10 四日目
日付を入れないと今何日か分からなくなってきたので入れてみました…
「とうちゃぁーく!!」
そう言って「とう!」っと言って鈴鹿は荷馬車からジャンプで飛び降り、続いて蓮もジャンプして降りた。鈴鹿は「魔物はおらへんよねぇー」っと言いながら周りを見回した。蓮は後ろを振り返り荷馬車に乗っているヒューゴを見ると、少し体が震えていて顔は青白く手を口に当て、今にも口から虹が出そうな感じであり、「やり過ぎたか?」っと少し申し訳なく思った。
「ここやったら敵が来てもすぐに見つけれるし逃げようと思えば逃げられるし、兄ちゃんここどう?…って大丈夫!!?どうしたん!??」
話し掛けながら振り返った鈴華は驚いた。
「………大丈夫……うん…大丈夫だよ」
げっそりした顔で何とか笑ったヒューゴ。
蓮と鈴華の2人はジェットコースターなどの遊具や飛行機で浮遊感覚を感じたことは多々あるだろうが、そんな物がない世界でヒューゴはどれだけの恐怖だったろうか…それに2人がもし魔法切れになったり魔物に襲われたりなどの安全性が確保された中での飛行ではない。
蓮はそれに気が付いたが鈴華は気が付かない。鈴鹿は「まぁ私も床がないから怖いけどそんなに?」といった感じだ。
「ほな蓮、どっち取りに帰る?」
「私が行ってくるよ。ヒューゴさんには悪いけれどここで待っていてくれるかな?すぐに戻るけれど…少し地について落ち着いた方が良いと思う……本当申し訳ない」
申し訳なさそうな蓮の顔を見たヒューゴはお礼を言い荷馬車から降りた。
それを確認してから蓮は走って家に向かった。途中ゴブリンやスライムが居たので走りながら倒していった。家に着く前に竹を一本刈り、節で緑の分と赤い分をそれぞれ切り、赤い方を水魔法で水に浸け時間がかかるので錬金術で皮をふやかし取り、緑の分と共に軽く乾燥させ、家の中に入り余分に作ってあまっていた経木を気持ち程度に効果があればと思い敷きつめた。それを持って庭に出て先程出来たブラックとホワイトのペパーの実で胡椒を作っていき竹の中に詰めていく。もし湿っていたら売り物にならないので、緑の分をもう少しだけ取り乾燥させブラックペッパーのホールも作り竹を同じように加工した中に経木を敷き詰めた。蓋も必要なので家具であまった木を庭の片隅に置いていたのでそれを加工し、軽く乾燥させ蓋をした。
急いで蓮は戻ると鈴華はヒューゴの背中をさすっていた。どうやらヒューゴは戻したようだ。
「ヒューゴさん、大丈夫か?」
「…、…ご、ごめんね、もう少し待って貰えるかな…?」
まだ気持ち悪いようで、鈴華は「軟弱なにーちゃんやなぁ…もらいゲロしてしまいそうやわ…」っと言いながら背中をなで続けた。
ヒューゴの体調が戻るのを待って蓮は胡椒を渡した。
「変わった入れ物だね…」
「申し訳ないのですが、今入れ物を持っていないので今日はそちらでお願いしたい。後日取引する時までには考えておきますので…」
ヒューゴは了承し中身をペパーをまず確認して驚きその次にブラックペッパーのホールを確認し頭を傾げ、蓮にこの実はそのまま使えないので安くなってしまうと言った。
「それも一応ペパーでそのまま使えますよ。料理によってはそのままホールで使い、時には荒く砕きクラッシュタイプで使い、時にはそれをさらに砕き粗挽きにしたり、時にはそれをもっと砕きパウダー状にしもう一つのような感じにさせて使います」
「えっと、ちょっと待ってね…?こっちのペパーはどうして白っぽいの?え?なんで?」
「それは白と黒を混ぜ合わせて作ったのですよ。白は黒ほど辛みはないので…もしかして別々に作ったほうが良かったかな?」
「えっ…え?え!!?待って待って!そもそも、この黒い丸いのも料理に!!?え?本当に?そんな使い道が?これ粉にして使うんじゃないの?それに何白と黒って!?え?……どういうこと?」
蓮は少し面倒くさいと思ったが、ここは営業力!っと思い面倒くさいと顔に出さず丁寧に教えた。鈴華は「へー」って言いながら聞いていた。連が鈴華に使ったことあるか聞くと、あまり考えずに使い分けていたと答えた。鈴華や蓮にとってはそれがあるのが当たり前で、ホールもミル付きで普通にスーパーにあるので当たり前に使い、よく考えずに味を見て料理を見て使うことが多い。が、それがヒューゴにはそうではなかったそうだ。
「なるほど…へぇー……ちょっとその話をして料理人に売り込んでみるよ!お金は…また売れたらで良いかな?この現状だと適正な金額をつけられない」
それもそうかと思い連は頷いた。
「では、私はこの近くにある街のジョヌペスカーウに行って1度売ってみるよ」
「ジョヌペスカーウ??」
蓮は頭を傾げた。どうしたのかと鈴華は聞くと「王都の近くにするって言ってなかった?」っと小さく聞き返してきた。確かに王都と言っていた気がすると鈴華も思い2人は頭を傾げた。
「ヒューゴさん、それは王都ですか?」
「?違うよ?ジョヌペスカーウはペスカーウ侯爵が収める街の1つでそこより馬車で二日行ったところに王都はあるよ?」
どう言うことだと蓮は考え近くに落ちていた木の枝で地面にカタカナで「ジョヌペスカーウ」と書いた。
(何だ、ジョヌペスカーウって…なぜ王都の近くじゃない…何故?ジョヌペスカーウ、ジョヌペスカーウ…ジョ、ヌペス、カーウ…違う。ペスカーウ侯爵…ジョヌ、ペスカーウ?ジョヌ、ペスカ、ーウ?ん?ジョヌ?ペスカ……ペスカ…ーウ……検索……)
連は枝を片手でボキリと折った。
「ん?蓮どうしたん?」
「……桃だ…」
「は?桃?なに?」
「ああ、ここジョヌペスカーウ領地は桃が有名なんだよ!美味しいよ?」
「何のこっちゃ?」っといいながら頭を傾げ2人を見る鈴華。
「ジョヌはフランス語で黄色、ペスカはイタリア語で桃だ。で、ペスカーウのペスカ以外はマイナスのーにウ。つまり黄色と桃にマイナスのウ。黄桃-ウ=オウトだ」
「……は?騙された?王都ちゃうってことやんな…は?」
「僕達2人からしたらそうだね、騙された」
「やられた」と言って鈴華は膝をついた。ヒューゴは?フランス?イタリア?っと聞きたいが2人が絶望しているようで聞くことが出来なかった。
「では、二週間後にまたここに来るよ」
「待って、二週間は日数的に何日かな?」
「?十日だよ?」
どうやらここと日本では日数が違うようで、これ以上聞くと怪しまれるので、「分かった」と答え、街の方角を言うと馬車に乗り込んだ。
「あれ?そう言えばこれ馬ないよな…どうやって行くん?ってかゴブリンに食べられたんちゃうん?」
「え?あー、これは馬車じゃなくて使い獣車だよ?ちょっと待ってね、見た方が早いから…………『おいで、リリカラ』」
そうヒューゴが呼ぶと、ヒューゴの前の空間が歪み黒い渦のようなものが現れ、そこから出て来たのは真っ黒い4メートル程の馬のようなかたちをした動物だった。
「紹介するよ、こいつはプェールトのリリカラって言うんだ。こいつは優しくて臆病でな、ゴブリンを見つけた瞬間俺と荷車を置いて走り出してそのまま…帰って…行ったんだよ…………はぁ…」
「で、自分も荷車置いて逃げて倒れてたと?戦われへんのこの子?」
「んー…戦う子もいるけどこの子は…臆病だから…」
そう言って苦笑しながら頬をかくヒューゴに蓮はどうやって戦うのか聞くと、戦うことが出来ず普段はシールドを作りリリカラに荷馬車を引っ張って走って逃げるそうなのだが、先日テーテンシュティアに出会い、リリカラは恐怖から逃げ帰りどうしようもなくなりそこでほぼ使い切ってしまったんだと。「ほな護衛は?」って聞くと冒険ギルドに依頼を出していたが誰と捕まらず、諦めて一人でも何とかなるだろうと思ったそうだ。
「まさか、Dランクのテーテンシュティアにあそこまでつきまとわれるとは思わなかったよ、冒険者が一緒ならもっと早く逃げられたのに…」
「テーテンシュティアって、そんな強かった?え?逃げる必要なんてない気がするねんけど…」
「右に同じく…」
驚くヒューゴは「………白だから?え、でも……」っと何かブツブツ呟きため息1つき、何か吹っ切れたように「何処か道ないか?」っと聞いてきた。
「道は…とりあえず街があったのはあっちだよ」
そう言って先程見た街の方角を指差し蓮の指を追ってヒューゴは見たが道という道はない。ため息を1つ付きとにかくあっち方面なんだな?っと確認し太陽と影の位置を確認し印をつけまた、数十分後印をつけ連や鈴華から見えた建物の大きさを聞き大まかな位置を割り出し、「あそこだと…うーん、じゃぁここくらいに……」っと一人ブツブツ言いながら地面や建物がある方角を見ながらヒューゴは考え「よし!」っと言って立ち上がった。
「なんとなく道が分かったから行くよ、またここに来るから…えっと何か欲しいものとかあったりする?」
「………家畜?かな」
「「え?家畜?」なんで?」
「牛乳欲しくない?」
「ああー、じゃぁ後ベーキングパウダー欲しいな」
「ちょ、ちょっと待って、牛乳って何?あと何、ベーキング、、何?」
「あー、白い飲み物かな?ほら母乳が出ないときに子供に乳の代わりに上げるのと、ふくらし粉だよ」
「れん、へんたーい」
ニヤニヤと鈴華は連を見るが、連は涼しい顔で「常識でしょ」っと言ってそっぽを向いた。「え、常識なんか?え?え?」っと鈴華は考えたが連とは年が違うからと思い、昔はそうだったと言うことに認識することに変えた。
「うーん、それならあれかな?でもふくらし粉なんて知らないかな…何に使うの?」
「「………」平べったいパンでも食べてるんのかもしれんな」
「ソウダネ」
「平べったくないから、普通だよ普通」
その普通が連達とは違うのだと訂正する気にはなれず「はいはい」と適当に返事をしヒューゴを見送った。
読んで下さりありがとうございます!