愚者の独白
なんで、あんな事言ってしまったんだろう。
――今更考えても分からない。
自分が馬鹿過ぎて、笑えない。
自分が汚すぎて、笑えない。
自分が愚かすぎて、笑える。
自分が醜すぎて、吐きそう。
千恵ちゃんが眩しすぎて、逃げたい。
千恵ちゃんが怖過ぎて、泣きたい。
武流君がいつも通り過ぎて、怖い。
武流君が優しすぎて、痛い。
武流君が怒ってくれて、嬉しい。
祐樹が隣に居なくて、切ない。
祐樹がおかしくなって、辛い。
祐樹が見てくれなくて、落ち込んで。
祐樹が泣いている時に、私は笑って。
祐樹が悲しんでる時に、私は喜んで。
祐樹が一人の時に、私は友達と居て。
祐樹が絶望の淵に居るときに、私は絶頂の最中に居て。
祐樹が寝ている時に、私はベッドを涙で濡らして―――。
全部全部、私のせい。
分かってる。
なんでこんなことになったんだろう。って、何回思えばいいんだろう。
気持ち悪いくらい考えて、泣いて、見て、絶望して、歓喜して。
祐樹の心が壊れたのは、私のせい。
祐樹の心を治したのは、誰かのせい。
その誰かのせいで、私はまた、泣いて。
その誰かのせいで、私はまた、絶望して。
その誰かのせいで、私はまた、歓喜して。
その誰かのせいで、私はまた――――恋をして。
私にそんな資格、あるはずないくせに。
やっぱり馬鹿だね。
脳裏に浮かぶのは、いつだってあの景色。
あの夜、あの公園、あの時の約束、あの時の手のぬくもり、あの時の胸の暖かさ。
どれもこれも、全部なくなって。
残ったのは、虚無の感情だけで。
後悔したって遅いのは分かってるはずなのに。
それでも幻想を追いかけてしまうのは多分、私がまだ変わろうとしていないだけで。
分かってる。分かってるのに、なんで。
なんで決意が出来ないのか。
祐樹に謝りたい。
そして、許してもらいたい。
祐樹は絶対に私を許さないと分かってる。
だけど、許してもらいたい。
ああ、なんで、分かってるのに―――。
会いたくて、戻りたくて。
また、あの手の温もりを、感じたくて――。
だから私はまた、縋り付く。
どんなに醜かろうと、それでも。
絶対なんて、ないんだから。
だから祐樹、また――――。




