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北京動乱編- 夜間の炎

 前話の説明追加。

 史実ではフランス方面の侵攻では威嚇射撃だけで逃げ出しています。この世界では威嚇射撃も一部兵士の暴発射撃を威嚇射撃扱いにしてすぐに本格射撃に移行しています。柴さん・・・史実よりも過激ですね。



 イタリア大使館前 

 中国人は恐れをなして逃げ出した。その場には多数の刀剣類が放棄された。兵士たちがこれを拾い集めている。

「分捕り兵器は一度フランス大使館に持っていけ。ベルギー大使館・オーストリア大使館方面は問題ないか?」

 柴五郎はフランス語で兵士に対して命じる。この場にいる最大兵力は日本とフランス。この2つを掌握できればなし崩しで場を支配できる。

「この場はイタリア軍将兵に一時守ってもらう。これで東からの流れは止められる」

 柴五郎はイタリア大使館に入ると、自分の懐から取り出した小さな地図に石を置く。周りにはフランス人士官とイタリア人士官がいる。

「問題は南北の通りですね。順当にいけば我らフランス隊の受け持ちです。」

 フランス士官は自分の受け持ちを理解している。

「同意します。ただ、北の持ち場の位置はどうするかです。オーストリア大使館方面ですが、オーストリア大使館が持てばよいのだが…」

 そこにけたたましい銃撃音が響く

「機関銃だ!!」

「北のほうだ!!」

 噂をすればということだろう

「オーストリア大使館が襲撃を受けているな…。あそこには機関銃1門があったはず。日本隊は至急救援に向かいます。原大尉 兵を集めろ。イタリア隊に守備位置を譲り次第、すぐに出るぞ!!」


 フランス大使館とイタリア大使館前にある交差点。それを北に行くと大通りに出る。そこにオーストリア公使館がある。

 ことが起き次第、付近のベルギー大使館の要員を収容して立てこもる算段にはなっている。

 オーストリアはこの時すでにマキシム機関銃により旧式化させられていたノルデンフェルト機関砲を持ち込んでいた。英国も同様である。おそらくもとは海軍艦艇に搭載され、水雷艇迎撃に用いられていた砲を持ち出したものだ。海軍の消費弾薬は陸軍に比して少ない。ゆえにあまり多くの弾薬は用意されていないと推察できる。

「愚かな・・・この調子で機関銃を打ち続ければいずれ弾切れになる。」

 この時点ではほとんどどの人間も籠城戦は短期に終わると踏んでいた。だからこその無駄うち。史実では柴五郎もその一人であったろうが、ここでは違う。義和団以前からの手紙から長期戦を踏まえての戦いを志向していた。だからこそ助けに行く。小銃の精密射撃でできるだけ多くの敵を殺す・・・それが生き残る道だった。

「大丈夫でありますか⁉」

 日本兵はオーストリア大使館前をすぐに奪還した。正しくはろくな遠距離攻撃武器を持たぬ義和団員は機関銃に驚き、逃げ出したというのが正しかった。到着時点ではオーストリア公使館前の安全は確保されていた。

「ベルギー大使館の面々は?」

 次に問われたのは襲撃を受けた際の算段が守られているかの確認だった。だがそこには彼らはいない。

「今日明日にも襲われる恐れがある。一番危険なのはベルギー公使館だ」

 柴はすぐに兵をベルギー公使館に向かわせる。史実ではベルギー大使館は放棄されず、翌14日には襲撃に合うことになる。そしてこの世界でもベルギーは公使館を捨てる判断をしなかった。当面の安全を確認した柴は日本公使館に戻る。


「柴少佐。城壁に上がり、街をご覧ください。」

 安藤大尉は柴が帰るとすぐに報告してきた。それは移動中にも予想できたことではある。周りの空が異常に明るいのだ。


 彼らは南側城壁を守るドイツ兵の護衛の下、城壁から街を見る。街にはあちらこちらに火の手が上がっている。

「義和団の奴ら教会だけじゃない舶来品商店、西洋が利用していた家屋にも火をつけています。抵抗した者は惨殺されています。」

 安藤大尉が状況を説明する

「オーストリアやイタリア大使館前の義和団の遺骸には放火に使う火種と油があった・・・焼く気だったんだ・・・」

 原は部下からの報告をその時理解する。そこで先を考えていたのは柴だった

「奴らの装備では夜間襲撃が主だろう・・・昼間が勝負だな・・・昼間ならまだ助けられる命がある。そして時間がない。原大尉。戻ってきた赤城・鳥海陸戦隊だけでなく、愛宕陸戦隊にも出てもらう。できるだけ多くの教民を救助する。昼は外回り、夜は守備と苦労を掛けることになるが耐えてくれ。」

「了解いたしました。」

 次回から・・・田中君が本格的に義和団事件に参加します。

≒史実とは違う様相を呈することになります。

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