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欧州奇行編-4 後楯の最後

 1899年5月下旬 ロンドン、日本大使館

「馬鹿者!!何をしていたんだ!!」

「予定の変更などこっちは頭を下げまくったんだぞ!!」

 烈火のごとく怒られることになる田中。

「川上閣下が貴様の特命を理解しており、5月中旬に封密命令書が届かなかったら貴様は任務放棄をしているのと等しいのだぞ!!」

 怒られるのは当然だが、それ以上のことができないでいる。彼の背後には川上操六がいる。日本陸軍参謀総長の任にある重鎮である。彼の許可がなければ下手したら軍から追い出されていた。

「敵をだますには味方からです。英語であればneed to know必要な人間のみが知ればよいことかと。」

「本国に帰れば処分が待っているぞ。この件は公にはできん。少なくとも懲罰ぐらいはある。覚悟しておくんだな。」

「懲罰は日本に帰ってからですよね。英国にいるうちに停職などさせたら費用がもったいない。」

「はあ、仕方ない。遅れている仕事 してもらうぞ。造船武官も君の文章や図面を見て注目しきりだ。無論、日本の武官外には部外秘になっているものも多い。至急予定を入れてやる。こき使ってやるから覚悟しろ。」

 話が終わりかけているその時、外交官の一人が駆け込んでくる。

「緊急です。本国より暗号電入電…『総参謀長薨去』とのことです。」

 それは川上操六の病死の報だった


 会議を終えて食事中。

「田中。もう無茶はするな。」

 食事を共にしている秋山真之が忠告する。すでに後ろ楯の川上操六がいない今、好き勝手すれば立場を失うことになる

「わかっています。だが…もう遅いかもしれません。川上閣下の遺命が守られない可能性もある。」

 田中が珍しく不安そうな顔をする。

「珍しいな。お前がそんな顔をするのは。」

 意外なものを見たような表情を秋山がする

「秋山さん…どのような意味でしょうか。」

 田中の返答に秋山は笑う

「お前は上官ですら扱き使うような太々しい奴じゃなかったか?」

 田中は悲痛な笑みを覚える

「船の上で扱き使ったこと恨んでいます?」

「恨んではおらん。意外と面白かったし。だがらしくないと思っただけのことさ。」

「らしくない?」

 田中の顔が疑問を表す

「使えるものはすべて使うそれがお前。川上閣下もお前にとっては利用しただけ。いなくなったら別のものを利用するだけのことじゃないのか?」

「秋山さん。しかし私は日本にいません。頼れそうな人間のもとに飛び込むなんてことができません…その間に処分を決められたら…」

「珍しく弱気だな。いざとなれば海軍に来い。お前陸軍のくせに海軍に詳しいから。いろいろ掛け合ってみる。」

「ありがとうございます。秋山さん。」

「まあ、そのためには船の中で教えてくれた統一巨砲主義を完成させなけりゃならんと思うがな。ま、私だけではなく近藤中監もたらしこまないといけないだろうけどな。」

「ありがとうございます。ですがいろいろと仕事がある。航空関連の特許書類漁り、マキシムご家族との対面もある。そちらもやりながらやります。」

「航空関連の特許漁りって米国でもらった資料だけでは足りんのか?」

「使えるものがあれば使いたいだけ。私の案ではおそらく自由に空を飛ぶのには不足だ…」

「らしくなってきたな…。それでこそお前だ。」

 えー来月更新ペースは仕事の事情で落ちます。事情については現状機密。

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