米西戦争編-13 ともに空を
今回は航空関連。この時期であれば出てくる人物がおりますな。
米西戦争終結後 大西洋横断船内 秋山真之
秋山と田中は米西戦争の観戦武官を終えると太平洋横断航路の貨物船に乗っていた。史実でも英国駐在を命じられたが、この世界では若干早い時期で、同船には田中義三も乗船した。
「上官をこき使うなよな。しかも俺は所属が違うんだぞ・・・本当に・・・」
米国から欧州に向かう船の中で秋山はぼやいている。秋山は田中が大量に持ち込んだ航空関連書物の翻訳に狩りだされている。
「立っているものなら親でもこき使ってやりますよ。どうせ航海中は何もすることはないのです。何もしないで給料をもらうのは卑怯ですよ。」
それは正論だった。だからこそ彼は動き続ける。
「それに海軍もそのうち飛行器を使うようになりますよ。その時に必要な知識ですから翻訳しなら読んでみてもよいでしょう。あと、航空英和辞書も作りますのでわからない単語があれば聞いてください。あと固有名詞でまとめたほうがいい場合も意見ください。あと、欧州回っている間に関連の視察や情報収集もお願いしますね。」
その発言はこれからもどんどんこき使ってやると言っているようなものだった。
「はぁ…忙しくなりますな・・・」
秋山は自分の苦労をぼやくしかできなかった。
開戦前。サミュエル・ラングレー
田中義三はラフ・ライダーズの業務、気球の業務にあたりながらサミュエル・ラングレーという航空技術者に接触していた。海軍の伝だ。彼は航空技術者の先駆者の一人でもある。航空関連についての技術提供を求めたのだ。無論、これまでの経緯すべてを話した。
「友人にため・・・ということもあるか・・・それにしてもしたたかだね。夢のために軍の予算を利用してとは・・・君の友人は。」
真っ先に挙げたのは二宮のことだった。
だがその次は自らの業だった。飛行機が何に使えるかを考え、それを自ら書きだした書類を渡す。
「まあ、軍に飛行器の開発を認めてもらうのに口実はいりました・・・確かに多くの戦友が戦争で死んでいますが・・・。と言いますがわれわれは現時点で軍の予算はもらってはいません。自分たちで稼ぎ出しています。ただ、人類の将来のために・・・飛行機は必ず必要です。友人には悪いですが、私は夢ではなく必然だと思っているのです。人は必ず、空を飛ぶ。当然人間は空に自らの業を持ち込むでしょうがそれは仕方のないことだと思います。だからこそ我々はいい使い方を考えないくちゃいけない。と思ったことがあり、暇を見つけて考えなければと思っていました。ちょうど、今回日本からアメリカへの船旅中、暇ができたので大いに考える機会ができました。」
それを見ながらラングレーは考える。
「稼ぎということは企業に所属している・・・で、ここ最近航空関連で大もうけしたところは広告気球だったか。あれで稼いだ金を飛行機開発に使う・・・見事だな。それと、夢物語・・・と言える内容もあるが本当にできると思うかね?」
「100年のうちにはすべて。我々ができることはこの100年を早めるか遅らせるか。技術というものは多くの頭があればあるほど早く開発できると思います。私・・・いえ、私たちもその頭の一つになりたいのです。」
「わかったいい本を紹介してやる。私の知っていることは全て教える。だから約束してくれ。私の立場になっても出し惜しむなよ。」
米国 デイドン 米西戦争の開戦前
自転車屋
はじめ、2人の兄弟は怪訝な顔をしていた。自分たちは元自転車。しかもこの時、自転車を作っていない。
そんな彼らの元にやってきた異国の軍人は自転車の部品を使って変な荷台を作らせようとしてきた。これには彼らは怒りを感じていた。自分たちはかつて自転車レースで優勝経験もある凄腕なんだぞと。
だが彼は確実な図面を持っていた。その荷台のコンセプトもはっきりとわかる。まさか組み立て式の荷台とは・・・空荷ならばかさばらないだろう。
更には倉庫にある研究資料を見ただけで理解した。別に我々は飛行機のことを何も話していない。少し昔には空を飛ぶものは神に反する異端であると言う時代すらあった。空を目指すことは宗教的に危険でもあっいた。
だがそれは外に置いておいて双方が気が付いた。
(空の夢を追う者である)
と。
ただし、田中義三は前世から彼らのことを知っていた。自転車屋であることも。だから彼は自転車の部品を転用して作るリアカーを考案、それが作れる人間を大使館に探させた。そのリストの中からある兄弟を探し出した。
ライト兄弟を。
ドイツ 飛行船旅行助成会社
「広告気球のおかげで想定よりも多くの資金が集まった。製造に関しての問題点の一部の洗い出しに成功した。そろそろ船の建造を開始するべきだ。」
立派な髭をした老人が髭をなでながら話す。
「フリードリッヒスハーフェン周辺に格納庫を用意しました。建造予定の船は長さ128m、直径11.65m同地で建造も可能です。」
「そうか。早速開始してくれ。」
米国 デイドン 米西戦争の開戦後
「よう!!兄弟。調子はどうかな?」
田中は米西戦争前に訪れた兄弟のもとにやってきた。そこにいたのは4人(兄弟と妹、従業員1名)。そのうちの一人が返答をする。
「ヨシさん。資料ありがとうございます。日本行きも了承します。従業員たちにも声を掛けました。数人行きたいものがいました。」
「ありがとう。ウィルバーさん。僕は欧州視察を本国から命じられているから、直接日本には帰れないけど士官学校の同期(荒木)と上官(柴)が案内してくれるから案内してもらってください。」
「何。研究資金をくれる上にラングレー博士の資料くれるなんて便宜を図ってくれるんだし・・・それに飛行船だっけ。その研究資料を自由に見せてくれるし、材料も転用してもいいんだからありがたいや。」
「ええ。気球製作所では世界中の気球関連企業(アドバルーンのライセンス購入に入札した及び入札企業から聞き出した関連企業)のリストがあります。欧州では暇を見つけてはそこを視察したいと思います。」




