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北京動乱編-3 動乱の予兆

 今回から動乱です。史実の主人公柴五郎の割合が増えます。この人、絶対に外せねぇ…

 米西戦争を描いたときにはこの事件を描くつもりでしたよ―――

 北京 

 かつて欧米人が我が物顔で歩いていた通りは今やない。武具を持った義和団員が闊歩しているからだ。

これに清国国民は喜びの中にある。彼らの対外国人感情は極めて悪い。元々清国へ侵略の触手を伸ばし、商売においても強引。宗教の名を借りた武装兵を擁した弾圧じみた行為。役人の買収・圧力…。

 ゆえに義和団と欧米人が喧嘩しようものならば周りの目撃者はすべて義和団の肩を持つ。欧米人は恐れて影を歩くか、そもそも外出しない。

 そしてこの欧米人という表現には日本人も含まれていた。先の戦争で祖国を敗戦国とした日本。かつて属国だった朝鮮を奪った日本。

 この敗戦から列強の侵蝕は激しさを生んだ。列強人と同様に怨嗟の対象だ。


 そして欧米人たちの間でも対立が激しい。


 例えば日本は3国干渉の当事国、ロシア・ドイツ・フランスを恨み、その後イギリス・アメリカとの接近を生んだ。


 さらに多くの欧米人は清国を見下していた。人種差別的な思想も色濃かったが、先の戦争で明らかに見下されるべきしかない日本に負けたこと。その表面しかない情報を見て判断していた。


 だが柴五郎は違った。日清戦争で鹵獲兵器に対する実務を担当したことのある田中や袁世凱指揮下の清国軍の教練をしていた先任の駐在武官青木 宣純らの情報から清国軍の実力をつかんでいた。

 清国軍は日清戦争とは別物であると。

 特に武装は主力軍のほぼすべての兵士に新式の連発式小銃が配備されている。日清戦戦争前に設立されていた(戦中は事故で碌に稼働できていなかった) 漢陽兵工廠により、モーゼルGew88のライセンス生産品 漢陽88式小銃の生産・これの配備が進んでいる。

 義和団事件当時の漢陽兵工廠における日産数はおよそ40丁。年間では約1.4万丁の製造が可能だった。

 日清戦争ではこの漢陽88式小銃の初期低率生産型や原型のGew88を輸入したものが精鋭部隊向けに運用された。全軍への充足は間に合っていなかった。だからこそ部隊ごとに戦力に開きがあり、日本はこのうち弱兵を優先的にたたく戦術をとれたのだが。

 これは列強の主力小銃と比して遜色ない代物だ。

 

 なお、史実ではこの漢陽88式小銃は義和団向けに3000丁以上、100万発以上の弾薬とともに供給された。

 

 1900年5月20日 事態に対して列強大使の話し合いがもたれた。が、フランス大使以外が警護兵の派遣を主張する以外に危機感は見られない。この大使は悲観論者とされておりその悲観論の一端だと判断された。総じて「清国軍に義和団は任せておけばよい」という判断だった

 むしろ、平素の定例会合的な空気が流れていた。


 史実ではこのとき柴五郎は傍観した。有色人種である彼の発言が場を説得することができるとは思えなかったからだ。


 この世界でも彼は発言することができなかった。だが彼は話し合いの後、フランス大使に接近した。


「清国軍があてになるかわかりません。先の戦争では清国軍将兵の戦意の低さが敗因でした。彼らにとって外国人は侵略者。侵略者を守るために戦意を保てるか。われらの守備を放棄して遁走する可能性は十分にあり得る。」

 柴五郎はフランス大使に悲観論を吹き込む。

「ではどうすればいいのだ。警備兵の派遣は他国の手前無理だぞ。」

 フランス大使は混乱の中、周りの武官はもちろん彼らが何も良き返答が得られないと悟り次第、柴五郎にも問いかける。

「兵士は無理でも兵器・弾薬や食料などの物資の輸送は可能でしょう。」

 フランス大使は柴五郎の発言からすぐに動き始めることになる。

 

 そして事件の発端となる出来事が発生する。

1900年5月28日 盧溝橋駅・張辛店駅・瑠璃河駅・豊台駅が襲撃を受け、一部は焼き払われた。特に豊台駅ではフランス人が負傷したというものだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] すばらしい作品だけれど パソコンだと 非常に読みづらい。 もう少し 段差等 変えて読みやすくしてほしい 読むのが疲れる
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