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北京動乱編- 空飛ぶ鯨

 更新遅れて申し訳ない。


 大沽

「空飛ぶ鯨が来たぞ!!」

 大沽は混乱の中にある。大沽に入港した防護巡洋艦松島は入港した直後、「鯨」側から曳航索が切断された。「鯨」に搭載されたエンジンが動き始める。その先にはプロペラ。それが回り始める。

 松島は入港しても停船すらせずに日本への航路に向かう。ほぼ同時に2隻の民間船他航海中に合流した防護巡洋艦「須磨、千歳、千代田」が入港。荷役作業に入る。

「曳けぇ」

 大沽郊外の荒野では多くの人間が「空の鯨」を引く。彼らは鯨から垂らされた縄に錘を括り付けてようやく鯨は荒野の上で止まる。

 そこでようやく縄梯子が降ろされる。縄梯子に何度も安全ベルトを掛けながら一人の若者が下りてくる。

「大日本帝国陸軍参謀本部第1部作戦課所属田中義三陸軍少尉です。ただいま飛行船とともに中国公使館付きに着任いたしました。」

 その場にいた見物人・・・そこには各国海軍の艦長級要人も含まれている中、堂々とした挨拶を見せた。


 天津 14日

「青木中佐。ではシーモア隊は聶 士成の武毅軍の攻撃を受けなかったのですか⁉」

 田中は飛行船を大沽に係留するとすぐに鉄道で天津にいる青木宣純中佐のもとに向かう。彼は柴五郎の前任の公使館付き将校であり、袁世凱の新建陸軍・・・年代ごとに名称が変わるがこの時期には武衛右軍と呼ばれていた清国最精鋭軍の練兵にも協力した中国通軍人の一人である。

 彼から現状の中国情勢を聞く。つまり、北京と天津間の情報が主だ。

「ああ。10日にはすでに通過している。まったく交戦意思は見せなかったそうだ。」

 青木は田中の焦った態度に疑問を覚えつつも情報を伝える。

「まずいですね。いつ後方を遮断するか分かったものではありません。このままではシーモア隊も包囲全滅の可能性が高いです。本国にはシーモア隊の全滅を前提に行動してもらえるように進言してください。鉄道を頼らない補給の確保もおぼつかないでしょう」

 田中はその焦りの理由を口にする。その対応策も

「まさか!!清国が列国に宣戦布告でもしない限りそんな・・・」

「清国は公使館を脅かす義和団討伐をする義務があります。しかし、それをしないばかりか官兵主導で公使館員殺害に及びました。明らかに敵対行為。聶 士成の武毅軍は清国軍の一部です。敵対行為に移る可能性は大いにあるでしょう。」

 青木は顔をゆがめる

「確かにそうだ・・・戦争では最悪を考慮しなければならん。で、どうする」

「シーモア隊との速達性の高い情報伝達は可能なのですね。」

「今のところシーモア隊ー天津間の鉄道は無事だ。だが君の言い分ではこれもいつ不通になるかわからんと言いたいのだな。」

「はい。至急、列車を仕立てましょう。名目は物資補給でよいでしょう。一応大沽に入港させた貨物船にも小銃関連の積載はもちろん今回の件で本国から急派された警官など合計すると300名ほどもおります」

「わかった手配する。入港した3隻の艦艇からも陸戦隊を増派させる。」

「飛行船の曳航分の車両の手配もお願いします。」


 大沽鉄道操車場

 天津からの出動要請はすぐに電報で大沽に伝えられる。それに応えたのが本国から応急に入港した艦艇の指揮を任された須磨艦長 島村速雄 大佐だった。

今回の出動要請は史実には存在しない出動であるが、シーモア隊が窮地にいることには変わりない。ゆえに島村大佐自らが指揮を買って出た。

「ないよりましだ。千代田・鳥海・愛宕・赤城から諾式(ノルデンフェルト)を車両前後に積め。いつ戦闘になってもおかしくはないんだぞ」

 その用意周到さは目を見張るものだった。各艦の陸戦転用可能な装備をすぐに鉄道に移設させる命令を出した。

「オチキス4.7㎝も移設するんだ。」

 その様相は応急の装甲列車だった。

「先頭は機関銃じゃない。保線資材を積んだ貨車だ。脱線しても損害が少なくて済むぞ!!」

 各艦下士官兵が士官からの命令をもとに兵や鉄道員を動かしてる。


 それを見ている・・・というか兵とともに物資の輸送を手伝っている男のもとに陸軍軍人が近づく。

「島村艦長・・・」

 大沽に入港している日本艦の総指揮をとっている防護巡洋艦須磨艦長の島村 速雄大佐・・・日清戦争時の連合艦隊参謀の一人であり、日露戦争初期の連合艦隊参謀長である。

「田中君か。飛行船のほうの準備はできているかね。こっちの巻き上げ機は問題ないよ。」

 温厚な答えが返ってくる。

「はい。飛行船のほうは整備完了しております。燃料も問題有りません。」

「では行こうか。シーモア隊が危険だ。」

「島村大佐もいかれるので⁉」

「今回抽出した300名で入港した各艦は外洋での長期行動能力を喪失した。港内で艦を維持するだけの仕事なら副長以下の人員でも可能だよ。シーモア閣下も艦長級の人間を随行させている。ならばわれらもそれをせねばならんだろう。」


 到着いたしまするは飛行船です。まあ、ツッペリン伯爵が登場した時点で察してくださっている方もいらっしゃるでしょうがこの飛行船についての解説はしばらくした話でするつもりです。

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