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彼の進む道  作者: けやき
17/63

ローブの中身

旧世界 神楽の部屋


「…」


神楽がアーティファクトの鍵を見つめていた。四本のうち、一本はウンディーネの物で、後の物は何を召喚できるかわかっていない。


「契約でもするの?」


と、霊紗。片手にお茶の入ったコップを持っていた。


「うん。気づかなかったんだけど、鍵が一本契約できるようになってたの。」


神楽が錆びていない二本の内の一本を霊紗に見せた。一本はウンディーネの物である。


「…ボルト?」


鍵に書かれた文字を霊紗が読んだ。


「うん、雷の精霊だね。」


霊紗から鍵を受け取った。


「もう契約しに行くの?」


と、霊紗。


「…どうしよっか。アイギス」


と、アイギスに聞いてみた。


「ん〜…契約に行くなら行くよ。暇だしね。」


と、笑顔でアイギスが答えた。


「じゃあ、行こうか。」


と、神楽。

霊紗とアイギスも頷いた。


「…」


と、霊紗は頭の隅に何かが引っ掛かる様な気がして、窓から青く広がる空を見た。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・旧世界 町の外れ


3人は町の外れにあるあまり広くはない空き地に来ていた。

今までの空き地の周りにはまだ野次馬が来ていた。


「やっぱここはちょっと遠いね。」


と、神楽が小さくため息をついた。


「そうね。どっかいい場所ないかしら。」


と、霊紗。


「ねぇ、それより早く契約してみてよ!初めてだから見てみたいんだけど!!」


と、アイギスがウキウキしている。


「じゃあ、さっさと契約しちゃおうか。」


と、神楽がボルトの鍵を取り出した。


「雷の精霊 我の元に 姿を現せ」


そう言って、鍵を握りしめた。

その瞬間、鍵が光り、神楽達の目の前に光る球状の物が現れた。


「おぉー…」


と、アイギス。

球状の物はクラゲの様な形になった。


「コレがボルト?」


と、霊紗。


「うん、そうみたい。」


と、神楽が苦笑い。


「我の契約者は誰だ?」


と、クラゲから声が聞こえてきた。


「私よ。」


と、神楽が一歩前に出た。


「お前は我に何用だ。」


と、ボルト。


「私と契約してほしいの。」


と、神楽。


「ならばかかってくるがいい。我に力を示せ。」


と、ボルト。


「やっぱり戦うのか…。」


神楽が杖を握りしめた。


「3人でもいい。来い」


そう言ってボルトは自分の体に電気を流し始めた。


「…3人でいいって言ってるし、やっちゃおうよ。」


と、アイギス。

神楽と霊紗も頷いた。


「やろう!」


と、神楽。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

旧世界 サキと悠里の部屋


「最近どう?」


と、悠里。


「どうって何が?」


と、サキ。


「体の調子よ。」


「うぅーん、まぁ問題ないかな。」


サキが自分の手を見ながら言った。


「そう、なら良かった。」


悠里が微笑んだ。


「…!悠里さん」


町の外れに魔力を感じた。


「大丈夫よ。彼女達が精霊と契約しようとしてるだけだから。」


悠里が微笑んだままいった。


「…ちょっと行ってこようかな。」


サキが立ち上がった。


「あら、行くの?」


「ちょっと気になる子がね」


サキが苦笑いした。


「うふふ、そう。なら送ってあげるわ。」


悠里も立ち上がった。


「ありがとう。」


サキが悠里に微笑んだ。


「…やっぱあなたかわいいわ〜、抱き締めちゃいたい!」


そういいながら、すでにサキを抱き締めていた。


「もう、抱き締めてるよ…」


悠里の豊かな胸に顔を埋められ、ジタバタ抵抗するが悠里はものともしてない。


「…惜しいわね、やっぱり。」


悠里がゆっくりサキを放した。


「…」


サキが苦笑いした。


「あ、そう言えば…まぁいっか、帰って来てからにするわ」


と、悠里がイタズラっぽく笑った。


「…何?気になるじゃん!」


と、サキ。


「帰ってからね。」


と、悠里。


「…わかったよ。」


サキがシュンとしていった。


「じゃ、行くわよ。」


そう言って、悠里がサキの隣に移動した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

旧世界 町の外れ


「くっ!」


霊紗が降り注ぐ雷をかわしながら、反撃の隙を探っていた。


「ボルト強い…!」


神楽も雷を避けながら苦い顔をした。


「おりゃー!」


アイギスがボルトに向かって飛び込み、殴り付けた。

その一撃にボルトが怯んだ。


「まだまだぁ!」


と、アイギスは追撃した。蹴りと殴打の連続に、ボルトは耐えきれず距離をとった。


「…どうやら打たれ弱いみたいね。」


霊紗が、アイギスに攻撃されて怯み続けていたボルトを見て判断した。

ボルトは遠距離で雷を落としたり、雷系の呪文を使う。接近技が、近くに取り付かれた時に使う、振り払うのが目的の雷しかない。遠距離主体のため、自己の防御、能力は精霊の中でも高いとは言えない。唯一高いのは魔力である。


「火力重視の遠距離タイプ、か。」


と、神楽。


「アイギスの攻撃に怯んだ隙を狙って、私達は魔法を使っていくわよ。」


と、霊紗が球状の光を展開した。


(…あれ?魔符使わない?)


神楽が光を見て思った。


「アイギス、あんたに任せたわ。援護は私達でする。」


と、霊紗。


「ん、わかった!パパッとやっちゃうよ!!」


と、アイギスが腕をブンブン振り回した。


「さ、今の内に呪文を唱えときなさいよ。」


と、霊紗。


「うん。」


と、神楽。


アイギスが再びボルトに向かっていった。

それを見て、ボルトが自分の周りに雷を落とし、近づけないようにした。


「うー!近づけない…」


雷にアイギスが唸った。

そこに、神楽の唱えたファイアーボールがボルト目掛けて飛んでいった。

小さな爆発を起こして、ボルトの雷をとめた。


「チャンス!」


アイギスが一気にボルトへと飛び込んだ。


「うりゃあぁー!」


アイギスが横蹴りをして、ボルトを吹き飛ばした。

そこに追い撃ちをかけるため、アイギスが地面を蹴り距離を詰めた。


「ぬぅ…」


ボルトは低く唸って、ゆっくりと宙に浮かんだ。

が、上方に気配を感じた。


アイギスがボルトの上から踵落としを繰り出したが、クラゲの触手みたいな手で防がれた。

硬化する様で、そこら辺の岩よりもはるかに硬い。


「よっ!」


アイギスは踵落としをした足を引き、すぐ体を回転させて回し蹴りを繰り出した。


「ぐぐぅ…」


低く唸って、ボルトがまた吹き飛んだ。


「そこ!」


と、神楽。

吹き飛んでいるボルト目掛け、下から水柱が吹き上げ、ボルトを空に打ち上げた。


「ナイスね。」


と、霊紗。

いつの間にか、ボルトの周りは霊紗の魔法の球で囲まれていた。


「私の球を避けきれるかしら?」


クスッと笑って、球を一斉にボルトに向かって飛ばした。

よく見ると、速い球と遅い球、大きさが違う球がある。

が、ボルトからはわからない。遠近法で、大きい球がボルトの近くに集中し、小さい球が離れた所に集中している。ボルトから見ると、球は全て同じ大きさで自分に向かってきている。

霊紗の技により、全弾ボルトは直撃した。避けれると思っていた球ではない球が次々と当たり、打たれ弱いボルトは全弾喰らうハメになった。


「全弾命中。」


フゥとため息をついた。球を調整するのに結構力を使うのである。


ボルトが地面に落下して、柔らかそうな傘の部分でワンバウンドして、地面に倒れた。


「…」


それを白ローブ、旋風の雷が木の太い枝の上から見ていた。


「やった?」


神楽が霊紗に聞いた。


「手応えはあったわ。」


と、霊紗が小さく頷いた。


「終わりー?」


アイギスがその場で、片足を交互にケンケンする要領で飛んでいた。


「ふむ…、契約した主無しで我を認めさせるとは、お前たちも成長している様だな。」


ボルトがゆっくりと宙に浮かんだ。


「…じゃあ、契約してくれるの?」


と、神楽。


「よかろう、ウンディーネも使わず、仲間の連携でここまでやれれば充分だ。新たな我が主として、認めよう。」


そう言って、ボルトが丸い光になり、鍵へと光が入っていった。


「…それで契約終了?」


召喚の事をよく知らない霊紗が聞いた。


「うん、終了。」


と、神楽。


「案外ショボいね〜」


もっと派手だと思っていたアイギスがあっさり終わったのに不満を抱いた。


「どんなのを想像してたんだか…」


神楽が呆れた。


「くっくっ!ボルトと契約したか。トシキなしに良く契約できたな。」


いつ現れたのか、ヴァニタスが空き地の壁にもたれていた。


「ヴァニタス!?」


霊紗達が驚いた。


「…!」


枝の上にいた白ローブがヴァニタスを見て、枝を揺らした。


「…。やっぱり来てやがったか。」


と、ヴァニタスが小さく呟いた。神楽達には良く聞こえなかった。


「お前ら、旋風の雷とはどういう関係だ?」


と、ヴァニタス。


「知ってどうするの?」


と、霊紗。


「…特に意味はない。」


と、ヴァニタスは腕を広げた。


「…まぁいいわ。」


と、肩をすくめた霊紗。


「関係も何もないわ。唯一あるとすればあんた達と敵対してるってことだけね。」


と、ニヤッと霊紗が笑った。


「…そうかい。ま、本人に聞くのが一番早いがな。」


そう言って、ヴァニタスが霊紗達の方に手を向けた。


「消えな。」


そう言って、手に黒い光が集まり始めた。


「くっ!」


霊紗達が身構えた。

そこへ、風を切って白ローブがヴァニタスにエレメンタルブレードで斬りかかった。


「ふん、やはりお前か。旋風の雷。」


ヴァニタスが黒い剣でエレメンタルブレードを受け止めた。


「…」


素早くエレメンタルブレードを引いて、ヴァニタスの腹に蹴りを入れた。


「ぐっ」


腹を抑えて怯んだ。

そこに白ローブが、宙返りからかかと落としをした。


「っ!」


ヴァニタスの頭に直撃し地面に打ち付けられた。

地面に片足で着地し、距離を開けるために地面を蹴った。

「…っ、てめぇ…!」


ヴァニタスが鼻血の出た顔を抑えながら立ち上がった。


「お前は邪魔だな。誰だか知らないが消してやる。」


黒い剣を旋風の雷に向けた。

旋風の雷が膝を軽く曲げ、足に力を入れた。


「旋風と言われるだけあるな。」


旋風の雷の周りに風が発生した。


「相変わらず無口な野郎だ」


ヴァニタスが嘲笑うよう言った。

それを無視して、旋風の雷がヴァニタスへと突っ込んだ。


「おらぁ!」


黒い剣で旋風の雷を迎撃するように振り抜いた。

それを片方のエレメンタルブレードで防ぎ、もう片方でヴァニタスに斬りつけた。


「うぐぅ!」


右肩から斜めに斬られたヴァニタスが呻いた。

斬りつけた方のエレメンタルブレードを逆手に持ち変え、ヴァニタスの腹に手を添えた。


「貴様ぁ!」


零距離で風と雷の融合魔法を喰らったヴァニタスが吹き飛んだ。


「…すごっ!」


ヴァニタスを一方的に攻め続ける旋風の雷を見て、神楽が驚きの声をあげた。


「あの魔法…」


霊紗が呟いた。

何処かで見覚えがある気がした。


「てめぇ、やってくれんじゃねぇか!」


ヴァニタスが崩れた壁の中から這い上がってきた。


「そのローブ、いい加減取れよ!」


ヴァニタスが旋風の雷に手を向けた。その瞬間強い風が吹き荒れた。


「っ!」


旋風の雷が風に一瞬怯んだ。

そこをついて、ヴァニタスが旋風の雷へと詰め寄った。


「今度はオレがやってやるよ。」


ヴァニタスが旋風の雷に触れた。その瞬間、旋風の雷を包むように黒い竜巻が周りを囲んだ。


「…!」


竜巻がだんだん旋風の雷に近づいてきた。風を切る音が色んな方向から聞こえてくる。


「障壁…!」


旋風の雷が障壁を張ったが、障壁のあちこちで鎌鼬が当たる。


「これでどうだ?」


ニッと笑って、旋風の雷に手を向けた。

その瞬間、竜巻に黒い塊が無数に現れ、旋風の雷に襲いかかった。


「…」


黒い塊が何なのかわからず、障壁を強めた。

が、黒い塊が障壁に触れた瞬間に、黒い塊は膨張し障壁を蝕み始めた。


「…っ!」


「どうだ、障壁を蝕まれる気分は?闇の魔法はこうやって使うこともできるんだぜ。」


ヴァニタスがいやらしく笑った。

障壁が黒い塊によって少しずつ穴が開いていくのを感じた。

次々と障壁に穴が開いていき、鎌鼬が障壁をえぐり始めた。


「…」


黒い塊によって障壁を蝕まれ、鎌鼬が障壁を破壊し、旋風の雷が竜巻に巻き込まれた。

鎌鼬が、旋風の雷に次々と牙を向いた。白いローブを次々と切り裂いていく。

その姿は、竜巻によってヴァニタス達には見えない。


竜巻がおさまってきだした。


「…ボスの言ってたことは間違ってなかったんだな。」


と、ヴァニタス。

竜巻がおさまって、そこには白いローブをズタズタに裂かれ、ローブの下に着ていた服も所々裂かれて、顔だけでなく全身が見えていた。

後頭部の方で髪をしばる毛先の方が赤い髪、それ以外は黒。

白いブラウスに黒いミニスカート、ニーソックスにスニーカーを履いている。


「…あれ?何か見たことある気がする。」


と、神楽が自分達とヴァニタスの間に背を向けて立つ、ボロボロの少女を見た。


「見たことあるに決まってるわ。だってサキだもの。」


と、霊紗。


「サキ?…って隣に引っ越してきた?」


と、アイギス。


「そ。そのサキよ。」


と、霊紗。


「ええぇぇ!?」


と、神楽が大声をあげた。

その声に驚いた少女が神楽達の方を見た。


「あぁ!サキだ!サキだよ!!」


と、アイギスがサキに手を振った。


「…あはは」


苦笑いしてサキがアイギスに手を振り替えした。


「お前が本当に旋風の雷か?」


と、ヴァニタス。


「…そう。私が旋風の雷って呼ばれてる。」


と、ヴァニタスの方に向き直ってサキが言った。


「…その目気に入らねぇな」


と、ヴァニタスがサキの自分を見る目に苛立ち始めた。似たような目をしたヤツを見た事があった。


「お前誰だ…?」


と、ヴァニタス。


「………サキ。アンタを倒す者の名前。」


そう言って、エレメンタルブレードを両手に構えた。


「…まぁいい、お前の正体などいずれわかる。」


そう言って、黒い剣を構えた。


「…あんた練装士でしょ?」


と、何も無いところから黒い剣を造り出したヴァニタスに言った。


「へぇ、練装士を知ってるのか。そうだ、オレは練装士だ。」


と、ヴァニタスが認めた。


「練装士って確か…」


と、神楽。


「…トシキがそうじゃないかって、言ってたヤツでしょ。」


と、霊紗。トシキにも練装士の可能性が有るとされていた。


「そっか、なんで気づかなかったんだろう…。既に練装士がどういうモノか知ってたのに。」


と、神楽。


「…漠然としすぎてたから何かパッとしなかったんじゃない?私も未だによくわかんないし。」


と、苦笑いしながら霊紗が言った。


「…そうかも」


と、神楽。


「練装士だからなんだって言うんだ?お前らに何も関係ないだろ。」


と、ヴァニタス。


「…まぁね。」


と、サキ。


「もう話は良いだろう。死んどくか?」


と、ヴァニタスが剣をサキに向けた。


「…そう、まぁいわ。」


と、サキ。


「行くよ…!」


と、サキが言ってヴァニタスに向かっていった。


ニッと笑って、向かってきたサキに黒い剣を横に振り抜いた。

そのタイミングは、バッチリでサキが振ったエレメンタルブレードを受けた。


「…ふっ」


エレメンタルブレードを引き、回転して思いきり振り抜いた。それをヴァニタスは、体を反らしてかわした。


「はっ!」


サキはエレメンタルブレードではなく、足で蹴りにいった。


「ふん。」


ヴァニタスがサキの足を掴んだ。

ニッと笑いサキを振り回して投げ飛ばした。


「っ!」


空中で受け身を取り体勢を立て直し着地した。


「身軽なヤツだ。」



と、ヴァニタス。その顔には笑みが浮かんでいる。


それにイラつきヴァニタスへと再び突撃した。


「はあぁ!」


サキが横に払うように足で蹴った。


「くっ!」


ヴァニタスが腕で蹴りを防いだが、素早くサキは足を引きヴァニタスの顔めがけて蹴りをした。


「ちぃ!」


腕を交差して顔に狙いを定めた足を受けた。


「まだ!」


ヴァニタスの腕を蹴って地面に着地し、ヴァニタスの腹めがけて殴りつけた。


「がはっ!」



拳に風の魔法を込めており、ヴァニタスは吹き飛んだ。

地面に背中を打ち付け低く唸った。


「…強い」


霊紗が今までのサキの戦闘を見て言った。

見た感じボロボロだが、その目には輝きがある。


「…思ったよりもだいぶやるみたいだな」


ゆっくり立ち上がってヴァニタスが言った。


「まだ全力じゃない。あんたが全力じゃないのと同じでね。」


と、サキ。


「…」


と、ヴァニタス。微妙に冷や汗が流れる。


「旋風の雷って言われる理由、見せてあげるよ。」


そう言って、サキが魔力を集中し始めた。


「わ、風が!」


と、神楽。

急に吹いてきた強い風がサキの周りに集まり始めた。

その風が小さな竜巻となりサキを包んだ。

その竜巻に、小さな雷がまばらに混ざり始めた。


「…旋風の雷」


神楽が、竜巻と小さな雷を纏うサキの姿を見て言った。


「それがそうか。ならお前にオレの闇を見せてやる。」


そう言って、ヴァニタスが闇の魔力を集中した。

ヴァニタスの周りに暗く重い、闇の魔力が現れ、黒い剣が刺々しく禍々しい姿に変わった。


「オレの力を見せてやる!」


そう言って、黒い剣を振り回した。それに合わせて黒い刃がサキに向かって飛んでいった。


「…避けたらあの子達に当たる。」


後ろで見ている神楽達の方をチラッと見てから、前を向き手をつきだした。

風の刃が黒い刃に向かっていき、次々と撃ち落としていった。


「…やるな」


と、ヴァニタス。

再び剣を振りかぶったが、目の前にサキが消えていた。


「ここ」


後ろに現れたサキに驚いた。

そこにサキは、しっかり足を踏み込み体重を乗せた拳をヴァニタスにぶつけた。


「ぐぅ…!」


風と雷が付加されており、吹き飛び、体が痺れる。

吹き飛んだ先にサキが回り込み、膝でヴァニタスを打ち上げた。


「…っ!」


ヴァニタスが打ち上げられる軌道を読み、手を有る角度にあげた。

その瞬間、魔法の球が64個現れヴァニタスに向かって飛んでいった。


「がはっ」


魔法の球が次々とヴァニタスに直撃していく。数が多く、痺れた状態のヴァニタスでは対処できない。

何も抵抗できず地面に激突した。


「…ぐっ…、なるほど。…お前のそれは一種のドーピングみたいなもんか。」


よろっと立ち上がり、口から流れる血を拭って、サキの周りを包む雷を纏う風を指差した。


「…。まぁそうかな。風によって速さを上げ、雷によってパワー不足を補う。それがこのスタイル。」


と、サキが説明した。


「…今回は退いてやる。アイツはだめだったが、新しいターゲット。逃がしゃしねーよ。」


と、ヴァニタスが黒い楕円の霧を顕し中に入っていった。


「…待てっ!」


サキがエレメンタルブレードを構えて黒い霧に向かった。


が、間に合わず黒い霧は消え、ヴァニタスも居なくなっていた。


「…ねじれと違う通路なのか?」


と、サキ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

魔法世界 ???


ヴァニタスは満身創痍の状態で、廊下の壁に手を着きながら歩いていた。


「お?お前がそんな状態なんて珍しいじゃねぇか、あぁん?」


と、不気味に笑いながらヴァニタスの前に1人の男が現れた。


「…ちょうどいい、お前の力貰うぞ。ガイラ」


そう言って、ガイラと呼ばれた男の腹に手を添えた。

その瞬間、ガイラは全身から黒い霧を発し始めた。


「な、何をした!ヴァニタス!!俺の体に何をした!!」


そう言うガイラの顔を、全身を黒い霧が包んだ。


「お前の魔力を吸収するんだよ。組織の幹部の1人なら魔力も大したもんだろ。」


と、笑うヴァニタス。

段々と黒い霧が球状になり、ヴァニタスの手に収まった。


「じゃ、オレの魔力となれ。」


そう言って、ヴァニタスが黒い霧を体に取り込んだ。


「…思ったよりショボい魔力だ。まぁ、無いよりマシだ。」


と、ヴァニタスの傷はある程度癒されていた。ガイラを取り込んだ分魔力も回復していた。


「あの魔力、あの戦い方…」


そう言って、薄ら笑いを浮かべた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

旧世界 神楽の部屋


神楽の部屋には神楽達3人と、サキと悠里、合わせて5人いた。

悠里はサキが隣の部屋から引っ張ってきた。


「あんたやっぱり魔法使いだったのね。」


と、霊紗。


「…やっぱり?」


と、サキ。


「そ。あんたて初めて会ったときからそうじゃないかと思っていたの。」


と、初めて会った神楽とぶつかったサキの事を思い出した。


「あの時?」


と、サキ。


「そ、2人から微妙に魔力を感じたわ。完全に魔力を消してなかったのがいたかったわね。」


と、霊紗。


「あら、あなた中々の切れ者ね。」


と、悠里。


「で、あんた達は私たちの味方?敵?どっちなの。」


と、霊紗。


「…世界を再生する者達の敵、だから味方って事になるわね。」


と、悠里。


「…そう、ならいいわ。」


と、チラッとサキを見てから、お茶を飲み始めた霊紗。


「はぁー…良かった。サキちゃんまで敵だったら私達ヤバイなぁって思ってたの!でも味方でよかった!」


と、笑顔の神楽。


「あ、サキに言い忘れてたわ。カガリが来るわ。」


と、悠里。


「は?カガリ?……何で今ごろ言うの!?いつ来るって!?」


と、立ち上がるサキ。顔に冷や汗をかいている。


「もうくるわ。」


と、落ち着いたままの悠里。


「わわっ!じゃあ、もう部屋戻るね!!」


そう言って、あたふたしながらも神楽達に手を振ってから出ていった。


「…カガリ?」


と、話しについてけず、神楽がキョトンとしている。


「…サキの恩人」


と、悠里がクスリと笑った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

サキの部屋の前


サキは、カガリが来ると聞いて慌てて部屋の扉の前に来た。


「ちょっと待って」


と、声をかけられた。


「へ?」


と、声のした方に振り返った。

すると、目の前に霊紗が立っていた。


「…えっと、どうかした?」


そう言いながら、扉の鍵穴に鍵を差し込んだ。


「率直に言うわ。あんた……でしょ?」


と、サキに耳打ちした。

その言葉にサキは一瞬止まった。

「…」


「べつに答えなくていいわ。答えは神楽たちと聞くわ。」


と、サキが喋ろうとしたのを遮った。


「…ただ、ヒントはもらうわ。」


そう言って、いきなりサキにキスをした。


「んんっ!?」


と、サキはその行動に驚いた。

すると、サキと神楽の足元に魔方陣が現れた。契約の魔方陣である。


「…ん、契約の魔方陣?」


と、サキ。


「そ、契約。」


そう言って、サキの頭から爪先までを見渡し、全身をポンポンと触りだした。


「…と、あった!」


「何処に手を突っ込んでんの…!」


と、サキの胸に手を突っ込む霊紗に言った。


「これよ、コレ」


そう言って、掌に乗っかっている指輪をサキに見せた。


「アーティファクト?」


「そ、アーティファクト。」


と、指輪をまじまじと見ながら霊紗が言った。指輪の裏に刻まれた文字を見ているようにも見える。


「…ヒントって言うか、答えじゃん。」


と、サキが苦笑い。


「貴様!誰じゃー!」


と、2人の後ろから怒鳴り声が聞こえた。


「…この声は」


と、サキがゆっくりと声のした方を見た。

そこには長くふわっとした金髪をなびかせた二十歳ぐらいの女の子が腕を組んで立っていた。その顔は綺麗なのであるが、怒気を帯びている。


「サキから離れよ!」


と、サキと霊紗の間に割って入ってきた。その行動に霊紗がムッとした。


「…あんた誰?」


と、サキがぶっきらぼうに聞いた。


「私はカガリじゃ!サキの妻であるぞ!」


と、カガリと名乗った娘はサキの腕に自分の腕を通した。


「…妻?」


と、霊紗の表情が凍った。


「うむ、妻じゃ。私はサキの主人じゃからな。」


と、偉そうに腕を組んだ。


「主人?どういうこと?」


と、サキに尋ねた。


「えぇと、カガリと契約して、カガリが主って事になってる。」


と、頬をかきながらサキが言った。


「カガリが主?サキじゃなくて?」


と、霊紗がキョトンとしている。普通は契約した方の魔力が高い方が主となる。霊紗は、サキのが魔力が高いと思っていた。


「カガリはその…」


と、サキが口ごもった。


「…気にするでない。私はエルフじゃからな。魔力はサキよりも高いぞ。」


ふんぞり返るカガリの大きな胸が揺れる。


「…エルフ?まだ生きてたんだ!?」


と、霊紗が驚いた。


「うむ、今はかなり少ないがの。」


と、カガリ。


「…ふーん、まぁいいわ。私の用事は済んだし、邪魔したわ。」


そう言って神楽の部屋に帰っていった。


「…あれは誰じゃ?」


と、サキを睨み付ける。


「白谷霊紗。仲間だよ。」


それだけ答えた。


「仲間…それだけで契約なんてするのか?」


と、少し怒りながら言った。


「…あはは」


と、苦笑いした。


「…まぁよいわ。これからこっちに住むからの。」


と、笑った。


「あら、来たの。いらっしゃい。」


と、悠里がクスッと笑いながら言った。

その表情を見てサキがガクッと肩を落とした。

更新が遅れました。

今回は新しいキャラ、カガリが出てきました。いわゆるツンデレキャラです。戦闘にも参加していくキャラです。

でも新キャラはこれでネタギレなんで活動報告の方にもコメント頂けると作者は喜びます。

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