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青春=ぼっちの男 ~ぼっちの俺にささやかなラブコメを~  作者: 最東 シカル
第四章 あなたに出逢えて良かった。
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第76話 千羽鶴

「ねぇねぇ、最近えりっちの様子がおかしいんだけど、アッシー何か知ってる・・・?」


「・・・さぁ」


「だよね・・・アッシーが知ってる訳ないか」


 すいませんね。そんな程度な奴で。


「川添っちに話し掛けるとか・・・ほんと、えりっち何考えてるんだろ?」


「・・・」


 退屈な午前の授業が終わり昼休み。

 神咲さんが言った通り、絵里奈は毎日のように祐樹に話しかけている。休み時間やら放課後、祐樹にトコトコと寄って行き、笑顔で話し掛ける姿を俺は度々目にした。

 しかし祐樹は無視を貫く。そこにはまるで、何もないかのように――。

 2次元の世界に入るとあいつは人格が変わったかのようにペラペラと喋り出す。だがそれ以外の話となるとあいつは何にも興味を示さない。そしてそれは絵里奈もしかり。けど何故か俺に対しては結構すんなりと受け入れてくれるのだが、別に嬉しくない。どうせなら美少女とかにすんなりと受け入れられたい。

 絵里奈は祐樹に無視される度に憂いの影を纏うが、それも一瞬。切り替えの早さを手に入れたのか絵里奈は果敢に祐樹へと迫る。

 ここから聞こえてくる内容としては。


―――祐樹、今日一緒に帰らない?

―――授業の内容分かった?

―――その本面白そうだね?私も読んでみたいな?

―――『妹萌えの何が悪い』・・・う、うん!いいと思うよ!


 若干引いていたが、絵里奈はそれでも祐樹に迫る。しかし祐樹は頑なに無視を殉ずる。

 けど祐樹の眉がぴくぴくと反応しているは、錯覚ではないだろう。あいつは多分怒ってる。なんで話しかけてくるのかと。

 まぁ、それもそうだ。絵里奈に裏切られた祐樹には、何故今更自分に構うのかが分からないのだろう。


「えりっちに聞いても教えてくれないし・・・。それに、川添ッちもなんでずっと無視すんの?あんなにえりっちが話しかけてるってのに」


「ま、まあ、何か用事があるんじゃないか?」


「そうだけど・・・」


 神咲さんはまだ不服そうだ。

 いつもの神咲さんなら、絵里奈をずっと無視続ける祐樹に突っかかっていくだろう。だけど神咲さんはしない。いや、出来ない。

 神咲さんは絵里奈に忠告を受けているらしい。

 

 曰く、祐樹には何も言わないであげて――だとか。


「えりっち辛そう・・・」


「・・・」


 それでも絵里奈は、進むことを決めたんだ。

 絵里奈の意思を、決意を邪魔することは、俺にはできない。

 

 それに、辛そうなのは―――祐樹も一緒だ。


 あいつは頑張って無視を決め込んでいるが、その顔は絵里奈に比肩するほど苦渋に染められている。

 どっちもどっちだ。

 祐樹と絵里奈のこれからなんて、俺には分からない。けどだからこそ、何かしらの”変化”に俺は気付かないといけない。そして、行動しなければならない。

 俺も一応だがあいつらの腐れ縁だ。無視することなんで出来ない。

 


 まぁ何が言いたいのかと言うと、さっさと仲直りしてくれ。



 ◇


 眠い眠い授業を終え、放課後。

 俺は重い足取りで、今では慣れ親しんだ図書室へと向かう。

 そしてその隣には三つ編みメガネっ子―――若山さんが歩いている。

 何で一緒に歩いているのか取り敢えず置いといて、若山さん、君はなんで千羽鶴抱えてるの?


「・・・持とうか?」


「いえ、大丈夫です。数は多いですが、素材が紙でできているのでそこまで重くありません」


「そう・・・」


 ニコニコとした顔で若山さんは答える。

 彼女が嬉しそうなのは何よりなのだが、その千羽鶴の使い道を是非教えて頂きたい。

 まぁだいたいは察したけどね・・・。


「麻衣ちゃん!久しぶり!」


 若山さんは千羽鶴の入った紙袋を一旦置くと、勢いよく図書室の扉開けた。


「あ、詩音ちゃん。お久しぶりです。それに、武流さんも」


 相変わらず、古瀬さんはピシッと背中を立てながらカウンター席で本を読んでいた。

 勢いよく開いた扉と若山さんの張りの入った声に動揺することもなく、ゆっくりとした動作で本をカウンターに置き、古瀬さんはこちらに視線を向けた。


 何処までも華になるその姿に、俺は一瞬―――目を奪われてしまった。


「・・・お、お久しぶりです」


 古瀬さんに会うのは1週間ぶりだが、なんでこんなに緊張してしまう自分が居るのか分からない。

 ひとつ思うのは、やっぱり綺麗だなと。いやなんでそんなに綺麗なのかと。

 心底疑問に思ってしまう。

 整い過ぎた顔立ちは、逆に恐れを抱いてしまう。

 面と向かってそんなこと言えないが、古瀬さんは余りにも―――。


「麻衣ちゃんっ、これ!」


「え、これは・・・千羽鶴、ですか?」


「うん!」


 若山さんはトコトコと千羽鶴の入った紙袋を持ってくると、一つ一つまで丁寧に作り上げたと思われる色とりどりの千羽鶴を古瀬さんへと渡した。


「本当は麻衣ちゃんが入院している間に作り上げたかったんだけど・・・」


「っ・・・!」


「思ったよりかかっちゃって・・・ごめんね?麻衣ちゃん」


「いいえっ十分です詩音ちゃん!本当にっ嬉しいですっ・・・」


 古瀬さんは愛おしそうに若山さんを見つめると、広げた千羽鶴を宝石のように大事に抱き込んだ。


「そう?頑張った甲斐、あったかな?えへへへ」


 若山さんは照れたように頭を掻く。

 よく見ると、若山さんの目の下には隠し切れない隈がハッキリとみえる。


「・・・」


 はぁ、やっぱり敵わねぇや・・・。

 

「あの・・・一応ですけど俺も・・・」


 千羽鶴の後に渡されても嬉しくないかもしれないが、俺はポッケに入れといたある物を古瀬さんに渡す。


「これって・・・」


「俺が小っちゃい頃神社で貰ったものなんですけど、それ持っとくと健康面で御利益があるらしいです・・・」


 やばい・・・これ結構恥ずかしいな。

 今時”石のお守り”とかダメだっただろうか。


「俺もそのお守り身に着けてたら健康になった気がしましたし・・・」


「ふふっ。ありがとうございます武流さん。しかし宜しいのですか?大事な物かと思うのですが・・・」


「妹も持ってるんで、いざという時は貸してもらいます」


「ふふっ。そうですか。では有難く。大事にさせて頂きます」


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