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○○動乱編-1 帰還と計画

 お久しぶりです。

 引っ越し準備+警備員としてG7に動員されていました。(G7について機密解除ようやく答えれる。)


 更新できず申し訳ない。


 引っ越し自体はまだしていないので更新ペースは落としつつ再開します。

 戦艦敷島

 1900年1月28日、田中義三は日本に帰還するために戦艦敷島に乗り込む。敷島にはイギリスで彼が活動したことに対する成果が積まれている。

 日本への回航はスエズ経由で史実4月17日に呉に到着した。

「田中義三少尉。出頭命令が出ています。あと手紙も。」

 広島の第5師団から来た士官が東京の陸軍省からの命令を伝える。

 その時、ともに帰国した近藤は田中の前に出る。

「田中は国の将来を背負う若者だ。」

 近藤は中監…中佐相当である。技官であるために兵に対する指揮権はないが、海軍で中佐といえば駆逐艦クラスの艦長級の階級ではある。

「近藤造船中監殿。問題ありません。」

 田中は近藤の前に出る。

「お久しぶりです。先の戦争…の先遣隊以来ですね。」

 伝えに来た士官はかつての部隊長だった。

「無茶苦茶やるな。上としたら能力はあっても使い勝手の悪い部下は不要ということだろうな」

 顔には揶揄すような笑いが見える。

「予備役編入で済めば御の字ですね。今は士官の首を切っている余裕はないでしょうから。」

 田中は処分について肩をすくめる。特に荒木分の処分も「命令した」という形で田中が背負うことになるだろうから処分としては大きくなるだろう。

「まあ、それはそれで充分です。それに予備役編入もまだ先です。シンガポールでの給炭中に受け取った手紙から処分の発令前に砲兵会議での仕事が待っている。それが終わり次第予備役です。」

「砲兵会議?確か新型砲などの開発を担当するところだったな。お前がなぜそんなところに?」

 田中は困った顔をすると、自分の口を手でふさぐしかなかった。


 4月 京都駅 東海道本線 鉄道車両内

「お久しぶりです。2代目殿。伯はどのようご様子で?」

「協力的だ。すでに解体回航した1号は艤装をしているところ。加工から始まった2号も組み立ては8割終わっている。」

「国産・省資源化の3号は?」

「最も時間がかかっている。山田殿も旧来国産品との差に驚いていました。2割も行ってない。」

「では3号以降の建造を中断、1・2号の就役を早急に願いします。」

「最も重要なのは3号以降ではなかったか?」

「情勢が変わりました。大陸に派遣された友人が大陸のきな臭さを教えてくださいました。必要とされる時期が前倒しされる可能性が高い。」

「遅れますぞ。」

「まあ、成果を残せばその分、資源が回ってくるでしょう。これまでよりも早急に事を運べます。山田さんには中断中に設計見直しをお願いします。戦訓の反映は4号から。」


 4月20日 東京市小石川東京砲兵工廠

 この時代、東京砲兵工廠は現在の後楽園にある。史実では関東大震災の折、被災。戦後軍縮もあり、復旧はされず、機能を縮小、他の工廠に吸収されたうえで閉鎖。現在は後楽園球場などが所在する。

「お久しぶりです。田中少尉」

「熊蔵か!!」

 東京砲兵工廠で待っていたのは日野熊蔵という軍人だった。陸軍士官学校では田中の1期後輩にあたる。

「今は少尉か。どうしてここにおるんだ?もしかしてあの拳銃の基本構想が注目されたのか?」

 田中は聞く。彼は熊蔵の所属などは知らない。だが、砲兵会議関連での呼び出しで迎えに寄越されるということは通常の配属ではありえないことである。なお、数少ない例外が自分であることは棚に上げている。

「自分は卒業後、水戸の第2(歩兵)連隊に配属されたのですが、米西戦争前後に少尉がまとめられた銃器構想の一つの設計を担当することになりました。その関係でこちらに。」

 日野は田中を案内しながら話す。基本的に兵器開発部門へは砲兵科将校や工兵科将校が行くことが多く、歩兵科将校である熊蔵は稀有な例だ。

 なお、田中自身も兵站(当時は輜重兵科)将校なので極めて異例ではある。歩兵科よりも圧倒的に稀有だ。

「そうか。ちなみに君の拳銃の基本構造と酷似した拳銃、欧州にあったから入手しておいたぞ。特許資料もだ。敷島に積んでいたが、荷役作業で到着が遅れているが。」

「ありがとうございます。」

「探すのに苦労したぞ。特許から探してみたが、生産数が300丁もないからね。明らかにC96のほうがいい拳銃だったからC96を売っていた銃砲店経由でC96購入者から中古品を手に入れた。」

 相当苦労したようだ。肩をすくめながら入手ルートを述べる。

「ありがとうございます。」

「まあ、あまり強力な弾丸を使用できなさそうだが、短距離ならそれでも十分だから。すくなくとも26式拳銃より威力は上だろうしな。」

 その発言とともに2人は笑う。

 26式拳銃の低威力さには定評がある。工作技術の観点からあえて低威力化する設計の拳銃だ。

「まあ、既存の銃弾から使えるものを探すことになると思います。あまり強力なものでは壊れてしまいます。」

「連射のほうは威力よりも手数が設計思想だろ。問題はないだろう。1発で死なないなら2発3発と打ち込んでやるそれが君の銃だろ?」

「そうですね。田中少尉殿のものはどうなんですか?」

「一言でいえば超軽量化した歩兵随伴が可能な機関銃。といったところ。一応、それに使えそうな銃の開発の情報は仕入れてきたが、未だ未成。次の戦争に間に合うかわからん。なら自分で作ってしまえだ。」

「その件でのお話でしょう。一応、米西戦争時のコルト機関銃は少尉殿の手配で1丁輸送済みです。」

「コルト・ブローニングM1895は調べた限り、機関銃の中では軽い。その分弱点も多いが、何とかなるさ。」

「まあ、有坂閣下を説得できれば良いのですが…」


 1900年3月 北京 柴五郎

「義和拳…か…」

 アメリカから帰国した柴五郎は中佐に進級して北京の公使館付の駐在武官に任じられた。北京入りした時点で町の空気はピリついていた。

 西洋人排斥を叫ぶ人間が跋扈し、中には刃物を振り回している人間もいる。北京では刃傷沙汰にはなっていないものの、彼らの本拠地である山東省では彼らが起こした西洋人に対する刃傷事件も発生していた。

「今のところキリスト教会ばかりが襲われているようだが安心はできん。彼らのいう西洋人に西洋かぶれの日本人が含まれていない保証はない。」

 大使館員の前では悲観的な予想を述べる。公使館守備兵の前では無理だ。

「しかも先の戦争での敵国は日本だ。日本に対しての敗戦から分割は加速している。これを恨みに思う人間も多い。」

 特に後から紡がれた言葉は外交官にとっても当たり前の状況だった。 

 だが外交官たちはよい答えを出さない。

「私は勝手に行動させていただきます。」

 柴は自室に戻ると、持ち込んでいた自衛用の26年式拳銃を懐にしまうと、北京の市街地に出て行った。


 東京市小石川東京砲兵工廠 試射場

「打ち方はじめ。」

 コルト・ブローニングM1895が射撃の的に向けて放たれる。機関銃先端のレバーが射撃をするたびに動く。しばらくは単射・数発の連射そして引き金引きっぱなしの連続発射。1回の250発弾薬補給を挟み合計500発で射撃を終える。

驚くべきところはここまでの作業が完全なるワンオペであったことだ。

日露戦争で日本が主力として運用する保式機関砲では必ず2名以上で扱わねばならない。射撃手と弾薬補給手。最低でもそれだけいないと短時間でも数百発単位の連続発射は困難だ

 これは保式機関砲がベルト給弾を採用しておらず、保弾板を使用しての給弾を前提としていることに由来する。保弾板は30発程度しか装填できない。だからこそ装填手が新しい保弾板を差し込みながら射撃しないと弾幕は張れない。

 だがコルト・ブローニングM1895は隣に弾薬さえあれば射手自らが装填。連続発射できた。

「弾切れの間、無防備になる。」

 装填方式に伴う保式機関砲の利点はこれだった。保弾板ならば弾と装填手さえいれば無限に射撃することができる。その間に射撃の途切れ目はない。

「報告書を見ると、1000発程度で発熱限界を迎える点も継続戦闘能力に劣ると思うのだが?」

 さらに保式機関砲は数千発の連続発射に耐えられる。その点と比較してコルト・ブローニングM1895劣る。

 その答えに対して田中は黒板の前に立つ。

「はい。認めます。銃身発熱に関しては銃身交換が可能な構造にすることで継続戦闘を維持したいと思います。想定交換時間はおよそ60秒です。」

 この発言に関してざわつく。この時代の機関銃の多くは銃身交換に時間がかかった。その時間が60秒で済む方法…それは革新であろう。

「その方法はあとで述べるとして、私が提案する機関銃は従来の陣地固定式機関銃ではなく、突撃する歩兵に随伴可能な軽量・機動機関銃です。」

 田中はあらかじめ用意していた黒板の図面に駒を描く。

「従来型機関銃は敵陣突撃の際、支援できる距離は限られています。敵陣に近づくほど歩兵隊は機関銃の射線に入りやすくなり最終的には支援射撃ができなくなってしまうのです。兵たちは最終的に支援射撃なしで突撃することになります。」

 田中は遠い目をしてここで話を途切れさせる。数秒後、話をせかされてようやく続きを口にする。

「これに対抗するためには現状、支援のために兵を分けて支援射撃させるしかない。しかしそうなると突撃担当兵は減ります。それに敵前でどの程度減っているかわからない状況では支援隊と突撃隊の効率的な割合は算定不能です。そして塹壕に飛び込める兵の数が大きく変わってしまいます。」

「そこで移動しやすい機関銃を歩兵隊に随行。支援射撃を陣地付近で行うこと…それが必要ということかね。」

 ついに口を開くは有坂だった。38式歩兵銃の原型となる30年式歩兵銃を設計したばかりの次世代を担う銃器設計者である。

「はい。そのためには徹底的な軽量化が必要です。これまでの神輿のように3人以上で担ぎ、弾薬運搬手が随伴しなくてはならない重量級機関銃はこれには向きません。3人神輿が1人でも撃たれれば随伴は不可能。最低限、機関銃本体、1連射分の弾薬程度は射手1人で持ち運び、射手が死んだ場合、弾薬運搬手が射手の代役を務められる…その程度の軽量化は必須です。」

「君の提案書と報告書は読んでいる。当然、いろいろ検討しての判断なのだな。」

「ハイ。欧州にて現行の機関銃やボルト操作不要の小銃まで調べました。いずれも不可能もしくは戦争に間に合うかわからずという結果です。自作するにも1からでは確実に間に合わない。ゆえに現行機関銃の中で比較的軽いものをもとに徹底した軽量化をしたもの…それが私の提案する機動機関銃。その原型がコルト・ブローニングM1895であります。」


 田中を敷島に乗せるため史実2番艦朝日を見学した秋山と広瀬はこの世界では1番艦敷島を見学しています。理由は間に合わないからだ。 朝日の回航ではとある出来事に間に合わない。そこであの人が再び登場します。


 M1894の改修点は次話

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