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言質、取りました。

さぁ、今日も更新します。


 俺の転移魔法によって一瞬にして謁見の間へと飛んだあと、陛下はすぐに兵を呼び帝国の冒険者を牢へと連行。洗いざらい吐かせろと命じたあとは、ドラグニアの神官と聖女をもてなす用意をしだした。

 俺はというと、野外活動の途中なのと、両親まで連れてきてしまったので自宅へともうひとっとびのあと、王城へととんぼ返りした。

 ちなみに、母はしっかりと契約魔法によって俺が転移を使える事を口外しないようにしていた。というか、契約魔法使えんのかと突っ込んだが、こういった時の為に使うのが契約魔法だということだった。

 クソ女神はきっと俺に違う契約魔法を教えたに違いない。有難い事だが、腑に落ちないのは確かだ。


「さて、ドラグニアの聖女よ、契約魔法まで使って悪いとは思うが容赦してくれ」

「はい。それに関しましては、ここにいる神官も納得の上です」

「そうか。それで、ウィルフィード⋯⋯」

「はい」

「貴様何か考えていただろう?」


 考えていたのは確かだが、それは聖女の存在についてで、特に何かを考えていたり、企んでいたわけではない。


「ああ、特に考えてたわけではないんです。ただ、父さんと母さんが無茶しなきゃいいなぁって」

「⋯⋯ああ」


 思い当たる節があるのか陛下は額に手を当てる。陛下も知っての通り、あれらは等しく脳筋なのだ。実の娘がいじめにあっているときに『倒せばいい』などと宣うアホ共だ。今回もリィリアの事を考えると野外活動としての意味を失いそうな気もする。早く戻って制御しなければならないが、問題は目の前のドラグニア竜王国の聖女と神官達。彼等をどうやって国まで送ったものかというのが問題だ。


「ウィルフィード、ドラグニアへは行ったことは⋯⋯ないか」

「残念ながら。場所も知らないですね」

「ドラグニアは竜峰ドラゴンテイルを挟んで北側にある。貴様も知っての通り、我が国は竜峰ドラゴンテイルという天然要塞に囲まれている海側の国だ。貿易ルートは基本は海。船による輸入に頼っている。魔の森が存在する以上は仕方がないんだがな」


 そうだ、丁度いい。ここで話を出しておけば、竜王国にも耳に入る筈だ。そう思って俺は切り出したのだが、それが間違いだったらしい。


「⋯⋯では、ウィルフィード、将来的には竜峰ドラゴンテイル及び魔の森はお前が管理するという事だな?」

「え?」

「竜峰ドラゴンテイルは一応、我が国の領土内となっている。そして、魔の森は貴様の両親が納めるエストルフォも近い。発展させろとは言わぬが⋯⋯広大な土地を遊ばせているのも事実だ」

「ヴァルド陛下、よろしいでしょうか?」

「む?」

「竜峰ドラゴンテイル。確かにグランディエルゴ王国の領土内にはありますが、そこは我々の信奉するドラゴンが住まう山でもあります。我が国としてもその領土を侵すわけではありませんが、立ち入りの許可は今後もいただきたいと考えております」


 そうなると話がおかしくなる。ドラゴン信仰している以上は、竜峰ドラゴンテイルは竜王国にとっては神山だ。そこが他国の領土となる事を認めるのは何故だ?

 そんな疑問に答えるかのように聖女は言う。


「竜峰ドラゴンテイルは魔の森に隣接し、プラチナランクの冒険者でさえ危険が伴います。そして、我が皇帝はブラックランク冒険者ではありますが、この国ほど強者がおりません。であれば、管理は王国へと任せて、その出入りだけは定期的に許可制にしているのが現状です」

「そうだな。それ自体は許可は出すが、今回のように何も知らせずに立ち入るというのは今後は遠慮してもらいたい」

「ええ。次回からは何かしらの連絡手段を以ってからに致します。しかし『神託』の関係上間に合わない場合もあります」


 確かに今回は帝国側の目論見でその神託とやらに従って急いだものだとは思うが、確かにこの世界の連絡手段というのはあまり発展していない。魔法が発達しているのに、未だに伝書鳩だなんだと使っているのがこの世界。不便極まりない。


「⋯⋯あれ、待てよ?」


 念話という魔法がある。これは俺とレティアが使っている遠隔の会話手段ではあるが、他の人が使っているのを見た事はない。


『念話というのは、その性質上遠くへと飛ばすことができないものです。女神とのやり取りは契約魔法にて契約を交わした二人だからこそ、魂の繋がりによって距離は関係なくできるという副産物に過ぎません。それは人、ましてや他人同士で行う場合は、純度の高い魔石が必要な上に、その念話の魔法を正確に、確実に、そして他者に解析されない形で刻まなければなりません。その上で言います。ウィルフィード、貴方ならそれは可能でしょう。彫像販売で得た経験、そして何より、この世界で使われていない、未知の言語を知っている。そうですね、一部はこの世界の言語、一部は貴方の世界の言語で構成すると良いでしょう。魔法というのは想像力も大事ですが、そういった形式ばったコトも重要です』


 分霊の説明に納得がいった俺は、収納魔法からレティアがせっせと作った純度の高い魔石を二つ取り出す。大きさは大人の親指の爪程度の魔石ではあるが、純度のお陰で市場価格は不明。しかし、今はそんなことを言っている場合ではないのだ。これは、ある種の賭けでもある。それは、彼女が俺と同じ世界の人間なのかという事だ。


「陛下、申し訳ないんですが、こう、ペンダントとかロケット的な何かって用意できないですか?」

「お前が何をしようとしているのかは今は聞かぬ。完成したら教えろ。それが条件だ」

「それは勿論。それで、用意は⋯⋯」

「少し待て」


 そう言うと陛下は外で待機していた兵士に何かを伝え、数分後には同じデザインの宝石が付いたネックレスが二つ用意されていた。


「えと、これは?」

「ああ、先日ウチの職人が作ったものだ。試作段階でな。婚姻する貴族に王家からの贈り物として作らせたものだ。職人曰く、シンプル過ぎて貴族には受けないだろうと言ってな。腐るものではないが、職人が魂を込めたものだ。貴様ならきっと役立てるだろう?」


 職人が作った一品もの。その貴重さと、職人の苦労に報いたいという陛下の心配りは理解した。そして、これはワンオフ。世界でこのペアしか存在しないもの。それは、何かがあった際に、聖女以外の人間が持っていれば、聖女に何かあった、奪ったなどの証左足りえる。


「陛下、本当にこの一品だけで色々対策してくれますね」

「ふん。貴様とは場数が違うからな。それで、おれ個人としては、それくらいしか用意できないが?」

「十分ですよ。こんな素晴らしい銀細工見た事ありません。シンプルで貴族に受けないだなんて⋯⋯。その貴族はきっと感性がゴミ以下ですよ」

「はっはっは! 言うじゃないか、ウィルフィード! おれも同意見だ。華美な装飾など必要ない。これは、婚姻しても慎ましく、その輝きを失わぬようにと職人が願ったものだ。存分に使え」

「それじゃ、お言葉に甘えて!」


 そこから先はもう全力だ。小さな魔石に、この世界の言語と日本語――ひらがな、カタカナ、漢字――と英語を絡めた魔法陣を魔力で刻むが、とても精緻な魔力操作と相当な魔力を消費することから、俺がやろうとしていることはきっと、世界で二人しかできない芸当だろうというのも理解した。

 額から流れる汗を無視して、一心不乱に魔法陣を刻む作業は体感だけでも数時間は要したのかもしれない。


「できた⋯⋯」

「⋯⋯見事、という他ないな」

「時間、かかりましたけどね」

「何を馬鹿げたことを。通常の魔法使いであればこんなもの一生かかっても無理だろう」

「はい⋯⋯。とても綺麗で、素晴らしい魔法陣の構築でした」

「お褒めに預かり光栄です。さて、これを聖女様に一つ。もう一つは陛下に渡した方がいいですよね?」


 一つを聖女に、一つを陛下へと差し出すと彼はため息を共に首を振った。


「それは貴様が持て。そして竜王国との橋渡しは今後貴様がやれ。今回の事も含めてだがな、ウィルフィード、貴様は爵位を」

「いりません。ぶっちゃけ、山も魔の森も管理するって言っても、どうしようもないですよ」

「何もしなくてもかまわん。むしろ貴様のやりたいようにやれ。切り開いても構わんし、そのままでもいい。あそこであればセリアとの鍛錬にも十分だろう。というか、王都でやるな。修繕費がいくらあっても足らぬ」

「あー、はい。じゃあ、対帝国の要所として色々しますが、竜峰ドラゴンテイル自体も俺の領地でいいんですよね?」

「⋯⋯構わん。だが、竜王国の関係を拗らせるなよ?」

「むしろ歓待できるように社でも建ててやりますよ」


 俺のそんな発言を聞いた聖女は目を輝かせて言うのだった。


「その話、絶対ですよ? 言質、取りました」

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