表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋をしたいと願うなら  作者: 佐伯春
佐藤愛美の物語
31/42

第31話 イケナイ対応

「とうちゃ~く」



正午、海水浴場に着いた私達は落ち着ける場所がないか探していた。



「あそことかどうかな?」


こういう場所は出入り口付近が混むので、向こうの人気のない場所に陣取る。

幸い更衣室付きの海の家にも近いので不便もなさそうだ。



「よく水着なんて持ってきてたね」


いそいそと着替えるふみの準備の良さに感心する。


「ん?実はこっちに来た時買ってたんだ」

「ホントはさ、一人で来ようと思ってたし」


「・・・二人で来れてよかった?」


「そうだね、付き合ってくれてありがとう♪」



お互い真剣に選んだ水着に身を包み、見合わせてみる。



(うっわ・・・)


改めて、ただただすごいという感情しか湧かない。

一体どうすればこのように成長できるのだろうか?


「ちょっとあんまりジロジロ見ないでよ!最近気にしてるんだから」


豊満な塊は遮るように隠された。


その仕草が逆に火をつけるんだよな~。


「うんまあ男達の視線は釘付けになるでしょうね」



でも―――。



「安心して、変な男が来てもアタシが守ってあげるから!」


「愛美・・・、それじゃあお願いしようかな!」


燦々の笑顔を振りまいて、細腕で力こぶを作る少女が眩しく輝く。





「海入る前に、準備運動ね!あと背中にオイル塗ってあげるよ」



鉄板のような熱さをほこる砂浜の上に降り立つ私達。


周りでは既に様々な人々が海水浴や砂遊びに勤しんでいて、

私も早く混ざりたいが目の前の水泳部員はちゃんとしているようだった。


「じゃあ横になって」


「えっ!?立ったままでいいじゃん!」


「いいからいいから」


広げたシートに寝転がる。


「んっ、あっつ!」





「ふみのその帽子さ・・・」


オイルを塗りながら愛美は見覚えのある帽子について尋ねてみる。


「あーこれ?彩の彼女の秋さんに貰ったんだ。誕生日プレゼントって」


「そうだったんだ。紗耶香さんも同じの被ってる時あったから」

「ふみは誕生日いつなの?」


「んー?アタシは今月の24日だよー」


「それってもうすぐじゃん!なんで教えてくれなかったのさ」


「いや別にイジワルしてたわけじゃないよ?どうせその前に帰るし・・・」



「愛美はいつなの?」


「5月15日だよ」


「おーおめでとう」


「なんだそれ・・・、まぁありがとう」



「はい塗れたよ!」


全身くまなく塗ってくれたみたいで、トーストのバターのように煌めいている。


「今度はアタシが塗るから」


「んっ、お願いします」





(肌・・・てか体綺麗だな・・・)


史夏よりも濃い色黒の締まった体とキメのある素肌。

オイルを指で走らせる度スーっと滑り気持ちがいい。


「もーいーかい?」


我慢できない無邪気な子供のように問いかけてる愛美。


「もうちょっとだよ、首元とかは入念に塗らないと・・・よし!」





「空ってさ・・・青いし、どこまでも高くて吸い込まれそうで」


大きな浮き輪に寝るふみを押しながら、アタシも空を見上げる。


「境界なんてなくてアタシの住む所に繋がってるなんて、実感湧かないよね」


ぷかぷかと浮きながら当たり前のことを不可思議そうにつぶやくふみ。



「この海もそうだよ、こんなに馬鹿みたいに広くてさ・・・」


さざめく波音に心癒されながら地平線の向こうを見渡す。


「すごいよふみは、アタシなんて日本語しか喋れないのに」

「向こうの人達と仲良くしてるわけでしょ?」


「この海の向こうは外国でさ、文化も人種も言葉も違う人がいるんだよね」



その言葉を聞いた途端強烈なデジャブに襲われた。



そして思い出す。



自分が一年前まさにこの場所で紗耶香に向かって同じことを言ったのを。




(そうだ、結婚だとかなんだとか将来のこと話したなぁ)




頭の隅っこから蘇る記憶の欠片たち。



『人は、環境で、歳月で、きっと変わってしまう』



(そう、紗耶香も変わったんだ。変われたんだよ)


(『好き』って気持ちを知ることができたから)


(冴姫さんと付き合う道を選べたんだよね)



(でもごめん)


『冴島史夏の、幸せの為なら、いつか別れが来たとしても、受け入れるわ』


(アタシはやっぱり受け入れられそうにないわ)



目頭が熱く潤うのは太陽が眩しすぎるせいなのかそれとも―――。





「海に行こう!」



彼女の提案はいつも突然で、準備なんて関係ない。

本能のままやりたいことをやる人種であった。


そんな対照的な二人がどうして付き合うことになったのか思い出そうとするが、


「朔夜の水着可愛すぎ~♡」


「むぎゅっ!?抱き着かないでよ暑苦しい!!」


炎天下の抱擁でどうでもよくなってしまった。




なんの偶然か今年の夏もこの海に来ていた。




「それにしても・・・」


相変わらずの盛況ぶりだ。


冴姫の別荘には見知らぬ家族連れが楽しそうにBBQをしている。



「・・・・・・」


ふとその人達に過去の残像を落とし込む。



「なーにしおらしくしてるのー?」


わざとらしく背の低いワタシの顔を覗くこの女性は大学の先輩であり恋人。


「朝陽は辛い経験とは無縁そうで羨ましいですわ」


大学生になっても抜けきれない口調でこの能天気にあてこする。


「なんだとぅ」


クリーム色の長い三つ編みを顔にのせてくる、毎回やってくるがこれはなんだ。


「そういうところですわ。というか眼鏡外した方がいいんじゃありません?」


「そしたら朔夜の手にぎろっかなー」


「はぁ全く、しょうがない人ですこと」


しかしこの光景、誰がどう見ても年の離れた姉妹か親子にしか見えないのでは?


「・・・やっぱりナシですわね」


「あぁん!なんでよー」



「ワタシちょっと小腹が空いたので、何か買ってきますわね」


「わたしが行こうか?」


「荷物番でもしててくださいな」


「迷子にならない?」


まるでウチのママが心配する時のように首を傾げる朝陽。


「いくつだと思ってるのよ!!」


「朔夜が怒ったー!」


彼女と話すときはいつもこんな感じで騒がしく落ち着いていない。

だが最近は慣れてきたしこれが当たり前だから、ないと寂しくなる。


「さてどこのお店にしようかしら・・・あら?」





水遊びも少し飽きてきた頃、私は背中を焦がしながら愛美の帰りを待つ。


(塩焼そばがいいなーでもイカ焼きも捨てがたい)


日本に来てから3食しっかりと取った上で間食もしてしまい、

また体重が増えたかもしれない。


なのでこうやって汗をかいて脂肪を燃焼させるのだ。


そうやって地面の熱さにも慣れ転寝うたたねしてた時、声がかかる。





「近くに来てみたらやっぱりそう」





聞き覚えのある声に最悪の事態を想定して顔を伏せる。



「別に、貴女が避けてる人はいないわよ」



そーっと顔をあげると、目の前の金髪少女がやれやれと呆れ顔で寄ってくる。




「・・・久しぶりね、冴島史夏」




「朔夜―――先輩・・・」





「隣、いいかしら?」


「ええ、まぁ」


朔夜は私の隣にちょこんと腰を下ろしてくる。

一年ぶりだが背はちっとも伸びてないように感じた。



「さて、積もる話もありますが」


話を切り出す朔夜。その態度は年長者らしく落ち着いている。


「まずは冴姫あのこに代わって謝るわ。ごめんなさい」


唐突に飛び出した謝罪。


「いやいやなんでですか!なにもアタシ怒ってないですよ!?」


「あの時あんな方法を提案させたから謝ったのよ」

「多分、あんなやり方じゃなくても、もっといい方法があった筈ですから」


「・・・そうかもしれませんね、けど」



「それでも―――、それでもあの時の私はアレしか選べなかった」



「それは冴姫さんの所為でも周りの所為でもない、アタシの責任」



「紗耶香ならきっと忘れてくれて、嫌いになってくるって信じてたから」





「ハァーーー」


またしても呆れ顔で深いため息をつく朔夜。


「あのね、あの時のアレで須藤紗耶香は・・・、かなり落ち込んでましたの」


あれからのことを思い出す様に瞳を潤ませている。


「事情はどうあれ、まずは謝りに行くのが先決じゃなくて?」


「―――分かってますよ、自分が一番よく」


そんな簡単な事さえ実行に移せないのはどうしてなのか?



「これはアナタ達二人の問題だからこれ以上はとやかく言えないですけれど」


意を決するように朔夜が続けた。



「須藤紗耶香は・・・冴姫と付き合ってるわ」



「・・・・・・」



「・・・知ってますよ、こっちで会った子が教えてくれました」


「そう・・・これからどうするんですの?」


「どーもこーも、また帰国して人生を楽しみますよ」


紗耶香のいない人生を私は楽しむことなんて可能なのであろうか?



「今日貴女と会ったことは誰にも言わないわ、その代わり・・・」


「?」


「今どこに住んでるかだけは教えてちょーだい」


真剣な眼差しが、嘘をついてはいけないよと忠告してくれる。



「・・・それは―――」


「それとついでに」



ぶら下げた防水のポシェットからスマホを取り出すと、


「連絡先、教えてくれるかしら?」


とお願いされてしまった。



「それはどうしても」


「ダメ、もし教えてくれなかったらどうなるかしらね?」


「・・・なんでそんなに構ってくれるんですか」


「心配なのよ」


ずいとこちらに身を寄せてくる。


「貴女達はワタシの可愛い後輩な訳で、気にかけるのは当たり前じゃない」


「それに貴女は―――、ワタシが成しえることができなかったことをした人」


「悔しいけど認めざる負えない。須藤紗耶香の彼女だったから」


「だから支えてあげたいの」



「それにね」


ふと身を引くと、今度は海の向こうを眺めながら抱えている不安を語る。




「このままだと多分、あの子達は別れると思う」




「・・・どういうことですか?」




「紗耶香はね、まだ貴女のことを引きずっている」

「頭の片隅にはいつも貴女がいて」

「比べはせずとも頭の中では考えてしまう、たとえ冴姫の前であろうとも」


「そんな酷い話にあの子を付き合わせるなんて悲しいと思わない?」


「でも冴姫は選んでしまった。それでも紗耶香が大好きだから」

「好きだからこそ振り向かせたくて、一生懸命振舞ってる、健気にね」



「結局のところ」



「紗耶香にとっての『恋』は貴女以外考えられないのよ」


「誰がどうしたって、ね」



そう言い終わるとすくりと立ち上がり、離れようとする背中に、


「待って!朔夜先輩!アタシは!」



が、なにを伝えたいのか上手くまとまらないし、それに・・・。



「その気持ちを伝えるべき相手はワタシじゃないでしょう」



「まっ!」



手を伸ばそうとするがそんな猶予もなく去ってしまった。



空振りの手の平を見つめて、握ってみる。



「・・・っ」



(答えはきっといつか、この手の中に・・・)



その答えが正しいものになるか、間違いだらけになるのか。



いつかハッキリさせる時がくるのだろう。





「おまたせ~ってあれ?どしたの?」


事情をよく知らない愛美がおいしそうな匂いを漂わせながら戻ってきた。



「・・・学校の先輩と会ってた」


「!?、それって」


「あー!大丈夫だよ!あの人もう大学生だし、紗耶香に言うとかはしないし」


「でも・・・」


「・・・」


(帰る前に、いい加減覚悟きめたほうがいいかもね)



いつか、この見慣れた青い大空のように、私の心も晴れの日がくればいいな。





「ぼちぼち帰りますか~」


すっかり泳ぎ遊び疲れたアタシ達はもう帰りの準備をすませていた。


「だね、ここバスしかないから、時間遅くなると混むんだよね」


「・・・今日楽しかった?」


無粋だとわかりながらアタシと遊んだ感想を求めてしまう。


「当たり前じゃん!愛美と一緒だったから楽しかったんだよ!」


しっとりとしたぼさぼさの髪を纏め上げ、帽子を深めに被るふみ。


なんとなくだが、照れ隠しのようにも見えた。


「・・・ならよかったよ。アタシも楽しかった」



「夜はさー、駅前のカラオケ行かない?」


「えー、遊んでばっかりだねアタシ達は、宿題とかやらなくていいの?」


電車の揺れる振動を感じながら窓の景色を眺めるアタシとは対照的に、

ウトウトと今にも眠ってしまいそうなふみ。


「大丈夫だよ、それよりどうかな?」



別に本当に行きたいわけではない。



唯この時間がもっと続けばいいと思ってるし、二人きりになりたいだけだ。



「いい・・・けど、とりあえず乗り換えの時起こ・・して―――」



電池が消れたかのように意識が薄れていき、眠ってしまった。



「・・・・・・」



しっかり寝たのを確認すると、アタシはまじまじと彼女の姿を目に焼き付ける。



「・・・・・・」



帽子の陰に隠れている睫毛と、ぷにぷにであろう頬と、柔らかそうな唇。


綺麗な顎のラインと繋がった首筋に僅かな汗の水滴が浮かび上がっていて、

それが素肌を流れ伝わり落ちていき、生唾を飲み込んでしまう。


鎖骨の横の肩の辺りは日焼けが残りクッキリと水着跡の線が明暗を醸し出し、

相も変わらず胸元を露出させたシャツの谷間に目が奪われてしまう。


そこから更に二の腕と手先の先端までを凝視し、

ショートのパンツからむっちりと生えそろった肉厚の太ももを眺めて、

足元のサンダルに乗せた小さな素足までもしっかりと心に灼きつける。



「・・・」



悪いとは思いながらも、彼女との思い出に『写真』を追加したくなったアタシは、

ここにきてふみが無防備なのをいいことに一枚だけ撮ってしまう。



カシャ



細心の注意を払って起こさないように、バレないようにシャッターをきるアタシ。



保存された画像はスマホの中で静かに息づいていて、宝物にしようと思った。



(これじゃまるでストーカーとか異常性欲者みたいじゃん)



いやいや、こうやって一緒に遊ぶのも写真を撮るのも友達なら普通だろう。


それは冬華や他の友達ともやってきたことじゃないか。


決して特別な感情なんかじゃないよ。



(だってこの人は―――)





「今の時間お部屋の方がいっぱいで、案内できる部屋が奥の靴を脱ぐタイプの

狭いお部屋になってしまいますがよろしかったでしょうか?」



小時間の休息を電車ですませ地元のカラオケに来たアタシ達。


「アタシはいーよ」


「じゃあその部屋でお願いします」


店員から案内された部屋は時々ヒトカラで利用する個室だった。



「・・・いい狭さだね」


一人で熱唱していた時には意識していなかったが、成程。


「ごめん、アタシもうちょっとつめるね」


肩が触れ合う程の狭さ、密着を余儀なくさせる。



「お待たせしました」


運ばれたソフトドリンクに口をつけ、店員が退出するのを見計らい、

部屋の電気を暗くする。


「暗くない?」


「そんなことないよ」


なんて平静を装いつつも内心では浮かれた気分になっているアタシ。



ここは廊下の一番奥で、しかも他の部屋と違い隠れた位置に存在している。



「よいしょっと」


ソファに腰を下ろすと思っていた以上に柔らかかったようで、

ふみの方へ体が傾いてしまった。


「あっ、ごめんね」


「いいよ、さっき電車で寝てる時肩貸してもらってたしさ」


そして平気な素振りで曲を選び始めた。


多分本当に彼女にとってこの距離感は、なんてこともないんだろうな。





「やっぱ歌うと熱くなっちゃうね」



気怠そうに服をぱたつかせるふみ。



その様子を横目で見つめるアタシ。



前にもこんなことが、いや最近こんなことばっかりだったかもしれない。




「あのさぁ―――」




「ん?」




こういうことは普通聞くものじゃないし、

この居心地の良さを壊したくなかったから言えなかったけど、

このタイミングでいくしかない。



「キスしたいな」









佐藤愛美についてはまだまだ知らないことだらけだったが、

いい子だというのは分かっていた。


なんの運命かこうして遊び尽くして付き合ってくれているのも、

帰国に際して大きく腫れ上がった不安を抑えてくれる一因になっている。


実際問題目的が不明瞭なままでの旅行でもあり、紗耶香に顔を合わせるのも

躊躇ってしまい無為な数日間を過ごすところだったから。


あの日からかったのも特別な意味があった訳じゃなく、

おおよそ大人になってから頻繁に直面するであろう魅力的な駆け引き、

その一端をなんとなく年下の少女に見せつけたかっただけなのである。



私にとってのキスは処世術なようなもので、価値のあるものじゃなかった。



それを変えてくれたのは紗耶香で、以来私の唇はどんな相手も許してはいない。



恋仲でも親密な間柄でもない人間からの提案なんてもっての外。




それなのに―――。




「・・・なんでアタシなの?」


少女の感情とは複雑なもので、

純潔を守りたいと願いつつも汚されたいという劣情も併せ持ってしまっている。



「なんでって、そりゃ、したいからに決まってるじゃん」



目からウロコだった。



成程、直接思いの丈をぶつけてしまえばいいのだな。


そうなれば話が早いものだから。



だがそんな気風の良さだけではすまされない問題がこの世にはたくさんある。



「それはさ、愛美がそう思ってるだけじゃん?」



「アタシがしたくないって言ったら、諦めてくれるの?」



さて、佐藤愛美の返答は如何に。




「そういう言い方するってことはさ―――」




精悍な目つきで見つめられるとイヤでも意識してしまう。


その視線が下に落とされ、密着しきった彼女の手が私の太ももに置かれた。




「ふみをその気にさせちゃえば、いいってことだよね」




愛美の段々と荒くなっていく呼吸が鼻先にかかりムズムズする。


どんどん押し留める暇もなく、彼女の薄い物欲しそうな唇が迫ってきている。



(うわっ、ちょっとヤバイかも)



たくさん遊んだ後の高揚感がまだ燻っていて、心の門が緩んでいるから、



そんな時にこの状況で迫られた日にはもう―――。





舌先寸前のところで私は顎を引っ込めると、愛美の最後の一押しは空振りに。


そうやって彼女の欲情しきった全てが宙を泳ぎ、お預けされて残念そう。


子犬のように興奮で漏れる息を我慢してる姿が愛おしい。



(そんな風にされたらアタシだって)



ほんの数秒、互いの息が詰まるような、張り詰めた静謐が訪れる。


一転、真っ直ぐな眼差しは何処へ行ったのか発情しきった目つきを送る愛美。

私は直視できなくてちょっとだけ目線を外し、考える時間を得た。



(紗耶香・・・)



こんな時でさえ彼女のことが脳裏に現れ、身体を重ねた日々を、

思春期特有の勢いに身を任せた爛れた情事を思い返してしまう。



無言のまま、ほんの少しだけ、顎の角度を愛美に突き出すよう変えてみた。



愛美はそれを認めると、合意と受け取ったのかゆっくりと瞳を閉じて―――。




1ミリ1ミリ目的を果たすため前進してくる。




太ももの手を私の肩に回して体勢を整えなおすと、いよいよだなって感じる。




唇を重ね合わせる瞬間のそんな微細な空気感や仕草、雰囲気の変化。




飽きる位やっていた懐かしき行為が今、私の目の前に―――。




「んんっ・・・」





やっぱり、女の子の唇は柔らかくて、甘くて、それでいて―――。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ