊貴に体当たりをした。


「昨日当たったのに、また当たってられるか!」


右に飛んで避け、体当たりを失敗してバランスを崩した魔物に、斬りつけた。


グギャアアァァ


魔物が断末魔をあげ倒れた。今度はちゃんと踏み込み、致命傷を与えた。


サアアァァァ


魔物が砂状になり消えていった。


「はぁ…、今回はちょっと焦ったな。右手負傷しちゃったし。」

俊貴が甲が赤くなった右手をプラプラさせながら言った。


「え?右手怪我したの?見せて!」


神楽が心配そうに言って、右手をとった。さっきよりも腫れてきている。


「すごい腫れてるよ!もう…、じっとしててね。」


杖を俊貴の右手に近づけて、ヒールを唱えた。

右手を光が包み、痛みが少しずつひいていった。赤くなった甲も少しずつ元の色に戻ってきた。


「ヒールってどんな傷でも治せるの?」


「ううん、傷が大きすぎたり、深かったりすると直せないよ。軽い傷なら1人で治せるんだけど、深いと少なくとも4人はいないと厳しいかな。魔力が高ければ2人とかでもいけるんだけどね。」


俊貴の怪我を治しながら説明した。


「ふーん。やっぱ、回復呪文にも向き不向きがあるみたいだね。」


痛みも腫れも完全にひいた右手を見ながら言った。


「回復は私得意だからある程度は治せるんだ。」


嬉しそうに言った。回復かぁ〜…、あれば楽かなぁと、また考え始めた。


「よし、オレは一通り基本の魔法をやって、向き不向きを知ろうかな。」


「魔法学校みたいな事を自分でやるんだね。いいよ!私も手伝っちゃう!」


回復が終わり笑顔で飛び付いてきた。


「それにしても、今回私ほとんど役に立てなかったなぁ…。マスターに怪我させちゃったし…。」


抱きつきながら、落ち込んだ表情に変わった。実際、神楽は後半でしか戦っていなかった。


「そんなに気にしないでよ。突然襲われたって言うのもあるし、ファイアーボールの使い方も良かったよ。それに、手の怪我も治ったし!神楽が居なかったら、こんな楽に倒せなかったよ!」


神楽の頭を撫でながら言った。神楽が撫でられながら、上目遣いで俊貴を見た。そして、笑顔に変わり、


「あー…私、俊貴がマスターで良かったかも。」


そう言って、俊貴の胸に顔を埋めた。神楽の笑顔にドキッとして、胸に顔を埋められ、こしょぶったかったが、まぁいいか。と、頭をまた撫でた。




「…。あの程度か。」


俊貴達が戦っていた場所の上空で空間がねじれている。その中で1人の人間が呟いた。


「そこまで害はないな。次はもっとキツイのを送っておこうか。ククク…。」


不気味な笑みを浮かべねじれの中に戻っていった。



月が半月に近い形になろうとしていた。

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