表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/76

日清戦争 -29 報道戦術

 コメは燃料。燃料不足でペース上がらず。

 1894年9月20日 平壌

 西京丸に搭乗していた樺山は黄海海戦が終わり、平壌に陸海軍の戦況を確認・すり合わせに来た。

 その現場に参加させられていたのが田中義三だった。こちらも名目は従卒。

「樺山さん。立見が褒めていたよ。あの若者を。」

 田中が飲み物を取りに行くために席を外している間に雑談が入る。

「立見が…か」

 樺山は何とも言えない表情をする。

 立見は旧幕府軍最強の雷神隊隊長をしていた。戊辰戦争の敗戦後、新政府軍に参加しなかったが西南戦争等の士族反乱多発の際に請われて明治陸軍に参加。

 西南戦争では熊本城に明治陸軍は籠城。この籠城軍に樺山はいた。更に野津道貫中将の実の兄。鎮雄も籠城していた。

 立見は西南戦争末期に所属部隊の編成が完了し、ようやく参戦。最終決戦で全力戦闘。そして西郷隆盛の死の原因を作った。

 西郷については明治天皇ですら死を良しとしていなかった。立見は相当に反薩長意識の強い人間であった。故意を疑うかもしれない状況であることは確かだ。

 樺山は相当に西郷に傾倒していた。当然、彼を殺す原因の一つになったと思われる立見にはいい感情はないだろう。

 だが実力はある。だからこそ複雑。

「他人のために死ねる男じゃ。川上から手紙が届いた。」

 さっと樺山が流し読みをする。

「なるほど。大義名分作りが上手いな。」

「すでに今回も動いている。輜重兵の立場と従軍記者、自作の挿絵これを使って清国兵を極悪非道の存在であると世間に思わせる。当の本人は実際にあったことを皆に知らせているだけ。と言っておった。清国軍は撤退の際に略奪、暴行の限りを尽くしたそうだ。若造が言うには現地には余剰食糧なし。徴発は不可能と考えられたしとのことだ。むしろ来年まで持たんかもしれないところもあるそうじゃ。」

「持たない?」

「わしも同じことを聞いた。来年の収穫まで食料が持たないとのことだ。徴発しようものなら餓死者が出かねんと報告してきた。」

「そうか…」

 話の途中だが、田中が戻ってくる。声をかけて茶を差し出し、元の位置に戻る。

「清国艦隊の撃破には成功したが撃滅には至らなかった。黄州(平壌以南の海域) 沿岸までの海域は安全な航海は可能だろう。だが敵艦隊は健在。黄海の制海権を握るには敵の軍港をたたく必要がある。旅順とその対岸の威海衛だ。」

 樺山は広げられた地図に書き込む。だが野津の視線は違う。従卒の列を見ている。

「従卒田中」

「ハッ!!」

「君の言う通りかもしれん。」

「野津。この若造は何を言ったのだ?」

「樺山。清国艦隊の撃滅には失敗しても、敵艦隊に被害を与えた。その修理期間中、敵艦隊は動けんだろ?」

「まあ、それは事実じゃ。」

「修理期間中の黄海は日本のものじゃ。自由に船を動かせよう。」

「そうだな。わが艦隊も被害の酷い艦を本国に回航して再編成すれば艦隊として運用はできる。」

「その時間を有効活用すべきと言っておった。その一つに艦隊根拠地の攻略軍を上陸させるという意見があった。」

「一つというのであればほかにもあるのだろ?」

「持って行ってくれ。」

 と渡すは手紙だった。


 立見尚文少将麾下 第1軍 先鋒部隊。

「立見少将閣下戻りました。」

 田中は先鋒部隊だった立見少将の部隊に戻ってくる。田中は兵站担当兵の中で最も優秀であったためにわざわざ引き抜かれて前線に連れてこられた。彼自身が負傷し後送され、補充要員も第5師団本隊朝鮮半島派遣と共に充足されていたことから事実上の余剰要員に近かったことも体よく使われた原因の一つであろう。

「丸腰で戦場送りか。死んで来いってことかな?」

田中は笑いながらそう愚痴る。だが仕事はする。

「進撃は不可能です。清国兵の略奪により、我々の徴発する余裕がありません。焦土戦術です。」

 それを聞いた士官が驚いたのは言うまでもない。そしてそれに対する対策も

「ここは日本国内で徴発しましょう。輸送の対価として一部の物資を分け与える方式にすれば日本円を信じていない朝鮮人もある程度動いてくれるはずです。運ぶ物資の内容に関して注意すれば略奪も問題ないでしょう。それに佐藤大佐の元山支隊の兵站をやっていた時も対策していたことですので。」

 その後も士官たちの言い分を完全に論破する。費用面以外に問題はない。


 筑紫 樺山

「見事だな。これならばある意味、列強は介入しづらくなる。それにどうせ必要な物資だからな。」

 樺山はつぶやく。

「とりあえず、清国艦隊の修繕期間中は我々の自由行動が許された。それを生かす戦略を立てなければならん。これは急ぎ本国に持ち帰らないといけないな。」

 樺山は史実よりも若干早く損傷艦を連れて帰国することになる。


 新聞

「最新戦局だよ~~~~清国軍略奪横行!!朝鮮人に犠牲者多数。現地民は今年の冬越せないかもよ~~~~」

新聞屋が新聞を掲げている。号外ではない。買わないとわからない情報だ。遠方から見える見出しは『清国軍略奪にて死者多数。餓死の可能性大』

 というものだった。

 印象工作ここに極まれりである。ただし、ほとんど真実である。真実以上に説得力のあることはない。その中に若干のアクセントを加えることぐらいは可能であろう。

 このニュースはさらに列強に伝わることになる。


 意見を求む。ここ最近ptが上がらないのです。日清戦争中に大きな歴史の流れの変動は予定していません。日清戦争後から動き始めます。そこでです。日清戦争後の話の作成と投稿を行うことを検討しています。どうします?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ptが上がらない しゃーない日清戦争は興味ある人が少ない 作者がどこをメインに描きたいのかは分からないがpt上げるにはWWⅡをどう上手く描くかにかかってるからPtだけ欲しいなら前座は加速し…
[一言] 下だせぇ、下だせぇ
[良い点] ブックマークといいねを入れておきました。最後まで読み続けるつもりなので頑張ってください
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ