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恋をしたいと願うなら  作者: 佐伯春
氷の女神と冴島史夏
10/42

第十話 乙女心と秋と彩

検閲済み

「彩、今日はごめんなさい、飲み物にあんなの入れて」

「騙すようなことして・・・」


「いえいえ、それは私もです・・・色々吹っ切れました!」

「史夏ちゃん!本当に改めてごめんなさい!」


「もう気にしてないよ!その代わり~」

「?」


(今度紗耶香の弱点、教えてね)

(!!)


「はいっ!」







「それで、昨日は上手くいきましたか?」

昼休憩、私達四人はお弁当を囲んでいた。


「うん、ご協力どうも、おかげさまでなにもかもね」

「実は紗耶香さんからコッソリ聞いてたんですけど、彩さんもやりますね~」


「えへへ~」


「「いや褒めてない褒めてない」」


「それでこれからどうするんですか?」

「まぁ流石にそういうのはちょっとね・・・」

「私は紗耶香先輩がしたいのならいつでも」


「こらこら」




「頑張って・・・」




「紗耶香先輩に負けないぐらい素敵な人、見つけますから!」




一陣の風が吹く、空に吹き飛ばされる桜花、もう散ってしまいそうだ。




「彩さんホント健気で泣けます・・・!」

「困ったことがあれば、わたし、なんでも協力致しますから!」



彩の目が鋭く光る。



「冴姫先輩は、女の子とかどうですか?」


「へぇ!?」



モジモジとしながら恥ずかしそうに聞いてくる。


「冴姫先輩の事、結構気になってて、容姿もどことなく紗耶香先輩に似てますし」


「なんでもしてくれるのなら、時々相手してもらえないですか?」


「いや、わたしはその!」アタフタ


こんなに焦る冴姫は初めて見た。


「そうね、これも花嫁修業の一つだと思って、相手してあげて」


「冴姫先輩、彩のことよろしくお願いしますね~」


「えぇ―――?!」




いつもよりもっと騒がしくなりそうな未来に頬が緩む。









「待ち合わせはこの辺りなんだけど―――」



私の名前は『都築彩ツヅキアヤ』!

今日は紗耶香先輩の代わりに、軟派者を成敗しにきました!



「おまたせ~」



「いえ。全然待ってなっ!」



そこに現れたのはイケメンだった。


サラサラショートヘアに物腰柔らかそうな眼差しの奥二重に泣き黒子、

少年っぽいあどけなさの残る小顔。しかも背も高い。

肉付きもあるが、太っている感じではなく、引き締まっている。

コーデも自分に合わせて派手すぎない服装、かなりの清潔感。

爪先からつま先までしっかりと磨かれている・・・。



かなりの時間それに目が奪われ、ぽけーっとなってしまう。



「あの、大丈夫?都築彩ちゃんだよね?」


心配そうに手を振られて我に返る。


「あっ、はいそうです!須藤紗耶香の代理できました!都築彩です!」



(この私が思わず見惚れてしまうとは・・・すごい人ね)



別に私は紗耶香先輩だけが好きというわけではない。

これまでただの一度も、彼女より素敵な人間がいないと感じていただけだ。



(まぁ見た目だけならちょっとアリ?かも?問題は人としてよ!)



「いや~、紗耶香ちゃんが来れなかったのは残念だけど」

「その代わりにこんなに可愛い子が来てくれるなんて、今日はツイてるね」

「そっ、そういうのはいいんで!早くどこか入りましょう!」

「そうだね!これは失敬、それじゃぁ僕の行きつけの、おっと!」

「きゃっ!?」


人にぶつかりそうになったのか、彼女の に抱き寄せられてしまった。


「ッ~~~!」


思わず が高鳴ってしまい、恥ずかしさで顔を伏せる。


「大丈夫かい?ここは人通りが多いから、僕がエスコートしてあげるね」


「あっ、はっ!そういうのいいですから!」


一々女性の琴線を刺激するような物言いに、ツンとした態度をとってしまう。


「あら、嫌われちゃったかな?でもそういうところも可愛いね!」


「しっ、知りませんからっ!早く行きましょ!」





「綺麗な場所ですね~」


秋が案内してくれたのは大通りに面しているが都会の喧騒が少なく、

気持ちよい風が流れてくるオシャレなイタリアンだった。


「でしょ?ここの店料理も美味しくて静かで、落ち着けるから好きなんだ」

「普段はその・・・女の子とよく来るんですか?」

「んー?まぁそうだけど、本気で気になった子としか来ないかな」


先に注文だけ済ませ、本題に入る。


「ところで今日はなんで君が代わりなのかな?」

「それは・・・」


(ふーん)


(彼女の反応を見る限り、須藤さんに片思いをしてて、僕と会わせるのがイヤって

辺りかな。まぁ彼女ガード固そうだったし、この子は初心ウブな感じでいいなぁ)


「まぁいいよ、僕女の子好きだし。彩ちゃんも女の子好きでしょ?」

「えぇ!?なっ、なんでそんなこと言うんですか?!」

「別に隠す事じゃないでしょ・・・、雰囲気でなんとなくね」

「そうですか・・・、あの、秋さんは」

「まずはパスタ食べてからにしない?僕もうお腹ペコペコでさ」

「あ、そうですね」


美味しそうな料理が運ばれてくる。


「ん!おいしい!」

「ここ料理も最高なんだよね、こうやって素敵な景色と女の子をみながらさ」

「僕は今一番幸せな女子高生だと思うよ」

「表現が一々大げさすぎですよ・・・」




「ふぅ、ついつい食べすぎちゃったかな」

「食後にデザートもついてるなんて、お得ですね」

「そうだね、少し食休みしながら話そうか」


「秋さんのこと、ネットで見ました」

「・・・」

「あのウワサ・・・というかやってることってホントですか?」

「・・・・・・・」


静かにコーヒーカップを置くと、口を開く。


「全部本当だよ。僕さ、女の子も男の子も、どっちも好きなんだよね」


「でも今相手にしてる子は殆ど女の子。なんでかわかるかい?」


「えっ、うーん、なんででしょう・・・カッコよすぎるから?」



「ハッハハハハッ!」



「わっ!ビックリした!」


秋は思わず出た笑い涙を拭く。


「いやぁ彩ちゃんて、結構鋭いね。そうそれが正解」


「これは誰かの昔話だけど、昔親戚の叔父さんに性的暴力を受けてた子がいた」

「その子は地元でも評判の美少女でね、長い黒髪が自慢だったんだ」

「親戚の家に遊びに行く度少しずつ、犯された」

「最初は分からない行為も、エスカレートしていって、理解し始めた」


「その時の写真を脅迫のタネにされたんだろうね、黙ってほしければ従えってさ」


「・・・・・・」


「だからその子は考えたんだろうね。叔父さんが好きなのは小さい女の子」


「一つの計画が浮かんだんだ、彼女は『小さい』も『女の子』もやめたんだ」


「長かった髪もバッサリ切って、牛乳を飲んだり喋り方も性格も変えて」


「その時ぐらいから、友達とかに『男女オトコオンナ』って呼ばれ始めてね」


「いつしか叔父さんの興味も引いていった」



「でも一つの変化が起きた。僕ね、女の子からモテるようになったんだ」



「最初は過去のトラウマはあっても、男が好きだった」

「中学に入ってから少しして、同じ部活の子と付き合い始めたんだ」

「初めてできた好きな人・・・大好きだった」

「でも『男女オトコオンナ』であるのもやめられなかった、チヤホヤされるのは気持ちイイ」


「それでね、ある日事件が起こった。僕の彼氏が浮気したんだよね」


「相手は別のクラスの知らない子『なんであの子に浮気したの?』って聞いたら」



「『秋は俺よりカッコよくて、俺よりモテて、異性として意識できなくなった』」

「だってさ」



「浮気相手は女の子らしくて可愛かったなぁ」

「でもその子は彼氏が好きなんじゃなくて、僕と繋がりをもちたかったんだ」


「あの時は理不尽に怒られたな~、『なんなんだよお前は!』って」

「大好きだった彼にそんなことでフラれて、ショックだった」


「それから恋愛には深くハマらないよう、享楽主義に徹するようにした」

「世間一般では『ビッチ』と呼ばれる生活もしてた」


「でもね、やっぱり男の方はからっきしだったよ」


「ヤりたい相手から『男とヤってるみたいでなんかやだ』って言われちゃってさ」

「それで女の子との回数が多くなっていった」

「男とするのは勇気がないけど、男性経験がないのはイヤだって子とね」

「僕は女の気持ちもわかるし、男の振る舞いやデートの仕方を知っているから」

「結局女の子達は僕に依存したりする子も多かったんだけどね」



「まぁ今ではそんな生活も悪くないって思ってるんだ」



椅子にギッともたれかかる。


「別にこのまま変わらず生きていくのもいいし」


「いつか誰かがこんな僕を好きになって受け入れてくれて」

「家庭を築いて幸せな毎日が続けばいいとも願ってるよ」


「それはまだ先のことだし分からないけど、なるようにはなるから!」


笑ってはいるが、心の奥底の本当の気持ちは分からない。



「ごめんね、話長くなっちゃって」


「いえ・・・そんなことがあったんですね」


「・・・・・・」


「なら、いっそまた変わってみませんか?」


「え」


「私ね、今の話を聞いて、ほっとけないと思った。秋さんのこと」


「いきなり会って余計なお世話だと思いますけど」



「私、秋さんのことプロデュースしたい!変わってもらいたい!」



「いつか女の人か、男の人に好きな人が出来た時!」



「しっかり恋人になって幸せになって、『愛してるよ』って言われるような!」




「素敵な女性になってほしい!」




目の前の女子のまっすぐとした真剣な眼差しに、心打たれる。



そんなこと考えたこともなかったから、誰も教えてくれなかったから。



初めて誰かから本気で、自分についての思いをぶつけられた。




「プッ・・・アハハハッ!」



「なっ、なんで笑うんです?!」


「いやっ、だってまだ会って数時間なのにそんなこと言われたの初めて!」


おもしろい子。


「いいよ!面白そうだね、のった!」


「やるといったからには最後まで責任取ってよね?彩?」


「はっ、はい!よろしくお願いします!」


「でもそうなると紗耶香ちゃん怒るんじゃない?愛しの後輩奪っちゃって?」


「はい?奪うとかそんなの・・・ないですよ・・・」


(ふーん、失恋はしたけど片思いは捨てられないのかな?)


「彩、この後行きたいところあるんだけど、いいかな?」


「いいですけど・・・」





「で」


秋に連れてこられたのは人並み華やかなショッピング街ではなく、

その裏でひっそりと愛を語り合う場所、


「あれ?彩ちゃんこういうところ来るの初めて?」

「当たり前じゃないですか~!」



ラブホテルだった。



手慣れた様子で受付から鍵を受け取り、ホテルの部屋に向かう二人。


(えー!ここってカップルとかがあれする場所だよね!?)


普段していた場所とは違った恥ずかしさがある。


「この部屋だね」


「わぁ」


中は思ったほど汚れてなく、寧ろかなり綺麗で快適な作りだった


「どう?入ってみた感想は?」


「かなり、アリですね。お風呂もベッドも広いし、ドライヤーなんかも」

「ここのホテルは女性客メインの『穴場』スポットなんだよね」

「詳しいですね・・・」

「それよりもこんな簡単についてきてくれるとは思わなかった」


「あっ・・・」

優しく抱き寄せられる。


(先輩よりも少し背高いかな、本当に男の人に抱かれてるみたい)


初対面の人間にいきなり抱かれてしまう興奮と、

目の前の女性のギャップに戸惑い、それでなんだかドキドキしてしまう。


「こっち向いてごらん」

「こうですか?」


首を上に向けると、秋の顔が自分の顔に重なり合い、


「・・・」




若気の至りを感じさせない丁寧な接吻に、身体の奥底が火照る。


(これが大人の魅力なのかな?まだ入れてないのに・・・)


秋はその長い腕を、彩の身体に這わす。


まるでそれはピアニストの様な指使いで、滑らかにマッサージする。


「んっ・・・なんかこしょばい感じがする・・・」

「くすぐったいってことだよね・・・少し強くするね」



――――――――――――



ベッドの上で、両名は軽い雑談を交わしながら、時を過ごす。





「今度はあなたの秘密も聞かせてね」





頭を撫でながら、束の間の休息を楽しむ。今日はどんな夢が見られるだろうか?





次回は日常編

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