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彼の進む道  作者: けやき
19/63

組織の目的

旧世界 神楽の部屋


昼ちょい前の暖かくなりだした頃に、神楽の部屋にサキ達が来ていた。

霊紗が魔法学園に昨日連絡して、その返事がちょうど来る予定だった。


「大事な話ってなに?サキちゃん達まで呼ぶって事は、結構重要だよね?」


と、神楽が全員にお茶を配りながら言った。


「そうね。組織の事よ。」


と、霊紗。

自分に配られた、自分の湯呑みを手に取る。


「…何かわかったの?」


と、アイギス。


「何も。」


と、霊紗が肩をすくめた。それを見た神楽は湯呑みを思わず傾け、お茶をこぼしかけた。


「わかってるのは、組織の計画が次の段階に進む日が近いってことかな。」


と、サキ。


「…どういう事?」


と、神楽。


「あっちはたぶん、準備はできてきてるんだよ。明日、明後日いつでもこっちを襲撃できるようにね。」


と、サキ。

その隣で余裕そうにお茶を飲む悠里。


「で、こっちは完全に後手に回る。準備を昨日したって、組織の方が先手になるのは確実だよ。」


と、サキ。サキの隣に座るカガリは霊紗を何故か睨み付けている。ゆったりしたのと、しかめっ面のに挟まれているサキに、3人に神楽達は何故か圧倒された。


「あ、その準備の連絡がもうすぐ来るってこと?」


と、神楽。


「そう、もうすぐキャロルから連絡がくるはず…」


と、霊紗。


「こんにちわ。あら、全員揃ってるわね。」


と、通信機からキャロルのホロビジョンが映し出された。笑顔でサキ達をキャロルが見た。


「こんちわ。」


と、サキがペコッと軽く頭を下げた。


「あなたの言う通り、そっちにいる魔法使い全員に呼び掛けておいたけど…」


「場所と時間がわからないんですよね?」


と、キャロルの言葉をサキが引き継いだ。


「そうなの。場所がわからないから、人が集まっても対処に遅れが出るわ。」


と、キャロルが頷いた。


「…人を集めても、意味ない場所だったら集めた意味がないよ」


と、神楽。


「呼び掛けておいたからといって、時間もわからないから余計にロスになる。」


と、霊紗。


「…それでも何もしないよりはましだけどね。」


と、苦笑いするサキ。


「…あなたは何処にいつ来ると思う?」


と、キャロルがサキに聞いた。


「ん〜…、2日後、明後日ぐらいじゃないですか?」


と、サキ。


「どうして?」


と、神楽。


「捨てられたアジトには、必要ないものばっかりあった。鍛冶用の炉とか、物を加工する機械とか、移せない物は放置で、文字通り捨てられてた。大事な物は全部持っていってたし、失敗した物の資料はそのまま。」


「私が襲撃してからもしばらくそこにいたみたいだけど、最近移動した様な後があった。」


と、サキ。


「じゃあ、新しい方で作ってるんじゃないの?」


と、神楽。


「確かにそれもあると思うけど、すでに完成していて、後は最終調整だけって言う可能性もあるよ。それなら、炉とかいらないし。」


と、サキ。


「っていうか、そもそも何を組織は作ってたの?」


と、アイギス。それに神楽も頷いた。


「そうそう、あなた達は知ってるみたいだけど、私たちはまだしらないのよ。」


と、キャロル。


「あ、そっか。まだ言ってなかったっけ。」


と、サキが霊紗を見た。

霊紗は小さく頷いた。


「組織は、“方舟”と言う古代の破壊兵器を見つけて、“方舟”を使い両世界の旧世界人を消そうとしているの。」


と、サキ。


「両世界の旧世界人を消す!?」


と、神楽。


「そう。だから、“世界を再生するものたち”なんだよ。文化を荒らした旧世界人を消して、再び魔法世界だけの文化を得ようとしているの。」


と、サキ。


「じゃあ、初めに旧世界を狙うのは、旧世界の人が圧倒的に多くて、抵抗できる人数が少ないから?」


と、霊紗。


「うん。それに、魔法世界にはまだ旧世界人を恨んでる人が少なくない。旧世界人を消す、って目的が露見すれば、組織の味方になる魔法使いだって出てくるよ。」


と、サキ。


「…じゃあ、私たちはかなり厳しい状況にあるのね。」


と、話をちゃんとメモるキャロル。


「まさに背水の陣って訳ね。」


と、悠里。


「…」


と、沈黙がその場に訪れた。組織の本当の計画がわかり、神楽は恐怖を感じ、霊紗は動揺し、アイギスは放心している。

アイギスは話についてこれているのかすら怪しい。


「…とにかく、情報が入り次第あなた達にも連絡するわ。」


と、キャロル。


「あ、まだ切らないで。」


と、霊紗がハッとして、キャロルを呼び止めた。


「?」


と、霊紗をキャロルが見た。


「…もう教えてあげるべきよ。皆に。」


と、霊紗がサキを見た。


「!……」


と、サキが神楽達を見た。


「そう、だね。」


と、サキが小さく頷いた。悠里の方をチラッと見ると、微笑んで頷いた。


「私は…一度死んでるんだ。」


と、サキ。


「!?」


と、サキをよく知らない神楽達が驚いた。霊紗も予想外で驚いていた。


「どういうこと…?」


と、神楽が恐る恐る聞いた。


「三ヶ月前に、魔法使いなら皆知ってるあの戦争の日に、一度死んだんだ。」


と、サキ。


「じゃあ、何で今ここに…。ってか、あの日ってことはもしかして…」


と、神楽。


「あの日、私は1人で100超えの精鋭達と戦って、結果、精鋭部隊を壊滅、私は瀕死状態になった。」


と、サキ。


「…うっ……ぐすっ」


と、話の途中から神楽が泣き始めた。


「その戦いの途中に魔法媒介が、私を庇って大破。でも、私は何故か魔法媒介無しで魔法が使えたから、何とか壊滅できた。その後、意識を無くして、気づいたらカガリの家にいた。」


と、神楽を気にしながらも話続けるサキ。話を聞く程に、神楽の目から涙が流れてくる。


「皆もうわかったと思うけど、私は、オレはトシキだ。坂井俊貴。」


と、サキは本名を告げた。


「うあぁぁぁーん!」


と、神楽がサキに抱きついた。アイギスも続いて抱きついた。


「でも、トシキは傷がひどすぎて助からない。だから、転生魔法を使ったんじゃ。」


と、サキが神楽達にあたふたしているのを見て、カガリが代わりに言った。


「じゃが、転生魔法は完全じゃなかったんじゃ。だから、一か八かの賭けで、婆やが使った。」


と、カガリ。


「ばあや?」


と、霊紗。


「婆や。私の婆やじゃ。私よりもかなり強い魔法使いなんじゃが、そう長くはないのに、力を振り絞ってトシキを助けてくれた。」


と、俯くカガリ。


「…転生」


と、呟く霊紗。


「…その賭けに成功したおかげで、トシキは生き返ったんじゃが、性別が変わってしまったんじゃ。」


と、カガリ。


「不完全な呪文だったと言うのもあり、婆やの力のがトシキよりも強かった。そのせいで、トシキは男のまま転生できず、女として転生してしまったんじゃ。」


と、カガリ。


「…あんたの婆やは」


「それから、ちょっとして死んだ。」


と、霊紗を遮ってカガリが言った。


「ただ、悪いことばかりじゃなくて、カガリの婆ちゃんの力をちょっとわけてもらったんだ。」


と、抱きついたままの2人の頭を撫でながらサキが、カガリに代わって説明しはじめた。


「それで、婆ちゃんにちょっと話を聞いて、婆ちゃんが元々やってた賞金稼ぎの仕事を引き継いだ。」


と、サキ。


「それで、旋風の雷として賞金稼ぎを始めたのね。」


と、神楽。


「そう、賞金稼ぎとして街から街を旅してたりすれば組織の事がわかるかな、って思ったんだ。」


と、サキ。


「それで、組織のアジトっぽいのがハメット周辺の洞窟にあるって噂を聞いて、行ってみたんだ。」


と、サキ。


「その洞窟って…」


と、アイギス。


「そう、オレ達がハメットの村人を避難させた洞窟。そこが、組織のアジトだった。」


と、サキ。


「じゃあ、村人は?」


と、霊紗。


「アジトの中で見つけたよ。無理矢理働かされてるのをね。」


と、俯くサキ。


「じゃあ、私たちは組織に労働力を与えちゃったってこと?」


と、神楽。


「うん、知らずにノーマに利用されてたんだ。魔法学園から送られた兵士達も労力か、殺されたんだと思う。」


と、サキ。


「えぇ、何故かあの洞窟に送った兵士が帰ってこないの。そういうことだったのね。」


と、キャロルが相変わらずの早さでメモをとる。


「で、アジトの中で鎖で縛られた悠里を見つけたんだ。」


と、悠里を見た。

悠里が小さく頷いた。


「私は、あなた達と一度話をしているの。こうやって会う前にね。」


と、悠里が代わって話始めた。


「…何か聞いたことある声だと思ってたら、私たちを旧世界に返したのはあなただったのね。」


と、霊紗。


「えぇ、そうよ。私は、ねじれを操る魔族。迂闊にも組織に捕まり力を良いように濫用された。」


と、悠里。


「でも、2か月前にトシキ、いやサキにアジトから助けられたの。トシキは3人の幹部を相手に、私を担いだ状態で必死に助け出してくれたわ。」


と、サキの背中を人差し指でなぞる。


「ヒイィィ!」


と、背筋に怖気が走り、変な声をあげるサキ。


「でも、私達に行き場所はない。そこをカガリの家に連れてってもらって、そこに暮らさせてもらってたの。」


と、悠里。カガリが、うむと頷いた。


「で、そっから一ヶ月、移動に悠里さんのねじれを使って、カガリと2人で賞金稼ぎとして動きながら、組織の情報を手に入れようとしていたんだ。」


と、サキ。


「なるほど。それで、一ヶ月前からローブが2人になってたのね。」


と、キャロル。

サキが頷く。


「じゃあ、組織の情報はそのときに?」


と、神楽。


「ううん、組織の情報はほとんど潜入したときに、組織の兵士達から聞いたんだ。で、それ以降はあんまり大した情報を入手できなかった。」


と、サキ。


「ふーん。」


と、神楽。


「カガリはどこでトシキを見つけたの?トシキを運んだのはカガリなんでしょ?」


と、神楽。


「あぁ、その事か。それなら、確かに家まで運んだのは私じゃ。見つけたのはスルノの森じゃ。何故かそこに血だらけで倒れとった。」


と、カガリ。


「トシキの血が見つかった場所だ!でも、3ヶ月前なら何で、血がそのまま消えずに残ってたの?」


と、神楽。


「あの森は、何故か水が干からびにくいんじゃ。水の上精霊がおると言われてるし、そのせいかもしれぬ。水がないと顕現し続けられないらしいしの。」


と、カガリ。


「水の上精霊…ウンディーネより強いのかな。」


と、神楽。


「さぁの。私は知らぬぞ。」


と、カガリ。


「じゃあ、トシキはどうしてサキと名乗って、私たちに会っても知らないふりしたの?」


と、アイギス。


「…サキって名乗ってたのは、その姿でトシキって名前はマズイと思ったんでしょ?」


と、霊紗。

サキが頷く。


「それに、知られてない顔と名前のが動きやすかったんだ。トシキだと、組織の人間だと知ってるみたいだし。」


と、サキ。悠里が頷く。


「知らんぷりは、オレと関係ない方が危なくないと思ったんだけど、霊紗にバレちゃったから…」


と、苦笑いするサキ。


「え?じゃあ、霊紗はサキがトシキだって知ってたって事!?」


と、驚く神楽。


「…サキの魔力に懐かしさを感じて、確証はなかったけど、これで確信したわ。」


と、右の薬指につけていた指輪を外した。


「…もしかして、アーティファクト?」


と、アイギス。

霊紗が頷く。


「ここに、マスター・トシキって彫られてるのを見て確信した。」


と、霊紗。


「それに、契約したマスターが死ぬとアーティファクトも消滅するのよ。忘れたの?」


と、神楽に言うサキ。


「……。じゃあ、ボルトと契約しようとしてた時には、生きてるって思ってたの?」


「うん。サキだとは思ってなかったけどね。だから、ボルトと契約した後にトシキの血とテリルの破片が見つかった時は、さすがに堪えたわ。」


と、霊紗。契約できた後に死んでしまったんじゃないかと思い、弱気になっていた時に、屋上でサキに慰められ、何とか立ち上がれた。


「で、バレなきゃ組織を壊滅してから名乗り出ようと思ってたんだけど、バレちゃったから名乗った。」


と、サキ。


「…何でサキって名前?」


と、アイギス。


「それは、サカイトシキの始めと終わりをとって、サキって事にした。」


と、サキ。


「…単純」


と、霊紗が少し呆れた表情をした。

それにサキがムッとした。


「…ところで、方舟って何?皆何も言わないから知ってるの?」


と、アイギス。


「…」


と、アイギスの言葉にサキ達が顔を見合わせた。


「私も知らない…」


と、神楽。


「…実は、方舟が何なのかわかってないんだ。わかってるのは、形が船の様な形で、魔戦車を搭載できるぐらい大きいって事だけなんだ。」


と、サキ。


「昔、世界をおさめようと邪神が使っていたのが方舟とされているわ。大量に人や物を破壊できる兵器として、造られたとなってる。」


と、キャロル。


「じゃあ、方舟で旧世界人を皆殺しにして、魔法世界の文化を守ろうとしているってこと?」


と、アイギス。


「…恐らくそうだろうね。」


と、サキ。


「魔法世界の文化だけじゃ、今のような世界にはならないのに」


と、霊紗。


「…とにかく今は旧世界を守らなきゃ。」


と、サキ。


「そうね。」


と、キャロル。


「今言うことじゃないけど…、ただいま。」


と、サキ。


「おかえり!」


と、神楽達が笑顔でサキに言った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・旧世界 マンションの屋上


サキが1人、屋上から空を眺めていた。このマンションは、辺りの家や建物の高さを越えて、目立つため、眺めがなかなかいいと、マンションの住人だけが知っている事である。


「…これで良かったのかな」


と、1人空に呟いた。神楽達に正体を明かしたことにまだ迷っていた。


「…いいんじゃない?私にバレた時点でいずれバレるし。」


と、後ろから声がした。

サキが振り向くと、霊紗がこっちに向かって歩いていた。


「霊紗…」


と、サキ。


「それか、そのうちボロが出てバレるわ。」


と、イタズラっぽく笑う霊紗。


「…そか、そだね」


と、小さく頷くサキ。


「にしても、言葉に良く慣れたわね。自分の事を私とか。」


と、霊紗。


「カガリの婆ちゃんが亡くなるまで、キッチリしごかれたからね。でも、崩れたらすぐ元に戻るよ。」


と、笑うサキ。


「…元の姿に戻れるの?」


と、霊紗。


「それを図書館とかで探すのもしてたんだけど、情報が全く…。」


と、腕を広げたサキ。


「そう…、まぁ、組織の事すんだら私が手伝ってあげるわ。あんたマスターだしね。」


と、微笑む霊紗。


「…」


3ヶ月前の霊紗と何か違う様な気がする。

そう思って、サキは霊紗をジッと見つめていた。


「…何よ?何か顔についてる?」


と、手で頬を触る霊紗。


「な、何でもないよ。ありがとう!」


と、慌ててお礼を言うサキ。


「…あんまり1人で抱え込まないで。私は、私たちパートナーがいるのを忘れないで。」


と、サキに言って霊紗は屋上から部屋に戻っていった。


「…そうだね。オレは1人じゃないし、巻き込まない様にって思っても、オレが居なくても組織の連中は霊紗達を襲ってたんだった。もう巻き込まれちゃってる。」


と、旋風の雷として旧世界に戻り、神楽達と会った時の事を思い出した。

トシキが居なくても、シュバルツは神楽達を攻撃していた。


「…止めなきゃな。組織の計画を!」


と、拳を握った。


「お前に止めれるのか?」


と、また後ろから声がした。


「!」


驚き振り向くと、ヴァニタスが屋上に入る扉にもたれていた。


「よぉ、旋風の雷。」


と、サキの方にヴァニタスが歩いて近づいてきた。

それに警戒して、サキが戦闘体制をとった。


「おっと、今日は戦いに来た訳じゃない。お前に情報をタダでやろうと思ってな。」


と、サキに近づかず、ちょっと離れたところで止まった。


「…」


ヴァニタスの様子を伺いながらも戦闘体制をといた。


「そう、それでいい。お前らにとってはかなり大事な情報だと思うぜ。」


と、ヴァニタス。


「…何が目的?」


と、見返りなしで敵であるサキに情報を渡すなんて、信じがたかった。


「目的?そんなもんないよ。強いて言えば、飽きたって事だな。今の状況に。」


と、意味の良くわからない事をサキに言った。


「…どういう意味?」


と、サキ。


「そのうちわかるさ。それで、俺の情報を聞くのか、聞かないのかどっちだ?」


と、ヴァニタス。


「…聞く。本当に見返り無しならね。」


と、サキ。


「お前に見返りは求めない。じゃあ、話すぜ。」


と、ヴァニタス。


「“世界を再生するもの達”の計画を次のステージにする日は明後日だ。場所は、インドネシアのトバ火山だ。スマトラ島付近。」


と、ヴァニタス。


「明後日に、インドネシア、しかも火山!?」


と、驚くサキ。日にちは予想した通り明後日だったが、場所がインドネシアでスマトラ島。全く予想していなかった場所だった。


「この火山は最後、約7万4000年前に噴火した。噴火によって、地球の気温が5℃低下して、当時の人類の大半が死滅した。」


と、ヴァニタス。


「そうか!火山を噴火させてマグマと、大量の岩石と灰を放出させて周囲の島の人々を死なせるのか!」


と、驚きすぎて地がで始めるサキ。


「それだけじゃない。二百キロ四方に有毒ガスが拡散するだろうな。死者は数十万から数百万人に達し、気候や食料生産に深刻な影響を及ぼす。そうなったらお前ら旧世界人は完全に絶滅ってわけだ。」


と、ヴァニタス。


「過去の地球で最大級の噴火があった火山って事?」


と、サキ。


「そういう事だ。そして、楽に旧世界人を大量に消す事ができる。」


と、ヴァニタス。


「でも、そんなことしたらあんた等も危ないんじゃないの?」


と、サキ。


「自分等が危なくなる事はしないさ。マゼランはそういうヤツだ。」


と、ヴァニタス。


「…自分等は危なくなくて、且つ火山を噴火させる。宙にでも浮いてなきゃ確実に巻き込まれる。」


と、サキが呟き考え始めた。


「…お前は答えを知ってるだろ。俺等が火山に巻き込まれずに済む訳を。廃棄したアジトに潜入してきたお前なら。」


と、ヴァニタスが不気味に笑う。


「火山に巻き込まれない…。空…廃棄されたアジト…」


と、サキ。親指と人差し指を擦る。


「かつて、大災厄から人々を救った物を知ってるか?」


と、ヴァニタス。


「方舟!」


と、サキ。


「あぁ、そうさ。かつて、人々を大量に消し、大量に救った兵器。こうも使う人間が違えば正反対の事が起きるんだな。」


と、嘲笑うヴァニタス。


「じゃあ、方舟を使って火山を噴火させ、自分達は空からマグマを回避するってことか?」


と、サキ。


「あぁ、そのようだな。」


と、ヴァニタス。


「…でも、あんた等も毒ガスや岩石を浴びるから、空飛んでも意味ないんじゃないの?」


と、サキ。


「それが防げるんだよ。外側からの干渉を全て断つ事が方舟にはできるんだぜ。だから、岩石も毒ガスも何も意味を為さないのさ。」

と、ヴァニタス。


「方舟は乗っているものを救うんだよ。」


と、笑うヴァニタス。


「…外側から干渉できないんなら方舟に入れない」


と、サキ。


「それが、人は何故か入れるんだ。人を救うために元々造られたらしいからな。」


と、ヴァニタス。


「…しゃべりすぎたんじゃないのか?日にちと場所、目的から兵器の事まで。」


と、サキ。


「ふん、俺には俺の都合があるんだよ。」


と、後ろを向いた。


「…何を考えてる?」


と、サキ。


「明後日にでもわかるさ。」


と、サキの方を振り向かずに、手を降り、黒い霧状の物の中に入っていった。


「…とにかく報告しとこう!」


と、急いで神楽の部屋に向かった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

旧世界 神楽の部屋


「にわかには信じがたいわね」


と、通信機からキャロル。敵の幹部からの情報で、罠かもしれない。


「…そこじゃない可能性もあるわよ」


と、霊夢。


「確かに、可能性はある。そこから一番遠いとこかもしれないし、逆にそこにくるかもしれない。」


と、サキ。


「でも、日にちはトシ…、サキの予想通りだったよ?」


と、神楽。トシキといいかけて、サキと呼び直した。サキが元に戻るまでサキで、と言ったからである。


「日にちは間違いないかもね。」


と、悠里。


「…で、今の報告、あなたは信じるの?」


と、キャロルがサキに聞く。


「…信じます。アイツの目的はわからないけど、組織とアイツの間に壁がある気がする。」


と、サキ。


「壁?」


と、アイギス。


「…重要な立場にいながらも、組織に余り協力的じゃなくて、何処か自分の利益だけを得ようとしてるきがする。」


と、サキ。これまで、ヴァニタスが旧世界に来たのは、ほとんど自分の意思である。命令を受けて行く時もあるが、勝手に行っている。


「…つまり、組織を裏切る可能性があると言うの?自分のために」


と、キャロル。


「はい。何となくですが。」


と、うなずくサキ。


「じゃあ、私はあなたを信じて、明後日までに、集まれる旧世界の魔法使いをスマトラ島に集めておくわ。」


と、キャロル。


「お願いします。」


と、サキが軽く頭を下げた。


「あなた達は、明日そこに集まって貰うわ。あなた達は、彼らと戦って生きてる少ない魔法使いなの。貴重な戦力よ」


と、キャロルが微笑む。

今まで組織によって殺された魔法使いは数多く、殺されなかった者は、組織の仲間になるか、労力となっている。

そのため、組織の情報を知ってるものは数が少なく、戦って生きてる者は大事な戦力なのである。


「そうですね。微力ながら、力を尽くします。」


と、サキ。


「あらら、あなたがそれを言うと皮肉にしか聞こえないわよ。100人斬りと、旋風の雷さん?」


と、キャロルがいたずらっぽく笑う。100人斬りといっても、殺さずに、戦闘力だけ削いだだけだが、そのうわさは魔法世界ではかなり広まっていた。


「そんなつもりじゃなかったんだけど…」


と、サキが苦笑いした。


「わかってます。ごめんなさい。つい、からかってしまいました。」


と、キャロルが笑う。


「キャロルさん、サキをいじめるのは許さぬぞ!」


と、サキの後ろで大人しくしていたカガリが立ち上がり、拳を震わせている。


「カガリさんはホントにサキさんが好きなのね。」


と、微笑むキャロル。


「なっ…!何を言っておる!!」


と、カガリが赤くなる。


「うふふ、じゃあ私はこれで。急いで連絡しないと間に合わないから。」


と、サキ達に胸元まで手を上げ、小さく振った。


「はぃ、お願いします。」


と、トシキ達も軽く手を振った。

それをみて、キャロルは通信をきった。


「…明後日の準備しよう」


と、サキが皆に言った。

皆が頷き、それぞれ準備をしに行った。

こんにちわ。

今回戦いはありませんでした。

話で終わる回もあった方がいいのかな、と思ってやってみましたが、バトルないとモチベあがりませんでした。

でも、これから話だけの回をちょくちょく入れようかなと思ってます。


では、読んで頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

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