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恋をしたいと願うなら  作者: 佐伯春
氷の女神と冴島史夏
8/42

第八話 楽しい楽しいお花見

検閲済み

「わぁ~紗耶香サヤカさん外見てください!桜吹雪舞ってますよ!」

冴姫サキ、あんまりはしゃぐと、落ちるわよ」

「それに桜の木なんていつも来るときに見てるじゃない」

「風情がないですね~、教室から見るからいいんじゃないですか」

「ん~!暖かい日差しに薫る風、なんかもう春って感じですね~」

「・・・そうね」


あの元生徒会長との一件から何週間か過ぎ、5月半ばも過ぎようとしていた。


「そうだ!今週末お花見にでも行きませんか?」

「わたしと紗耶香さんと史夏ちゃんで!朔夜サクヤさんも誘います?」

「今月は月末大会があるのだけれど・・・、まぁ一日ぐらいならいいか」

「そうですよ!息抜きも必要ですし、場所もこの近くの公園ですから!」

「空けておくわね、史夏にも聞いてみるわ。朔夜はどうでもいいけれど」

「まぁまぁそういわずに」


あの後史夏宛てに封筒が届き、中を見ると札束と連絡先が入っていた。

それでやり取りをする内に、仲良くなっていったらしい。


(二人に共通点があるとは思えないのだけれど、友達が増えるのはいいことね)



相変わらずアヤからの呼び出し・・・、爛れた関係は続いている。



彼女は史夏や他の誰にも気づかれないよう絶妙なタイミングを狙ってくる。

私も気づかれたくないので、それに従っているのだが・・・。


(こんな関係、いつまで続くのかしら)


一難去ってまた一難。


人に恋する事が出来ないと思っていた私を初めて受け入れてくれた子。


その子との恋が成就して、幸せな高校生活を送れると思っていた。


でも違った。今まで自分がしてきたことを考えると当然かもしれない。


(これはある意味贖罪の儀式、耐えるのよ、紗耶香ワタシ



そんな中でも史夏と一緒に居るのは楽しかった。


彼女がいれば他の何もいらない。だから捨てられたくない。




汚れ切った自分を見せたくないから、




今日も私はあの子の元へ向かう。





「今週末花見?いいねいきたい!」

史夏と一緒の帰り道、今ではこれが当たり前だ。


「よかった、じゃあ冴姫には私から連絡しとく。朔夜もくるみたいよ」

「そっか!楽しい花見になるといいね!アタシ友達とやるのなんて久々だしさ!」

「私もよ、せいぜいこの川沿いで春を感じるくらいね」

「前から思ってたけど、紗耶香って結構ポエマーだよね」

「そうかしら?」

「うん、でもそんな紗耶香も好きだよ」

「史夏・・・」


この子といると毎日のドキドキが止まらない。


この気持ちが恋であるのなら、


昔の私は馬鹿だったと思う。


言葉にできない高鳴りを、胸に籠める。


「 ・・・」


いつもの日課、別れの挨拶、これだけは譲れない、愛のカタチ。


「また・・・明日ね」


「うん、また明日」


今日も別れるのは名残惜しいが、これで明日も頑張れる。


(ダメだなぁ私)


最近は彼女が愛おしくて愛おしくてたまらない。


どんな時でも一緒に居たいし、ふとした時彼女のことを考え、思い出してしまう。





(人って変われるんだ)





そんな蝶々は、蜘蛛の巣に絡まり、捕食されようとしていた。





「紗耶香先輩、ちゃんと言われた物持ってきてますよね?」



マンションの秘密の部屋、今日もそこで行為が行われようとしていた。



「じゃあ着替えてください、愛しの後輩の前で、早く」



いわれるがまま、部活動の制服『スコート』に着替えさせられ、


「じゃあまずはスカート、たくし上げてください」


いつものように命令される、これが殆ど毎日のようにあるが、いまだ慣れない。



「うーん、今日の色は水色ですか~、リボン付きのクロッチかわい~」


「アナタが履いてって言われたから仕方なくよ」


「ウチの高校、大会の時はスコート着なくちゃいけなくて嫌だったけど」

「先輩のスコート姿見れるから悪いことだけじゃないんですよね」


彩はパンツの上から曲線をなぞる。上から下へ、下から上へ、何度も。



「ンンッ・・・クフッ・・・アッ・・・」


「先輩ホント弱すぎ笑、顔もそんな赤くしちゃって、かわいすぎですね☆」


「今度はお尻突き出してくださいよ」


「・・・わかったわ」



壁に手を付け、臀部を突き出す。地面に写る影が、ゆらゆらと揺らめく。



「ホント素敵なお尻してますよね~、練習中みんな先輩のここ見てるんですよ?」



撫でるように擦られる。触れるか触れないかのくすぐられるような力加減。


もどかしさに身をよがらせてしまう。



「いつもはスパッツ履いてるけど、今は下着丸見えで・・・」


「一度スコート着た先輩とシたかったんで、今日はいっぱい楽しみましょうね?」


「ふん、発想がスケベな親父みたいね・・・アナタ・・・」




「女の子だってスケベなんですよ」




そのまま薄布に、中指が滑り込まれる。


「・・・・・・ !!」



後ろから揉まれる態勢で、


細長い手で重力で垂れ下がる肉房、その先突起、


うなじ、首筋、耳、全てが塗りつぶされていく。



彩は耳元で、あえて空気を含ませた囁き声を紗耶香に送る。



「最近は史夏ちゃんといつシたんですか?ちゃんと満足させてくれましたか?」


「当たり前じゃない・・・!彩とは違って彼女、優しいから・・・ッ!」


「でも私の方が紗耶香先輩のキモチイイ部分知ってると思うんですよね~」



彩は紗耶香の敏感な部分を次々看破していく。



「こことここ、後ここも弱いですよね~。史夏ちゃん知ってるんですか~?」


「ッ!・・・あたり・・・、前・・ッ!じゃないの!」



(ダメ!この子にまた負けちゃう・・・!)



「・・・っとぉ、今日はここまでにしておきますか?」


「えっ・・・、どうして?」



寸前、指が離れる。



「え?だって満足してるんでしょう?ならいいじゃないですか」



彩はそそくさと荷物をまとめ、



「また連絡しますね~♪」



そのまま暗い部屋から出て行ってしまった。




残された私は絶頂を迎えられなかったこと、玩具の様に扱われていること、



史夏よりも技術で快感を感じてしまう自分に、全てに腹が立ち絶望していた。



(こんなこともう終わりにさせなきゃイケないのに)



薄明りの中、捨てられた乙女の指先は得られなかった快楽だけを求め続ける。





「『今から会いたい』か・・・」



夜、紗耶香に呼び出された史夏は例の公園に来ていた。


誰もいない広場、その奥の公衆トイレの一番奥の個室に、



彼女はいた。



「史夏、来てくれて嬉しいわ」



そこにいたのは上着の中にスコートを着た紗耶香だった。



「ちょっと、どうしたんだよその恰好!」


いつもとは違う姿の少女に、恥ずかしさと嬉しさを覚える。


「時々はこういうのもありかなって。練習後でちょっと汗臭いし、汚れてるけど」



確かにところどころ湿って濡れているが、それが妖しい雰囲気を醸し出している。



個室に漂う熱気と火照りが、史夏のボルテージを徐々に上げていく。



「もしかしてここで一人でシてたとか・・・?」



私の彼女はそんな性格をしていただろうか・・・?



「ごめんなさい、最近アナタのこと考えると切なくて・・・」


既に出来上がっている少女は私の首に腕を回してくる。


「こんな姿・・・史夏にしか見せられないから、こんな場所で悪いんだけど」




「ちょっと!イキナリ・・・あっ、ふぅん・・・」




「史夏・・・、私のこと、滅茶苦茶にして?」




切なそう顔をしながらそんなことを言われれば、やめる道理はどこにもない。




「アタシ、もう我慢できないと思うからね、紗耶香が悪いんだよ・・・?」




個室を通り越して人通りにまで聞こえてしまいそうな唾液と肉のぶつかり合う音。




「紗耶香・・・気持ちイイ?」


「うん、とっても・・・、もっとキて・・・」



「あのさ・・・、もう一緒にイキたいんだけど・・・いいかな?」


「えっ・・・、わかったわ・・・」



更に激しさを増して絶頂の時を迎える史夏。


「ハァハァ・・・すっごいキモチイイ・・・」


「えぇ・・・そうね・・・」


「あれ?紗耶香は満足できなかった?」



「ッ・・・そんなことないわ!」


思わずたじろいでしまう紗耶香。



「やっぱりアナタといる時が一番幸せだわ・・・、ずっとこうしてたい・・・」


「え・・・?うん、アタシも紗耶香が一番だからさ、悩みとかあれば言ってね?」



「―――ありがとね、大好きよ」


「アタシもだよ―――」





「ハッハッハッ」


(今月末は一年生として初めての試合に臨むわけだから)


運動着の少女はいつもの道を駆ける。


(少しでも頑張っていい成績を残さないと・・・ん?)


無人の公園から見慣れた影が近づいてくる。


「あれ?史夏ちゃんと・・・」


「彩・・・」





「こんばんは史夏ちゃん、紗耶香先輩」


「ランニングしてたの?」

「うん、今月末大会あるからさ、少しでも体力つけておきたくて」

「そっか、頑張ってな!応援してるよ!」

「ありがとね!ところで二人は何してたの?」



「アナタには関係ないでしょ!」



急に怒鳴るような言葉を突き刺す紗耶香。


「あっ、ごめんなさい。史夏、私先帰るからまた明日ね」


「えっ?あぁうん、また明日・・・」




「ごめんな彩、紗耶香怒ってたのかな・・・?」


「・・・私、ホントに先輩に嫌われちゃったのかなぁ」



泣き出してしまう少女に、どうすればいいか分からない史夏。



「あぁえっと、そんなこと絶対ないって!アタシからもよくいっとくから!」


「・・・ホント?」


「うっ、うん(なんか距離感が近い気がする)」


「史夏ちゃんは優しいね、私優しい人好き」


「そんなことないよアタシは。色んな人沢山傷つけてきたしさ・・・」


「・・・もしよければ今度話し聞かせて?」


「ありがとう。その気持ちだけで嬉しいよ。中々話せることじゃないからさ」



「あっ、そうだ!紗耶香と仲直りする為にいいこと思いついたんだけど!」


「?」





(つい怒鳴ってしまった・・・らしくないわね、私)


寒い風が吹く中、歩きながら考える。


(彼女は災害とか、回避不能な存在として思うしかない)


あの子は優しい子だと思う。でも私に関わると、変わってしまう。


(彩のことは彩で好きになればいい・・・ただ少し歪んでいるだけだから)


(いつかそれを変えられる人が出てきてくれればいいわ・・・)


(多分私は彼女を・・・もう変えることは出来ないから)







「こっちですよー!」


週末お花見に来た私達は、丘の上の桜が咲く公園で集まろうという話になった。


現地は花見客の喧騒もなく静かで、冴姫が既に特等席を広げてくれていた。


「みんなおまたせ、史夏は遅刻?」


「まだ来てないみたいですね」


「このワタシを待たせるなんていい度胸よねまったく!!」


「あら、元生徒会長も来ていたのね、小さすぎて見えなかったわ」


「何ですってムッキー!」


「ふふふ、仲良さそうでなによりです」


「よくないですわ!!」



「おまたせ~、遅れてごめんね!」



声の方に振り返る、史夏だ。


だがその隣にもう一人女子がいる。



「ごめんなさい遅れてしまって、一年の『都築彩ツヅキアヤ』って言います!」


「都築さんも来られたんですね、いらっしゃい。こちらどうぞ」


冴姫の隣に案内される。


「あっ、じゃあお言葉に甘えて」


「それじゃあみんな揃ったところで」





「「「「乾杯!!」」」





「どうして彩を呼んだの?」


皆が花見を楽しむ中、少し散歩をするという名目で史夏を連れ出す紗耶香。


「どうしてって、紗耶香と彩の中を執持とうと思って―――」


「そういうの、余計なお世話っていうの知ってる?」

「私は今日の花見、あの子抜きで楽しみたかったわ」


「そういう言い方はないでしょ!?気に障ったのなら謝るけど・・・」


「けどさ」


「彩も仲直りしたがってるんだよ?」

「それに前までは彩も紗耶香も仲良かったんでしょ?ならもういーじゃん」


「それともまだ彩に―――なにかされてんの?」



思わず二の腕を掴んだ手にギュゥっと力が入る。



「いえ、そういうことじゃないわ・・・。ごめんなさい、そうよね」



(私が我慢するだけでいいのならば、アナタのためならば)



「戻りましょう、彩が・・・みんな待ってるわ」


「うん、戻ろ」



(私はどんなことにだって耐えて見せる)






「お二人ともどこまで行ってたんれふかぁ~」


皆の元へ戻るが、冴姫は既に出来上がっていた。


「アナタ、お酒でも飲んだの?」


「違いますよ~、ここの空気に当てられただけですよ~」

「他の方々も楽しそうにしていますわね、ワタシも来れて良かったですわ」

「風も少しづつ暖かくなってきて気持ちいいですね」

「アタシまたなにか食べよーっと!」

「いっぱい食べてくださいね、重箱のおかず、まだまだありますから」

「いや、流石にコレはアタシも無理・・・」

「私は普段運動するから、いくらでもいけちゃいます!」


楽しそうに盛り上がっているのは見ていて気持ちがいい。


こういうイベントでは自分が楽しむのよりも、楽しむ人を見る方が好きだ。



(素敵な空間ね・・・)



柔らかな風に舞う桜吹雪、この桜もいずれは散ってしまうだろう。


「なーに黄昏てんのよ須藤紗耶香」

「朔夜―――」

「なんか桜ってワタシ達みたいですわよね」

「え?」


「咲いては散って、散っては咲いて」

「一年の内に一度だけ、一瞬輝いては消えていく」


「ワタシは来年卒業ですけど、ずっと咲いていられるように頑張りますわ」


「貴女の桜はもう咲いてる?それともまだ蕾?」

「どちらにしても一回きりの人生、大切にしなさいな」


「―――なんで私で賭けなんてしてたの?」


「そっ、それは―――!」




「それはですね~」




横からぬっと冴姫が出てくる。


「朔夜さん、紗耶香さんのこと好きだったんですよね~」


「余計なことは言わなくていいですから!」


「アタシ気になる!」「私も!」


恥ずかしそうにふさぎ込む朔夜。



「朔夜さん、昔紗耶香さんと付き合っていたんですよ!」

「あったわね、そんなこと」


「入学当時からすごい話題になってて・・・とんでもない美人がいるぞ、と」

「それで告白とか散々されてたんですよね、でも付き合って別れての繰り返し」

「朔夜さんもあることで一目惚れして、色々とわたしに聞いてきましたよね」

「それで試しに告白してみればって言ったんです。そしたらすぐ行動に移して」


「で付き合ったけど別れたと・・・」

「先輩はなんでフッたんですか?」



「だって朔夜、恋人や彼女というより、うるさい妹みたいな感じだったのよ」



「いやあああああ!思い出させないでえええええ!」



ポカポカと紗耶香を叩く少女の姿は、姉妹喧嘩に見えなくもない。


「付き合う前から好きって言われるか賭けてたんですよ!」


「結局一年で30人近くが撃沈して、すごいお金が集まったわけですけどね」


「まぁ楽しい思い出もあったわよ?よく『姉妹デート』なんて言われたわね」


「ぐぬぬぬぬ」


「まぁなんやかんやあっても、終わって良かったですね。朔夜さん♪」

「なんのことです?」

「こう見えて心配性だから、紗耶香さんのことずっと気にかけてたんですよ」

「そんな心配してなーい!」


アハハハハ


和やかな談笑にも終わりはくる。


「それじゃあそろそろお開きにしましょうか!」


沈む夕日を見ながら撤収作業をする女子達。



「そういえば貴女、一度別れた相手には冷たいんじゃなかったの?」




人は、変わる。




「そうね、でもそれは間違いで、楽しくないって気付いた」



瞳に写る夕陽、赤く染まる顔、陰影、なびく風、彼女を幻想的に映し出す。




(やっぱりアンタ、ホントムカつくぐらい・・・)




「だからまた、『姉妹デート』しましょ?」


「ふふっ、そうね、ワタシとデートできるなんて、感謝しなさいよね?」


「ハイハイ、可愛くない妹ね」


「なんですってー!」



「アハハハハ!」  「待ちなさーい!」





(思いは実らなかったけど、その笑顔が見れただけで嬉しいわ)





次回は日常編

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