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日清戦争 -18 平壌の戦1

 平壌 北東 1894年9月13日

 佐藤正大佐、立見尚文少将

平壌を東北部から侵攻する佐藤正大佐率いる元山支隊と朔寧という山間の地域から進出してきた立見尚文少将率いる朔寧支隊がどのような作戦をするのかをすり合わせるために佐藤大佐が参謀や大隊長級の人間を連れて朔寧支隊に来た。

「我々の位置から平壌北方を犯すには牡丹山をはじめとする陣地を攻略しなければならん。」

立見尚文少将がつぶやく。佐藤大佐はこれに頷く。

「田中一等卒この地域の偵察はできたか?」

 多少なりとも情報を持っている田中は従卒を兼ね、立見少将には事情を説明して連れてきていた。

「はい。ただし問題があります。情報収集ができたのは街道に使われている地域のみです。それ以上は怪しまれる危険がありましたのでできません。軍事施設内部の偵察はできませんでした。特に城壁の強度などはわかりません。人を攻めるにも偵察から1月以上経過していますので情報が古く現時点の配備部隊がわかりません。」

 田中が申し訳なさそうに言う。情報は鮮度も命。古い情報は役には立たない。

「意味がないではないか⁉」

 それに参謀の一人が文句を言う。

「ま、妥当な情報だ。2,3カ月前の情報だ。」

 立見少将がかばう。

「で、あれを優先的に運ばせたんだろ?」

 佐藤大佐はニタニタしながら見てくる。

「それもあります。ま、度肝を抜かせるという意味もありましたが。野蛮な島国に『人類の夢』の先を越されたと知れば…連中はどう思うか知りたいものです。」


のちにその笑顔を周りに性格悪そうと思われたのは余談である


1894年9月14日

第5師団主力 司令部

「作戦開始までにギリギリ間に合いそうだな。」

司令部では第5師団主力4000を率いる野津道貫中将が安堵と失望のため息を吐いた。

史実ではこの第5師団主力4000は昼夜問わずの進軍にてギリギリ15日の攻撃準備に間に合ったという疲労困憊な状態で平壌攻防戦に参戦した。

しかも朝鮮人に物資輸送を任せていたがために逃亡者が続出。物資も多くが持ち逃げされ、食料は15日分決戦当日分しか残されていないようなありさま。15日が攻撃期日ではなく15日しか攻撃できないような状況という戦況だった。

これには複数の事情があった。制海権と日本人人夫の不足だった。

 日本海軍は初戦に勝利を飾ったものの、これは敵艦隊のほんの一部をたたいただけ、しかもその海戦で参加した清側で最も高性能な軍艦には逃げられており、捕殺できたのは旧式艦、小型艦と輸送船1隻だけ。

戦術的には勝利、短期戦略(陸軍に増援兵の輸送を阻止する) には勝利したものの、日本は朝鮮半島西の黄海の制海権をそぐことは一切できていなかった。

朝鮮半島の輸送インフラの脆弱性は朝鮮国内での進撃を困難なものとした。そして同時に海上での船舶輸送の有用性を大いに示した。

しかし強力な清国艦隊が存在するために日本は有効な海上輸送ができなかった。

そこで史実日本陸軍は朝鮮南部の釜山に第5師団主力を上陸させて長駆行軍。一時は漢城にて待機するが、最終的には平壌まで進出させた。

長距離行軍にはそれに合わせて十分な兵站が必要。インフラが十分ではないのであれば大量の人間を雇い、運ばせるしかない。

そしてその輸送要員の必要数と比較して朝鮮半島居住の日本人は少なすぎた。その穴埋めは朝鮮人。

朝鮮半島にはいまだ貨幣経済すら浸透しておらず、給金を支払っても支配階級の両班共に奪われるだけの状況。朝鮮人の意欲は目に見えてなかった。


しかし、この世界線は違った。第5師団主力は釜山と仁川に兵をわけて上陸した。釜山は史実では輸送には動員されていないような小型船…下手すれば漁船まで総員。日本で雇った人夫をも上陸させた。そして仁川へは連合艦隊の全艦を動員しての護衛を行い、仁川へ兵と物資、人夫を送り込んだ。この連合艦隊による護衛による護衛付きの輸送は史実において平壌攻略後の第3師団主力輸送の際に採用されているが、この世界では少し早いこの時期に採用された。

ただし、連合艦隊の動きはあえて情報を流し、清国艦隊を吊る餌の役割も持っていた。多少の危険があっても早急に清国艦隊を排除して制海権を確保する必要があったからだ。しかし、餌には食いつかなかった。だが兵士は送り込めた。

しかし、作戦のために行軍開始されたタイミングは史実と同じ。この輸送と人夫の確保のおかげで史実よりも物資的な余裕をもって日本は平壌の戦いに移ることになるが、時間的な余裕は史実と同様に近かった。



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